ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 【男女逆転】 お嬢様と私 【執事パロ】2013年3月10日 21:18『16歳令嬢女子高生りんやおに翻弄される21歳執事ランファン(♂)のお話ください。』とつぶやかれてたので書いてみた。自分にはこういうの無理と思っていたのに書きあがったのでびっくりしてます。「助けてちょうだい、ランファン。」高校指定の紺のコートも脱がぬまま、私の控える次の間にリンお嬢様が駆け込んでいらした。朝夕はまだ冷え込むからと巻いてさしあげたマフラーをとり、胸の前で両手を組むようにぎゅっと握りしめてこちらを見上げてくる姿は可憐だ。今どき珍しいまっすぐな黒髪を横に流して三つ編みにし白いリボンを結ぶ清楚な髪型。柳の眉と目尻を下げ、陽だまりの猫のようにおっとり微笑むお嬢様をお守りするのが私のつとめである。であるが、このお嬢様は一筋縄ではいかない。落ち着いたおとなしげな様子とは違いなかなかどうして我が強い。好奇心も探究心も強い。お守りするなんていうのは思い上がりで、このお方は守られたままでいるほど弱くはないだろう。ともすれば私のほうが何かと用を言いつけられることでお嬢様から見守られているのではないだろうか。見守るというよりは観察対象として楽しまれているというほうが正しい気がするが。そして私は日々それを思い知らされ続けているのだ。「お帰りなさいませ、リンお嬢さま。」とりあえずせわしなく話しかけるお嬢様につられてペースを乱さぬよう、いつも通りを心掛けるのが私の執事としての心得だ。「お困りの内容はお茶をいただきながら伺いましょう。お召替えして手を洗っていらっしゃいませ。今日はエッグタルトを用意しています。」「うわぁい、エッグタルト!」食べることが大好きなお嬢様ははしゃいだ声をあげた。この様子ならばきっとたいしたことではないだろう。私はお茶の準備にかかった。リンお嬢様の「助けてちょうだい」は今まで数えきれないほどにのぼる。いわく、学生証の顔写真を撮るのが明日なのにニキビが出来てしまった。(ハト麦のおかゆと洗顔ケアに蒸しタオルと塗り薬でひと晩で治った。若く健康なお嬢様は新陳代謝がよい。)いわく、書き初め大会に出るのだが書道の講師が書き方を指導する際背後から抱きつくように筆を持つ手をとる。あれはセクハラだ。(不埒な振舞いには毅然と対処するよう孫臏拳をレクチャーした。別名長袖拳。振袖の袂に文鎮を仕込んで打ちつけてやったそうだ。)いわく、公民のレポートをどんなテーマにしたらいいか思いつかない。(高校生なのだから身近で自分の言葉で書けるものをと、全国紙の新聞より区の広報から題材を拾うようお奨めした。先生にも好評だったらしい。)その他もろもろ、ざっと思い出すだけで一時間はかかるだろう。さて今回はどんなことなのやら。私はつとめて平静にお嬢様にたずねた。「それで、助けてほしいとはどのようなことでしょうか。」「頼もしいわ。だから好きよ、ランファンのこと。」紅茶のカップに息をふきかけながらお嬢様はにっこりほほ笑む。「まだ私はお助けできるとは申しておりませんよ。」「あら、いつだってわたしの力になってくれてるじゃない。できないなんてこと、考えもしなかったわ。」私のささやかな牽制などまったく役に立ちはしなかった。「信頼してくださるのは嬉しいですが、あまりあてにされても困りますよ。お嬢様ご自身で解決できることに手出しはしません。」「わたしじゃどうにもならないのよ。ランファンにしか頼めないの。」お嬢様は急に深刻そうな表情をつくり声をひそめて言う。「あのね、おしえてほしいことがあるの。」「それは何についてでございますか。」お嬢様はまっすぐ私をみつめて言った。「キスマークのつけ方。」めまいがする。私は思わずよろけて菓子皿の中身を盛大にぶちまけた。「キスマークのつけ方を教えてほしいの。」お嬢様の爆弾発言に動揺し取り落としてしまったタルトが数個宙を舞う。しかしそれらが床に落ちることはなかった。中空で翻る手に次々とキャッチされ皿の中におさまる。お嬢様の早業だ。なんでもないような澄ました顔をして優雅にそれを食べ続けているのだからこの方はマイペースすぎる。「なっ、なにをいきなりおっしゃるんですか。」私の声は裏返ってしまったが、お嬢様は全く意に介さないようだ。「今日放課後におしゃべりしててそういう話になったのよ。」紅茶のカップを置くと爆弾発言の続きが語られた。「わたし、キスマークって口紅がつくことだと思っていたの。ほらだって、スノボのブランドのマークもルージュの唇スタンプじゃない。」確かに私もそんな感じのロゴマークを見た覚えはあるが。「そうしたらみんな笑うのよ。『やだもう、可愛いわね。』とか。じゃあなんでキスで色がつくのかしら。グリードなんかはニヤニヤしながら『なんなら実地で教えようか。』って。わたしその言い方にムッとしちゃったから『結構よ。』って言って帰ってきたんだけど。」「グリード・・・! 確か素行が悪くて有名な生徒と聞いておりますが。お嬢様、そんな子とつきあいがおありなんですか。」