■HIVに感染した人の約90%に皮膚疾患が現れます■
| ・ ◇このページであなたにお伝えしたいこと(2/2) ・ 1.HIV感染に伴う皮膚疾患 ・ 2.あなたに注意して欲しいこと ・ |
◆HIV感染症に伴う皮膚疾患
このページは『この皮膚疾患はHIV感染?』からの続きです。この記事をまだ読んでいないあなたは先にこの記事を読んでから、このページを読んでもらった方がいいと思います。
『HIV感染に伴う皮膚疾患』を特集した雑誌、「Visual Dermatology」(秀潤社)によると、HIV感染者の約90%は何らかの皮膚疾患を伴うのだそうです。
では、具体的にはどんな皮膚疾患を伴うのか、「Visual Dermatology」からご紹介していきましょう。
【HIV感染に伴う皮膚疾患】
| HIV感染による免疫不全で発症する皮膚疾患 | |
| 疾患名 | 主な症状 |
| 急性期皮疹 | 直径が5mmから10mmくらいで、赤い膨れた丘疹が体中に出来ます。そのまま放置しておいても1週間から2週間ほどで自然と治ります。 |
| 帯状疱疹 | 通常体の左右どちらか片側に発症します。ヒリヒリするような 痛みから始まり、やがて虫に刺されたような赤い発疹と水ぶくれが 出ます。 |
| 単純ヘルペス | 唇やその周辺、性器やお尻などに小さな水ぶくれが何個か集まって出来ます。感染した場所の近くのリンパ節が腫れて痛みを伴ったり、発熱や頭痛を伴うこともあります。 |
| 伝染性軟属腫 (水いぼ) | 2mm程度の肌と同じ色か、白っぽい丘疹(ふくれのある発疹)で、 丘疹の中央に小さな凹みがあります。 |
| 口腔内カンジダ症 | 口の中のほおの粘膜部や舌が白い苔(こけ)状の物に覆われた ようになります。咽頭や食道にも発症することもあります。 |
| 爪白癬 (はくせん) | 足の爪が白くなります。 |
| カポジ肉腫 | 暗い紅色か紫色の平坦な斑点が段々と盛り上がり、肉腫となって下半身からお腹や腕、首、顔と色んな場所に次々と出ます。 気道や消化管の粘膜、リンパ節などにも出ます。 |
| 尋常性白斑 | 皮膚の色が抜けて白くなっていく病気です。 |
| 乾癬 (かんせん) | 赤い斑点ができて、やがてかさぶたになって皮膚がボロボロになる病気です。 |
(表1)HIV感染に伴う皮膚疾患
『この皮膚疾患はHIV感染?』にも書きましたが、私が自分のHIV感染を疑った直接のきっかけは全身に出た発疹と、その後の帯状疱疹でした。そんな今までに経験したこともない皮膚疾患を2つ続けて経験したため、てっきりHIVに感染したと思い込んだのです。
では、表1の中から、急性期皮疹、帯状疱疹、単純ヘルペスの3つの皮膚疾患を説明したいと思います。
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◆急性期皮疹とは?
急性期皮疹とは、HIV感染の急性期に現れる症状のひとつで、次のような特徴があります。
●直径5mmから10mm位の紅斑丘疹が出る。紅斑丘疹とは、皮膚が小さい範囲で盛り上がり、赤くなる発疹。
●発熱、筋肉痛、リンパ節の腫れ、下痢などの症状を伴う。
●発疹は1週間から2週間くらい続き、自然と消えてしまう。
この特徴からすると私の全身に現れた発疹は急性期皮疹とは違っています。私は熱は出なかったし、発疹も1日で消えてしまいました。
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◆帯状疱疹とは?
帯状疱疹を発症させるウイルスは、VZV(varicella zoster virus)です。このウイルスに最初に感染したときは水痘(水ぼうそう)として発症します。たいては1歳か2歳、遅くても9歳くらいまでにはほとんどの子供が感染します。赤い発疹が出てそれが全身に広がり、発熱を伴います。発疹は水ぶくれと変わり、膿を持ち、最後はかさぶたになって治ります。
水痘が治っても、ウイルスは神経を伝わって神経節にもぐり込みます。そこで遺伝子の形で潜伏状態を続けます。何せ隠れ場所が神経節なので、薬などで除去することが出来ません。ただ、私たちが普通に免疫力、抵抗力がある状態ではこのウイルスは潜伏したままです。
それが何かの理由によって免疫力が低下すると、ウイルスは神経節から出てきて暴れだし、帯状疱疹となって発症します。つまり、VZVに最初に感染したときが水痘で、再発したら帯状疱疹と言う訳です。どちらも同じウイルス、VZVが病原菌です。
帯状疱疹の症状は通常体の左右どちらか片側に帯のような水ぶくれができます。(病名の由来です)
最初はヒリヒリするような痛みから始まり、やがて虫に刺されたような赤い発疹が出ます。人によっては、この時期に発熱やリンパ節が腫れたり、頭痛がすることもあります。
しばらくすると発疹の上に小さな水ぶくれを多発します。水ぶくれの中は、最初は透明ですが、それが黄色の膿となり、6日から8日くらいで破れます。破れた後はただれたり、潰瘍になったりします。
水ぶくれは次々と現れて広がりますが、約2週間ほどでかさぶたとなり、3週間もするとかさぶたが落ちて治ります。この時点で痛みもなくなっているのが普通ですが、まれに皮膚疾患が治ってもまだ痛みが残ることもあります。これを「帯状疱疹後神経痛」と言い、数ヶ月から数年も続くことがあります。
文中にも書きましたが、免疫力が低下したときに発症することから、HIV感染に伴う皮膚疾患となっています。
◆単純ヘルペスとは?
