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男性型脱毛症〈AGA〉

AGAとは何か

今、日本では薄毛に悩んでいる男性は800万人を超すともいわれます。
それらは男性型脱毛症(AGA=Androgenetic Alopecia /最近はMPHL=Male pattern Hair Loss)と呼ばれ、思春期以降に生え際やツムジ周辺部のどちらか一方、あるいは両方が薄くなり、進行していくのが特徴です。次第にその部位のヘアがうぶ毛化して細く薄くなっていきます。

男性ホルモン(テストステロン)が毛母細胞の5α-リダクターゼ(Ⅰ型・Ⅱ型)という酵素によって、活性型のジヒドロテストステロン(DHT)に代わり、これが頭髪の成長を抑制するためとされています。

俗に「男性ホルモンの量が多いと薄毛になる」といわれていますが、量の問題でなく、それに反応する酵素の過敏性の問題であることがわかっています。

生えては抜けるヘアサイクルと薄毛

ヘアには「寿命」があります。ヘアは、成長しては抜けて、またしばらく休んでは生えてくるというサイクルを繰り返しています。これを毛周期、またはヘアサイクルと呼びます。頭髪の場合、毛周期は、「1.成長期(アナゲン)」「2.退行期(カタゲン)」「3.休止期(テロゲン)」の三段階に分けられます。

         
成長期(2~6年)
平均して約1000日間続き、この時期には毛乳頭や毛母細胞に血液を通じて栄養がどんどん供給され、毛芽細胞が分裂して毛ケラチンなどを形成し、上へ上へと押し上げていきます。
髪の伸び方には個人差がありますが、だいたい一日平均0.4mm伸びるといわれています。 つまり、健康的な人であれば、髪の毛は1ヶ月に約1センチずつ伸びていくわけです。
また、 成長期には皮膚の中で毛を包み込んでいる毛包も長くなり、皮下組織の奥までしっかりと伸びているので、毛を抜くにも力がいるほどです。
退行期(2~3週間)
毛根下部の組織が萎縮して生成をストップしてしまい、ヘアは抜け落ち始めます。 しかし、これはけして死に絶えてしまったわけではありません。冬が来て地上に出ている茎や葉がすっかり枯れ落ちてしまっていても、じっと次の春が来るのを待ち続けている球根のようなものです。
休止期(2~4ヶ月)

2~4ヶ月休止期が続いたあと、そこからまた新しいヘアが生えてきます。

全体のうち、成長期にあるのは、約90%で、残り10%は冬眠状態にあると考えていいでしょう。

ヘアサイクルが薄毛に向かう場合

一生涯にわたって毛周期がきちんと守られていれば、髪の毛の量は同じで、ハゲることはありません。
ところが、男性型の薄毛の場合は、ヘアの矮小化が起きます。つまり毛髪が徐々に小さく(細く短く)なって薄くなったように感じるのです。少なくとも進行し始めた頃は全体の本数は変わらないといえます。
進行が進んで、抜け毛が多く再生が追いつかなかったり、あるいは成長を休止しているはずの毛根がそのまま永眠してしまったりすると、髪の毛の全体量はどんどん減ってしまいます。これが進むと「ハゲ」の状態になってしまうのです。

薄毛はどこまで進むのか

薄毛に悩んでいる方にとって、自分の髪は将来どこまで薄くなるかということは、大いに気になるところだろうと思います。
AGAは進行性です。その進行度によって、クラスⅠ~クラスⅦまで分けられます。

         

AGAの進行が止まってから植毛を受けるべきでないか、という質問を時々いただきますが、各人のAGAの最終段階が予測できない以上、いつ既存毛の薄毛の進行を心配せずに植毛を受けられるのかはわからないということです。
知っておいていただきたいのは、薄毛で悩んでいる方々のうち、一番進んだクラスⅥ、Ⅶに関しての割合です。50~59歳の方では、クラスⅥは7%、クラスⅦは3% 。80歳台の方ではクラスⅥは13%、クラスⅦは17%という報告があります。つまりクラスⅦまで進行する方は、60歳までは全体の1割未満に過ぎないというわけです。

