甲状腺や耳下腺、唾液腺、頭頸部腫瘍などの診療をいたします。
首の辺りに異常を覚えたら、早めにご相談ください。
以下に、首の代表的な病気を挙げ、ご説明いたします。

甲状腺疾患

甲状腺は、いわゆる「喉仏」(甲状腺軟骨先端)のすぐ下にある、重さ10~20g程度の小さな臓器で、全身の新陳代謝や成長の促進にかかわるホルモン(甲状腺ホルモン)を分泌しています。蝶が羽根を広げたような形をしていて、右葉と左葉からなり、気管を取り囲むように位置しています。

甲状腺の病気は女性に多く見られる疾患です。ある調査では、健康と思われる40歳以上の成人女性を対象とした健診において、20%程度の高い頻度で何らかの甲状腺疾患が見つかったという報告があります。

甲状腺の病気の症状は疲れやすい、むくみやすい、便秘がち、冷えなどの症状や、あるいは逆に動悸がする、イライラして落ち着かない、暑がりで汗をかきやすいなど、多くの女性が日々感じている症状が多いものです。 そのため、ご自身の判断で、産後の疲れかなとか、更年期だから仕方がないとか、老いによるものと諦めてしまっているような方が、実は甲状腺の病気が原因だったという場合があります。

唾液腺疾患

唾液腺に生じる疾患のなかでも、比較的多く見られるものについてご説明いたします。

唾液腺炎
唾液腺炎は唾液の分泌が少ない時に発生しやすい疾患で、口の中に常在する菌が唾液腺の開口部から侵入して発生し、急性のものでは唾液腺に痛みや腫れが生じ、導管(どうかん:唾液が出る管)の開口部から膿が出たりします。慢性のものでは唾液腺が硬くなり、唾液の分泌が低下したりします。
治療は、急性のものに対しては、殺菌性うがい薬などにより口腔内を清潔に保つとともに、抗菌薬を投与します。慢性のもので口腔の乾燥感が強い場合には、うがい薬や人工唾液を使用することもあります。
唾石症
唾液腺や導管の中に石(唾石)ができる疾患です。唾石は砂粒大の小さなものから数cmに及ぶものまで、大きさはいろいろです。
唾石の原因は導管の炎症や唾液の停滞、また唾液の性状の変化などです。
ものを食べようとしたり、あるいは食べている最中に、唾液腺のある顎の下(顎下部)が腫れて(唾腫)、激しい痛み(唾仙痛)が起こり、しばらくすると徐々に症状が消えていくのが特徴です。
治療は、小さな唾石は開口部から自然に流出することもあります。口底部にある唾液の導管内にある唾石は、口の中で切開して唾石だけを摘出します。唾液腺の中にできたものは、腺体ごと唾石を摘出します。
シェーグレン症候群
口腔乾燥や乾燥性角結膜炎を主な症状として、リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、進行性全身性硬化症や多発性筋炎などを合併する全身性の病気です。耳下腺や顎下腺の炎症により腺が萎縮するため、強い口腔乾燥とこれに伴う咀嚼や嚥下、さらに会話や味覚などの障害が起こる病気です。原因は不明ですが、現在は自己免疫疾患と考えられています。

流行性耳下腺炎

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は、ムンプスウイルスによる感染症です。片側あるいは両側の耳下腺(耳たぶから耳の前の顎のラインに沿って)の腫れや痛み、発熱、痛みに伴う食欲低下などがみられます。

この疾患に最も多い合併症は髄膜炎で、その他には髄膜脳炎、睾丸炎、卵巣炎、難聴、膵炎などがあります。

感染経路としては、患者の唾液の飛沫を吸い込んだり汚染されたものと接触したりして、鼻や口を通して鼻・咽頭部からウイルスを取り込むことにより感染します。
唾液腺の腫脹・圧痛、嚥下痛、発熱を主症状として発症し、通常1~2週間で軽快します。
最も多い合併症は髄膜炎で、その他には髄膜脳炎、睾丸炎、卵巣炎、難聴、膵炎などを発症する場合があります。

頭頸部の腫瘍

頭頸部領域にある臓器は、それぞれが異なる働きをしており、そのため腫瘍の発生部位によってさまざまな症状が現れてきます。したがって治療にあたっては腫瘍の種類だけでなく、発生部位に応じた適切な治療法を選択する必要があります。以下に、頭頸部の腫瘍の主なものについて説明します。