「あら、先生には反抗的かもしれないけど基本的にいい子よ。ノート貸してあげたらすごく喜んでハグしてきたり感情が大げさで面白いの。」ああ、先生方お願いします。この無邪気なお嬢様に軽いノリでけしからぬことに及ぼうとする不良娘をどうか近づけないでください。そんな私の祈りにも気づかぬ様子でお嬢様は話を続ける。「でも今日はみんなに笑われちゃったし、軽く見られたみたいでなんだかイヤだったわ。わからないままでいたくないの。お願い、おしえて。」いつもの暢気なほほえみは影をひそめた真剣な顔。「そっ、そういうことをお教えするには私はふさわしくないかと・・・」「だってお父様やお母様には聞けないわ。家庭教師の先生に聞いても怒られそうだし、ランファンしかいないの。」「しかし・・・」どうやってあきらめていただこうかと言いよどむ私にじれたように、お嬢様は立ち上がり踵を返す。「いいわよ、もう。グリードに聞くから。」「それはおやめ下さい!」阻止する。断固として阻止します、ヤオ家の執事として。「わかりました。お嬢様はヤオ家の大事なご令嬢なのですから、失礼のない範囲で私がお教えしましょう。」こうなったらもう腹をくくるしかない。極力無難に説明してそれで納得していただこう。私は国語の辞書でも読むつもりで説明をはじめた。「お友達のおっしゃるキスマークは、口づけてつよく吸ったとき肌にうっ血のあとがつくことです。」「肌ってどこの?」・・・どこって!! いきなりこれですか?!どこの誰にともわからないが問いたい。これってセクハラですよね。聞かれたほうが思わず赤面するような質問をするほうが女子高生で、此方は成人男子でもこれはセクハラですよね?「ねえ?」「そ、それは・・・」ついお嬢様の菜の花色をしたやわらかなVネックニットの襟元に目がいってしまい余計にうろたえてしまった。いけない。罪悪感が半端なく襲ってくる。「あー、えーっと、皮膚のうすい柔らかいところです。じゃないとあとはつきません。」具体的な部位など言えるものではない。なんとか誤魔化したがこれだって決して嘘ではないのだから納得してくれてもいいではないか。なのにそんな思いもしらぬお嬢様はさらに追い打ちをかける。「どんなものなのか見たいわ。つけてみてくれない。」「なんてことおっしゃるんですか!そんなの絶対出来ません。」「なんで?なんでダメなの?」「そういうことはお嬢様がもう少し大人になられてから、心から好きで信頼できる男性となさるまでとっておかなくてはいけません!」私はお嬢様にはぐらかすことも出来ず、正直に言うしかできなかった。あのグリードという同級生と違って、実地で教えるなんて無理だ。そんなことになったら私は自己嫌悪で死ねるだろう。「私が自分の体でやってみせますから、それでいいですね。」必死でそう提案すると勢いにのまれたのか「わかったわ。」お嬢様は素直にうなずいた。「失礼します。」お仕着せの黒のスーツの上を脱いでイスの背にかける。ヤオ家御用達、英国仕込みのテーラーで仕立てていただいたスーツはご主人様のものより数段下った生地であっても実に着心地がよい。私は気に入っているのだ。このスーツに代表される、ヤオ家の執事という仕事を。自分を律し丁重に振舞い、この高潔な方々のおそばで役立つよう働くことを。私はシャツの袖のボタンをはずし、無理やりに肩口までまくり上げる。「自分でつけられる場所というと腕とかに限られますので。」むきだしになった二の腕の内側に顔を寄せてゆく。気恥ずかしさが襲ってくる前にと思い切ってつよく自分の肌に吸いついた。お嬢様の視線も気になるが、ことの首尾のほうが気にかかって必死だ。なにしろキスマークがうまくつかなかったら、さらにややこしいことになるはずだから。ややあって唇をはなすと不定形の赤いあとが肌に浮かんでいた。ハンカチで拭ってそれをお嬢様に示す。「こんな感じです。」「まあ。思ったよりはっきりしないものなのね。」「皮下出血ですから翌日のほうが変色して目立ってきます。」「ふぅん、あざみたい。」「似たようなものです。」「痛くない?」「痛かったらこんなこと好きな女性にできません。」「じゃあわたしもいつかしてもらえるかしら?」え?と思ったときにはお嬢様は「ありがとうランファン。参考になったわ。」とスカートの裾をひるがえし部屋を出て行かれるところだった。お嬢様が知識の更新をされたと知ったせんさく好きのご学友は、どこからその知識を得たのかと迫ったそうだ。昨日の顛末をすべて話してしまったお嬢様は、さっそく「翌日のキスマーク」を見たいと彼女らにねだられたらしい。私はケータイのカメラで追い回されることになった。「勘弁してください!昨日のあれだけでも十分恥ずかしいのになんでこのうえ写真なんか。」「いいでしょ。昨日は教えてくれたんだから今日のも見せてよ、ねえ。」「他ならぬお嬢様だからお見せしたんです。それをあなたは!」苦し紛れの逆切れで怒鳴ってしまい、「ごめんなさい。」と素直に謝られてかえって恐縮する羽目になった。リンお嬢様16歳、ヤオ家のご令嬢。無邪気で可憐な少女であるが私ごときがかなうものではない。私はまだまだ執事として未熟者である。