磨きその他
下の画像の矢印部分が包丁の「切刃」です。
ここは包丁を研ぐ時に砥石と接する部分ですから滑らか。
キメが細かくなっているという事で、つまりサビにくい。
一般的にはこの部分だけ光っていればそれで充分とも言えましょう。
本記事は「それ以上のもの」を求める方への記事であるとご理解ください。
この感覚。包丁という刃物にひかれた者には説明不要でしょう。
「磨き上げたい」 そうなるのです。
そしてそれが同時にサビを遠ざける結果にもなっているのですよ。
※ステン包丁を手早く光らせる方法に、「消しゴムで磨く」というやり方もあります。光らせたい部分に普通の液体洗剤をつけて消しゴムの中目あたりで磨くのです。
磨き一例
12000以上の超仕上げ砥石の粒子を、パフの様に滑らかなスポンジに吸わせ、砥石の当たらない「平」とか「裏スキ」を磨くやり方。
このあと超微粒子研磨剤や鏡面砥で鏡に仕上げる。
包丁を磨き上げるのは楽な作業ではありません。
鋼材が硬ければ硬いほどに微細な擦り傷は消えにくく、だからと言って荒い番手を使えばさらなる傷を増やすだけ。
根気よく根気よく労るように磨くしかありません。
仕上げ段階に入れば、女性が肌の手入れをするのに似てきます。
コットンパフに乗せるのは白粉ではなく研磨剤ですけどね。
これもやはり「続ける」のがポイント。
そう簡単に鏡面にはならないのです。
粘り強く繰り返すしかありません。
しかしいかに面倒な作業でもね、苦労した「結果」が必ず表れるのが磨きです。
最後に滑らかなウェスで数回拭き上げたら、
待っているのは輝き。自分へのご褒美です。
磨きの注意点など
※電動器具を使われる場合、モーターの回転数に注意して下さい。途中で回転数を変えますとマダラになってしまいます。また、酸化クロムなどの研磨剤の粉が目に入らぬように気をつけましょう。一気に全体をではなく、端から丁寧に仕上げて行くのが鏡面仕上のコツです。
※電動具をお持ちの場合、包丁の「砥石乱れ傷」「磨き乱れ」といった細かな、しかし水ペーパーでは消しにくい包丁面の「雲」を素早く消せる『ゴム砥石』が大変便利です。例えばステン両刃包丁の裏側にできる「砥石のさざ波」みたいな跡、(両刃の裏は裏スキ等構造が片刃と違う、それに起こす角度の難しさなどの問題で乱れた砥石跡が残りやすいのです)これはかなり消すのが大変で、刃先の輝きに合わせるのは困難。
このステン表面の「垢」のような乱れは水ヤスリでは消し難いので、上に書いたように消しゴムなどを使うしかありません。要するにゴム砥石なのですが、これをルーター等で高速回転させれば効果てきめんという事です。
(ゴム砥石とはシリコン系のバフで、消しゴムとは用途が異なります)
※いうまでもなく刃物は危険です。
磨きであっても、作業中は絶対に気を抜いてはいけません。
金属の光沢と研磨のイメージ金属の表面には「層」があります。 人間の表皮が肉眼では一枚だけに見えても、拡大すれば3層構造になっているように、金属その他も細かなレベルでは層が重なっているのです。 少し例えが異なるかも知れませんが、「純水」というものがありますね。自然界に存在する水には様々な成分が混入しておりますので、それら雑多な成分を排除して限りなく純度を高めたものです。水だけではなく、自然界の物は分子が複雑に絡み合って出来ているのが普通です。それらを「純度100%」に近づけるには人間の手による加工が必要になります。 金属も例外ではありません。 人間が必要とするのは、鉄なら純粋な鉄であって、鉄鉱石に付随する雑多な成分は通常の場合「邪魔」になります。 いわゆる「純度を高める」という作業をしないと製品の原料にはならないということですが、これが実は簡単ではない。 原料から異物を徹底的に排除するのは非常に難しく、工場などの規模で行えばどうしても雑な成分が残ってしまうのです。 ゴールド、あるいは日本刀などのように、最終製品が百万円を超えるような高級品であれば、ヒトの手によって純度を高める工程を重ねてもコストが折り合いますけども、一般的な値段の製品原料にそこまでの手間をかけることは出来ません。 ちなみに、日本刀や高級包丁などを製造するときに、鋼を焼いてハンマーで叩く場面がありますが、あれが「雑な成分を排除して純度を高める」工程になり、鍛冶は【鍛える】と表現します。 (純度を高めると同時に剛性や靭性を高めるという意味もある) まあようするに、普通の金属製品というのは純粋ではないということです。しかし、純度が高いように見せないと、それを元に造った商品が「三流の粗悪品」みたいになってしまいます。 「混じりっけなしの雰囲気」を持たせなければ、買ってくれる客などいないもの。ザラザラした感じの「鉄くず」のようなモンが売れるわけがありません。 ですから、「コーティング」や「研磨(みがき)」が重要になるのです。 単純に「研磨は材料の純度を高めるもの」「コーティングは化粧してキレイに見せるもの」と考えると分かりやすいでしょう。 