化粧品によく使われる水溶性の保湿剤
手作り化粧水を作っている方の参考になる保湿成分・原料をいくつかピックアップしてご紹介します。
水溶性の保湿剤は化粧品のベース(基剤)となることが多く、特に化粧水の場合は水溶性の保湿剤と水がメインと言っても過言ではありません。
保湿剤の成分や配合量によって、化粧水のテクスチャー(使い心地)が変化します。
グリセリン
市販の化粧品の99%以上に配合されている最もメジャーな保湿剤です。ヤシ油やパーム油などの天然油脂を加水分解して作られる植物性のグリセリンがほとんどを占めています。
肌の常在菌である表皮ブドウ球菌は、皮脂を分解してグリセリンを作っているため、もともと誰の肌にも存在する成分です。そのため、グリセリンにアレルギー起こす方は滅多にいません。ただし、製造工程で微量の不純物が生じるため、グリセリンが肌に合わないという患者さんも稀に存在します。
化粧品用濃グリセリンは、グリセリン濃度が99%前後で、薬局で売られている局方グリセリンは85%前後です。(局方でも99%の濃グリセリンもあります)。グリセリン濃度が高い方が精製度が高いように感じますが、実際は局方グリセリンのほうが化粧品用濃グリセリンよりも、不純物が取り除かれています。
そのため、一般的には局方グリセリンの方が、化粧品用濃グリセリンよりもアレルギーを起こす可能性が少なくなります。現在は、化粧品用濃グリセリンも極力不純物を取り除いて作られるため、大差はありません。しかし、各社グリセリンの精製度が異なるため、患者さんの中には「この会社のグリセリンは大丈夫だけれど、この会社のグリセリンは肌に合わない。」という方もいます。
化粧水へ配合する際はおおよそ3%~10%程度配合します。
BG(1,3-ブチレングリコール)
石油由来のものと植物由来のものがある多価アルコールです。アルコールと言っても、化学においてのアルコールは、炭化水素の水素原子がOH基で置き換わったのもの総称であり、エタノールのように刺激があるわけではありません。(ちなみにグリセリンも多価アルコールです。)
BGは低刺激で、グリセリンよりも軽いテクスチャーの保湿成分です。静菌作用もあり、防腐剤と一緒に用いることで防腐効果を上げることができ、結果防腐剤の使用量を減らすことができます。
低刺激で安全性が高い成分ですが、接触性皮膚炎の報告は意外にも多く、1%程度の方にアレルギーを起こします。特にアトピー性皮膚炎の方はBGにアレルギーを起こす方が多くいるため、注意が必要です。
保湿剤として化粧水に配合する濃度は、グリセリンと同じく3%~10%です。BGが成分表示の下のほうに書いてある場合は保湿剤としてでなく、植物エキスなどの抽出溶媒としてごく少量(1%以下)混じっていることを示しています。
防腐剤無添加を謳った商品の中には、BG単独で静菌作用を発揮させている化粧水もあります。その場合のBGの配合濃度は10%以上となっています。
DPG(ジプロピレングリコール)
石油から合成された多価アルコールです。プロピレングリコール(保湿・乳化剤)を製造する際に、その副産物として得られます。
DPGはPG(プロピレングリコール)よりも分子量が大きく、刺激性が少なく、穏やかな保水力を持つさらっとした保湿成分です。BGと同じく抗菌作用を持ち、製品ののびを良くするので、広く化粧品に使われています。
ベタイン
自然界では植物や海産物などに含まれていて、成分名はトリメチルグリシンという保湿効果があるアミノ酸の一つです。特に砂糖大根に多く含まれています。化粧品に使われるベタインは、砂糖大根から抽出された植物由来のものが使用されています。
非常に低刺激な保湿成分で、グリセリンよりもさらっとしていて、保湿力はグリセリンよりやや劣ります。刺激性は少ないのですが、人のアミノ酸とは違った構造のため、皮膚の痒みや赤み、まぶたの腫れなどのアレルギーを起こす方がいます。ちなみに、私はベタインのパッチテストで陽性が出ますので、肌に付けるとまぶたがかぶれます。
化粧水への配合量は1%~10%程度ですが、多く入れすぎると逆に肌のツッパリを感じることがあります。2%~3%の配合であればべたつかず、さらっとしたテクスチャーになるので、そのくらいから試してみるのが良いでしょう。
トレハロース
トレハロースは2つのグルコースがグリコシド結合してできた二糖類です。一般の方には化粧品の保湿成分としてよりも、甘味料として良く知られている成分です。
トレハロースは自然界の多くの動植物や微生物中に存在します。昆虫の血液中に流れる糖分はトレハロースでできており、トレハラーゼという分解酵素によってブドウ糖に変えられ、エネルギーとして利用されています。
きのこ類や海藻類にも含まれ、高い保湿効果と細胞保護効果をもちます。乾燥シイタケにはトレハロースが多く含まれており、水に浸すと元に戻るのはトレハロースの保水効果と細胞保護効果がなせる業です。医療の分野では臓器移植時の細胞保護液などにもトレハロースが使われています。
トレハロースは皮脂の酸化やアルデヒドの発生を抑え、体臭や加齢臭を抑制する成分としても近年注目されています。
化粧水への配合量は1%~10%程度ですが、多く入れすぎるとベタつきを感じることがあります。同じく糖類で保湿効果があり、化粧品によく使われている原料に、ラフィノースやソルビトール、バイオエコリア(αグルカンオリゴサッカリド)などがあります。
ヒアルロン酸Na
