TANNOY  ARDEN

TANNOY ARDEN (1本220,000円 1976年)

  77年暮れから78年にかけて私はリッチだった。知人が短期留学する間、代わりにナイトレストランのピアノ弾きをすることになり、チンタラピアノを弾いていたが、そこの給料がすごかった。また酔って気が大きくなったお客さんのチップが半端じゃなかった。「あのピアノの兄ちゃんにレミー1本やってくれ!」てな感じで・・・・・・、お気づきだと思うがこわい系のお店で、「早く帰ってきてくれ!」とその知人を心待ちにしながら毎晩弾いていた。でもほんの3ヶ月間だったが高級オーディオに手が届くくらいの貯金ができた。

 784月には関西に帰ることになっていたので、オーディオ機器は日本橋で買おうと思っていたが、フラッと寄った秋葉原のなじみのオーディオ店へ行くと、綺麗なアーデンの中古が2セットほど置いてあった。今までのタンノイ・オーナーは「こんなのはタンノイじゃない!」と言って買ったばかりのアーデンを売りに出すケースが多いそうだ。私も以前から次のスピーカーはタンノイ・アーデンにほぼ決めていたので触手が動いた。前々からどちらにするか悩んでいたクオードとLUXのセパレートアンプで聴かせてもらったが、たまたま中古で出ていたSONYのアンプを聴いたときに、「何という高貴な音!」とほれ込んでしまった。クールでしかも繊細で、低音の押し出しもあって、スケールが大きい音だった。タンノイ独特の中低域のもたつきもほとんど感じないし、聞き比べたクオードとLUXとは次元の違う鳴り方だった。60万円のアンプが半額と言うことだったので、SONYのアンプとアーデンを即決で買って送ってもらうことになった。いつもケチな私がポンと60万円チョイ払って買ったので、店の人もびっくりしていた。実はまだ貯金が少し余っていて、これもあの怖いバイトの賜物と内心知人に感謝した。

上 SONY TAE8450(295000円 1975年)

下 SONY TAN8250(315000円 1975年)

 定価でいうとアンプ60万、スピーカー44万である。今ならさほど高級システムとはいえないが、当時なら最高級と言えた。そして私の人生で初めてとなる高級オーディオの世界だった。帰省して届いている機器をセットしてアンプのスイッチを入れたら一瞬部屋の明かりが暗くなってびっくりした。音出しした瞬間これまたびっくり。店で聴いているのと違い、静かな部屋でじっくり聴くとより素晴らしく聴こえた。タンノイの音はどこがどうと言いにくいが、とにかく高級な音がする。スピーカーのはるか後方から聴こえてくるような奥行の深い音だ。ソニーと組み合わせたシャープでクールで繊細でモダンなタンノイ・サウンドに魅せられた。これでとうとうハイエンド・オーナーになれたと嬉しかったものだ。

 タンノイにソニーのアンプを合わせる人はまず世界でも珍しかっただろう。でも前モデル、タンノイ・ヨークをマッキントッシュやラックスの真空管アンプで聴いている人をよく見てきたが、私ははっきり言ってその音は好きではない。オーケストラはお団子状態だし、ピアノはお風呂で弾いているように聴こえる。アーデンになってやっとシャープな鳴り方をするようになって、タンノイもいいなと思えるようになった。せっかくモダンになったアーデンを真空管アンプでモゴモゴ鳴らす気にはなれなかった。

 でも半年くらい聴きこむうちに段々気になることが出てきた。これが世に言う「オーディオ地獄」というやつなのだが、高音のシャ-という鋭いノイズが気になってきたのだ。ピアノなどはシャープな打鍵感が再現され素晴らしいが、弦楽器の高音がそのシャーという音の影響で異質なものに思えてきた。そんな時に神戸のセイデンパーツでLUX KMQ80を見てしまったので、衝動買いとなった。まだバイトでのあぶく銭を持っていたことが幸い(災いかも)した。LUX KMQ80は真空管パワーアンプキットで当時88000円くらいだった。「完成できなかったら持って来て。こっちで作ったげるから・・・・」といわれその気になった。結局自分で悪戦苦闘しながら組み立てたが、これが私の人生で一番長く付き合うことになるアンプである。

真空管パワーアンプキット

LUX KMQ80 (88000円 1970年代発売?)

何回も部品を取替えながらグレードアップし、今でも素晴らしい音で鳴っている。今作ったら50万はしそうだ。

KMQ80でタンノイ・アーデンを鳴らしてみると、高音のシャーと言うノイズがフワーっという音に変わった。決してノイズが小さくなったわけではないと思うが、ノイズの質が違うのである。やっぱりホーントゥイーター独特のひずみは真空管アンプのほうが上手に処理するようだ。それだけでなくこのアンプはすごいのだ。米国軍使用の6336Aと言う特別な真空管を出力管とする3極管プッシュブルアンプだが、パワーはなんと60Wもあった。真空管アンプは出力の割りに立派なトランスを持っているので、パワー感は同クラスのトランジスタ・アンプをはるかにしのぐ。このアンプで鳴らすとスピーカーがどっぷり鳴る気がした。底力があって、しかも暖かい表現をする。音像も両スピーカーの奥に広がり、定位もぴたりと決まる。ソニー+タンノイの音より決して優れているとは思わないが、全く趣を異にする音となった。世の中のタンノイ・ファンはこういうのが好きなのだろうなと思った。一般に「タンノイには真空管アンプ」と言うのが定番になっているが、なるほどなあと納得した。

