健康ビジネスの種

法改正や市場調査、アンケート結果を分析し、
そこから新たな「健康ビジネス」のチャンスを探ります。

「抗疲労・癒し」市場の規模と範囲

◆「抗疲労・癒し」市場はどの程度の規模か

ここでいう「抗疲労・癒し」市場とは、疲労測定・診断、栄養補給/滋養強壮/食養生・デトックス、リラクゼーション/自律神経・ホルモンバランスの回復、メンタルヘルス/ストレス・マネジメント、人間工学等に配慮した疲労予防環境、睡眠改善、玩具、癒し・疲労軽減グッズ等をさし、既存の健康食品・サプリメント、フィットネス、健康機器・グッズ、あんま・マッサージ・鍼灸・整体・リフレクソロジー等の徒手療法などの健康産業から、家電、輸送機関、オフィス家具、ファシリティ・マネジメント等までの幅広い産業を横断的に含む。それらの範囲から、リラゼーション効果等が期待される分野、疲労緩和・人間工学的配慮がなされた商品・サービスを切り出して積み上げた。

【推計方法の概要(※5)】

(1)現在値

1)ほぼ「抗疲労・癒し」目的で消費される商品・サービス
→100%「抗疲労・癒し」市場に含める

例)ドリンク剤(医薬品・医薬部外品の疲労対策ドリンク剤)、
ビタミン剤・滋養強壮剤(医薬品・医薬部外品)
徒手療法(あんま・マッサージ・鍼灸・整体・リフレクソロジー等)
各種セラピー等(ペット、園芸等)
メンタルヘルス向上/ストレス・マネジメント
健康回復機器(マッサージチェア、ハンディマッサージャー&フットマッサージャー、
電位医療器、低周波治療器)
癒しロボット快眠グッズ /等

2)ある程度「抗疲労・癒し」以外の目的でも消費されている商品・サービス
→業種全体の市場から「抗疲労・癒し」分を按分(※1)

例)ハーブ、健康茶、漢方、薬用酒
断食(施設、専用食品等)、マクロビオティックス、デトックス、外食・中食
エステティック・ホームエステ(リラクゼーション目的のもの)
入浴、温泉、スパ(温浴施設、浴槽・入浴剤等関連商品)
ヘルスツーリズム
アロマテラピー、香り
呼吸法、体操等(ヨガ、気功、瞑想、ヒーリング等)/等

3)本来「抗疲労・癒し」以外の目的で消費される商品・サービスに「抗疲労・癒し」価値を付加
→現在は顕在化していないので、現在値には含まない

例)移動空間(輸送機関)
食空間(商業施設)
住宅、住宅設備、寝室環境、宿泊施設
ファシリテイ・マネジメント
家具・オフィス什器(椅子、机、OA(PC)等)
疲労を軽減する衣類(スポーツウエア、靴下・ストッキング等)
疲労を軽減するメガネ、コンタクトレンズ /等

4)「抗疲労・癒し」目的でも用いられる素材・原料を使用した食品
→「抗疲労・癒し」目的と想定される部分を積算

例)健康食品、一般食品/等


(2)将来値

1)ほぼ「抗疲労・癒し」目的のみで消費される商品・サービス(上記1))、及び、
ある程度「抗疲労・癒し」以外の目的でも消費されている商品・サービス(上記2))
→過去の傾向が継続すると想定し、既存調査における過去の伸びで伸長(※2)

2)本来「抗疲労・癒し」以外の目的で消費される商品・サービスに「抗疲労・癒し」価値を付加(上記3))
→1.将来の人口・世帯数で業種全体の市場を伸長(※3)
 2.業種全体の市場から「抗疲労・癒し」分を按分(※4)

3)市場が近年、顕在化し始めたばかりのもの
→需給曲線(ゴンペルツ曲線)で実績値等を近似してから2020年値を算出

例)着圧靴下

※1:各種アンケート調査から、各業種における利用目的のうち「リラクゼーション」「疲労回復」等の回答割合で按分した。

※2:総務省「家計調査」における二人以上の世帯の健康・美・癒し関連消費支出(栄養剤、他の医薬品、健康保持用摂取品、他の保健医療用品・器具、整骨(接骨)・鍼灸院治療代、運動用具類、ペットフード、動物病院代、他の愛がん動物・同用品、園芸品・同用品、他の教養娯楽サービス、理美容サービス、理美用品の合計)の1995~2007年の伸び率を2020年値に当てはめて算出した。

※3:2007年度:総務省統計局「国勢調査」、2020年度:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成18年12月推計)」

※4:「抗疲労・癒し」概念の普及率と考え、業種全体の市場に、現在の加工食品に占める「抗疲労・癒し」志向の健康食品、健康志向の一般食品の割合(6.6%)、または、その半分(3.3%)を乗じて算出した。

※5:市場規模は、景気、人口(総数・若年者数・高齢者数)・世帯数、高齢化の進展状況、健康志向、行政による新たな施策等のマクロ的要因や各業界のミクロ的要因等によって、大きく影響を受けることが考えられる。


その結果、現在(基準値2007年度)の「抗疲労・癒し」市場は約4.9兆円と推計される。同市場はテーマ別市場なので業種別市場との単純比較はできないが、これは清涼飲料水市場(約5兆円)や介護サービス(約5.1兆円)と同程度、化粧品市場(約2兆円)の2倍以上にあたる。

