Jan. 17 ~ Jan. 23 2011
クリスマス以降、毎週のように雪が降っているニューヨーク。
なので、ローカル・ニュースが天気予報に割く時間が増えているけれど、それと共に今週のニューヨークで毎日のように大きく報じられていたのが、今日、1月23日日曜にNFCチャンピオン・シップを戦ったニューヨーク・ジェッツのニュース。
今週、ニューヨーク・ポスト紙の表紙にニューヨーク・ジェッツがフィーチャーされなかったのはたった1日のみ。それほどに、社会的、政治的にはあまり大きなニュースが無かったの今週。
そのニューヨーク・ジェッツは、ニューヨーカーの期待もむなしく、ピッツバーグ・パイレーツに敗れてしまい、スーパーボウルへの夢が2年連続で絶たれてしまったのだった。
エンターテイメントの世界では、 アメリカで過去9年間 No.1視聴率番組の座を保ってきた 「アメリカン・アイドル」 のシーズンNo.10がジェニファー・ロペス、スティーブン・タイラーという新しいジャッジを迎えてスタート。2600万人がチャンネルを合わせたものの、この視聴率は昨年より14%のダウン。それでも先週末に行なわれたゴールデン・グローブ賞授賞式の1700万人に比べれは、遥かに多数の視聴者を獲得していたのだった。
ちなみに、シーズンNo.10 のデビュー・エピソードで、最もメディアが取り上げていたのはニュージャージーでオーディションを受けた日本人男性のコンテスタント。この男性は、ハリウッド行きのチケットを手に出来なかったことからも分かるとおり、決して優秀なシンガーとして話題を集めた訳ではなかったのだった。
さて、ロイヤル・ウェディングを控えたイギリスでは、毎日のようにプリンス・ウィリアムと婚約者、ケイト・ミドルトンの報道や、結婚式の詳細が報じられているけれど、口が悪いことで知られるイギリスのタブロイド誌で、昨今指摘されているのが、プリンス・ウィリアムの髪が薄くなってきているということ。
タブロイド誌には、かなり露骨に彼の髪の薄さを指摘するヘッドラインが登場しているけれど、そんな中、今日付けの ニューヨーク・タイムズ紙に掲載されたのが 「プリンス・ウィリアムの若禿げが、ケイト・ミドルトンとの婚約を急がせる結果になった」という内容の記事。
プリンス・ウィリアムは未だ28歳。前髪が薄くなり始めたのは3~4年前からのこと。写真で振り返ると、特にここ2年ほどの間に頭髪が薄くなる傾向に拍車が掛っているのだった。
かつてはアイドル並みにイギリスのティーン・マガジンにグラビアがフィーチャーされていたプリンス・ウィリアムが、30歳を待たずして、父親のチャールズ皇太子と大差が無い程度の頭髪しか無いのは、ショッキングとも言える事実。なので、プリンス・ウィリアムが 自分の髪の毛があるうちに、 世界中のメディアに写真やビデオがフィーチャーされるウェディングを済ませようとしたという見方もあれば、交際相手のルックスが、年齢を重ねるにしたがって 頭髪と共に落ちていった モナコのプリンス・アルバートのようになるのを危惧した という見方も存在しているのだった。
アメリカン・アカデミー・オブ・ダーマトロジーの見積もりでは、頭髪の問題で悩んでいるアメリカ人男女の数は8000万人。
もちろん そのうち、若禿げで悩むのは男性が圧倒的に多いけれど、女性が鏡を見てシワを気にしたり、ウエスト・ラインがどんどん太くなっていくことで 年齢を感じるのと同様、男性は頭髪で年老いていく身体とルックスの衰えを感じるとのこと。ことに20代の男性にとっての若禿げの問題は、自尊心や、社交面に大きな影響を及ぼすことが伝えられているのだった。
ニューヨーク州立大学の社会学者、マイケル・キンメル氏によれば、男性は頭髪が抜けていくプロセスで、自分の外観的若さに もう それほど時間が残されていないことを悟るとのことで、その結果、自分がずっと夢見たような女性にアプローチして結婚するよりも、その時に自分の傍に居る女性、その時点で そこそこに惹かれている女性と 結婚する方向に走るという。
それほどまでに、男性が理想の女性にアプローチするには、自信と精神的なスタミナが必要であり、それを男性から奪い取っていくのが、頭髪の問題とのことなのだった。
ここまで聞くと、女性も男性も 異性にアピールする賞味期限には大差が無いように思えるけれど、女性の社会進出が進んで、学歴がアップし、それにつれて収入が上がってきた結果、女性たちが、以前より男性のルックスを選り好みするようになってきているのは 周知の事実。
これに対して、先述のキンメル氏の調査では、女性に生活力が無かった1930年代は、女性が何をおいても男性を選ぶ基準に考えるのが、経済力。ルックスや人間性などは 二の次、三の次の条件であったという。
そんな社会的状況を受けてか、近年どんどんルックスやファッションを気にするようになってきているのが男性達。特に若い男性には、その傾向が非常に顕著であるという。
