抗がん剤Q&A

1.脱毛について
2.感染症について
3.吐き気・嘔吐・食欲不振について
4.下痢について
5.便秘について

1.脱毛について

発毛に関係する細胞は分裂・成長のスピードが速いため、抗がん剤の影響を受けて脱毛しやすくなります。また、脱毛の程度は、抗がん剤の種類や使用した量により異なり、個人差も見られます。
一般的に、治療開始後2~3週間後に脱毛の症状が出始めることが多く、1~2ヶ月くらいで全て脱毛する場合もあります。

Q:脱毛した後、髪はまた生えてくるのでしょうか?
A:脱毛は一時的な症状です。
抗がん剤治療終了後しばらくすると髪が生え始め、約6ヶ月で回復します。

Q:脱毛に関して注意することはありますか?
A:急に髪が抜けることが多いため、ショックを受ける方もいます。前もって、帽子やバンダナ・スカーフまたはかつらを準備するとよいでしょう。帽子やバンダナ・スカーフは頭皮の保護、保温にも役立ちます。
治療前に髪を短くカットしておくと、抜け毛の量が少なく感じられ、薄くなるのが目立ちにくくなります。
髪や頭皮のお手入れの際は、以下のことに気をつけましょう。
・ 頭皮に痛みやかゆみを感じることがありますが、洗髪は頭皮の新陳代謝を促し、これらの症状をやわらげる効果があります。刺激の少ないマイルドタイプのシャンプーを少し薄めて使いましょう。シャンプーは手にとって泡立ててから髪につけ、直接頭皮にかけるのは避けるようにしましょう。
・ ドライヤーの温度は低めにしてゆっくり乾かしましょう。
・ ヘアブラシは毛先が軟らかく目の粗いものを使うとよいでしょう。
・ パーマやカラーリングは避けましょう。

2.感染症について

抗がん剤によって骨髄の機能が低下すると白血球(特に好中球)の数が減少します。一般的に抗がん剤治療開始後7~10日目頃から白血球の数が減り始め、10~14日目頃に最低になり、3週間くらいで回復してきます。

好中球は体内に侵入した病原菌から体をまもる働きがあるため、好中球が減少すると免疫力が低下します。その結果、いろいろな部位(口、肺、皮膚、尿路、腸、肛門、性器など)で感染症を起こしやすくなります。人は誰でも常在菌と呼ばれる菌を持っており、これらの菌は健康な時には問題となりません。しかし、好中球数が減少し免疫力が低下している時には、常在菌による感染(日和見感染)を起こす可能性があるため注意が必要です。

感染症に対して以下のような治療が行われます。
・ 抗生物質が処方されます。
・ 必要に応じ、好中球の数を増やす効果のある薬剤(G-CSF)が処方されます。

Q:どのような症状に気をつけたらよいでしょうか?
A:感染症では以下のような症状が見られます。これらの症状が現れたらすぐに医療スタッフにお知らせください。
・ 38度以上の発熱
・ 悪寒、寒気
・ 発汗、咳
・ のどの痛み
・ 歯肉痛、虫歯、口内炎
・ 腹痛、軟便、下痢(下痢は抗がん剤の副作用の可能性もあります)
・ 肛門痛
・ 排尿時の痛み、血尿、頻尿、排尿後も尿が残る感じ
・ 皮膚の発疹、発赤
・ おりものの増加、性器からの不正出血、陰部のかゆみ
・ 傷口や吹き出物の周囲の発赤、腫れ、痛み

Q:感染症に対して普段からどのような点に気をつけたらよいでしょうか?
A:感染症を予防するために以下のことに気をつけましょう。
・ 手洗い、うがいをしましょう。
・ 歯磨きなどで口の中を清潔にしましょう(毛先の柔らかい歯ブラシを使い、口内を傷つけないよう注意してください)。
・ 可能な限り毎日入浴しましょう。発熱時や体がだるい時などは入浴を避け、かたく絞ったタオルで体を拭きましょう。
・ 皮膚の乾燥やひび割れに注意し、クリームやローションで保湿しましょう。
・ 排便後の肛門周囲の清潔を心がけましょう。
・ 人ごみを避け、風邪、百日咳、水ぼうそうの人には近づかないようにしましょう。外出する時はマスクをするとよいでしょう。
・ 切り傷や火傷に気をつけましょう。庭いじりやペットの入浴には手袋をはめるようにしましょう。ひげそりは電気カミソリを使うようにしましょう。
・ 吹き出物をつぶしたりするのは止めましょう。
・ 食事では、加熱した料理をとるようにしましょう。
・ 主治医の許可なしに予防接種を受けないでください。

3.吐き気・嘔吐・食欲不振について

抗がん剤による吐き気・嘔吐は、薬が消化管の粘膜や脳の中の神経を刺激して起こると考えられていますが、まだ完全にはわかっていないところもあります。以下の3種類に分けられ、それに応じて治療が行われます。
・ 急性嘔吐は、治療開始直後から24時間後までに起こる症状です。
・ 遅発性嘔吐は、治療開始後24~48時間頃から起こり2~5日くらい続く症状です。
・ 予測性嘔吐は、抗がん剤治療で吐いた記憶から抗がん剤に対する嫌悪感により起こる症状です。
症状の重さには個人差があり、抗がん剤治療の種類によっても異なります。一般的に、吐き気・嘔吐は男性より女性に強く現れる傾向があります。

