「痔ろう」という痔の症状をご存知でしょうか? イボ痔、切れ痔は誰でも1度は聴いた事があると思いますが、「痔ろう」は聴きなれない病名かもしれません。痔ろうは「穴痔」とも呼ばれる症状で、読んで字のごとく肛門の周辺に瘻管(ろうかん)という「穴」ができてしてしまう痔です。
痔ろうは、細菌感染がきっかけでお尻に肛門以外のトンネルのような穴があいてしまう、痔の中でも厄介な症状です。
今回は専門医の監修の下、「痔ろう」をテーマの症状、原因、治療方法に関するお話をします。
掲載内容は、専門の医師に監修していただいております。
痔ろうの症状
痔ろうは、お尻が激しく痛む、腫れる、膿がでる、かゆみ等の症状を伴います。肛門腺が膿の溜まる「原発巣」というシコリとなり、そこから膿の進む先によって、Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型と種類、症状が分かれます。最も発症例が多いのが外肛門括約筋と、内肛門括約筋の間に問題が生じるⅡ型痔ろうです。
痔ろうの初期症状は肛門周辺が化膿して膿が溜まります(肛門周囲膿瘍:こうもんしゅういのうよう)。症状の進行に合わせて痛みを伴います。また、場合によっては39度ほどの高熱を発熱する事もあります。
肛門周囲膿瘍が進行して、お尻の内部に溜まっていた膿を出すと苦痛はある程度軽減しますが、トンネルのような穴ができてしまうと(痔ろう)、また膿がたまってしまいます。
肛門周囲膿瘍、痔ろうの状態まで症状が悪化してしまうと、市販されている薬での治療は困難になります。上記のような症状がみられるようでしたら早急に医療機関に相談する必要があります。
痔ろうとは
「痔ろう」は肛門周辺の皮膚に直腸と直接つながるトンネル状の穴があいてしまう種類の痔のことです。痔ろう自体にも4つの種類があります。
痔ろうの種類・特徴
[Ⅰ型痔ろう]
瘻管(ろうかん)(人体内の器官と器官、もしくは皮膚表面と体内の器官の間にできる管に類似した通路のこと)が皮下、もしくは肛門上皮に存在しており。肛門括約筋を貫通していない種類の痔ろうのこと。別名「粘膜下痔ろう」「皮下痔ろう」とも呼ばれる。発症数は他の痔ろうと比較すると少ないと言われている。切れ痔を発症した際に生まれる肛門付近の傷に便が詰まることで発症し、肛門腺が病巣ではない場合もある。
[Ⅱ型痔ろう]
痔ろうを発症する場合7~8割は「Ⅱ型痔ろう」である場合がおおい。外肛門括約筋と内肛門括約筋の間を痔管が通る種類の痔ろう。痔管の深さによって名称が異なります。歯状線よりも上に発症する場合は「高位筋間痔ろう」、下に発症する場合は「低位筋間痔ろう」と呼びます。
瘻管の本数でも種類が更に細分化します。痔管が1本の場合は「単純型」、2本以上の場合は「複雑型」と呼ばれます。
[Ⅲ型痔瘻ろう]
肛門括約筋の奥部分にある肛門拳筋の下に瘻管ができる種類の痔ろうです。別名は「坐骨直腸窩痔瘻」。痔ろうを発症する人の2割ほどはⅢ型痔瘻を発症します。多くの場合男性が発症します。原発口は肛門の背中側で、便がそこから入り込むことで外肛門括約筋と内肛門括約筋、坐骨直腸筋の間が広いので原発口が大きく、深くなります。この大きく、深い原発巣から瘻管が外肛門括約筋を貫通し、左右に広がります。瘻管は両側に出る場合と片側のみに出る場合があります。
[Ⅳ型痔ろう]
Ⅳ型痔瘻を発症することは極稀です。別名「骨盤直腸窩痔瘻」とも呼びます。Ⅳ型痔瘻は肛門拳筋を貫通して進行する種類の痔ろうです。
痔ろうの主な症状
以下のような症状を伴いますことがあります。このような症状に心当たりがある場合は痔ろうを疑ってください。
・38~39℃の発熱をする
・お尻から膿が出る
・お尻が熱い。熱っぽい
・肛門周辺が腫れる
・肛門周辺がズキズキ痛む
肛門周囲膿瘍
肛門周囲膿瘍は痔ろうの一歩手前の段階です。お尻が腫れ、激しい痛みを伴います。「ズキンズキン」という拍動性の痛みで、物が触れると更に激しい痛みがあります。発熱もお尻だけに留まらず全身に広がることもあります。
膿瘍がお尻の深い位置にあると痛みや腫れがわかりづらく、発症していることに気がつくのが遅れる場合もあります。
症状が進行していくといずれ皮膚を貫通して膿が出てきます。この状態が「痔ろう」です。膿が出てしまうと一時的に症状が軽減しますが、治療しないと再度膿が溜まってしまいます。
痔ろうになると膿が常にでてくるので下着が汚れます。また、膿の影響で皮膚にびらんが起こって、かゆみを伴う場合もあります。更に悪化すると膿が流れていた穴から便がもれる場合もあります。瘻管が複数本になると肛門機能に支障をきたし、排便困難、便が細くなるといった問題も発生します。常に鈍い痛みがある場合もあります。
痔ろうの原因
