11年間馴染み親しんだパリを離れて、昨年からワルシャワで暮らすことに。人生計画想定外の国での生活は意外にも楽しく、日々の発見・喜びなど記憶の中に埋没しないうちに書き留めたいと思います。
by ydonnadieu
ワルシャワBIO事情と新鮮フラックスシードオイル
初めてこの街に来たときから覚悟していたことですが、ワルシャワではオーガニック製品はパリやストックホルムほど普及していません。
私自身まだオーガニック製品に目覚めていなかった10年ほど前のパリの様子に似ているような気がします。
3つあるチェーン展開する専門店は、主に街のはずれに散らばるショッピングモールに出店していて、あとは、街中に個人商店が少々あるだけ。
パリではここ5~6年来、大抵の界隈にオーガニック=BIO(仏語)専門店が次々とオープンし、スーパーでも基本食材を中心にBIO製品が手ごろな価格で並び、一般的にもかなり普及していますが、ここワルシャワがそのようになるまでまだまだ時間がかかりそうです。
全体店舗数が少ないだけでなく、店があっても品揃が少なく、あっても在庫数が少ないので、お気に入りの定番品は必要に応じてというよりも、見つけた時に買って家にストックするという努力が必要です。
そうは言っても、基本食材の米、お茶、コーヒーはもちろん、牛乳、バター、ヨーグルトなどの乳製品、卵、石鹸洗剤などの日用品が確保できるのは大変ありがたいです。
牛乳については、長期保存牛乳でない新鮮な牛乳はどこでもいつでもあるというわけではないので、外出時にその時々の最寄りの専門店で購入するなど、幾つかの店をこまめに覘く努力も必要です。
いつ見てもくたびれた様子の野菜や果物については諦めて、オーガニックではない普通の野菜を最初は割り切ったつもりで買っていましたが、意外なことにこれらの野菜が実はフランスの野菜よりも美味しいことを発見しました。
もちろん、農家の人が農薬や化学肥料を手軽に使う代わりに手間暇かけて栽培するオーガニック野菜はどこでも美味しいですが、普通の野菜の味についてはここポーランドのもののほうが格段上であるように思います。それぞれ野菜ごとのうまみや味がくっきり出ているのです。
インゲン豆やホウレンソウなど、日持ちもよく、数日後には冷蔵庫の中で腐り始めていたパリの野菜に対し、一週間は余裕で日持ちします。
農業大国として自他ともに認めるフランスですが、マスコミでも定期的に農薬大国であることなど話題に上ってもおり、ポーランドに来てしみじみ合理化一辺倒の農業の負の面を一消費者として感じました。
おそらく、農薬(量)の使い方も同じではないでしょうし、産地から一般消費者までの流通経路がポーランドはより単純なのかもしれません。また、店頭に並ぶホウレンソウなど一部の野菜については、かなりきれいに土を洗い流してしまうフランスと違い、ここでは土もかなり残っているような気もし、消費者の利便性を追求するあまり、パリの野菜は店頭に並ぶ頃には既に疲れてしまっているとも考えられるでしょう。
というわけで、今は喜んで近所の八百屋やミロヴスカ市場を利用しています。
食器洗いや風呂場洗い用の洗剤にポーランドのブランドMy Ecolifeを使っています。このブランドの創始者キンガはワルシャワでは有名な女性実業家。元テニスのチャンピオンでポーランドで初めて電話のコールセンターを開設し、大当たりを得たそう。現在はそうした事業を売却、フランス風クレープリーの経営やこのMy Ecolifeブランドの事業展開をしています。女性らしい感性にあふれたきめ細かな品ぞろえは、主にインターネット販売されているようなのですが、残念ながら、ポーランド語のサイトは私には利用できず。代わりにショッピングモールのギャラリア・モコトウのコーナーを利用しています。とかく、簡素になりがちなパッケージのBIO製品ですが、彼女のブランドはカラフルで、見ているだけで楽しくなるのも、お気に入りの理由の一つ。
肉類についても、乳製品同様、成長ホルモン剤や抗生物質が気になる所ですが、肉の色をきれいに見せる薬品などを使っている可能性の高いスーパーのパック包装の肉だけはせめて避けることにして、やはり、野菜同様に一般のNON BIO品を量り売りで購入しています。
BIO専門店にも肉類の取り扱いはほんのわずかありますが、種類や部位の取り扱いが限られているので、いろいろな食材を偏りなく食べるためにはかなり不便に思えるのが理由です。
また、野菜同様ありがたいのは、燻製ですが川魚が手に入ること。
近年、フランスでは河川汚染が激しく、多くの川で天然魚を食べることについて規制があります。フランス中部を南北に流れ、化学工場などを沿岸に抱えるローヌ川は特に深刻です。
一方ここポーランドではそのような心配もなさそうなので、海の鮮魚が手に入りにくい分、燻製のウナギや小魚などをなにかと肉料理になりがちな食卓に心がけて並べるようにしています。
さて、ポーランドならではの豊富なBIOアイテムといえば、小麦粉などの粉モノと豆類、穀物類です。
ストックホルムの大きなBIOコーナーがフードマイレージのやたら高い野菜や果物、輸入品で溢れていたのに対し、この点については地産地消の自国品が豊富にあるのがうれしいです。
