ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 やまやちです。でも×より+寄りのやまやちになってます。女の子の悩みをテーマにしたつもりですが、斜め上をぶっ飛んでいる感が否めない…それと普段温厚な人の少し違う部分を表現したかったのにそれも出来ていない…はい、申し訳ありません!!とにかくみんないっぱい食べて元気に過ごしてほしい、それが願いです!いっぱい食べる君が好き~♪※素敵な表紙はこちらからお借りしました:【追記】ブクマ・評価・コメントありがとうございました!【注意】・モブ子ちゃんがちょろっと出てきます。*******それは友人の何気ない一言だった。「あれ。仁花、少し太った?」そう言いながらプニプニとほっぺたを指でつつく友人は、思った事を物怖じせずスパッと言うタイプである。仁花は彼女のそんな所を、ネガティブな自分にない物を持っていると尊敬していたし、憧れてもいたし好きでもあった。だが今回は話の方向に少し問題があった。外見を気にするのは女ならば誰しも当然の事で、仁花とて例外ではない。しかも自分でも最近そう思っていたので、その一言の破壊力は半端じゃなかった。「い、いや、別にふっくらしたかもって程度だからそんな気にする事もないよ!」ビシッと固まってしまった仁花を見た友人は、まずいと慌ててフォローの言葉を口にしてくれたのだが、それが余計悲しくさせる。「……あーっ!ごめん仁花、先生に呼ばれてるんだったわ、行くね」「う、うん」そそくさと退散する背中を見つめてから、鞄の中にあった小さな鏡を取り出す。(ううっ、やっぱり)ペタペタと頬を触りながら鏡を覗き込む。改めて他人から言われると、やはりどこかお肉が付いてしまったような気がしてならない。こうなったら家に帰ってしっかりと確認しようと意気込み、授業と部活をこなしてから帰宅した仁花は早速洗面所に駆け込んだ。「――っ!」その数分後、声にならない悲鳴ととんでもない衝撃が彼女を襲った。瞬時に青ざめるとガタガタ震えながら座り込む。だがそれは目を背けたくなるような数字がより明確に視界へ映り込んでしまい、再びカウンターパンチをまともに食らう結果となってしまった。「これは、これは、どうしよう……」前回見た時よりも五キロも増えている。これでは太ったと言われてもおかしくはないと、しばらく抜け殻のように呆然とするしかなかった。「……こうなったら、ダイエットしかないっ!」仁花はグッと拳を握りしめ、体重計から降りるとダイエットの決意を固めたのであった。*******「あれ、谷地さんお弁当は?」「うえっ!?……あ、その、ちょっと訳ありでして」「忘れたの?それじゃ購買に……」「あっ!ホントに大丈夫だから、気にしないで」訝しげにこちらを窺う日向の視線から逃れるように、ズココと野菜ジュースを一気に流し込む。昼食を野菜ジュースのみで過ごすようにして二週間、朝食と夕食も野菜サラダと小さなおにぎり一つという食事にしてなんとかダイエットに励んでいた。そんな涙ぐましい努力のおかげか、ほんの少しではあるがお腹周りがスッキリしたような感覚に仁花は密かに喜ぶ。だが油断すればすぐに戻ってしまうと、気を引き締めて頷けば不思議そうにこちらを見つめる日向と目が合って曖昧に笑う。と、タイミングを見計らったように始業五分前のチャイムが鳴ったので、声を掛けて日向の目から逃げるように教室へと戻った。それから午後の授業を受けて部活の時間になったのだが、この時仁花の体に異変が起き始めていた。(……あれ?なんか、クラクラ、する?)いや、気のせいだろうと、一度呼吸を整えるように深呼吸をしてボトルの入ったカゴを持ち上げようとした瞬間だった。――ドサッ世界が暗転したのだ。「……仁花ちゃんっ!!」そんな潔子の叫び声を聞きながら、仁花は完全に意識を失った。「……ん」薄っすらと目を開けた先に見えたのは、象牙色に近い白だった。まだぼんやりとしている意識の中で、ゆっくりと瞬きをした仁花は大きく息を吸う。そうした中で鼻をくすぐったのは消毒液の香り。「あれ……ここって」「保健室」聞こえてきた声に、ぼんやりとしていた意識が鮮明になる。一度身を震わせて、そっとその声がした方を向いてみるとそこには山口の姿があった。「……山口、君?あの、もしかして」「うんそう。俺が運んだ」(……なんか、怒ってる?)見た事のない表情だった。あからさまに眉間にしわを寄せて、きつい視線でこちらを見つめる山口。どうしてそんな顔をしているのか見当もつかない仁花は、無意識にその視線から逃れるように掛布団を持ち上げた。「谷地さん、ちょっと待って」が、その手は止められてしまう。「……あの、手」放してくださいと続くはずだった声は、山口の咎めるような眼差しに封じ込められた。これは逆らえないと、押さえられている手の力を抜けば山口も同じように力を抜いて解放してくれる。「俺が何を言いたいか分かる?」静かな声だったのに、怒気を含んでいるのが分かったから仁花は委縮した。