エンジェルストランペットのフォルム

花は固いつぼみがほころび始めるとき、どんな形になるのか想像してみるのはちょっとした楽しみだ。
半ば枝先が枯れかかって、黒ずみ、ぽきぽきと折れてしまうようなような大きな木があった。
1.エンジェルストランペット(ブルグマンシア)
フォルムの変化   

雨が少し降ったあと、急につぼみらしきものが膨れてきた。
10cmはあろうかというつぼみで、その先端が細い。


5つに分かれた細い先端が回転しながらほぐれていく。そして、緑からピンクへと色づいていった。

エンジェルストランペット

その名は、エンジェルストランペット。長い花びらの先が開く。


咲ききると細い先端がさらにそってしなりを見せていく。吊り下がる形で咲く花である。
この花、どのくらいの大きさになったか?

ガクの部分から花の先端まで定規をもってきて測ってみた。
長さ30cm。花の口径、20cmまでなっていた。細いからいいが、大きさだけ聞いたらグロテスクな花を想像してしまいそうだ。だが、きっとおしべ・めしべのある中心部はどぎつさ満載かと覗いてみる。


まあ、なんとすっきり、うす緑とうすピンクの可憐な彩り。中央のはおしべ・めしべの固まったものか。
こんなので受粉できるのかと疑問に思っていた。

夕刻になって分かった。こういう大きな花にありがちな状態になってきた。開花した花からは芳香がつよくただよいだして、周辺から虫が気にして飛んでくるのだ。この方向に誘われてこの花の中に入ることで受粉できる仕組みなのだろう。


花びらのそっていくフォルムがいい。自然界の物はそのままで芸術的だとよく思わされるが、これもその一つだと思う。

 ◆ところで、この花は原産が中南米だそうだ。熱帯の高原の花だ。
優美な名はもちろんこの細長い形からきている。 ナス科 ブルグマンシア属で、ときにこの木は4mにもなり花が満載となる。花の色は白や黄色・ピンク・オレンジなどがあり、きれいなものだ。雨のシーズンに盛大に咲き始めるので目を引くだろう。


毒にも薬にも!
 これまで、いくつもの植物を紹介してきた。
紹介しながら植物が想像以上に薬にも毒にもなることに驚いている。
 この花は見た目とエンジェルという名からは想像できないくらいに毒性がある。以前に紹介した夾竹桃同様の毒性がある。花や種、葉、根にアトロピン、スコポラミンなどのアルカロイドを含むのだ。
 もちろん専門家が扱えば薬ともなるのはジギタリスとも同じで、実際これは副交感神経の遮断作用を使って鎮痛剤に用いられるという。


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2.チョウセンアサガオ(ダチュラ:Datura metel)
 なお、エンジェルストランペットとよく似た花にチョウセンアサガオがあり、もちろん全草有毒であり、やはり薬草でもあった。

華岡青洲の麻酔薬研究

 手術での患者の苦しみを和らげ、人の命を救いたいと考え、麻酔薬の開発を始める。曼陀羅華(まんだらげ)の実(チョウセンアサガオ)、草烏頭(そううず、トリカブト)を主成分とした6種類の薬草に麻酔効果があることを発見。動物実験を重ねて、麻酔薬の完成までこぎつけたが、人体実験を目前にして行き詰まる。
 実母の於継と妻の加恵が実験台になることを申し出て、数回にわたる人体実験の末、於継の死・加恵の失明という大きな犠牲の上に、全身麻酔薬「通仙散」を完成させる。(wikipediaより引用)


 ここでいう全身麻酔薬「通仙散」の主原料の曼陀羅華がチョウセンアサガオであり、この花は日本麻酔学会のマークになっている。それは日本で最初に麻酔手術をした華岡青洲が乳がん手術に麻酔剤として使ったからだ。

←日本麻酔学会のロゴを引用させていただきました

◆このロゴの花の向きに注意
 上向きの花、又は横向きに咲く場合、チョウセンアサガオ。
  下向きに釣り下がって咲くのは、エンジェルストランペット。
 したがって、麻酔に使われたのはチョウセンアサガオと呼ばれる花の方である。≪追記≫
 
 毒性の強い植物が何らかの薬用になっている事例は数多くある。しかし、華岡青洲でさえ、多くの動物実験を重ねた後の人体への応用も家族が協力を申し出てのことであった。その後、人間が麻酔を用いた手術を受けられるようになったのにはこうした過程を経てのことだったのかと考え込んだ。
 いずれにしろ、毒も薬も専門家の扱う分野であって、うかつな扱いはできない。

◆専門家が慎重に使うことがあっても、素人は樹液など触らない方がいい。触ったらすぐに洗うべきだ。液のついた手で目など触ろうものなら失明の危険もある。この点はカロトロピス・プロケラと似ている。ましてや食べたりしたらすぐに中毒症状となり命が危ないとされる。園芸店で売られているのをハーブと思って食べた例もある。

 いつもながら、きれいなものには毒がある。
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Commented by 霧のまち at 2011-06-09 11:02 x
この花は今頃から秋口まで方々で咲いていますね。
ダイナミックな花で ハワイでのキルトのモチーフとしても愛用されています。  夜だけ香りが強く出ますね。 昼間はほとんど香りがありません。  白色の花が原種に近いのか、インドの山奥では 大きな木に白ばかりいっぱいに咲いていましたよ。
仰るように ダツラエキスとして薬に使われます。 鼻炎薬などに配合されています。  血管収縮作用ですね。
Commented by 谷間のゆり at 2011-06-09 17:59 x
エンゼルストランペットは夜になると香るので、中々好い香りに出会えません。
最初は白しかなくて闇の中に仄かに浮かんだ花からの好い香りに引かれて見つけた代官山のお宅の花は再開発でなくなってしまいました。
Commented by miriyun at 2011-06-10 05:12
霧のまちさん、インドの山奥に咲く花、熱帯の花がいっぱいに咲く様は見てみたいものですね。
薬にも毒にもなるものは、専門家以外にとってはやはり毒ととらえていた方が安全そうです。
Commented by miriyun at 2011-06-10 05:14
谷間のゆりさん、宵闇迫る中での芳香はかなりはっきりとした香りです。でも、高い位置にあったりそばでかぐ機会は少ないかと思いました。
この植物を野生の草食動物は避けているものか興味深いところです。
エンジェルトランペットはバブリーな時代に買った
ことがありましたが、麻酔に用いられていたとは
知りませんでした。

華岡青洲というと妻と母が息子の実験台になることを
競い合い映画でしたね。
あの映画を見て、成人した息子の為にここまでするかぁ~と
愛の深さとひょっとして紙一重では('_')

ちなみにその時の妻は若尾文子でしたが。。。
Commented by miriyun at 2011-06-10 22:32
ソーニャさん、花岡青洲の話は妙に印象的な話ですよね。私もたしか小説で読んだように思います。
この花、急激にたくさん咲き始めました。一帯が芳香剤をばらまいたかのように香り始めたので驚きました。