多毛症ってご存知ですか?名前から「毛深い人のこと?」と思われそうですが、実はそうではないんです。さらに最近はライフスタイルの変化から、女性の患者数が増えていると言われています。そこで今回は多毛症について知っておきたい知識をまとめてみました。
多毛症って?
やわらかい毛が硬く太い毛に変わる疾患!
多毛症と聞くと、まるで羊のように全身びっしりと毛で覆われるイメージがあるかもしれません。確かに多毛症では毛の量が増えてしまう場合もあるようですが、ほとんどが“元々生えているやわらかい毛が硬く太い毛(硬毛)に変わってしまう”という症状で、体毛の本数自体は変わらないんです!
つまり、多毛症とは毛が増えるのではなく、毛質が変わる疾患。多毛症で生えてくる硬毛は、ただ硬いだけじゃなく、やや長く色素が強いという性質があります。硬さや色などは、男性のあごひげに近いそうです。
多毛症と呼ばれる病気は大きく2種類あります。1つ目が「無性毛型多毛症」で、男性や女性といった性別、ホルモンバランスの崩れなどに関係なく起こり、遺伝的な要素が強いとされています。そして2つ目が「男性型多毛症」で、男性ホルモンの働きによって引き起こされるものです。
それぞれの病名や特徴を見ると、ママに関係あるのは無性毛型多毛症のように思えますが、実は女性に一般的で婦人病にも指定されているのが男性型多毛症!ホルモンバランスが乱れて男性ホルモンの分泌が増えると、成人女性だけじゃなく子どもでも男性型多毛症にかかることがあります。
日本人には生まれつきの多毛症は少ない?
幼い頃から毛深かったというパパやママの中には「毛深いのが赤ちゃんに遺伝したらどうしよう…。多毛症を発症しないか心配!」と悩む人も多いかもしれません。けれど実際のところ、日本人には遺伝性の多毛症を発症するケースはほとんど確認されていないと言われています。先ほども書きましたが、多毛症を発症する人のほとんどが男性ホルモンの過剰な分泌による男性型多毛症なので、生まれたばかりの赤ちゃんがすでに多毛症にかかっていることは極めてレアだと言えるでしょう。
腕の毛が多すぎる気がする、背中にうずを巻くほどの毛が生えていると、わが子の多毛症を疑うパパやママは多いですが、ただ毛深いだけで多毛症には当てはまらないことが多いようです。多毛症かどうかの判断は毛の質。パパの眉毛やヒゲのような硬くて太い毛が生えていたら、多毛症の疑いがあります。それ以外は成長に伴って薄くなっていく場合も多いので、しばらく様子を見ておきましょう。
多毛症の症状とは?
女性なのにあごひげが…!全身に生える硬毛
多毛症の症状はうぶ毛などのやわらかい毛が太く硬い毛に変わること。より一般的な男性多毛症は女性に多い病気ですが、腕や脚といったいわゆる“ムダ毛スポット”だけじゃなく、口周りにまるであごひげのような毛が生えたり胸毛が目立ってきたりと、通常は考えられない部位に硬毛が生える場合もあります。
ただ、全身に症状が出ることはほとんどなく、限られた部位に局所的に出ることのほうが多いようです。いずれにせよ、今まではなかったような硬い毛に気づいたら多毛症を疑いましょう。
男性型多毛症=体の男性化!?
女性に発症した場合、男性型多毛症はほかにもいろんな症状に悩まされることがあります。女性は本来、女性ホルモンによって体内のバランスが保たれています。そこへ男性ホルモンが大量に分泌されてしまうと、体内でのホルモンバランスが崩れ、女性ホルモンより男性ホルモンの影響が強くなってしまいます。そのため、生理の周期が乱れたり、皮脂が増えてニキビができやすくなったり、男性型の脱毛症にかかって髪の毛が薄くなったり、声が低くなったりといった“男性化”が起こることもあるのです。
体毛が太く目立つようになるうえ、肌荒れや脱毛など見た目の変化が大きい多毛症は、女性にとって精神的にツラい病気と言えるかもしれませんね。
年を重ねた女性ほど多毛症になりやすい!?
実は多毛症の治療で訪れることが多いのが、40~50代以降の女性。この世代の女性は、更年期障害や閉経を迎えるため、女性ホルモンが急激に減少して体内のホルモンバランスが大きく変化します。女性ホルモンより男性ホルモンの存在が増すため、多毛症や脱毛症に悩む人が増えるのです。さらに最近は働く女性が増え、ホルモンの乱れによる体調の変化だけじゃなく、強いストレスにもさらされることで、多毛症を発症する人が増加傾向にあるようです。
いずれにせよ、40~50代の女性には、ホルモンバランスの乱れから多毛症以外にも体のあちこちに不調が訪れます。そうした不調がさらにストレスを呼んで、症状がますます悪化してしまうことも少なくありません。健康で快適な生活を送るためにも、気になる症状が出てきたら婦人科を受診しておくといいですね。
多毛症の原因は?