このアンプはその後、セイデンパーツで店頭処分されていたのでまた買った。店員さんが作ったらしいが、さすがに私が作ったものより良くできていた。残留ノイズも全く感じないいいアンプだったが、ヤフオクで最近売り払った。それでも2000年頃、あるソプラノ歌手のだんなさんに無理を言って譲ってもらったのがあって、現在でも計2台持っている。(一時は3台持っていたことになる)でもその中古のアンプは残留ノイズがすごくて使い物にならなかった。まあ、部品取りにでもしようと思って持っているが、親しい人から譲ってもらうと文句が言えないというリスクもある。6万円で譲ってもらったが、新品なら15万円の真空管が2本付いているのだから、文句を言う筋合いはないのだが・・・・・・・

私も何度か意を決して高級アンプを買いに行ったこともあるが、結局どれもこのKMQ80より良い音とは思えなかったこともあり、アンプに百万近くかけるということはなかった。決して解像力の高いアンプではないが、音色がすばらしく、楽器の余韻も良く出る。よく出来た球のアンプはいつまでも古さを感じさせない音楽的な鳴り方をするものだ。

そうこうしているうちに、1979年4月からまた東京に舞い戻ることになり、ソニー+タンノイは実家に置いていった。やがて1982年にマンションを買う時に、どうせこんな大きなものは置けないので処分して頭金の一部とした。 



B&W

B&W  CDM9NT  (1本160000円 2001年)
私は自作スピーカー派ではあるが、自作するうえで常に標準となるメーカー製の優秀なシステムが必要である。自作品だけを聴いているとバランスが崩れていても気が付かないことがある。かつてはVICTOR SX500だったが現在の私の標準機がこれである。いいスピーカーと聴き比べながら理想の音に追い込んでいく。
本器はワイドレンジでタイトでモダンな音だが、決して鳴らしやすいということはない。うまく鳴らすと奥行がでてすばらしい音になる。B&Wとしてはトゥイーターの性能が売りなのだが、どうも硬質で疲れる音質だ。高音をマイルドに鳴らすのがこのスピーカーを活かすコツである。ベストは真空管式KMQ80で鳴らすと柔らかくてのびやかでつややかな高音が聴こえる。でも夏はストーブみたいになるアンプなので使えない。サンスイB2301が我が家の高級機だけど、これで鳴らすと高音のきつさは直らない。YAMAHAのMXー1がバランスよくきれいに鳴らす。私は無頓着にセットしているが、置き場所も音にすごく影響する。私はその辺の努力は面倒だと感じるほうで、「まあこれでいいか」と済ましてしまう性格なのだ。だいたい曲によって、録音によってベストポジションは違うのだ。壁から離してすっきり鳴らしたい場合も壁につっくけて低音を増強したい場合もある。こだわる必要はない。まあその辺がマニアじゃないところだと思う。

TANNOY ⅢLZ

TANNOY ⅢLZ (1本30000円程度 70年代) 大学時代にユニットのみを購入し自作の箱に入れて楽しんでいた。ダイナコA30を超えることを期待したが、それほどではなかった。一応指定箱の寸法は守ったと思うが、このスピーカーを活かすためにはやはりオリジナルの箱に入れるべきだった。オリジナル箱は材料から吟味されているようで、きれいに箱鳴りするらしい。箱鳴りゼロを目指してつくった自作の箱だったが、それでもタンノイサウンドを楽しめた。 やはりラックスの真空管アンプSQ38Fと相性が良かった。

DYNACO A-30

DYNACO  A-30
 (1本41000円
 1970年代前半)
私が初めて使った海外スピーカーであった。東京で学生生活を送っているときに秋葉原の電気屋で出会った。私が持っていた日立HS500とは全く違う美しい音で衝撃を受けた。学生だったからすぐに買うことはできなかったが、ピアノ教師のバイトでお金を貯めて買った。ずっと憧れていたのはA-25という機種だったが、このA-30も聞かせてもらったらこっちの方がいいなということになった。使っているユニットは同じで箱の大きさが違う。やっぱり大きいほうが音に余裕もあるし余韻も出る。ということでA-30購入となった。
 全体的に雰囲気が良かったが、特にソフトドームトゥイーターの高音の魅力に取りつかれた。弦楽器が柔らかくみずみずしかった。でもよく聴いていると室内楽くらいは問題ないが、大オーケストラになるとだんだん中低域がお団子になってもやもや聴こえてくるのが気になった。この点は日立HS500の方が中低音の質はよかった。でも学生終了まではこれを愛用していた。このスピーカーをきっかけにスピーカーに関してはヨーロッパ志向となった。