陳さん(以下陳)「新しいショックはどう?」

ニシナ(以下ニ)「はい、良い感じです。」

陳「本来ならサスペンションをいじったらアライメントを取らなきゃいけないんだが、アライメントは知ってるよね?」

ニ「アライメント?トリートメントみたいなもの?」

陳「違うって。じゃぁ、今回の構造講座は四輪アライメントについてだな。」

ニ「はーい。早速ですがアライメントってどんな意味ですか?」

陳「アライメントとは整列とか調整って意味だな。そしてアライメントを取るとは簡単に言えばクルマのホイールの向きを調整することかな。」


ニ「向きを調整ですか?タイヤの向きって、前後ともそれぞれ平行なのですよね?」

陳「それが違うんだな。タイヤにはキャンバー角やトゥ角、キャスター角といった角度がつけられているんだよ。」

ニ「え!タイヤに角度?じゃぁ、私のクルマのタイヤも、その何とか角が着いていて、真っ直ぐじゃないんですか?」

陳「クルマはみんなそうだよ。」

ニ「知らなかった~!そんなに曲がっているようには見えないけどなぁ」

陳「その角度はわずかだからね。」

ニ「へー。わずかな違いなら、ほっといてもいいんじゃないの?」

陳「相変わらず大雑把だなぁ。微妙だからこそ、ちょっと狂っただけでおおごとなんじゃないか。」

ニ「あ、そうか!」

陳「アライメントが狂うと真っ直ぐ走らなくなったり、振動がひどくなったり、タイヤが片減りしたりで、不具合が起きることもあるんだ。」

ニ「そんなぁ。それは困ります。」

陳「じゃぁ早速、アライメントについて勉強していこう」


ニ「そもそも、どうしてタイヤに角度をつけているのですか?」

陳「まず、ハンドルを切ってカーブを曲がる時、タイヤはどこを中心に切れているか解るかな?」

ニ「えっと、ハブですか?」

陳「それはタイヤが回転する中心だろう。ハンドルの動きに合わせてタイヤが動く時の中心だ。」

ニ「あー、そっか。タイヤが回転するのを自転として、その中心をハブとしたら、ハンドル操作の動きは公転みたいなものかな。」

陳「まぁ、そんなところかな。で、車輪の動きの中心になるのが、いわゆるキングピン中心線と言われるものだ。」

ニ「キングピン?王様のピン?」

陳「キングピンとはもともと車軸と車輪軸を結合するピンのことだったんだが、最近のクルマはキングピンを使わなくなった。」

ニ「私のパジェロは?」

陳「パジェロもキングピンじゃない。パジェロはダブルウィッシュボーン式サスペンションなんだが、その場合はアッパーアーム、ロアアームのボールジョイントを結ぶ線のことをキングピン中心線と言っているんだ。そして、その角度のことをキングピン角と言う。」

ニ「へ~。」

陳「で、これを中心にタイヤは旋回しているわけだ。」

ニ「ステアリングを動かしたのに対応して、ここも動いているってことですよね。」

陳「そうだな。で、タイヤの中心線とキングピン中心線の距離が遠ければ遠いほどタイヤは大回りする。逆に近ければ近いほどタイヤは小回りするのは解るかな?」

ニ「えーっと、例えば短いシーソーよりも長いシーソーの方が、上下に動く幅が大きいようなものでしょうか?」

陳「ま、そんなもんだ。そして、クルマは大回りするよりも、小回りした方が乗りやすいよね?」

ニ「そうですよね。クルマっていかに小回りが効くかがウリの1つになっていたりしますもんね。」

陳「そこでだ。小回りを効かせるためには、キングピン中心線とタイヤの中心線を近づければいいわけだ。」

ニ「近づけるって、そう簡単にできるんですか?」

陳「もちろん、クルマは構造上の制約があるから、近づけようと思っても限界がある。そこで、キングピン中心線の上部をボディ側に倒し、逆にタイヤ上部を外側に倒すとどうなる?」

