| 2002年11月30日 ナンバーガールよ永遠なれ その3 (下の方のその2からのつづき) I don’t knowの最後の音が鳴り、残響と客の悲鳴のような大歓声が耳を覆うさなかに、中尾憲太郎はルードかつ直線的なベースラインをダウンピッキングでたたきつけた。 鉄風、鋭くなって。 ナンバーガールに、初めてライブで触れた曲が、この曲だった。 あの日、向井は1番の途中からマイクを落とした。 曲はサビに入ったが、マイクは未だ地面の上。それでも向井は物凄い形相で叫んだ。「風!!!!!!」 同時に走った戦慄を、俺は今でも覚えている。言葉がどうとか、環境がどうとか、そういうものじゃない、伝わるもの。伝えたい感情や衝動。 それをあの日、17歳の俺は肌で感じた。 そして今日。 あの日と同じように、向井は物凄い形相で「風!!!!!!」と叫ぶ。オーディエンスの物凄い怒号のような大合唱。この感覚は、言葉じゃ表現できない。 ベースラインのみが疾走してそこにボーカルが乗るラインで、田渕ひさ子は揺れながらそれを口づさみ、やがて和のリフを叩きつけるのだ。一音一音と、手の動きがシンクロする映像。 それが脳裏にしっかりと焼きついている。 曲の終了の一音で、ひさ子は片足を上げながら右手をストロークした。その姿もまた、脳裏に焼きついて離れん。 一瞬開けて、向井はマイナーコードで「いつもの」即興演奏を始める。ここでもかみ締めるような表情で、向井は弾く。弾く。 「売れる売れない二の次で カッコのよろしい歌作り 聞いてもらえりゃ万々歳 そんな私は歌舞伎モノ 人呼んで、ナンバーガールとはっしやす。」 コードになぞらえながら向井は、そうMCをし、一度演奏を止め、すぐに同じコードを弾き直す。そして歌う。その場にいたみんなが、歌う。 「ヤバい さらにヤバい バリヤバい 笑うさらに笑う あきらめて」 ZEGEN VS UNDERCOVER。 バザールでござーるや、カローラⅡに乗ってで有名なSFCの佐藤雅彦教授が音楽について語った授業で、彼はブルーハーツの「少年の詩」を流して、このような話をした。 「歌詞の意味とかそういうのを、言葉の語感の気持ちよさが超える瞬間というのがあるんです。そういうものが、人の心をつかむんだと思います。」 そんな「意味を超えて、人の心をつかむもの」が確かに、この曲にはある。「バリヤバイ!!!!」と叫ぶ瞬間の、カタルシス。それを味わう時、向井秀徳という人間は天才だなぁと思う。 アヒトの特殊ドラムの、「ドーン!」という残響音を聞きながら、あぁもうこのドラムの鳴りも聞けないのかぁとまた涙ぐんでいると、とどめを刺すかのように、向井はこんな風に歌う。 「おととしの事件を 誰も覚えておらんように 俺もまたこの風景の中、消えてくんだろうか」 「そんな悲しいこと言うなよ」と、ぐしゃぐしゃの顔をしながら俺は思った。 このバンドのこと、忘れたくないし、忘れないし、忘れられないし。 でもそれさえも、今だけの感情なのだろうか。数年後には忘れているんだろうか。 それを思うと、とんでもなく切ない。 忘れないって。これはほとんど願いに似た記録だ。忘れないって。 気づくと物凄い暑さだ。極寒の外へ空気が抜けるところがないためか、怒涛の盛り上がりを見せている場内は気づくととんでもない暑さになっている。 「あのぉー何や、明らかに嘘っぽく笑う女というのがおって、もうそれが嘘なのはバレバレなわけやけど、そんな女は別に好きでも嫌いでもありません。そんなあのコが透明少女」 そうMCをして、同時に田渕ひさ子が高いフレットの位置でコードをかき鳴らし始めた。あの日俺の目に焼きついたPVと同じ、水色のTシャツを、彼女は着ていた。 (つづく) 2002/12/04 18:52:38 ナンバーガールよ永遠なれ その2 (下の日記からつづきます) 水色ガールのあの子は揺れる 田渕ひさ子は、水色のTシャツを着ていた。「透明少女」のPVを思い出しながら、俺は彼女がジャズマスターを手にとる様子を、見ていた。 照明がまぶしすぎて、後方に座るアヒトの姿が見えないよ。 向井がいつものように、即興のアルペジオを弾き始める。 俺はこの向井が即興演奏の時に使う分散コードが、とても好きだ。憂いを帯びていて、切なくて、とても好きだ。大好きだ。 いつもより丁寧に、ゆっくりと、向井は丹念にギターを弾いている。かみしめるように、弾き続ける。 そして、最初のコードが、鳴った。早急なビートで、鳴った。直線的なベースラインが、そこに乗っかった。 I don’t know. 3秒たって、やがて見えるようになっていたアヒトが腕を大きく振り上げて、ひさ子がそれに合わせるように斜め後方を向いて。 ひさ子が足を縦に開いて、いつものように斜め屈みになりながら、その腕を振り下ろした瞬間。同時にアヒトの腕も振り下ろされた瞬間。 頭が真っ白になった。 瞬間が瞬間で莫大な量の映像をフラッシュバックさせることって、ありえると思いますか。 ある人はそれを走馬灯などと呼んで、死を迎えようとする瞬間に見るなんて言う。 2002年11月30日の、最初の「ナンバーガールの音」が鳴ったその瞬間、俺の頭は、それを見てたような気がする。 最高のバンドが、最高の集中力で、コンマのズレもなく完璧なタイミングで一つの音を鳴らした時に、そんな音像と映像を、見てたような気がする。 フラッシュバック現象を通過して、そこに音は鳴っていた。 