口腔腫瘍(舌がん、口腔底がん)
口腔がんのなかで一番多いのが舌がんです。危険因子は飲酒、喫煙と言われています。また、歯や義歯が慢性的に舌に当たることも原因の一つと考えられています。口内炎がなかなか治らない場合や、表面がざらざらしてきて“しこり”が触れるようになったような場合には、要注意です。 治療法は主に手術になります。患部の大きさにより、切除する範囲が変わってきます。
鼻・副鼻腔腫瘍(上顎洞がん)
鼻・副鼻腔にできた腫瘍を鼻・副鼻腔腫瘍と言います。鼻・副鼻腔の悪性腫瘍で多くみられるのは、副鼻腔の中の「上顎洞」という場所(鼻の横奥の辺り)に生じる上顎洞がんです。
鼻・副鼻腔は周りを骨で覆われているため、初期には無症状のことが多いのですが、片方だけの鼻づまりや、膿や血液の混じった鼻汁が長く続くような場合には注意が必要です。また、腫瘍が大きくなると、眼球突出、複視(物が二重に見える)、頬が腫れる、歯ぐきが腫れるなどの症状が出てきます。
上顎洞がんは、早期であれば放射線と抗がん剤治療を組み合わせた治療が有効ですが、進行すると手術を行います。
上咽頭腫瘍(上咽頭がん)
上咽頭は鼻の奥のつきあたりにあり、のど(咽頭)の上部を指します。上咽頭がんは、EBウイルスというウイルスが関与して発がんするケースが多いと考えられています。上咽頭は鼻や耳と交通している部位であるため、鼻出血、耳閉感(耳のつまった感じ)、難聴といった症状が最初に現れることが多く、また首のしこりで見つかることもあります。
治療の中心は抗がん剤治療と放射線を併用した化学放射線療法です。場合によっては手術療法が選択されることもあります。
中咽頭腫瘍(中咽頭がん)
中咽頭は口を開けた時に見える、のどのつきあたりとその周辺を指します。中咽頭がんでは、のどの痛み、飲み込みにくさ、首のしこり、のどの違和感などの症状が現れてきます。
治療は進行の程度によって大きく異なってきます。早期がんならば、放射線単独療法、あるいは経口的な摘出術が行われます。進行がんの場合は抗がん剤治療と放射線を併用した化学放射線療法、あるいは手術療法が選択されます。進行がんの手術をする場合は、再建手術(体の他の部位から組織を移植すること)を同時に行うことがあります。
下咽頭腫瘍(下咽頭がん)
下咽頭は食道の入り口にであり、喉仏の内側にある喉頭のさらに奥にあたります。下咽頭がんでは、のどの違和感、のどの痛み、飲み込みにくさ、首のしこり、声のかすれなどの症状が起こります。
治療は早期がんの場合、音声を温存する経口的な摘出術や、または放射線療法が行われることもあります。進行がんの場合は、抗がん剤治療と放射線を併用した化学放射線療法、あるいは再建手術を伴った手術療法が行われます。化学放射線療法の場合は音声を温存することができますが、再建手術を伴う手術療法では喉頭を同時に摘出しなければならず、その場合、首に永久気管孔と呼ばれる呼吸の穴が開くことになり、発声ができなくなります。
音声を温存する治療ができるかどうかは、がんの進行具合や性質によって決まってきます。
喉頭腫瘍(喉頭がん)
喉頭は喉仏のところにあり、ここには息の通り道であると共に、声を出す器官である声帯があります。喉頭にできた腫瘍のうち、悪性のものを喉頭がんと言います。喉頭がんは中高年の喫煙男性に多くみられます。
喉頭がんの初期にみられる症状は、なかなか治らない嗄声(させい:声がかすれること)や血痰です。多くは痛みがありません。声帯ポリープなどでも嗄声はみられることがありますが、低いガラガラ声や雑音の入ったザラザラした声が、喉頭がんによる嗄声の特徴です。
喉頭がんの治療は、腫瘍が小さい時には声帯を温存する経口切除や放射線療法が中心ですが、腫瘍が大きい場合には、喉頭全摘出術といって声帯を切除する手術が必要になります。ただ、最近では抗がん剤治療と放射線を併用した化学放射線療法を行うことが多くなっています。喉頭全摘出術を行うと術後に声を出せなくなりますが、食道発声やシャント発声という特殊な発声方法や、電気喉頭を用いて発声する方法があります。
唾液腺腫瘍(耳下腺良性腫瘍、顎下腺良性腫瘍、耳下腺がん、顎下腺がん)
唾液腺には耳下腺、顎下腺、舌下腺などがあり、そこにできた腫瘍を唾液腺腫瘍と言います。唾液腺腫瘍にはさまざまな種類がありますが、良性腫瘍と悪性腫瘍に分かれます。悪性の唾液腺がんにもさまざまなものがありますが、がん細胞の種類によっておとなしいがんと進行の早いがんに分かれます。診断のためには、超音波検査、CT、MRI、アイソトープ検査などの画像検査や、腫瘍の細胞を採取して顕微鏡で検査する穿刺吸引細胞診が行われます。
唾液腺腫瘍の治療の中心は手術です。耳下腺の中を顔面神経が走っているため、手術に際しては顔面神経を傷つけないように慎重な操作が必要になりますが、悪性のがんの場合は、がんを完全に除去するために、顔面神経も一緒に切除することが必要なケースもあります。
甲状腺腫瘍(甲状腺がん、甲状腺腺腫、腺腫様甲状腺腫)
甲状腺は体の新陳代謝を調節するのに大切な働きをする甲状腺ホルモンを産生しています。甲状腺の病気は、ホルモン産生の異常に関する疾患と腫瘍の二種類に分けられます。
甲状腺腫瘍は大きくなると、喉仏の下あたりに「しこり」として認められるようになります。診断のためには、血液検査や超音波検査、CTなどの画像検査、さらに穿刺吸引細胞診などが行われます。その結果をもとに、手術の必要性やその方法を検討します。
甲状腺腫瘍の多くは良性腫瘍なのですが、悪性腫瘍もみられ、その種類にはさまざまなものがあります。最も多いのは乳頭がんで、首のリンパ節に転移したり、気管や食道などに浸潤したりすることもありますが、進行は遅く、10年後の生存率が90%と非常におとなしいがんです。次に多いのが濾胞(ろほう)がんで、良性腫瘍との鑑別が難しく、手術後にはじめてがんと判明することもあります。肺や骨などに転移しやすいのも特徴です。未分化がんというタイプは稀ながらも、非常に進行が早く、治りにくいがんです。