ここではアパートにカプジと呼ばれる管理人がいる。日常のメンテナンスや保安が言うまでもなく彼の仕事ではあるのだが・・・朝一番から清掃、夕方にはゴミの回収と庭の水撒き、雨の少ない土地柄、水を始終やらないと庭の木々や芝生はすぐに枯れてしまう。来客のゲートの開閉も彼の仕事、結構忙しい。それに加えてビックリしたのは、「買い物はありませんか?」と毎日、尋ねてくる。日常のパンや飲料、果物、野菜といった簡単なものなら何でも買ってきてくれる。
管理人室でTVを見ながら、或いは新聞を読みながら、宅配便の受け取りが精々の我が国の管理人さんとは大違いである。
以前、イスタンブールを代表する観光地、スルタンアフメットから流しのタクシーに乗った。「日本人ですか?中国人?」、「イスタンブールは好きですか?」、「トラフィックが問題です。東京もこんなですか?」とやたら話しかけてくる、愛想もいい。目的地のタクシムに着いて料金を払おうとしたが、メーターに陽の光が反射してよく見えない。「いくらですか?」と訊ねると「35リラです。」と言う。20リラ札2枚を出したのだが、お釣りをくれる様子がない。身振り手振りで「釣りをよこせ。」と催促すること数分間、ようやく5リラを返してくれた。その夜、トルコ人の友人と食事をした席で5リラの苦労話をすると、「やられたね?その距離だったら多くて25リラだよ。」と一笑にふされた。完全な負けである。
アンタリヤからウスパルタへ130kmの距離を日本からの来客と3人でタクシーで移動したときのこと。「我々は喉が渇いている。どこかで水を買いたい。」とたどたどしいトルコ語で運転手に。途中でコンビニを見つけて彼自らが買いに行ってくれた。「いくらですか?」と聞いても「いいです、いいです。」と受け取る様子もない。おかげで喉の渇きを癒し、無事目的地に到着した。
翌朝のホテルでの朝食時、友人が「どうも昨日のタクシーにUSBを落としたらしい。」という。ところがその日の用事を済ませ夕刻ホテルに帰りつくと、フロントの人が「これはあなたのでしょう?」と言って、件のUSBを友人に差し出した。彼が、てっきりホテルの中でなくしていたのかと思いきや、昨日の60歳前後と思われる運転手が届けてくれたのだという。「名前や電話番号は分かりますか?」と聞くがフロントの係員はただ受け取っただけだという。「もし今日もアンタリヤからの乗客があったとしても親切すぎる。お礼を何とか言わなくては・・」という彼。
その翌日、アンタリヤ空港のタクシー乗り場で、その運転手を探し回ったが残念なことに見つけることはできなかった。我々は、「ありがとう」の気持ちを残し、次の目的地シュトッツガルトへ飛び立った。