植物油は、オリーブオイルなどイタリアやスペインあたり南欧のものに頼らざるを得ないにしても、私が感動歓喜して見つけたものが、ポーランド産フラックスシードオイルの生でした。
とろりとした黄金色のこの生オイル、フランスでは全く目にしたことがありませんでした。どうやら、よくよく調べてみると、長い間取り扱いが規制されていたようなのです。
良質のオメガ3脂肪酸とアルファリノレン酸を含み、コレステロール値や血圧を抑え、神経系統機能の正常化に効果があるというフラックスシードオイル。その生は取り扱いが大変難しく、間違って火を通そうものなら毒性が発生するなど、とてもデリケートな食物油です。
ここポーランドでは、薬局や薬用植物店、自然食品やBIO専門店で冷蔵販売されています。
発泡スチロール製の箱に入って売られており、店の冷蔵ケースを離れ、購入者が自宅の冷蔵庫にオイルをしまうまで、温度管理に細心の注意がはらわれます。
冷蔵管理だけでなく、賞味期間が製造後2カ月以内と、小売り側と消費者双方に厳重な取り扱いの注意が必要なので、フランスで販売許可がおりたのはこの1、2年のようですが、現在インターネットなどで見る限り、この生の食用フラックスシードオイルは検索できず。代わりに検索して出てくるのは、木製品の手入れや油絵などで使用する麻油ばかりでした。
今後、本格的に流通されるにしても、ひょっとしたら、ポーランド産の生フラックスシードオイルを輸入する可能性も考えられます。ポーランド産といえば、手ごろな価格のセップ茸やブルーベリーもパリでは時折見かけます。
お値段は500ml入りで30ズォティ(約7ユーロ)。普通のオイルに比べると割高ですが、良質のエキストラヴァージンオリーブオイルと同じくらい。美容健康効果の高い機能食品なので当然といえるでしょう。
ポーランド語についてほぼ無知な私は、このフラックスシードオイルのラベルを解読するために、いつものように仏語-ポーランド語の自動翻訳ツールほか、WIKIPEDIAの仏語、英語、ポーランド語のページを相互確認したのですが、ラベル中央に表記されたOLEJ LNIANY の後のBUDWIGOWYという単語だけがどうしても分かりませんでした。
名詞が形容詞化する時に行われる語尾変化を考慮して調べてもどうしても分かりません・・・。
やっと思いついたのは、この言葉、どうやら人名から派生した形容詞のようです。
私自身は初耳だったのですが、フランスでも、フラックスシードオイルとカテージチーズをマヨネーズ状に練り混ぜ合わせたCREME BUDWIGなるものが、食事療法のためのレシピとして一部の間で有名なよう。フルーツ、シリアル、ナッツ類と一緒にとると食物繊維も豊富な理想的朝食メニューになるそうです。もともとJOHANNA BUDWIG(1908~2003)というドイツの学者が提唱したもので、麻の実、フラックスシードオイル、カテージチーズをとり、肉などの動物性たんぱく質や脂肪、砂糖を控えようというもの。当人は進行ガンの治療に効果があると言っていたようですが、ガン治療というよりは、普段の食事による病気予防に効果があると一般には認識されています。BUDWIG女史の説に賛同したのが、ロシア系スイス人女医のCATHERINE KOUSMINE(1904~1992)女史でした。同世代の彼女は、早い時期から健康に多大な貢献する植物油の役割に注目し、良質の植物油の摂取を呼び掛け、BUDWIG女史の説の普及に努めたそう。第二次世界大戦までは、ほとんどの植物油は非加熱で絞り出されており、その栄養素もそっくり人体へ吸収されていました。大戦を境にして一般的な製造方法となった加熱&化学処理による植物油は、生産量を増大させるので、一見素晴らしい革新的出来事のようにも見えますが、実は人体に有害なトランス脂肪酸が生成され、もはや同じ植物由来の油といっても栄養効果は激減したもの。BUDWIG・KOUSMINE女史達は、世の中が効率主義のもと簡便・便利になっていく反面、健康に必須の植物油の質が全体的に落ちてゆく変化を目の当たりにし、栄養価に特に優れたフラックスシードオイルの有用性を唱え続けたのでした。
彼女たちが長命だったのは、やはりその食事療法のおかげにちがいないでしょう。
肝心のお味ですが、良質の食物油ならではの、さらりとしたのど越し。口に含んだ瞬間から、すっーと体中に吸収されるような心地よさがあります。微かに麻布の香りがあり、すっきりしたこくもあります。
一日大さじ2~6杯をそのままストレートに飲むか、あるいは、CREME BUDWIGにしてもよいでしょうが、日本人の私にとっては、低脂肪でもカテージチーズを日常的にとるのは、嗜好的にも、消化能力からみても限界があります。普段の食生活の質を高めるべく、主にサラダ用ドレッシングに使っています。
先進国では健康志向人口が増える一方。それとともにオーガニック専門店も今後も増え、一般化する傾向になると思いますが、鮮度が命の植物油にして、これほどの良質の生のフラックスシードオイル、どこでも手に入るわけではないと思うので、ワルシャワにて存分に堪能したいと思いますが・・・。あ~あ~、これもやはり、いつかワルシャワを去る日には後ろ髪を引かれるモノリストに入りそうです。
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