Q:吐き気や嘔吐は防ぐことができますか?
A:急性嘔吐は抗がん剤の前に制吐剤を点滴することでほぼ予防することができます。吐き気・嘔吐を引き起こす可能性が高い抗がん剤治療には多くの場合、制吐剤が組み合わされています。
吐き気を感じた時に飲んでいただく制吐剤(内服)が処方される場合もあります。また、坐薬を使うこともできます。吐き気が強く内服が難しい時は医療スタッフにご相談ください。
抗がん剤治療を受ける日は食事の量を少な目にし、治療の数時間前は飲食を避けることにより吐き気・嘔吐を軽くできることがあります。
また、体を締めつける衣服は避けた方がよいでしょう。

Q:食事にはどのような注意が必要でしょうか?
A:吐き気・嘔吐をやわらげるために、次のような工夫をするとよいでしょう。
・ 抗がん剤治療の前の食事は、消化の良いものをとるようにして軽めにすませましょう。
・ 治療後は、固形食品を避けて水分を多めにとりましょう。
・ 吐き気が続くと水分とともにミネラルが不足しますので、ミネラルバランスの良いスポーツドリンクなどで補給するとよいでしょう。
・ 食事の時の水分摂取は控えましょう。水分摂取は、食事の1時間前までに済ませるか食後にとるようにするとよいでしょう。
・ 食事は無理をせず食べられるものにして、1つの食品の量を少量にし、品数を多くしましょう。ゆっくりと時間をかけて、良く噛んで食べましょう。
・ あっさりして口当たりの良いもの(麺類、卵豆腐、茶碗蒸し、ゼリーなど)が食べやすいでしょう。また、熱いものは冷やしたりさましたりすることで、においが気にならなくなります。
・ 香りの強いもの、甘いもの、辛いもの、脂肪の多い食べ物は吐き気を強めることがあるので控えめにしましょう。
・ 食後1時間は横にならないようにしましょう。
・ 嘔吐した場合は、氷片を口に含んだり冷水でうがいをしたりすると気分が楽になります。

Q:食べ物の味が以前と違って感じられ、おいしく食べられません。いい方法はありますか?
A:抗がん剤治療開始後から味覚や嗅覚が変化することにより、食べ物の味が違って感じられたり、食べ物の匂いが鼻について食欲が低下したりすることがあります。このような時は、次のような工夫をするとよいでしょう。
・ 濃い味の調味料を使いましょう。
・ 味の残る食べ物、キャンディ、酢の物、漬け物、レモンジュースなどがお勧めです。
・ 料理の匂いが気になる時は、さましたり冷やしたりすると匂いが気にならなくなります。また、匂いで吐き気を起こす場合は、他の人に調理をお願いするとよいでしょう。
・ たばこや香水等の匂いのある場所は避けるようにしましょう。

4.下痢について

抗がん剤による下痢には大きく分けて2種類あります。
・ 腸管の蠕動運動が活発になるため起こる下痢:
化学療法により、消化管の運動を調節する副交感神経が影響を受けて蠕動運動が活発になり下痢が起こると考えられます。治療を開始した日から数日後に症状が現れます。
・ 粘膜障害による下痢:
化学療法により消化管粘膜が障害を受けたり、白血球減少時に腸管感染が起きたりすることが原因となると考えられます。一般に治療開始後10~14日目に現れます。

注意!
塩酸イリノテカン(カンプト、トポテシン)により引き起こされる発熱を伴う下痢は注意が必要です。
この抗がん剤で治療を受けている患者さんでこのような症状が見られたら、直ちに医師、薬剤師にご連絡ください。

Q:下痢の時の食事はどのような点に気をつけたらよいでしょうか?
A:以下のような点に気をつけて栄養や水分の補給に努めてください。
・ 消化の良いものをとるようにし、食事を何回かに分けて1回の量を少なくするとよいでしょう。芋類のような繊維質の多い食品は控えましょう。
・ 下痢の時には水分やミネラルが失われます。スポーツドリンクなどで水分やミネラルを補給するようにしましょう。ただし、冷たい飲み物はお腹が冷えるため、避けてください。
・ カリウムの多い食品(りんご、柑橘類、果物ジュース等)をとりましょう。
・ 脂肪分の多い食品、牛乳や乳製品は避けるようにしましょう。また、香辛料をきかせた料理、炭酸飲料、コーヒー、紅茶、アルコール等の刺激のある食品は避けた方がよいでしょう。

Q:食事以外に注意することはありますか?
A:安静にしてお腹が冷えないように温かくしましょう。
また、感染防止のためトイレの後はウォシュレットなどで肛門周囲を洗浄し清潔に保ちましょう。

5.便秘について

抗がん剤により腸管運動が低下して便秘が起こります。また、制吐剤や鎮痛薬によっても便秘が引き起こされます。食事の量・内容の変化や体を動かさないことも原因となります。

Q:便秘の時にはどんな点に気をつけて生活すればよいですか?
A:腸管の動きを活発にしたり、硬い便をやわらかくしたりすることが大切です。
・ 水分を十分とり、野菜や芋類などの繊維の多い食品をとるようにしましょう。
・ 無理のない程度の軽い運動をするようにしましょう。
・ 排便の習慣をつけるために、毎日同じ時間に排便を試みましょう。
・ 便意を催したら我慢せずにトイレに行きましょう。