従来はニワトリのトサカから抽出されていましたが、最近では乳酸球菌による発酵法で製造されたものがほとんどです。分子量が非常に大きい高分子の保湿剤ですが、ヒアルロン酸を分解して小さくした原料(加水分解ヒアルロン酸)もあります。
吸水性が高く、1gで2L~6Lの水分保持能力があります。
化粧水への配合量は0.01%~0.1%と微量でよく、0.01%配合しただけでもテクスチャーの違いがわかるほど粘度がでます。0.1%ほど配合すると、かなりとろみがある化粧水ができあがります。美容液の場合は、0.1%以上配合されることもあります。
水溶性コラーゲン
動物の皮(動物性コラーゲン)や魚のうろこ(海洋性コラーゲン)などから、酸やアルカリ、酵素などで抽出して水溶性にしたコラーゲンです。もともとコラーゲンンは水に溶けないため、化粧水に配合されているコラーゲンのほとんどに水溶性コラーゲンが使われています。
保水能力が高く、ヒアルロン酸ほどではありませんが分子量が~30万ほどにもなる高分子です。また、ヒアルロン酸と同様に加水分解して低分子化した、加水分解コラーゲンも広く化粧品に使われています。
化粧水への推奨配合量に規定はありませんが、多く配合すると粘度がでますので、使い心地の良いテクスチャー確かめながら配合するのが良いでしょう。
尿素
ヒトの皮膚がもともと持っている保湿機能のことをまとめてNMF(天然保湿因子 | Natural Moisturizing Factor)といいますが、尿素はNMFを構成する成分の一つです。
NMFの組成:アミノ酸 42%、PCA 12%、乳酸Na 11%、尿素 7%、その他 28%
尿素(H2NCONH2)は6個の水素結合サイトを持っていて、水分子と水素結合し、しっかりと水分子をつかまえて肌の乾燥を防ぎます。
尿素には保湿作用だけではなく、古い角質を取り除いて肌をツルツルにするピーリング作用があります。角質を作るタンパク質の分子は、CO-NHという構造を多く持っており、互いに水素結合することでその構造を保っています。尿素はこのタンパク質分子の水素結合の間に割り込むため、角質の構造が破壊されて溶かされてしまうというわけです。
尿素は肌を乾燥から守り、肌の新陳代謝(生まれ変わり)にも重要な役割をしています。
かかとのガサガサなどに処方する「ケラチナミンコーワ」の尿素配合濃度は20%です。かかとなどの角質が厚い部位には、このくらい多く配合していないとなかなか効果が出ないのですが、毎日使用する化粧水へ配合する場合は、3%以下の濃度が適正です。
市販品の化粧水に尿素があまり配合されていないのは、余り多く入れすぎると、尿素のピーリング作用によって赤みや刺激を感じるというのも理由の一つですが、最も大きな理由は尿素の安定性が悪いからです。
尿素を水に溶かすと、徐々にアンモニアと二酸化炭素に分解されていきます。特に温度によって分解が早くなるので、尿素をお湯に入れるとすぐにアンモニアが生成されます。アンモニアは肌にも人体にも有害で、アルカリ性でツンとする刺激臭があり、肌に付けると刺激や赤みの原因になります。
市販の化粧水は常温で3年間以上の安定性が求められますので、尿素を配合するとアンモニアが生成され、化粧水に匂いや刺激が出たり、PHを一定に保てなくなります。
手作り化粧水の場合は、化粧水の温度を上げないように冷蔵保存で1ヶ月以内に使い切れば問題ありませんが、尿素入りの美肌水を作って常温で放置していると、アンモニアが生成されますのでご注意ください。
乳酸Na
乳酸Naも前述したNMFの11%を構成する保湿成分です。石油、または植物由来の乳酸をアルカリ性の水酸化Naで中和して作られます。乳酸にはピーリング作用がありますが、乳酸Naは中和されているためピーリング作用はありません。
グリセリンと同程度の保湿作用を持ち、グリセリンの代用としても使用されています。市販のアミノ酸系化粧水には、まず配合されている成分です。
化粧水への配合濃度は1%~5%が適正です。
PCA-Na(PCAソーダ | ピロリドンカルボン酸ナトリウム)
ピロリドンカルボン酸(PCA)も前述したNMFの12%を構成する保湿成分です。PCAは生体内では、皮膚が角質に変化する過程で、タンパク質の加水分解によって生成したグルタミン酸(アミノ酸)から合成されます。
化粧品には、サトウキビの糖蜜のグルタミン酸から合成した原料を用います。PCAは酸の形では吸湿性はありませんが、塩、特にナトリウム塩(PCA-Na)の形では極めて高い保湿性を発揮し、皮膚中にも塩の形で存在しています。そのため、化粧品の保湿剤原料としてはPCAではなくPCA-Naが使われています。
化粧水への配合濃度は1%~5%が適正です。洗顔料の処方設計にPCA-Naを組み入れると、ツッパリ感が抑えられます。
PCA-Naを肌につけると軽い刺激と赤みを感じる方がいますが、アレルギーではありません。もともと肌にある保湿成分のため安全性は高く、赤みが出ても通常は30分~程度で収まります。これは、PCA-Naの血行促進作用によるものなので、心配いりません。
化粧品に使用されている油性成分については、以下の記事を参照してください。
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書いている人
院長 岩橋 陽介
東京の調剤化粧品とニキビ治療専門皮膚科 肌のクリニック高円寺院の院長ブログ。Twitterではスタッフ全員でつぶやいています。[詳細]