研磨の方は比較的高価になる「重要な部品」などの場合に行い、コーティングは大量生産の兼価な製品で行われます。 【世に出回っている一般的な金属製品は、殆どの場合コーティングされた材料から作られている】 そうなりますね。 コーティングの種類は専門家でさえも全てを把握しきれないほど多く、目的によって多種多様です。技術の進歩も凄く早い。したがって素人にはなかなか分からぬ世界ですが、簡単に「表面に薄膜を施す技術」だと考えればよいでしょう。金属加工から塗装なども含む広い分野になりますが、一言でいえば被膜です。 徹底して研磨すると滑らかになり(雑成分が排除される)、その結果簡単にはサビない製品になるが、手間暇がかかるし値段が高くなる。普通の製品にそのコストはかけられないのでコーティングする。 ですからコーティングの第一段階は「さび止め」になります。サビ止め膜の上に何を重ねるかはその製品によるでしょうが、通常は最低でも2~3層ほどコーティングを施します。 我々が金属だと思って見ているのは、一番上のコーティングである。そういうことです。肉眼では表面しか見えませんので。 タッチできる部分は表層だけ。 これが「洗剤で洗っても落ちない汚れ」の理由でもあります。 一番最後(一番上)のコーティング、つまり「表面」ですが、この膜もミクロレベルになると1層ではなく積層しているのです。 洗剤と水のコンビは最表面の層でしか活動できず、下の層に浸透して効果を発揮することは出来ない。だからその手の汚れが落とせない。下の層まで入り込んだ汚れを取るには「研磨」しかないのです。 たとえ「水や汚れ等を弾くコーティング」をしてあっても、層がある以上やがて内部の層が侵食されてしまいます。「層が重なっているゆえの宿命」 下の層に入った汚れなどは、表面を洗剤などで「撫でても」どうにもなりません。 「メッキが剥がれたら」、つまり表層が破綻してしまって第二層が表われた時にどうなるかは、その商品の品質によるでしょう。復活可能か、廃棄するしかないか、それはモノ次第。 包丁の場合ですと、刃物という性質上コーティングは殆どなく、可能なかぎり純度を高めてあります(粗悪品や、意図的に例えば強度等を増すため他の成分を添加した製品は別です) しかしながら「可能なかぎり」であって、100%ではありませんから不純物は混入していますし、極限まで研磨しているわけでもありません。また、厳密にいえば「丈夫なコーティング」はしてあります。磨きに耐えうる薄膜だと考えていいでしょう。 だからこそ「磨き」を楽しむ余地があるのです。 変な言い方ではありますが、「純度を高めるコーティング」を自分で行うことにより、サビや汚れなどを寄せ付け難い光沢を得られるのですね。 |
研ぎ師の技から学ぶ「磨き」
刀剣(日本刀)を研ぐ専門家はともかく、堺などで包丁を研ぐことを職業にしてる研ぎ職人の仕事は完全な手作業というわけではありません。ある程度までは機械を使用します。
しかし全部を「機械まかせ」にするという事ではなく、機械と言ってもせいぜい「回転機」くらいですから「手仕事」に違いはありません。
こうした職人さんが刃をつけて磨いた包丁は、驚くほど切れるし、素晴らしく輝いております。我々は包丁屋さんに尋ねます、「自分で磨いてもこんなふうに輝くんですか?」と。
正直な包丁屋さんはこう言います。
「まず無理ですね」
自分はプロとアマの差を分けるのは「下地作り」ではないかと思います。
これが良くないと、いくら磨いても美しい光沢は出ない。
プロはどうやって完璧な下地を作っているのか。
それは「木砥」の使用だと感じています。
木砥
回転機には通常の砥石をはめたもの(水砥機)と、吉野杉や桐や樫などの木材を磨いて滑らかにしたものをはめた回転木砥があります。これは主に「木砥目」を出すのが目的。
新品の包丁はよく見ると微細な筋目が入っています(鏡面仕上げはこれが消えるほど磨くので見えない)。これは包丁の鋼材自体にある目です(これがあるため薄くても丈夫な刃物になる)。この目を綺麗に美しく出すには石よりも木のほうが良いと考えられています。
我々がやる磨きでは、どうしても「荒の磨き」と「光沢段階」の中間における作業が中途半端になり、結果として「いきなり仕上げ磨きばかりをして時間を無駄にする」という事になりがち。
つまり『下地が出来ていないのに光沢磨きをする』というわけ。これではいくら頑張っても鏡面は難しく、出来たとしても時間がかかりすぎる。
そこで考えたのはプロが仕上げ段階で使う『手木砥』
これは機械ではなく、ただの木片です。
自分で簡単に作ることが出来ます。
手頃なサイズの木片を購入し、包丁に当てる面を紙やすりなどで滑らかにしてやるだけのこと。
状況に応じて研磨剤を選び(金剛砂・アルミナ・ガンベラなど)水をつけながら磨きたい箇所を擦る。その後、仕上げ砥の砥汁を乾燥させた粉末を練り、ゴム等につけて磨く。これでかなり「中間のムダ」が改善されたような気がします。