将来(基準値2020年度)の同市場は、前提条件によって約12兆円または16兆円と推計されるが、これは現在の鉄道市場(約12兆円)と同程度かそれ以上、自動車産業(約60兆円)の5分の1~4分の1にあたる。


「抗疲労・癒し」ビジネスの新たな展開例

◆疲労検診、疲労解消ツアー・・・広がる「抗疲労・癒し」ビジネス

“癒し”はともかく、“疲労”を冠したビジネスはまだまだ少ない。しかし、消費者のニーズに一早く対応して次の様なサービスも立ち上がってきた。今後の市場の立ち上がりに期待したい。

【事例1:株式会社産業疲労特定検診センター】
 (株)産業疲労特定検診センター(大阪市淀川区)では、今まで主観的な感覚であった疲労を簡便且つ客観的に測定できる、「問診表による臨床症状評価」と「心拍変動解析による自律神経機能評価」を組み合わせたシステムを開発した。問診表による検診者の臨床症状の把握に加えて、メモリー心拍計で採取したデータを用いて心拍変動解析による自律神経機能評価を行い、疲労に伴う変化を調べる。個々のデータは、疲労に関する専門医が診断し、その結果をレポートとして各検診者に報告する。国内での疲労研究の最先端を行く「専門医」の監修に基づいた疲労検診なので、より正確で精度の高い疲労検診の提供が可能であるという。

 さらに、このシステムをインターネット上で幅広く運用することにより、広範囲に数多くの被験者に対する疲労・ストレス検診が可能となった。例えば、企業での健診だけでなく、フィットネスクラブ会員などでもインターネットによる簡易疲労健診からスタートして受診できる。被験者全員が短時間で専門医のアドバイスが受けられる「産業疲労検診サービス」を行うことが可能となった。すでに、東京・大阪・神奈川・京都などのIT関連会社、地方銀行や製造業企業、大学などで本格導入が検討されはじめている。

(参考)同社資料等


【事例2:日本旅行「脳疲労解消のためのBOOCS健康ツアー」】
 (株)日本旅行天神支店(福岡市)では、昨年、特定健診・特定保健指導の義務化により一層健康への関心が高まることに着目し、BOOCS(Brain Oriented Oneself Control System/脳疲労解消システム)理論に基づく1泊2日の健康ツアーを企画・発売した。BOOCS理論とは、藤野武彦氏(九州大学名誉教授・医療法人ブックス理事長)が提唱した理論で、生活習慣病やうつなどの心身症の多くが「脳疲労」から発症するという新たな発症仮説に基く治療法。生活習慣を矯正するのではなく、行動異常の原因となる脳疲労を解消することで生活習慣を改善し身体のバランスをとっていく。

 ツアーでは、BOOCS提唱者藤野先生のセミナーや、医師・栄養士など専門職のカウンセラーによる個人ごとのニーズにあわせたきめ細かい健康指導を行う。また、海が見えるリゾートホテルというリラックスできる環境の中で、BOOCS理論に基づく食事、ヨガのレッスンや香りや音楽によるリラックスタイムを過ごすことにより、脳疲労を解消する。

 2008年5月~12月に計8回、各40名定員で実施。(価格58,000円(シングルルーム利用、朝食1回・昼食1回付き))主に企業の福利厚生団体に営業している。まだ、ビジネスとして成立するには至っていないが、県からの補助事業として委託を受けたことにより、BOOCS研究所と提携しノウハウを積んで、高いレベルの商品開発やビジネス拡大をめざす。

(参考)同社資料等


まとめ

◆あらゆる産業からの参入が可能な「抗疲労・癒し」市場は、大きな成長の可能性を秘めている。

 先月号にて、ストレスと疲労は、自律神経、ホルモンバランスの乱れ、免疫の低下といった現象を介した原因と結果である点を述べた。つまり概念的ことを具体化したものとも言える。「抗疲労・癒し」市場の成長は、捉えようのなかった巨大市場が顕在化することを意味している。

 折りしも、金融危機に端を発した急激な景気悪化に伴い、家庭・職場におけるストレスは一層増大しており、その対策の必要性が一層高まっている。緊急性から言うと“ダイエット”、“メタボ対策”等よりも、“抗疲労・癒し”は優先されるべき課題と考えられる。

 ところで、「抗疲労・癒し」市場とは、本来、「抗疲労・癒し目的の消費」の集合である。例えば、同じフィットネスでも、ある人が痩身目的で消費すれば“ダイエット”市場であり、体をほぐす、リラックス等の目的なら“抗疲労・癒し”市場ということになる。極端な話、どんな商品でも「抗疲労・癒し」訴求を付加することは可能であり、どんな産業でも「抗疲労・癒し」市場への参入は可能ということになる。その点、「抗疲労・癒し」産業は大きな成長の可能性を秘めている。今後は、現在の常識では想定もしていない様なビジネスの登場も考えられる(例:自動的に体からの距離が変わってストレッチ効果を引き出すマウスやキーボード、脳疲労が軽減されアイデアがわき続けるミーティングルーム等)。

(2009年2月配信)編集人:井村 編集責任者:竹嶋 
編集協力:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

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