質問の答えは分かるはずもなかったので素直に首を横に振る。すると山口は小さなため息をついて、真っ直ぐに仁花を見つめた。「今日の昼の事」「……今日の、昼?」恐る恐る、彼が口にした『今日の昼』と確認するように繰り返した。毎週月曜日、自分達バレー部一年生は一緒に昼食を取る事がいつの間にか習慣になっていた。ルールがまったく分からなかった自分が、日向に教えてもらうために彼の教室へ昼休み押しかけたのがきっかけだ。ちょうどそこには影山もいて、なんなら一緒にご飯でもと話が進み、加えて月島と山口にも声を掛けた結果このような形になった。ポジションやルールの説明、試合の流れの指南はもちろん、彼らの練習や試合での反省点、改善点を聞いているだけでもためになるし、加えて親睦を深められるよいチャンスでもあった。たまに口喧嘩をしてしまう時もあったが、それでもみんな自分に優しくしてくれて、和気藹々としている楽しい時間に仁花は入部して本当に良かったなとしみじみ感じている。そんな同級生の中でも目の前にいる彼、山口は温厚で優しい印象しかない。バレーに対して実直に向き合い、最近は難しいサーブの習得するために練習を積み重ねている姿をこれでもかと見ている。そんな山口がこんな風に、静かだが怒りを露わにしているのが怖かった。何か山口を不快にさせてしまったのかと、思い返してみるが特に変な事をした覚えはない。「えっと、その、」「谷地さん、お昼食べてなかったよね?」「……?」「昼食、何も食べないで飲み物だけで済ませたでしょ。それじゃ倒れて当然だよ」「あ、あの……」「おかしいと思ってクラスの人に聞いたけど、最近そんなのばっかりらしいね」山口がどうして怒っているのか、ようやく合点がいってばつが悪そうに顔をしかめた。居た堪れない気持ちで一杯だ、己の体調管理も出来なくてなにがマネージャーだとそう怒っているのだろう。「ご、ごめんなさい。自分の、体調管理も出来ないくせに、マネージャー失格、だよね」「……はっ?」「……えっ?」山口の素っ頓狂な声に釣られて、仁花は同じような声を出してしまった。そして互いにまじまじと見つめ合う。「あの谷地さん?ちょっと待って……話がズレてる、かも」「えっ!?自分の体調管理も満足に出来ないくせにマネージャーとか言語道断だ、ふざけんなって話じゃないの?!」「……いや、そうじゃなくて」うーんと頭を抱える山口に仁花はただ困惑するしかない。だってそれ以外に彼が怒る理由などないはずだ。フウと一つため息をついて、山口はつらつらと話を始める。「そういう事じゃなくて、俺はもっとしっかり食べなきゃダメだよって意味で言ったつもり」「そう、なの?でも、その……最近太ったから、セーブしなきゃいけなくて」「はっ?!……太った?それのどこが?」信じられない言葉に愕然としながら、山口は見える範囲で(失礼だとは思ったが)仁花を確認する。掛布団から出ている腕は相変わらず触れたら折れそうなくらいに細いし、体や顔だっていつもと変わらない。むしろしっかりと食事を取っていないせいか、少々顔色が悪いように見えてさらに細く小さくなった気がする。小柄な彼女がこれ以上痩せてしまったらどうなるのだろうか。考えただけでゾッとした山口は、まったくもって価値観の相違とは厄介なものだと頭がズキズキ痛む気がして米神を押さえる。「谷地さん全然太ってないよ。むしろそれ以上細くなったら病気になるって」「……うん」「そしたら俺らだって心配するし、もちろん先輩達だってそうだと思うよ。さっきもすごく心配してたから」そう言われて気づいた、自分のエゴばかりで周りの事をまったく考えてはいなかった事を。急激に過度な食事制限をすればどうなるかなど解りきっている。本当に申し訳なくなって、仁花は「ごめんなさい」と小さく呟くしかなかった。「分かってくれたなら良かった。それじゃ、はい」山口が差し出したのは、ラップに包まれたおにぎり三つとペットボトルのお茶だった。「保健の先生が武田先生に話をしたらしいよ。そしたら先生が持ってきてくれたんだ」清水先輩のお手製だってと続けた山口はニコリと微笑む。そんな彼の穏やかな表情に安堵したのと、迷惑を掛けてしまった罪悪感と、本当に心配してくれたんだという変な嬉しさに胸が一杯になる。「……山口君、ありがとう」「どういたしまして」パクンとおにぎりを一口頬張れば、じんわりと涙が浮かんでしまったが、それを見せないようにおにぎりを完食した。その後、「もう少し休んでた方がいいよ。帰りは送っていくから」との言葉を残して山口は部活に戻っていった。手を振って見送り、ため息をついてもう一度ベッドに横たわる。「……ホントありがとう」気が抜けたせいか、お腹が一杯になったせいか、少しだけウトウトし始めた時にふと小さな声で呟いた。本当に自然に、するりと口から出た言葉は一体誰に向けたものだったのだろう。(……山口君)あの温かな笑顔を思い浮かべ、スッと目を閉じた仁花の口元には笑みが浮かんでいるのであった。【終】