[使用上の注意]

1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)

(1)脳に器質的障害のある患者[神経毒性があらわれるおそれがある。]

(2)心疾患の既往歴のある患者[心機能障害を引き起こすおそれがある。]

(3)リチウムの体内貯留を起こすおそれのある患者[リチウム中毒を起こすおそれがある。]

1)腎障害の既往歴のある患者

2)食事及び水分摂取量不足の患者

3)高齢者[「高齢者への投与」の項参照]

(4)肝障害のある患者[肝障害を増悪させるおそれがある。]

(5)甲状腺機能亢進又は低下症の患者[甲状腺機能低下を起こすおそれがあるため、甲状腺機能亢進症の診断を誤らせる可能性がある。また、甲状腺機能低下症を増悪させるおそれがある。]

(6)リチウムに異常な感受性を示す患者[血清リチウム濃度が1.5mEq/L以下でも中毒症状があらわれることがある。]

**2.重要な基本的注意

(1)めまい、ねむけ等があらわれることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械類の操作に従事させないよう注意すること。

(2)改善がみられたならば、症状を観察しながら維持量に漸減すること(躁症状の発現時には本剤に対する耐容性が高く、躁症状が治まると耐容性が低下する)。

(3)他の向精神薬(フェノチアジン系、ブチロフェノン系薬剤等)との併用中に中毒を発現すると、非可逆性の小脳症状又は錐体外路症状を起こすことがあるので、これらの薬剤を併用する場合には観察を十分に行い慎重に投与すること。

(4)本剤でBrugada症候群に特徴的な心電図変化(右側胸部誘導(V1~V3)のcoved型ST上昇)が顕在化したとの報告がある。なお、それに伴う心室細動、心室頻拍、心室性期外収縮等が発現することがあるので、Brugada型心電図が疑われた患者に投与する際は、循環器を専門とする医師に相談するなど、慎重に投与の可否を検討すること。

(5)患者及びその家族に、本剤投与中に食事及び水分摂取量不足、脱水を起こしやすい状態、非ステロイド性消炎鎮痛剤等を併用する場合等ではリチウム中毒が発現する可能性があることを十分に説明し、中毒の初期症状があらわれた場合には医師の診察を受けるよう、指導すること。
[「用法・用量に関連する使用上の注意」、「慎重投与」、「相互作用」、「副作用(1)-1)リチウム中毒」の項参照]

**3.相互作用

併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
利尿剤
〔チアジド系利尿剤
ループ利尿剤
等〕
リチウム中毒を起こすとの報告がある。
「副作用(1)-1)リチウム中毒」の項参照
利尿剤がナトリウム排泄を促進することにより、腎におけるリチウムの再吸収が代償的に促進される可能性があるため、血清リチウム濃度が上昇すると考えられる。
カルバマゼピン錯乱、粗大振戦、失見当識等を起こすとの報告がある。機序不明
向精神薬
〔ハロペリドール
等〕
心電図変化、重症の錐体外路症状、持続性のジスキネジア、突発性のSyndrome malin、非可逆性の脳障害を起こすとの報告がある。機序不明
アンジオテンシン変換酵素阻害剤
〔エナラプリルマレイン酸塩
等〕
リチウム中毒を起こすとの報告がある。
「副作用(1)-1)リチウム中毒」の項参照
左記薬剤がアルドステロン分泌を抑制し、ナトリウム排泄を促進することにより、腎におけるリチウムの再吸収が代償的に促進される可能性があるため、血清リチウム濃度が上昇すると考えられる。
アンジオテンシンII受容体拮抗剤
〔ロサルタンカリウム
等〕
非ステロイド性消炎鎮痛剤
〔ロキソプロフェンナトリウム水和物
等〕
リチウム中毒を起こすとの報告がある。
「副作用(1)-1)リチウム中毒」の項参照
非ステロイド性消炎鎮痛剤がプロスタグランジンの合成を抑制することにより、腎の水分及び電解質の代謝に影響する可能性があるため、血清リチウム濃度が上昇すると考えられる。
選択的セロトニン再取り込み阻害剤
〔フルボキサミンマレイン酸塩
等〕
セロトニン症候群(錯乱、軽躁病、激越、反射亢進、ミオクローヌス、協調異常、振戦、下痢、発汗、悪寒、発熱)を起こすとの報告がある。セロトニン作用が増強するおそれがある。
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤
〔ミルナシプラン塩酸塩
等〕
ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ剤
〔ミルタザピン〕
メトロニダゾールリチウム中毒を起こすとの報告がある。
「副作用(1)-1)リチウム中毒」の項参照
機序不明
電気けいれん療法通電直後に数秒程度の心停止や施行後にけいれん遷延、せん妄等を起こすとの報告がある。機序不明
麻酔用筋弛緩剤
〔スキサメトニウム塩化物水和物
等〕
左記薬剤の筋弛緩作用が増強されることがある。機序不明

**4.副作用

総症例4,993例中777例(15.6%)1,202件の副作用が認められた。その主なものは、振戦227件、口渇120件、下痢59件であった。[使用成績調査終了時]

