こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝からレセプト作業などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。

昨年の6月にBritish Medical Journal誌に掲載された、
低炭水化物ダイエットのリスクについての論文です。

低炭水化物ダイエット(low carbohydrate diet)は、
アメリカで一時期非常に流行し、
日本でも特に「糖尿病にならない食事」として、
多くの信奉者がいらっしゃいます。

人間が何を食べるべきか、
というのは、
まだ未解明の問題の1つです。

歴史を紐解けば、
米ばかりを専ら食べている民族もいて、
肉ばかりを専ら食べている民族も、
魚ばかりを専ら食べている民族もいました。

炭水化物と蛋白質と脂肪は、
3大栄養素と呼ばれていますが、
人間の食事は端的に言えば、
このうちの炭水化物と蛋白質とを、
どのようなバランスでエネルギー源とするのかに、
一番のポイントがあり、
人間はこれまでの歴史の中で、
その配分を時代や民族、地域の環境や習慣によって、
大きく変えて来たのです。

人間の歴史はその大部分は、
必要なエネルギーを得ることの出来ない、
「飢餓」の歴史でしたから、
食事は摂ることさえ出来ればそれでOKで、
その栄養素の配分などは、
二の次の事項でした。

それが最近になって、
地球の一部の地域においては、
むしろ飽食による病気が、
大きな問題となり、
そのために、
飽食による肥満や糖尿病の発症を防ぐための、
食事の内容と量の制限の問題が、
重要な事項となって来たのです。

僕が大学で習った知識では、
概ね炭水化物を150グラム摂り、
蛋白質を60グラム摂り、
脂質を40グラム摂って、
全体のカロリーを1200キロカロリーとするのが、
基礎食として、
栄養指導の基本と教わりました。

炭水化物(糖質)の150グラムは600キロカロリーですから、
これはカロリーの半分を、
炭水化物から得る、
ということになります。

日本人の伝統的な食生活は、
日の丸弁当や、
宮沢賢治の「雨にも負けず…」の詩にもあるように、
炭水化物がメインの食事です。

診療所の栄養士に聞いた話でも、
実際診療所で栄養指導を受ける患者さんの食事を調査すると、
肥満の方では総カロリーの8割以上を、
炭水化物が占めている、
というケースがよくあります。

これからすれば、
糖質をカロリーの半分にする、
という考え方は、
その当時においては、
一種の「低炭水化物ダイエット」でもあった訳です。

一方でアメリカで検討されている低炭水化物ダイエットは、
炭水化物の比率を総カロリーの35%程度に抑えるものです。

基礎食で考えれば、
これは炭水化物を100グラム程度にする、
ということを意味しています。

総カロリーは変えないのですから、
それは必然的に高蛋白食となる訳です。

更に一部の先鋭的な方が唱えているものは、
糖質を20グラムに制限するというものですから、
炭水化物からのエネルギーは、
80キロカロリー程度になるのです。

何故このような特殊なことをするのかと言えば、
糖質特にブドウ糖を摂れば、
インスリンが上がり、
インスリンが上がることが、
メタボを含めて、
糖尿病などの多くの病気の原因になっている、
という考え方があるからです。

言わば「インスリン=諸悪の根源」説です。

確かに病院に真面目に通って、
栄養指導を受け、
栄養士さんの言う通りの食事を、
自分としては実践しているつもりでいるのに、
一向に体重は減少せず、
血糖値も改善しない、
という典型的な2型糖尿病の患者さんが、
ベストセラーのダイエット本を読み、
その教えの通りに、
一切の主食を止めて、
その代わり肉や魚はドシドシ食べたところ、
体重はみるみる減少し、
血糖値も改善した上に、
体調も良くなったと感じたので、
病院の指導や治療を信じるのを止め、
そのダイエット本の考えを全面的に信じるのも、
故なきことではないように思います。

何故、
炭水化物をゼロにすると、
体重が減り血糖も低下するのでしょうか?

人間の身体は、
一番効率良く、
エネルギーを活用するためのメカニズムとして、
ブドウ糖をインスリンにより利用する、
という仕組みを持っているのです。

蛋白質も勿論エネルギー源にはなりますが、
その利用にはより労力が必要になります。

従って、
糖質を制限することにより、
身体は一種の飢餓状態になる訳です。

糖尿病が悪化して、
インスリンの分泌が高度に障害されると、
体重が減少しますが、
その時に起こることと、
この現象は良く似ています。

インスリンが諸悪の根源であるのなら、
その理屈も正しいように思います。

しかし、
この考え方は、
官僚機構が諸悪の根源だ、
というような説に似て、
問題の一面のみを拡大して、
全ての答えがそこにあるかのように誘導している、
という側面があるようにも思います。

一番の問題はこうしたダイエットを長期間続けた時の影響です。

今回ご紹介する文献は、
スウェーデンにおいて、
4万人を超える30~40代の女性の、
健康調査のデータを元に、
その食事の炭水化物と蛋白質とのバランスと、
その後の心筋梗塞や脳卒中の発症との関連性を見たものです。
平均の観察期間は15年を超えています。