男性の多毛症はほとんどが体質
多毛症と診断される人のおよそ7割は、本人の体質によると言われています。体質と言っても「男性ホルモンが平均より多く分泌されている」というわけではありません。原因ははっきりしないものの、遺伝や体質によって、生まれながらに男性ホルモンの刺激を受けやすい性質を持つ人がかかりやすいとされています。
こうした体質による多毛症は「特発性多毛症」と呼ばれていて、血液検査をしてもホルモンに異常な数値が見られず、硬毛のほかに自覚症状がないのが特徴です。多毛症になる人の50%以上は特発性多毛症だそうですよ。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
女性の多毛症に多い原因が「多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん、PCOS)」。PCOS(ピーコス)は卵巣の中にできる卵胞が育ちきらず、いくつもの卵胞が排卵されないまま残ってしまう排卵障害のこと。不妊治療をしたことがあるママなら、もしかすると耳にしたことがあるかもしれませんね。
このPCOSは10~40代女性のおよそ5%が発症するとされています。排卵が滞ることによって男性ホルモンが増え、生理不順やニキビといった症状に悩まされる人が多く、多毛症につながるケースも少なくありません。
卵巣や副腎(ふくじん)の異常
男性に比べると量はうんと少ないものの、女性の体内でも男性ホルモンは分泌されています。男性ホルモンが作られるのが卵巣と副腎です。これらの器官で男性ホルモンの分泌に異常が起これば、多毛症を発症しやすくなります。
たとえば、20代までは体の各器官が成長途中であるため、ちょっとした不調によってホルモンの分泌量が変化するため、若い女性の発症の原因になることもあるようです。また、クッシング症候群などの内臓疾患にかかってホルモンバランスが乱れた結果、多毛症を患うこともあります。
また、男性ホルモンの分泌量が多すぎると診断された場合には、卵巣や副腎に腫瘍に悪性の腫瘍がみつかることもあります。硬毛以外になんらかの体調の変化が見られるときには、たかが多毛症と軽く考えず、お医者さんで検査を受けるのがおすすめです。
ステロイド剤の副作用
どんな薬にも多かれ少なかれ副作用はつきもの。アレルギー症状を抑える効果があり、湿疹やアトピー性皮膚炎の治療薬として広く使われているステロイド外用薬も、患部が赤くなったり皮膚がウロコのようにザラザラになったりなどの副作用で知られていますよね。そんなストロイド剤のもっとも有名な副作用が多毛なんです!ステロイド外用薬のなかには円形脱毛症の治療に使われるものもあるほどで、毛母細胞を活発化する働きが多毛症につながる原因なんだとか。
ステロイド剤は正しい使い方をすれば、皮膚疾患に絶大な効果を与える薬です。患部に硬毛が生えてしまったら使用をためらってしまうかもしれませんが、かかりつけのお医者さんに相談のうえ、まずは皮膚疾患を完治してしまいましょう。
多毛症の治療法は?
まずは検査で原因を特定!
多毛症はもしかかったとしても命に関わる病気ではありません。けれど、特に女性や子どもの場合は、見た目の変化から「治したい!」という気持ちになりますよね。
多毛症の診察や治療は、美容皮膚科や婦人科などで行われていることが多いようです。まずは原因を特定するために血液検査が行われ、ホルモンバランスの崩れや男性ホルモンの量をチェックされます。ほかにも卵巣や副腎などに異常がないかCTなどによる画像診断が行われる場合もあります。この段階でほとんどの人が特発性多毛症、もしくは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が原因の多毛症と診断されるようです。
治療は保険適用されないことも
多毛症と診断されたときには、それぞれの原因に応じた治療が行われます。実は、多毛症は命に関わる病気ではないので、治療に健康保険が適用されないことが多いんです。なので、男性ホルモンの増加などホルモンバランスの乱れが原因の場合には、食生活をはじめとするライフスタイルの改善によって、症状の改善を目指す治療法が一般的。
「少しでも早く治したい」「硬毛を抜いてしまいたい」という場合には、ホルモンバランスを整えるために抗男性ホルモン剤や女性ホルモンの補充薬が処方されたり、レーザー脱毛が提案されることになります。ですがこうした治療には保険が適用されないので思わぬ高額な治療費につながることも。
一方、卵巣や副腎に腫瘍がみつかるなど、体内の異常が見つかった場合の治療には、保険が適用されるようです。ただし、臓器の異常があったとしても、体毛が常識の範囲内で治療する必要はないと診断されると保険は適用されないので、治療内容についてはお医者さんと十分に相談して納得できるものを選ぶようにしましょう。
気になる人はお医者さんに相談を!
多毛症になって硬い毛が生えてくると、女性なら誰でも気分が落ち込みます。一方で、ほとんどの人が部分的にしか生えてきませんので、中には「これくらいなら気にしない」という人も多いでしょう。けれど、多毛症の原因によっては、内臓の疾患が関わってくることもがあります。症状に気づいたらお医者さんに相談しておくと安心ですよ。