ニキビ・酒さ(しゅさ)を治そう
Q1 ニキビはなぜできるの?
A1 ニキビの正体は、脂腺性毛包(あぶらを分泌する毛穴)が侵される慢性の炎症です。面皰,赤い丘疹,膿疱などの皮疹が混在してみられます。面皰の形成が基本的な病変で、続いて炎症が起こります。ニキビができる理由は、ホルモンによる皮脂の分泌亢進、毛穴の部分の角化障害、アクネ桿菌(Propionibacterium acnesなど)、炎症の惹起などいくつもの原因が重なって起こります。顔だけでなく、くび、背中などにできることもあります。
Q2 生理の前になるとニキビができるんですけど・・・
A2 生理の前のホルモン周期を黄体期と呼びますが、黄体期には黄体ホルモンと呼ばれるホルモンが分泌され、それが皮脂の分泌を促すからではないかと考えられています。生理になると自然に軽快することが多いため、必ずしも治療が必要ではありませんが、気になる方は黄体期のみ外用薬を使ってみるのもひとつの方法です。
Q3 ニキビの治療法は?
A3 当クリニックでは、基本的にはガイドラインに基づき治療をおこなっていますが、単純に画一的に治療しているわけではなく、患者さんごとに最も適すると思われる治療法をご紹介しています。
| ①ディフェリンゲル(アダパレン) 世界的には以前より第1選択薬(最初に使う薬)として広く普及していましたが、日本でも2008年10月より保険診療で処方ができるようになりました。 詳細は、はやりの病気第75回(2009年11月)「ニキビの治療は変わったか」を参照ください。 ②BPO(過酸化ベンゾイル)「ベピオゲル」 待望のBPOが2015年4月についに保険診療で処方可能となりました。当院でも2015年4月1日から処方を開始しています。 注:上記①ディフェリンゲルと②ベピオゲルが一体になった「エピデュオゲル」が2016年12月より処方可能となりました。 ③抗菌薬 外用薬と内服薬があります。軽症であれば外用薬のみ、重症化すれば内服薬も処方します。 ④イオウローション 古典的なニキビの治療薬です。症状によってはおすすめすることがあります。 ⑤アゼライン酸(Azelaic acid) 1,944円 日本のガイドラインには記載がありませんが、BPOと同様、ヨーロッパのガイドラインでは軽症例から重症例まで推薦されています。劇的に利く、というわけではありませんが、抗菌作用もあり、毛穴をつまらなくして、抗酸化作用もあり、おまけにメラニンを抑えて美白作用もあると言われており、さらに他の治療に併用できますから今後使用者が増えていくことが予想されます。 2011年6月にロート社が「DRX・AZAクリア」という製品を発売し、今のところ大きなトラブルはないようですので当院でも推薦することがあります。 ⑥低用量ピル 女性の患者さんにはピルも有効です。実際、2006年に改定されたピル(低用量経口避妊薬)のガイドラインには、ピルの避妊以外の効用としてニキビが加えられています。また、2011年9月に改訂されたヨーロッパのニキビのガイドラインでも、重症の症例に対してピルは推奨されています。 ピルは、ニキビ以外にも、貧血の改善、生理痛の軽減、内膜症の症状軽減、関節リウマチの症状改善、など様々な利点があります。当院では、単純な避妊目的よりもこういった様々な疾患の症状緩和目的でピルを処方することが多い傾向にあります。ただし、血栓症や他の副作用のリスクの高い方には、希望されても処方できなこともあります。 ⑦メトロニダゾール 日本のガイドラインでもヨーロッパのガイドラインでも推奨されているわけではないのですが、メトロニダゾールという薬はときに大変有効ですが、残念ながらニキビには保険適用はないようです。 内服薬もありますが、副作用で胃のむかつきが起こることがあり、また内服中は禁酒をしなければなりません。また、保険適用はなくこの点が難点です。 しかし、後に述べる毛包虫を退治することができますし、酒さの治療としても有効です。 ⑧その他 患者さんによっては漢方薬を処方することもあります。ヨーロッパでは亜鉛が勧められていますので食生活で亜鉛不足になるという人にはサプリメントをすすめることもあります。(ただし摂り過ぎには要注意です) また、ヨーロッパのガイドラインではイソトレチノインが強く勧められていますが、これは日本では厚生労働省が注意喚起をおこなっており、個人輸入でも使うべきではありません。下記URLを参照ください。 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kojinyunyu/050609-1b.html |
Q4 ニキビを起こす虫がいるって聞いたんですけど・・・
A4 ニキビを引き起こす虫の名前は毛包虫といいます。ヒトの皮膚に常在していますが、毛穴にたくさん棲息するようになるとニキビが生じます。中年以降の女性にできることが多く、鼻を中心に、おとがいなどの毛穴に一致してできる赤色のニキビです。治療方法としては、まず洗顔をしっかりおこなうことが大切です。抗生物質は効きませんから、それ以外の普通の(細菌性の)ニキビの治療をおこないます。
毛包虫によるニキビができる人は、長期間ステロイドの外用(もしくは内服)をしていることがあります。その場合、ステロイド治療の中止あるいは見直しをする必要があるでしょう。)
毛包虫を退治するには、抗生物質が無効で、メトロニダゾール(Q3の⑦参照)が必要となります。
Q5 食べ物には気をつけなければならないのですか?