実際、ファッションのベンチャー企業に勤める私の友人が昨年夏に食事をした時に語っていたのが、「今は、メンズウェアの方が売れる」という話。
それを裏付けるように、昨年のクリスマス商戦では メンズ・アパレルの売り上げがウーマンズ・アパレルの売り上げを上回ったことがレポートされているのだった。
では、男性達が主に何を購入しているかと言えば、「スリム・フィット」、「スリム・カット」のドレス・シャツやビジネス・スーツ、ジャケットなど。
アメリカでは、腹部の脂肪に「ラブ・ハンドル」、「マフィン・トップ」というニックネームが付いているけれど、これは男性にも女性にも使う言葉。
正式には、ラブハンドルは腹部の横、マフィントップは、背骨の付近をを除くウェストライン全体から肉がはみ出している様子を指す言葉だけれど、これまでのメンズのビジネス・スーツは、シャツでも、ジャケットでも、こうした「ラブ・ハンドル」や「マフィン・トップ」をカバーして、普段のカジュアル・ウェアよりは体型を良く見せるカットが主流になっていたのだった。
そもそもアメリカでは 昨今、政治家や企業エグゼクティブまでもが徐々に、身体が太って見えるような たっぷりしたジャケット&幅広パンツのスーツは、年老いて見えることを理由に着用しなくなってきているけれど、このところ売れているスリム・フィット、スリム・カットのアウトフィットは、肩幅を強調するためにウエストを若干絞ってカットしているので、皮下脂肪がついていたらフィットしないアイテム。
なので、それが着られるボディの男性であれば、モデルやプロフェッショナル・アスリートのような理想的なボディに見えるのは請け合い。パンツもローライズで、ヒップや脚のラインに沿ったシルエットがメイン・ストリームになってきたのは 既に3年ほど前から続いているトレンドなのだった。
こうしたスリム・フィット、スリム・カットのアイテムを着用する男性は、ファッションを気にかけているだけでなく、自分のボディをベターに見せるためには出費を惜しまないため、クリスマス商戦の際には スリム・フィット、スリム・カットのアイテムだけセールになっていなかったり、割引率が小さかったりするのだった。
今やバーバリーのトレンチ・コートに至るまで、スリム・カットが登場して 若い世代にアピールするようになっているけれど、こうしたアイテムを好んで着用する男性達は、自分のルックスが良くなければ、女性にモテない、社会的に受け入れられないという意識が強いという。
かつてミレニアムを前後して「メトロ・セクシャル」という言葉が流行って、きちんと ヘアカットやスキンケアにこだわって、グルーミングをする男性がもてはやされたことがあったけれど、このところの男性のルックス・コンシャスは、もっと総合的で、シックスパックと呼ばれる腹筋の凹凸から始まって、ファッションのセンスに至るまでに こだわらなければならないもの。
そうやって、ルックスに磨きがかかった男性が 女性に求めるものはと言えば、男性はまず視覚的に惹かれなければ恋愛感情が沸かないので、ルックスの良さは必要最低条件。そのハードルを越えている場合、「パーソナリティ」と「キャリア&経済力」という条件が問われてくるという。
これが40代、50代のお腹が出て、禿げた男性なら、お金で 若く美しい女性を繋ぎとめなければならないのを承知しているので、交際相手にマノーロ・ブラーニックやクリスチャン・ルブタンを毎月 買ってあげて、バケーションやサマー・ハウスに連れて行くといった努力をしなければならないけれど、若くて魅力ある男性達は、自分達がそんなことをする必要が無いことは重々承知している上に、自分のファッションやルックスの維持にお金が掛る分、女性に金銭的な施しは それほどしない傾向が強かったりする。
なので彼らは、自分のファッションのクォリティに見合うアウトフィットを自力で購入し、デートの割り勘を厭わないような 「自立した女性=お金が掛らない女性」を好むと言われているのだった。
でもニューヨーク・タイムズ紙の記事によれば、どんなにルックスに自信のある男性でも一度頭髪を失い始めると、自分のルックスの限界を感じて 結婚して落ち着こうとするようであるから、頭髪の問題は 男性に現実的な人生を送らせる要因となるもの。
その一方で、女性の方は一度好きになった男性の頭髪が薄くなるのは、男性が気にするほどは 気にならないのが実情。
でも初対面の男性の頭髪が薄い場合、男性側にそれをカバーするだけの人間的魅力や経済力が無いと、女性が惹かれないのも また事実なのである。
執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共にヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。