メタボ腹を賢くへこませる「運動」「食事」「体の仕組み」アプローチ6

【賢く凹ませるアプローチ 1】
メタボ腹のコントロールは
「筋肉量」「食事量」「消費量」の3つがカギになる

 メタボ腹を賢くへこませるには、まず「敵」のことを知らなくてはならない。メタボ腹をどうすればコントロールできるかは、筋肉量、食事量(食事からとるエネルギー量)、消費量(運動や日常活動で消費するエネルギー量)の3つにかかっている。運動によって筋肉量が増えると、下のコラムにある「基礎代謝」に当たる量が増えるため、メタボ腹をへこますことにつながる。

 もちろん、食事量減少か、消費量増加も、メタボ腹克服に有効だ。「脂肪を1kg減らすには1日当たり230kcalのエネルギー量を減らす計算になる」と昭和女子大学教授の江崎治さんは語る。これは、食事量ではご飯を軽く一杯分、運動量ではウオーキング1時間分に当たる。江崎さんによれば、無理なく減量するには、1カ月で体重1、2kg減が適切とのこと。それ以上減らしてしまうと、リバウンド現象が起きて、前よりも体重が増えることがあるので注意が必要だ。

「太る」「やせる」は、摂取と消費のコントロールに影響される
太るかやせるかは簡単な引き算。食事でとったエネルギーが消費エネルギーよりも大きければ、余った分が脂肪になって「太る」。消費したエネルギーの方が大きければ、脂肪が燃焼して「やせる」わけだ。重要なのは「基礎代謝」の部分。これは、呼吸や体温調整など、生命維持に最小限消費されるエネルギーのことで、「全エネルギー消費の60%が基礎代謝」と江崎さんは説明する。実は、筋肉量が増えると基礎代謝が増えるという事実がある。だから、うまく筋肉量が増える運動をすれば、その場でエネルギーが消費されるだけでなく、長期的に基礎代謝が増えることにつながる。運動には一石二鳥の効果があるのだ
【賢く凹ませるアプローチ 2】
「筋力低下」と「体のゆがみ」のスパイラルが
メタボ腹をさらに大きくする

 運動不足という“耳にタコ”ができそうな言葉よりも、知っておきたいことは筋肉が衰える仕組みだ。そもそも筋肉は放っておくと、どんどん硬く小さくなる「萎縮」という性質がある。

 同じような行動を日々繰り返してばかりの生活習慣が蓄積してくると、当然、筋肉の力は低下するばかり。

 そもそもメタボ腹の男性は、「腹部をへこませた状態の姿勢を保つ筋力が低下している」と指摘するのは、フィットネス総合研究所の土屋真人所長だ。姿勢を保つ筋肉が衰えると、体がゆがんで姿勢が崩れる。すると筋肉の動きに偏りが出て、さらにまた体のゆがみを強める。

 こうして筋肉がどんどん衰えて萎縮してゆくと、「筋力低下」「ゆがみ」「メタボ腹」が負のスパイラルを描く。メタボ腹は食べ過ぎだけとは限らないのだ。「そもそも人の体は、楽な姿勢をとりたがるもの。脂肪は動きが鈍った部位につきやすい」(江崎さん)。運動に限らず、日常での姿勢や歩くときでもなど、とにかく「腹を動かす」意識を持とう。

腹部がへこんだ状態を保ち続けるためには、姿勢の改善から
メタボ腹がせり出す原因は、背中を丸めることによって腹部の「腹腔」が圧迫されるため。こうした状態が長く続くと、筋肉がクセづき、ますますお腹がせり出すように。背中側にある筋肉群と、腹部を“コルセット”のように支える「腹横筋(ふくおうきん)」を意識して使おう
【賢く凹ませるアプローチ 3】
「続かない」「実行に移せない……」“失敗の本質”は選択肢にあり!
小さい成功から始めよう

 メタボという「敵」を知ったら、次は「自分」を知ろう。ダイエットや運動習慣が続かないというのは、実は「自分」を知らないからだ。そこで最近注目を浴びているのが、行動科学に基づく生活習慣の改善法。

 「大切なのは、最初から効果を求めすぎないこと。ハードルを低くして少しずつ成功体験を積み重ねていくことが継続につながる」と早稲田大学教授の荒尾孝さんは語る。キーワードは、「無理しない」「固執しない」「続けられることを選ぶ」だ。

 「大切なのは『気づき』。例えば、歩数計をつけてみて『こんなに動いていなかったのか!』と気づく。そこで自分でどうすれば効果的なのかを考える『セルフエフィカシー』(自己効力感)を持つのが成功の近道」と荒尾さん。もし、1日5000歩くらい歩けていたら、翌月はプラス2000歩を目指す。急に1万歩にするのは挫折のもと。「1カ月後に結果を振り返り、70%の達成率ならOKとしましょう。達成率が50%以下ならば、目標の数字を下げてやり直せばいい」と荒尾さんはアドバイスする。

【ステージ1】現状を改善する意識がない段階。例えば「メタボ上等! 好きなものを食って好きに生きたい」と考えている状態だ。だが、健診や知人の病気などをきっかけに、「価値観」が変わることで健康に関心を持つようになる。【ステージ2】「好きなものを食べるには、健康が重要である」と気づいた段階。生活習慣の改善に関心を持って,目標実現のための行動計画を立てる。ここで重要なのは実現しやすい計画にすること。ハードルが高いと必ず挫折する。【ステージ3】行動計画にしたがって実践する段階。具体的な行動(例えば歩数や摂取カロリー量)、体調などをチェックして、「こんなひどかったのか、このままではマズい」と気づくことが重要。それに気づいたら自分で解決策を考える。【ステージ4】小さな成功体験を積み重ねることで喜びが生まれ、自然に継続したくなる段階。ただし、計画通り実践できないときの対策も必要。多忙なときは運動の時間帯を変えたり、体調不良のときは運動量を減らしたりすればよい
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【賢く凹ませるアプローチ 4】
運動でやせたい人は「気合い」よりも
まずは運動の「タイプ」を理解しよう