ニ「確かにタイヤの中心線とキングピン中心線はクロスする感じで近くなりました。でもこんな風に斜めにしちゃって壊れないんですか!?」

陳「大丈夫。壊れない範囲でやってるからね。」

ニ「そんなものなんですか。」

陳「そんなものだ。ちなみにこの図のように、タイヤを逆ハの字にするのがポジティブキャンバー、ハの字に設定するのがネガディブキャンバーと言うんだよ。」

ニ「ボディ側に入るのがネガティブ、外に出るのがポジティブですね。」

陳「そして、タイヤの接地点でのキングビン中心線の延長線と、タイヤの中心線の距離が短ければ短いほど小回りが効くようになる」

ニ「なるほどね。この距離が目安なんですね。」

陳「そう言うこと。」

ニ「ところで、よく考えたら、タイヤが外向きになっているってことは、どんどん外に開いていっちゃって股裂き状態になっちゃいませんか?」

陳「クルマに股は無いから股裂きにはならないけど、外に開く力は横滑りになってタイヤの磨耗が早まるね。」

ニ「せっかくの利点も弊害が伴なうってこと?」

陳「そこで、トゥ角の出番だ。」

ニ「トゥって、つま先のことですか?」

陳「そうだ。進行方向に対してタイヤを内股にして走るとどうなる?」

ニ「うーん。どんどん狭まっていく感じですか?そうか!股裂きの反対ですね?」

陳「クルマに股があるかどうかは置いておいて、まぁそんな感じだな。」

ニ「キャンバー角がついてタイヤが外側に開く力と、トゥ角がついてタイヤが内側に入る力が相殺されてまっすぐ走るんですね!」

陳「そうだな。キャンバー角があるからトゥ角がある。だからこれらのバランスが大事なんだ。」


陳「それから、こうしてタイヤがポジティブキャンバーになってることで、カーブ時にタイヤのグリップが良くなり、曲がりやすくなるんだよ。」

ニ「え!?そうなんですか?」

陳「例えば左に旋回する時のことを想像してごらん?」

ニ「えーっと、左に曲がると外側のタイヤ、つまり右のタイヤが遠心力でクルマの重みがかかって縮み、逆に内側、つまり左のタイヤが延びますよね。」

陳「伸びるのはタイヤじゃなくてサスペンションね。」

ニ「そうそう、サスペンション。」

陳「パジェロのようなダブルウィッシュボーンの動きは、サスペンションが縮んだ時にタイヤはネガティブ側に、伸びた時にポジティブ側に角度がつくんだ。」

ニ「つまり、さっきの例の続きで言うとアウト側は縮んでネガティブに、イン側は伸びてさらにポジティブになるのですか?」

陳「さらにカーブを曲がる時は遠心力がかかることも忘れないように。イン側のタイヤは横荷重がかかり、ネガティブ方向へのキャンバー変化と相まって、適度なキャンバー変化をしてタイヤは路面をしっかり捉えるんだ。」

ニ「タイヤに角度がついているってただ事じゃないんですね。すごい!」

陳「さらにこれらとキャスター角と協力して、ハンドルを切ったあとにステアリングが戻るのを助けているんだ。」

ニ「えー!私はステアリングが真っ直ぐな位置に戻るのって、バネかなんかがついているんだと思っていました。」

陳「そんなものはついて無いよ。」

ニ「そうだったんですか。で、キャスター角って何ですか?」

陳「じゃぁ次にキャスター角について説明しよう」

ニ「キャスター角って何なのですか?」

陳「クルマの横から前輪をみるとこキングピン軸は上部がやや後方へ傾むいている。この傾斜角をキャスター角と言うんだ。自転車のフロントフォークを思い出せば分かりやすいかな。」

ニ「自転車と一緒なんですか?でもどうしてそれで直進安定性が良くなるのか分かりません。」

陳「実際にタイヤの力がかかっているところはタイヤの接地中心線なんだけど、キャスター角がつくことでそれよりも前方に力がかかる。それが抵抗となって直進安定性が良くなるんだ。」

ニ「ますます分かりません。」

陳「じゃぁ、もし自転車のフロントフォークが真下に付いてるとしたら?」

ニ「なんだか前につんのめりそうで不安定ですね。」

陳「だからキャスター角が必要なんだよ。」

ニ「そうなんだ。理屈は良く分からないけど感覚でわかります!」

陳(理屈で説明すると大変なことになりそうだな。。。)


陳「では、さっきの話に戻って、キャンバー角とキングピン角、キャスター角があることによってステアリングを切ったときに元に戻る訳を説明しよう。」

ニ「どんな仕組みでステアリングが戻るんですか?」

陳「ステアリングを切ったとき、タイヤの接地部が仮想的に地面の下にもぐろうとするのは分かるかな?」

ニ「えーっと、斜めについてるタイヤが、キングピン角やキャスター角がついているサスペンションを中心に動くことで、結果的には足が下に伸びる感じになるのでしょうか?」

陳「そう。サスペンションが下のびたらタイヤは地面にもぐっちゃう。もちろん実際にタイヤがもぐるわけは無く、その力が逆に車体を持ち上げようとする力になるわけだ。」

ニ「えー!車が持ち上がっていたんですか?」

陳「でもクルマには重みがあるから、結局はその力は、タイヤが元の位置に戻る力、つまり進行方向にタイヤを戻す力になるんだな。」

ニ「そうだったんですね。すごい!キャンバー角やキャスター角、キングピン斜角といったモノって。色んな役目があるんですね。」

陳「そういうこと。アライメントの重要性がわかってきたかな?」

ニ「じゃぁ、キャンバー角やトゥ角、キャスター角なんかはつければつけるほど性能がよくなるんじゃないんですか?」

陳「何事も適度ってものがある。これらの角度はすべてクルマごとに最適な角度が決められているんだ。これはクルマの開発している人が計算し、精密なテストをした上で、それぞれの車種ごとのアライメントの角度が決められているんだよ」

ニ「じゃぁ、アライメントを取るっていうのは、純正の角度に合わせるって事なんですね?」

陳「そうだよ。」

ニ「そうなんですか。知りませんでした。」

ニ「じゃぁ、アライメントってどんな時に取ればいいの?」

陳「最初に言ったように、足回りをいじった時やタイヤを替えたとき、それから車高を上げた時や事故などで車に大きな衝撃があったときもだな。」
ニ「タイヤを替えたときも?」

陳「タイヤの太さ、大きさが変わればタイヤ中心線の位置や角度が変わってくる。つまりはキャンバー角が変わってしまうってことだな。」

ニ「そうか。ちょっと違いでバランスが崩れちゃうんでしたね。だから車を改造したらアライメントをとった方がいいんですね。」

陳「そう。だから先生の車もアライメントをとっておかなきゃダメだよ。」

ニ「はーい。陳さんよろしくね♪」

陳「・・・」。

P&Dマガジン 2004年5月号の記事に加筆