AGAの薬物治療

世界で最も権威がある米国食品医薬品局(FDA)は、AGAに有効だったエビデンスがある治療法は、植毛などの外科治療とプロペシア、ミノキシジル外用薬、の3つだったと結論づけています。
FDAは、AGAへの適応が認証されている薬としてこの2つを挙げたわけですが、もちろん認証を受けていないそれ以外のものが、AGAに対して無効であるというわけではありません。

M字型脱毛症

M字型脱毛症について

M字型脱毛症は、AGA(男性型脱毛症)のタイプの中でも多くの割合を占めています。
AGAの典型的な症例で白人によく見られますが、日本人の中にもM字型脱毛症で悩む人がたくさんいらっしゃいます。
最初は前髪が薄くなってきていると感じ始め、額の両サイドの剃り込み部分が、徐々に後退していきます。

M字型脱毛症の原因は、遺伝的な体質と前頭部に頭髪の成長を抑制する作用があるジヒドロテストロステロン(DHT)の影響だとされています。

M字型脱毛症の症例

下の写真は、当院で植毛したケースです。深い剃り込み部分が目立っていた部分に植毛しました。自然なヘアラインに。

日本人のM型とは?

  1. 頭の形
    奥行きが深く細長い白人の頭と比べて日本人のそれは”丸く奥行きがなく顔が平面的”です。
  2. 頭の大きさ
    データはありませんが白人の方が日本人よりもはるかに小顔のようで、帽子を作るメーカーの話によると日本人の平均サイズは白人より大きいとのことです。
  3. 生え際の形
    ヘアラインが白人よりフラットになっていることが多く、ソリの角度も大きいという特徴があります。
  4. 生え際の高さ
    欧米の教科書では適切な生え際の高さは「4本指の法則」と言って眉毛の上縁に小指をのせると人差し指の縁がヘアラインだとされていますが、それだと8㎝以上になります。日本人ではほとんどの方が7㎝かそれ以下の高さを希望します。

1、2、3、4の特徴のために日本人が生え際を作る時には、同じ程度の白人よりはるかに多くの移植毛が必要です。
往々にして経験の浅い医師や欧米のビジネスモデルを日本人向けに修正せず導入したクリニックは、欧米人の生え際のパターンをそのまま押し付ける傾向があります。
限られたドナーを利用するしかないという事情はあるにしても、日本人にあった生え際のデザインをつくるのは大切なことです。

M字への植毛 その後脱毛が進行したら?

M字型脱毛症の方の場合、まずは生え際のM型の部分に植毛を行います。
しかし、AGAは進行性ですから、ドナーは一生ものだとしても長い間には既存のヘアが薄くなる可能性が当然あります。
そういう意味で植毛は、他の外科手術のように1回で終了するとは限らず、AGAの進行が進み、将来的に再度植毛をする可能性があることを念頭に置いておくべきです。
植毛を行う医師は、「ヘアの主治医」という立場で、目先だけにとらわれない長い視点をもって患者様とお付き合いすることが必要だと思います。

M型の薄毛が進行した場合ですが、これは移植毛の後ろ側に植毛を追加して、生え際のボリュームを図ることで対応します。
つむじまで薄毛が進んだ場合には、ドナーの状態が許せばメガセッションでそこにも植え付けることは可能でしょうが、それをしない場合でも少なくとも生え際からツムジまでの薄毛の範囲のうち前半分だけを植毛で濃くすれば、つむじだけが薄いクラスⅢ vertex になります。現にそのような状態の方は大勢いらっしゃいます。
植毛の周辺がドーナツ状に薄くなり、明らかに不自然になってしまった場合なら、そこに植毛を行います。
しかしながら、普通その状態になるまで放っておかれる方はまれでしょう。
特に現在では、ミノキシジルやプロペシアといった薬物治療で、現状維持をはかれることが多いです。