 ただ単に体を動かせば、メタボ腹が解消できると思ったら間違いだ。運動も科学である。実践の前に、運動の種類と効果を確認しておこう。基本的な運動のタイプは下の3種類。ストレッチ(柔軟体操)は、老化やけがの防止に有効。有酸素運動は、体内にたっぷり酸素を取り入れながら、ゆっくりと体を動かすもので、ウオーキング、水泳、エアロビクスなど。レジスタンス運動は、筋肉に負荷をかけて鍛えるもので、ダンベル、スクワット、腕立てふせなどがこれに当たる。

体を動かすことは何より大事だが、ひと口に運動といっても、日常での徒歩やジム通いで鍛える筋トレ、競技スポーツまでとさまざまある。そこで運動のタイプや目的、効果を踏まえて選択すれば、メタボを効率よく改善する近道になる。日常の合間を上手に使うなら「ストレッチ」、エネルギー消費量を高めるならばウオーキングや水泳などの「有酸素運動」、さらに筋肉量の回復または維持を目的にするならば筋トレなどの「レジスタンス運動」を選ぼう。体力レベルを超した運動は選択しないことが賢明だ
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【賢く凹ませるアプローチ 5】
食べる順番や組み合わせで
コンビニ食や外食でも体にいい食事になります

 口にした食べ物の栄養成分が、体内でどんな経路で脂肪になるのかは、意外に知らないもの。実は太る原因は炭水化物などに含まれる「糖質」の過多だ。

 白米、パン、めん類など、食事に炭水化物が欠かせない男性は多いだろう。無論、自宅でも外食でも、炭水化物を使ったメニューや商品は豊富だ。

 だが、そんな人にこそ足りていないのが、良質なたんぱく質と脂質。また野菜類などからとれる「食物繊維」も不足しがち。

 コンビニ総菜などに少し手を加えたり、食べる順番を変えたりするだけで、メタボ腹の改善になる“隠し球”がある。もちろん、お酒もやめずにOK。

最新TOPIC! うま味感度に障害があると肥満に
鳥取県内に住む健診を受けた男性15人と女性33人(平均年齢37.4歳)が検討対象。身体測定のほか、味覚嗜好とうま味感度調査を行った。うま味嗜好検査では、うま味調味料を含む1%溶液を口腔内に1ml滴下し、その味が好きかどうかを尋ね、好きと答えた10人をうま味嗜好群、嫌いと答えた38人を対照群と定義し、比較した。結果、「うま味感度障害あり」群は「うま味感度障害なし」群に比べ、BMIが高かった。またうま味感度が鈍いほど、甘味嗜好が強かった。(データ:山陰労災病院の水田栄之助医師)
「味覚(うま味)オンチと肥満には大きな関係がある」という注目の研究結果が発表された。山陰労災病院循環器科副部長の水田栄之助さんによると、「うま味に対する感覚が鈍い人は、甘味への嗜好が強く肥満になりやすい」という。うま味オンチの原因は、外食やファストフードなどの食事を多くとることで、濃い味付けに慣れたことと関連があるようだ。また、味への満足感が低いために、その分だけ多く量を食べてしまうことも関係があるそうだ。「同僚や知人と同じものを食べたときは、ぜひ味の感じ方について話し合ってほしい」と水田さん。対策としては、「急に味付けを薄くするのは難しいので、塩や醤油の少ない調理法を選んだり、調味料の使い方を工夫したりするとよい」とアドバイスする。
【賢く凹ませるアプローチ 6】
メタボ腹の原因になる「脂肪」と「筋肉」
関係ぐらいは知っておく

 筋肉を動かすにはエネルギーが必要。そのエネルギー源となるのが、体内に蓄積された脂肪の燃焼。「とくに効果的なのが、スローな有酸素運動を長くやること」と江崎さんは語る。脂肪燃焼に効果の高い「遅筋」と呼ばれる、主に赤い色の筋肉が鍛えられるからだ。

 レジスタンス運動も意味がある。「速筋」と呼ばれる、主に白い筋肉を鍛えることによって筋肉を増大させる効果があるからだ。筋肉量が増えれば基礎代謝が増える。つまり、消費エネルギーが増えるわけである。ちなみに、基礎代謝のうち、4割ほどが筋肉で消費されているという。筋肉に次いで多いのが肝臓と脳である。

荒尾 孝さん
早稲田大学 スポーツ科学学術院教授 医学博士
新公衆衛生学が専門。地域や職域において、ハイリスク者を対象としたカウンセリングを実施。生活習慣病予防や地域健康づくりシステム構築について研究開発をしている。「生活習慣の改善は個人の力や行政頼りでは限界がある。住民の知恵とマンパワーを活用した健康な町づくりを目指していきたい」
江崎 治さん
昭和女子大学 生活科学部 健康デザイン学科教授 医学博士
東京大学医学部卒業。国立健康・栄養研究所 基礎栄養プログラム プログラムリーダーを経て、2012年に現職へ。環境生理学、代謝学が専門。厚生労働省が定める最新の食事摂取基準において、脂質のとりまとめ責任者も務めた