痔ろうになる前に「肛門周囲膿瘍」という、お尻・肛門周辺に膿が溜まってしまう症状を発症します。肛門周囲膿瘍が慢性化することで痔ろうを発症します。
痔ろうを発症する原因は「下痢」である場合が多いです。下痢をすることで細菌が肛門の組織内に入り込んでしまいます。
詳しく説明すると、歯状線には肛門隠窩というポケットのようになっている箇所と、粘膜を出している肛門腺という線があります。これは小さなくぼみで普段は便が入ってしまうようなことはありません。しかし、下痢は普段の便よりも勢いが強いので、このくぼみに便が入り込んでしまう場合があります。
便が入り込んでしまうと、大腸菌等の細菌も入り込んでしまう場合があります。細菌が入り込んでも健康な状態であれば抵抗力があるので感染することはありません。しかし疲労やストレスが原因で周辺の組織が弱っていたり、傷ついていたりすると細菌が感染し、化膿します。これが悪化し肛門周囲膿瘍になります。
肛門周囲膿瘍が更に悪化し、慢性化することでお尻にトンネル状の穴ができ、「痔ろう」を発症します。
痔ろうの対策・治療方法
治療に必要な期間
発症した痔ろうを治療する場合、薬で治すことはできません。手術治療を行わなければ、完治することはありません。完治までに必要な期間は3ヶ月程、入院が必要な複雑な痔ろうの場合は、3週間程お時間がかかります。患者様の症状によっては日帰りで手術を行うことも可能です。
[日帰り手術の場合]
日帰りで手術を行った場合、当日は傷に障らないよう安静にしていただく必要があります。入浴はシャワー程度でしたら翌日から浴びていただいてかまいません。入浴はもう1日様子を見ていただいたほうが良いでしょう。
手術後に出血、強い痛み、排泄時紙に血がついた等の症状が見られる場合は、すぐ医療機関に相談しましょう。
日帰り手術で治療しても、完全に症状が改善するには、期間が必要です。手術後も医師の指示に従い、通院し、再発しないように注意しましょう。
痔ろうを発症した場合、ほぼ確実に手術が必要になる
痔ろうを発症すると、溜まっている膿を取り除くだけでは治療は不十分です。手術を行って、原発口となっている「肛門腺窩」を取り除かねば再発する恐れがあります。
更に痔ろうを発症しているにも関わらず長い時期放置すると化膿を繰り返し、膿のトンネルが何本にも枝分かれして癌(がん)になる場合もあります。最悪の場合を防ぐ為にも手術を行う必要があります。
費用
痔ろうの治療に必要な費用は医療機関と患者様の症状によって異なりますが、以下の数値を目安にしてみてください。
また、痔の手術は基本的に健康保険が適応されます。
保険適応:△(症状、治療法による)
治療費(3割負担):30,000~40,000円程
入院が必要な場合(3割負担):100,000~150,000円程
シートン法(手術治療)
「シートン法」は痔ろうの手術方法の一種です。切開開放型の手術でも変形する可能性がある症状に用いられる手法。
前方、側方のⅢ型痔ろう、Ⅳ型痔ろうの治療に適している。
他の手術法と比較すると治療に時間はかかるが、再発率・変形するリスクは低い。
瘻管切開開放術(手術方法)
痔ろうの瘻管(トンネル)を切開して膿を出します。切開することで瘻管はなくなりますが、肛門括約筋を切開してしまうので、手術後に肛門がゆるくなってしまうことがあります。この手術方法は、肛門括約筋にできるだけ影響が少ない症例に使われることが多いです。
くりぬき法(括約筋温存術)
問題となる瘻管をくりぬいてきれいにします。肛門括約筋も切らないので、手術後のリスクが少ない(肛門機能の温存)手術方法ですが、手術の難易度も高く、また、治療中に下痢便などで菌が入ってしまい再発する恐れもあります。
痔ろうの予防方法
痔ろうに限らず、いぼ痔、切れ痔を予防するためには、日常生活の改善が必要です。
痔の原因となるのは、主に便秘・下痢・疲労・肛門周囲の血行・同じ姿勢を継続するなど予防できることがあります。
便秘の予防には、水分を良く取るようにし、食物繊維を意識的に摂取するようにしましょう。また、便意を感じたら我慢せずに排便を行う習慣をつけてください。
下痢を改善するためには、食べ過ぎ、アルコールの飲み過ぎ、香辛料の取り過ぎ、おなかを冷やさないなどちょっとした注意で予防できます。
そのほかには、適度の運動、お風呂の浴槽につかり血行を良くする、トイウォシュレットを使い肛門を清潔にするように意識するなどがあります。
まとめ
以上、痔ろうの症状、原因、治療方法でした。痔ろうは治療方法が手術しかない点、治療期間が長い点を考えると痔の中でも難解な病気です。
記事中では自然に治癒する可能性もあると記述しましたが、その可能性は極わずかです。痛み、発熱だけでなく、最悪の場合は癌(がん)化する場合もあるので手術を行う前提で治療に取り組んだほうが良いでしょう。