初めてナンバーガールを見た後、俺は、その凄さを説明するのに、「目をつぶったら、光をつきぬけたとこに光が見える感じ」と表現した。 その感覚を、最後のライブの最初の一音で、味わった。俺は、本当にこのバンドに出会えて幸せだったと思う。 そんな終わりの始まりの瞬間。同じタイミングで、涙が止まらなくなった。俺はもう、涙だらけでどうしようもないくらい、感極まってしまった。 音自体に本能で殺されて、同時に「もうこの4人が同じステージに立つことはなくなる」という感傷の理性で泣かされて。こんな二面性を一音で表現できるバンドが、果たして世界中にいくついるだろうか。 おーい 向井のボーカルが入った時にはもう、前が見えないくらいになっていた。 あのコの本当を 俺は知らない あのコの嘘を 俺は知らない I don’t know. I don’t know. そこにいた500人が同じ気持ちで、「暴れる」なんていうチープな言葉とは違う、大きな何かに突き動かされて、体を動かしていたんだと思う。 あのコの本当を 夕暮れ族で それでも、最後のライブの1曲目であっても、いつものように向井は↑こんな風に歌詞を間違えるわけである(笑)。 いつか来る終わりの季節 いつまでもいつまでも 変わらない僕らです (「Super Young」) 曲が進むにつれ、田渕ひさ子の表情が、憂いを帯びたものでなく、何かを吹っ切ったかのような強いものであることに気づいた。 そして彼女は、いつものように(そう、いつものように。)、口を小さく開けて歌詞を口ずさみながら、そしていつもよりも体を縦に大きく振りながら、その小さな体と同じくらいの大きさがあるジャズマスターを、かき鳴らしまくるのであった。 俺はその姿を見ながら、「あぁ、跳んだんだ。飛んでるんだ。」と思った。今になって考えると全然意味がわからないけど、その時確かに、そう思ったのだ。ひさ子は、飛んでいました。 戦いは、飛んでるガールの完全勝利だった。 そして。 あのコは今日も 夕暮れ族で 半分空気 笑って笑って・・・ 俺はくしゃくしゃになりながら、ひたすらに、物凄い形相で「笑って笑って・・・」と叫びまくる向井の姿を、見ていたのであった。 (つづく) 2002/12/02 17:29:22 ナンバーガールよ永遠なれ その1 最高のライブだった。2002年11月30日。一生忘れることはないだろう。 朝までインタビュー起こしの作業をしていた俺は、目覚ましを3個入れてわずかな眠りにつき、目を覚ました。 そして、とうとうこの日が来てしまった、と。この日が来なけりゃよかったのになぁ、と。そう思った。 何故か妙に落ち着きながら、シャワーを浴び、「omoide in my head」Tシャツを着て、荷物を詰め、厚着をして、朝飯も食らわず10時半の街をすりぬけ歩いて、俺は京急本線を羽田空港へ向かった。 朝10時半に戯れまくり ナンバーガールの音楽を聞こうとは思わなかったが、やはり聞きたくなって、「School Girl Bye Bye」を聞いた。意外と、あまり感傷的にはならなかった。ただ単純に、どの曲も「あぁいい曲だなぁ」、と思った。 決して感傷に浸る様子をさらけ出すことなく、「いつもどおりのライブ」を精一杯やろうとしているこのツアーでのスタイルと、このピュアなアルバムを聞いていると、本当に解散なんて信じられないという気分になってくる。 唯一センチメンタルになったのは、omoide in my headのアルバム版を聞くにつけ、あぁホントこの曲のライブでの進化具合というのはスゴいなぁこれがもう聞けなくなっちゃうんだなぁと思った時と、「センチメンタル過剰」を聞いている時くらいだった。 街の中へ消えていく 感傷の風景を俺は見ていた 雨上がりの道路は そんな俺を笑うように きらきら 光っていた 羽田空港で、カレーを食し、時間をつぶし、飛行機へ。飛んだ。俺はトンだ。 北上。土曜に北上。俺北上! 目が覚めたら地平線が見えた。スチュワーデスに出してもらったアップルジュースを飲みながら、俺はその風景を、窓の外を、見ていた。 本州でない土地に降り立ち、「そこまで寒くないな」と俺は思った。1時間中にいて、眠っているだけで、違う大地に立っている。飛行機というのは、つくづくリアリティを奪うものだと思った。 新千歳に降り立ち、札幌へ向かう。ナンバガ丼CDを聞きながら向かう。 最初期のナンバーガールとは、異常なまでのポップネスとピュアネスの発露だった。これがあって、今のキワキワなナンバーガールがある。どっちも大好きだ。そもそも、ナンバーガールが大好きだ。 君の瞳の美しさを表現できない そう歌う向井の姿は、実は今とまるで変わっていないのだと思う。いつだって強がって、いっつもカッコつけるけど、向井秀徳という人間は多分間違いなく、誰よりも純粋な、デリケートな奴なんだと思う。俺はそんな向井が好きや。向井に捧げます・・・と思わず「日常に生きる少女」の渋谷Verを思い出してしまう。 何かさりげなく夏の花を思い浮かべてしまう。 何で? 何で? 札幌駅を通過して、会場最寄である琴似駅に到着。 着いた直後に電話した、広島から… 最終更新日 2003年01月01日 00時00分00秒 コメント(0) | コメントを書く |
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