単純ヘルペスウイルス1型(以下HSV-1)、単純ヘルペスウイルス2型(以下、HSV-2)が感染することによって発症する病気を単純ヘルペスと言います。このヘルペスウイルスはごくありふれたウイルスで、かつては9歳くらいまでに50%の人が感染し、免疫を持っていました。
ヘルペスウイルスに感染して口内炎になったり、ポツポツと水ぶくれが出ることもあるのですが、多くの子供は不顕在感染と呼ばれる症状のない感染でした。知らない間に感染し、知らない間に免疫が出来ていたのです。
しかし、今日では免疫力を持つ人が急激に減っており、30歳代まで入れてもやっと50%程度の割合だそうです。これは子供の生活環境が改善され、清潔さを求めるあまりウイルスに触れる機会がないまま大人になっているのが原因とされています。
単純ヘルペスウイルスは感染して4日から7日くらいすると感染部分が赤く腫れて、次に水ぶくれが現れてきます。HSV-1もHSV-2も、初めて感染したときには体のどこにでも発症します。
例えば、唇やその周辺、性器やお尻などに小さな水ぶくれが何個か集まって出来る、これが典型的な発症パターンです。感染した場所の近くのリンパ節が腫れて痛みを伴ったり、発熱や頭痛を伴うこともあります。水ぶくれはやがて破れてかさぶたとなり、発症後2週間から4週間くらいで治ります。
単純ヘルペスがHIV感染に伴う皮膚疾患である理由は、免疫低下で再発するからです。HSV-1は初めて感染した後に治っても、ウイルスは残ります。三叉神経節(さんさしんけいせつ)と言う、顔面にある神経節に潜むのです。この神経節が支配している顔面はじめ上半身で再発します。
一方、HSV-2は仙骨神経節(せんこつしんけいせつ)と言う腰にある神経節にもぐり込みます。そして性器など主に下半身で再発するのです。
単純ヘルペスは、HIVによる免疫不全で再発する他にも、紫外線や歯科治療が刺激となって発症することがあります。あなたが歯の治療に行って、神経を抜いたり注射を打つと、その刺激で今まで寝ていたヘルペスウイルスを起こしてしまうことがあります。あるいは、エステでレーザー脱毛などを行うとこれが刺激となって再発することもあります。
単純ヘルペスが再発した場合の症状としては、皮膚に不快感やヒリヒリした痛み、かゆみ、などを感じ、その後2日から3日くらいの間に水ぶくれが現れます。水ぶくれはやがて破れてかさぶたとなり、2週間ほどで治ります。
一般的には、HSV-1の再発は症状が重い代わりに再発頻度は低く、HSV-2は症状が軽い代わりに再発頻度が高いとされています。中でも性器ヘルペスは最も再発が多い単純ヘルペスとされています。
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◆あなたにぜひ注意して欲しいこと
『HIV感染に伴う皮膚疾患』の中で、東京医科大学皮膚科の斉藤万寿吉助教授、坪井良治主任教授は次のように書かれています。
『HIV感染に伴う皮膚疾患を熟知することで、皮膚疾患からHIV感染を診断出来れば、HIV感染の早期発見がもたらす個人的、社会的メリットは大きく、皮膚科医の果たす役割は大きい。』
また、「HIV感染者の早期発見と社会復帰のポイント」(医薬ジャーナル)の中で、国立国際医療センターの岡慎一エイズ治療・開発センター長も次のように書かれています。
『急性期に発熱、皮疹、リンパ節腫脹などの経験をする人が50%から90%いると言われています。この時期が最も早くHIV感染症を診断出来るポイントであり、医療者が見逃さないための努力が必要です。』
これらの専門家の指摘は、皮膚科の医師がHIV感染の急性期に現れる皮膚疾患を見逃さず、早期のHIV感染発見につなげてもらいたい、ということです。
なぜこんな指摘を行っているかと言えば、実際の医療現場ではHIV感染に気付かず、見逃しているケースがあるからです。事実、私が帯状疱疹で診てもらった皮膚科の医師も、全員発疹で診てもらった総合病院の医師も、HIV感染については全く触れませんでした。
これは私の想像ですが、私が住んでいる街の病院で実際にHIV感染者を診察する機会はほとんどないんだと思います。診察する医師は頭の片隅にもHIV感染がないのです。だから自分が診察した患者に対してHIV検査を勧めることはありません。
私は幸運にもHIVには感染していませんでしたが、それは単なる運の問題であって、感染していてもおかしくなかったのです。感染するような行為を過去に繰り返していました。
だから私は自分の経験もふまえてあなたにはぜひ、覚えておいて欲しいと思います。HIV感染者の90%は何かの皮膚疾患を発症します。あなたが帯状疱疹や単純ヘルペスを発症して、なおかつHIV感染の可能性がある行為に心当たりがあるなら、ぜひHIV検査を受けて下さい。
例え皮膚科の医師があなたに検査の指示をしなかったとしてもです。皮膚科の医師はあなたのHIV感染まで気にかけていないかも知れません。頭の片隅にもHIVがないかも知れないのです。
今回説明してきた皮膚疾患に限らず、HIV感染に伴うJ急性期の症状は早期発見、早期治療につながる絶好の機会でもあります。ここを見逃すと次はもう、「いきなりエイズ」まで何も症状が出ないかも知れません。
万一あなたがHIVに感染していたら、早期のHIV検査はあなたにとって救命的検査であることを覚えておいて下さい。
エイズ発症前のHIV検査は救命的検査となります。
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