その結果、
長期的に見ると、
低炭水化物で高蛋白の食事は、
若干心筋梗塞や脳卒中の発症率を、
増加させる可能性がある、
というデータが得られました。

トータルに見ると、
20グラムの糖質を減らし、
5グラムの蛋白質を増やすと、
それが5%の心筋梗塞や脳卒中の発症の増加に繋がる可能性がある、
という結果になっています。

ただ、この結果は一般の人達の、
食事調査の結果を集計したものですから、
低炭水化物ダイエットを、
意識的に行なった場合にどうなるかは、
また別個の問題として、
考える必要があります。

糖質の比率を、
トータルのカロリーの、
35~40%程度に減少させた場合の糖尿病に対する効果は、
1年程度の観察期間によるものは、
多くの文献が出ていて、
概ね良好な結果が得られています。

ただ、その長期的な影響については、
未知数と考えるのが妥当です。

僕の個人的な現時点での考えは、
糖質をインスリンで利用して、
脳などの重要な臓器にエネルギーを配分する仕組みは、
多くのメリットを持っており、
少なくとも総カロリーの3分の1は、
糖質から得るのが、
安全ではないかというものです。

日本人の多くは糖質から過剰なカロリーを摂っており、
それを是正することは、
多くの病気の発症を予防する観点からも重要なことですが、
極端な低炭水化物ダイエットは、
特にそれが長期に及ぶ場合には、
未知のリスクも孕むものだという点に、
留意する必要があるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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    コメント 8

    こんばんは。
    やっぱりそうなんですね。気になっていましたが、極端なことは注意を要すると考えて慎重に実行したほうがよさそうですね。
    お正月に糖質(たぶん本当に、黒豆やきんとんなどに入れた砂糖。手作りでかなり調整はしたつもりですが・・・)をとりすぎたせいで、太りました。
    当分糖質ダイエットしようと思っていましたが、やりすぎないように気を付けます。
    でもでも2~3キロは落としたいです(泣)
    by ちょこ(2013-01-07 22:48) 

    ちょこさんへ
    コメントありがとうございます。
    低炭水化物ダイエットが即危険、
    ということはないと思いますが、
    色々な考えの幅があり、
    極端な考えのものは、
    安易に行なわない方が良いように思います。
    by fujiki(2013-01-08 08:22) 

    こんにちは。
    いつも素敵なブログを拝読しています。
    ありがとうございます。

    私も食後血糖値が上がりやすいので、糖質を控えています。
    (お茶碗1杯の白米で血糖値が100mg/dlから220mg/dlくらいに上がります。)

    極端な低炭水化物が血管イベントのリスクを上げることはアメリカなどでは常識になっているようですね。

    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3057550/

    では、その原因は豚や牛の赤肉の摂取量が増えることだとされています。
    その際血液検査のデータは悪化しないのに、動脈硬化は進展するようです。

    野菜を先に食べ、炭水化物は出来るだけ減らし、植物性のタンパク質や魚を食べ、運動することがいいのかなと思っています。

    これからもよろしくお願いいたします。
    by モカ(2013-01-08 12:47) 

    モカさんへ
    コメントありがとうございます。
    これからもよろしくお願いします。
    by fujiki(2013-01-10 08:17) 

    こんにちは。

    先生のブログは毎日拝見しております。

    真偽は別にして、糖尿病にしてもダイエットにしても低炭水化物療法ほど専門家の間で意見が綺麗に割れている分野も珍しいかと思います。

    私も低炭水化物療法は色々勉強させていただき、それを強力に支持しますが、今後も先生のご活躍を期待しております。
    by 加藤(2013-01-13 10:59) 

    加藤さんへ
    いつもお読み頂きありがとうございます。
    この話題に関しては、
    ニュートラルな立場を心掛けつつ、
    もう少し勉強したいと思います。
    ご指摘ありがとうございました。
    by fujiki(2013-01-14 21:12) 

    はじめまして、さしゃと申します。

    豊富な内容のサイトに思わず目が止まってしまいました。

    そしてこの記事・・・
    今自分がしているダイエットがいかに危ないものかを知りました。

    食べなければやせるのは道理、しかしやせるかわりに寿命を縮めていいと考える人はいないと思います。

    大変勉強になりました。

    またきますのでよろしくお願いいたします。
    by さしゃ(2013-02-14 11:56) 

    今更のコメントで失礼します。
    低炭水化物ダイエットの件ですが、
    なぜ否定されるのかがわかりません。
    と言っても私は白飯を控えているだけで、
    他の食材からは炭水化物を摂取してます。
    もともと糖尿病患者ですので、
    ご飯は茶碗半分が適量だと思いますがそれを0にしたまでです。
    さらに、私は肥満体型であります。
    肥満体型のままでの心臓疾患リスクと、
    ダイエット後のリスクとどちらが高いと思いますか?
    かのアメリカの研究結果はいみのなさないものだと思っています。
    大事なのは、肥満体型の人間、またはインシュリンの分泌が少ない糖尿病患者に特化して統計をとることではじめて意味を成すものと考えます。

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