(1) 重大な副作用

1)リチウム中毒(頻度不明):リチウム中毒の初期症状として食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢等の消化器症状、振戦、傾眠、錯乱等の中枢神経症状、運動障害、運動失調等の運動機能症状、発熱、発汗等の全身症状を示すことがあるので、このような症状が認められた場合には、減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。なお、中毒が進行すると、急性腎不全により電解質異常が発現し、全身けいれん、ミオクローヌス等がみられることがある。
処置方法:リチウム中毒が発現した場合、特異的な解毒剤は見い出されていないので、投与を中止し、感染症の予防、心・呼吸機能の維持とともに補液、利尿剤(マンニトール、アミノフィリン等)等により本剤の排泄促進、電解質平衡の回復を図ること。利尿剤に反応しない場合や腎障害が認められる場合は、血液透析を施行すること。血液透析を施行する場合は、施行後に低下した血清リチウム濃度が再上昇することがあるので、施行後血清リチウム濃度測定を行い再上昇がみられた場合には、再度の血液透析等の適切な処置を行うこと。

2)悪性症候群(Syndrome malin)(頻度不明):向精神薬(抗精神病薬等)との併用により、悪性症候群があらわれることがあるので、無動緘黙、強度の筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗等が発現し、それに引き続き発熱がみられる場合は、投与を中止し、体冷却、水分補給等の全身管理とともに適切な処置を行うこと。悪性症候群においては、筋肉障害[CK(CPK)上昇]や横紋筋融解症が起こることがある。この際、急性腎不全に至る場合もあり、十分な観察を行うこと。

3)洞不全症候群、高度徐脈(頻度不明)洞不全症候群、高度徐脈があらわれることがあるので、観察を十分に行い異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと

4)腎性尿崩症(頻度不明):腎性尿崩症があらわれることがあるので、多飲、多尿などの症状が発現した場合には、電解質濃度の測定等の観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。

5)急性腎不全、間質性腎炎、ネフローゼ症候群(頻度不明):急性腎不全、間質性腎炎、ネフローゼ症候群があらわれることがあるので、腎機能検査(血中クレアチニン、血中尿素窒素、尿蛋白等の測定)を行うなど、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。

6)甲状腺機能低下症、甲状腺炎(頻度不明):甲状腺機能低下症、甲状腺炎があらわれることがあるので、甲状腺機能検査(血中TSH、血中遊離T3、血中遊離T4等の測定)を行うなど、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。

7)副甲状腺機能亢進症(頻度不明):副甲状腺機能亢進症があらわれることがあるので、血清カルシウムの測定を行うなど、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。

8)認知症様症状、意識障害(頻度不明):可逆性の認知症様症状、昏睡に至るような意識障害[脳波所見上、周期性同期性放電(PSD)等を伴うことがある]があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。

(2) その他の副作用

下記のような副作用があらわれた場合には、症状に応じて減量又は休薬等適切な処置を行うこと。

0.5~5%未満0.5%未満頻度不明
精神神経系めまい
ねむけ
言語障害
頭痛
発熱
不眠
脳波異常(基礎波の徐波化等)
知覚異常
記憶障害
焦躁感
失禁
悪寒
耳鳴
一過性暗点
ブラックアウト発作
情動不安
せん妄
消化器口渇
嘔気・嘔吐
下痢
食欲不振
胃部不快感
腹痛
便秘
唾液分泌過多
胃腸障害

循環器
心電図異常
血圧低下
頻脈
不整脈
末梢循環障害
血液白血球増多

泌尿器多尿排尿困難
乏尿注1)
頻尿
腎機能異常
蛋白尿
内分泌系
甲状腺機能異常(血中TSH、血中遊離3血中遊離4上昇・低下、甲状腺131I摂取率の増加及びTRH負荷後のTSH分泌反応の増大)非中毒性甲状腺腫
粘液水腫
甲状腺中毒症注2)
中枢神経系振戦運動障害
緊張亢進・低下
腱反射亢進
筋攣縮
運動過少
舞踏病様アテトーシス
頭蓋内圧亢進
皮膚
皮疹そう痒感
毛嚢炎
下肢潰瘍
毛髪の乾燥及び粗毛化
脱毛
乾癬又はその悪化
肝臓肝機能異常

その他脱力・けん怠感浮腫
体重増加・減少
性欲減退
血糖上昇
脱水
味覚異常(苦味等)

注1)あらわれた場合には投与を中止すること。

注2)急激な投与中止により症状が増悪することがある。

5.高齢者への投与

一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら、慎重に投与すること。[腎機能等が低下していることが多いため、血清リチウム濃度が高くなるおそれがある。]

6.妊婦、産婦、授乳婦等への投与

(1)妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。[動物実験(ラット・マウス)で催奇形作用が、またヒトで心臓奇形の発現頻度の増加が報告されている。]

(2)妊娠末期の婦人には投与しないこと。[分娩直前に血清リチウム濃度の異常上昇を起こすことがある。]

(3)やむを得ず投与する場合には授乳を中止させること。[ヒト母乳中へ移行する。]

7.小児等への投与

小児等に対する安全性は確立していないので、小児等には治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。

8.過量投与

症状、処置:「副作用(1)-1)リチウム中毒」の項参照

9.適用上の注意

薬剤交付時:PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている)