はじめに/理想的なコンクリートとは?
大輪建設では高品質の建物づくりを目指して、日々努力を重ねております。そして、よりよい技術があれば積極的に取り組んでおります。
「コンクリートはひび割れるもの?」コンクリートの品質はその配合と施工次第で大きく異なるものとなります。ここでは、スランプ10cmの硬練りコンクリートの打設についてご紹介します。
はじめに
お施主様はクラック(※1)のない強くて耐久性のある建物を希望されていました。美しく、強固な理想的なコンクリートを作るためにはどうしたらよいのか・・・何度も話し合いを重ねました。
一般に建築で標準的に施工されるコンクリートはスランプ(※2)18cmですが、スランプ18cmのコンクリートでは、コンクリートの中にセメントとの水和反応に必要のない余分な水(やわらかくして施工性を良くするために入れられる)が入っているため、乾燥収縮の絶対量が大きくひび割れが起きやすいといえます。
そこで、ひび割れを防止するためコンクリート中の水の量を減らしたスランプ10cmの硬練りコンクリート(※3)を打設することになりました。
当社にとっては初めての試みであるため、東京よりコンサルの先生をお呼びして勉強会を行ったり、生コンの試験練りをしたりと試行錯誤の中準備を進めていきました。
※1)建物の外壁や内壁、基礎などにできる亀裂やひび割れのこと。クラックには、表面クラックと構造クラックがあり、表面クラックは強度にさほど影響はないが、構造クラックの場合、強度に大きな影響を与えるため、万が一、住宅の躯体部分にクラックを発見したら、専門家に判断してもらうことが大切である
※2)フレッシュコンクリートの軟らかさの程度を示す数値で、小さい数値ほど水が少なく固いコンクリートとなります
※3)コンクリート土木ではスランプが約5㎝未満のものをさし、建築ではスランプが15㎝未満のものをさすコンクリートのこと
理想的なコンクリートとは?
コンクリートは作り手の作り方や環境に応じて素直に固まります。作り方次第では、大理石のような美しい輝きを放つ非常に強固なものとすることも可能です。
供試体での比較
左/通常の作り方で創った供試体。
右/理想的な作り方で作った供試体。表面にガラス質が構成され、美しい輝きを放っている。粗骨材が多い小樽港の配合を再現した
コンクリート供試体の断面水が少なく、粗骨材が多い小樽港の配合を再現したコンクリート供試体の断面。型枠に詰めた後、ジャッキで加圧し、密実に仕上げたもの。気泡がない。
土木配合の生コンを用いた
コンクリート供試体の断面スランプ12cm、水セメント比60%程度の土木配合の生コンを用いたコンクリート供試体の断面。表面には気泡が目立つ。
コンクリート打設準備
1.生コン試し練り
ミーティングにより、コンクリートの配合を決定。試験練りを行いました。
コンクリート配合
- 設計強度
- 27N/mm²
- 割増強度
- 3N/mm²
- 温度補正
- 3N/mm²
- スランプ
- 10cm
- 空気量
- 4.5%
- 最大骨材
- 25mm
- セメント量
- 337kg
- セメント比
- 46.0%
1)使用材料の計量確認
試験体となる材料を正確に計量します。
2)練り混ぜ状況
ミキサーに材料を投入し、練混ぜます。
3)生コン品質試験
スランプ、空気量、塩化物含有量等を測定します。
4)圧縮強度試験(1週目)
1週間後、圧縮強度試験を行います。
5)圧縮強度試験
上から徐々に圧力をかけていきます。
6)圧縮強度試験(4週目)
4週間後、再度圧縮強度試験を行います。
理想的なコンクリートの条件とは
- 1. 硬化組織が緻密に生成している
- 2. 粗骨材が多い
- 3. 表面がガラス質で覆われている
丈夫で長持ちするコンクリート躯体を作るためには
- 1.水が少なく、粗骨材が多く、スランプが小さい硬練りコンクリート
- 2.打設にあたっては十分な締め固めのための再振動
- 3.入念な湿潤養生 の実施
2.ミーティング/現場説明会
1)コンクリート打設ミーティング
コンクリートの配合、使用する機械、打設人員、当日のタイムスケジュール、生コン車、ポンプ車の配置といった打設計画を立てます。
打設に携わるスタッフ全員が計画を把握できているようにするため、打設計画書や講習DVDを見ながら綿密なミーティングを行いました。2)現場説明会
この度、当現場にて高密度な硬練りコンクリート打設に取り組むにあたり、総合コンクリートサービス(株)の岩瀬氏の指導を受けました。
打設前には、お施主様、当社スタッフ、生コン工場技術者、ポンプ圧送工、コンクリート工、左官工、鉄筋工、型枠工、設備工、電気工等工事関係者が集まり、勉強会を兼ねた打設に伴う現場説明会を行いました。
コンクリート打設
3.打設前準備
1)散水
型枠や打ち継ぎ部に散水します。
2)朝礼~最終ミーティング
朝礼の後、打設前の最終ミーティングを行いました。
3)バイブレーターセット
3種類のバイブレーターを用意し、セットしました。
4.生コン試験
3台のミキサー車より生コンを採取して、それぞれ試験を行いました。
1)生コン採取
試験で使う生コンを採取。
2)生コン試験(1台目)
スランプ試験、塩化物試験、空気量、コンクリート温度の測定とテストピースを作成。
3)生コン試験(3台目)
2台目、3台目はスランプ試験とテストピースの採取のみ行いました。
5.打設(壁)
打ち込み作業〜しめ固め〜たたき
生コンを型枠内に詰め込むように充てんします。
その後、コンクリート内部の分離した水を型枠の下から上へたたくことで、追い出します。またバイブレーターで振動を与えることで、コンクリート内部の「硬化」に不要な水と、空気を追い出します。※写真をクリックすると動画が見られます
約1時間後(ブリーディング現象確認後) コンクリートの再振動〜しめ固め〜たたき
コンクリートのブリーディング現象(※1)によりできた水ミチ(※2)を壊し、より密実なコンクリートをつくるためにコンクリートの再振動作業を行います。 また、再振動作業の際、タタキも同時に行い充てん時に追い出しきれなかった空気を追い出します。
※写真をクリックすると動画が見られます
※1 コンクリート打設後にその構成材料のうち比重の最も小さい水が、骨材、セメント粒子の沈降に伴ってコンクリート上面に上昇する現象
※2 コンクリート中にできた微細な水の通り道
6.打設(スラブ)
打ち込み作業〜しめ固め〜たたき
3台以上のバイブレーターを使い、気泡を逃がすように充てんします。その後、コンクリート表面をレベルポイントを目安に均します。
※写真をクリックすると動画が見られます
約1時間後(ブリーディング現象確認後) 踏み固め作業〜タンピング
スラブ上でコンクリート表面を、人の足を使い踏み固めます。その後バイブレーターをかけ足跡を消し、タンピング作業をすることでコンクリートスラブの加圧を行い、不要な空気や水を強制的に追い出しコンクリートを密実に。
※写真をクリックすると動画が見られます
「タンピング」で表面の堅いコンクリートに
コンクリートの表面を足でしっかりと踏み固め、さらにタンパーと呼ばれる道具を用いてコンクリート表面を締め固める「タンピング作業」を行なっています。この作業によって、表面の強固なひび割れの生じにくいコンクリートになります。
仕上げ均し作業
トンボやコテ押さえによりコンクリートの表面を均します。コンクリート面をしっかりと押さえつけるように均すことで、単に表面がきれいに仕上がるだけでなく、表面の密度が高まります。
1)トンボ作業
コンクリート面を圧するように作業します。
2)コテ押え
コテで入念に加圧しながら表面を均します。
7.打継部レイタンス処理
レイタンスとは、コンクリートを打つ時、コンクリート内の不純物が表面に浮き出て(これをブリーディングという)、それが薄く固まったものです。
レイタンスが存在すると、打継部でコンクリートを一体化させにくいため、レイタンスの除去作業を行う必要があります。
1)高圧洗浄機による作業
高圧洗浄機を用いてレイタンスを除去。
2)レイタンス除去
砂目が現れるまで、表面を削ります。
レイタンス除去で確実に打ち繋ぐ
レイタンス処理まで行っている現場は、大規模工事でも、住宅現場でも極めて限られているのが現状です。ですが、レイタンスの上にコンクリートを打ち継いでも強固な装着は期待できません。地味なことで手間はかかりますが、構造は家の中でも一番重要な部分。大輪建設はしっかりと丁寧な施工をしています。
コンクリート養生〜反省会
今回打設したのは12月ということもあり、外気温も低いためシート養生と散水養生を併用して行いました。
8.脱型前までの養生
コンクリートは乾燥に弱く、外部環境から保護することが大切です。 床面は打設終了後ただちに散水し、ビニールシートで覆い乾燥を防止します。また、気温が低い場合は、ビニールシートの上にさらにブルーシートをかぶせるなどして凍結を防止します。 壁面は、型枠の乾燥により型枠に隙間ができるのを防ぐため、型枠の上から散水します。
1)湿潤養生
散水後ブルーシートを重ねて養生します。
2)散水養生
型枠の上から散水しています。
3)シート養生
シートで覆うことで乾燥と凍結を防止します。
9.脱型後の養生
コンクリートの保湿養生効果を持つ「ダストプルーフ0A」という防塵塗料を塗布することで養生しています。
1)脱型
養生期間の後、型枠を取り外します。
2)壁塗料塗布
「ダストプルーフ0A」という防塵塗料を塗布します。
3)スラブ塗料塗布
「ダストプルーフ0A」はコンクリートの保湿養生と強化防塵が同時に出来ます。
10.反省会
反省会
コンクリート打設終了後に反省会を実施。
反省点を出し合い、打設方法の検討・次回目標を立てます。
打設計画の立案と反省会を繰り返し行うことで、関係者一同の技術を高めると同時に自信を深めることができ、ひび割れのないコンクリートの実現に向けて、大きく前進することになります。