A5 チョコレートなどの食べ物がニキビの原因である、と言われることがありますが、科学的な証明はされていません。ただ、脂質の摂りすぎは皮脂の分泌を促進する可能性がありますから、チョコレート、ケーキ、脂もの、などの摂りすぎには注意した方がいいでしょう。
Q6 スキンケアや化粧はどのようにすればいいのでしょうか?
A6 最も大切なのは、スキンケア及びメイクアップ商品に「ノンコメドジェニック」と記載されたものを選ぶということです。この表示がなければ、スキンケアやメイクをおこなうことでニキビが治りにくくなる可能性があります。
ニキビがあるときは化粧をすべきでない、と考えている人もいるようですが、ニキビが目立つときに他人に会うと精神的にしんどくなることもありますから、化粧をためらう必要はありません。
最近はノンコメドジェニックのBBクリームも発売されていますから、化粧に時間をかけたくないという人や男性にもすすめることがあります。
(BBクリームについては、ニキビに関係なく最近患者さんからよく質問を受けます。BBクリームとは、Blemish(欠点)を補うことのできるBalm(軟膏)という意味で、元々治療用の軟膏として開発されたそうです。韓国でブレイクしたことから韓国のものと思っている人が多いようですが、発祥はドイツだと言われています。刺激感やべとつき感を不快に感じる人もいますが、BBクリームの最大の長所は、1本で保湿、下地、サンスクリーン、ファンデーション、さらにコンシーラーの役割も兼ねているということです)
Q7 治療以外には日頃どのようなことに注意すべきですか?
A7 一番大事なのは触らないことです。触りたくなる気持ちはわかりますが、ニキビを触っていいことはひとつもありません。つぶれてしまってニキビ瘢になると治すのは相当困難になります。また、髪が当たらないように気をつけましょう。特に女性の場合、ニキビを髪で隠したくなる気持ちはわかりますが、髪が接触することによって治りにくくなっている可能性もあります。
次に大切なのは紫外線対策です。ニキビだけではありませんがほとんどの皮膚疾患に紫外線は大敵です。特に男性は紫外線対策をおろそかにしがちです。しっかりとサンスクリーン剤を使用しましょう。
Q8 酒さって何なのですか?
Q9 酒さの治療はどうするのですか?
A9 酒さの治療は3つに分けて考えます。
まず1つめは「環境の見直し」です。つまり日常生活から悪化因子を取り除くのです。具体的には、気候(暑すぎても寒すぎても悪化因子となりえます)、熱い食べ物、飲酒、香辛料、アルコール、などです。これらは絶対にダメ、というわけではありませんが、自分の酒さはどのような環境で悪化するかを知っておくことは重要です。
また、ステロイドを外用して酒さがおこっている場合がありますから、この場合はステロイドを中止しなければなりません。また頻度は低いですが、プロトピックを長期間使用することによって酒さが生じることもあり、やはり使用を中止しなければなりません。
酒さの治療の2つめはスキンケアです。低刺激の化粧品を使い、紫外線対策(サンスクリーンを使用する)をおこないます。また、効果的な化粧をおこない目立たなくすることもひとつの「治療」と考えるべきだと思います。
治療の3つめは薬です。教科書的には使用すべき薬は「イオウローション」となっていて酒さの治療に唯一保険で処方できるものです。しかし、実際はイオウで痛みが増すことがありますし、必ずしも効くわけではありません。
メトロニダゾールの外用(場合によっては内服)は有効なことがあります。(なぜ効くのかはよくわかりません) また、酒さは細菌が関与しているわけではありませんが、マクロライド系やテトラサイクリン系の抗菌薬が効くこともあります。これらの抗菌薬の殺菌(静菌)作用ではなく、炎症を抑える作用が効いていると考えられています。プロトピック軟膏はときに有効ですが、先に述べたように酒さの原因になっていることもあります。
酒さは、ニキビと同様(あるいはニキビ以上に)なかなかいい治療にめぐりあえずにドクターショッピングを繰り返している患者さんが少なくありません。それだけ治りにくいのは事実ではありますが、いろんな医療機関を受診するのではなくどこかひとつに決めて主治医とじっくりと治療を検討するのがいいと思われます。(ときどき遠方から来られる患者さんがいますが、酒さは、他の慢性疾患と同様に時間がかかりますから、近くの通いやすい医療機関を選択すべきです)
2017年6月2日改訂
院長 谷口恭