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インクジェット特集 2016

コダック
コンティニュアスの技術革新と優位性 〜 次世代インクジェットプラットフォーム発表

国内でも注目高い水性インクによる軟包装印刷
執行役員エンタープライズインクジェットシステム本部長 河原 一郎 氏に聞く

印刷ジャーナル 2016年9月15日号掲載

​ インクジェットの技術開発においておよそ50年の歴史を誇るコダック。今年3月には「プロスパー事業売却」というニュースで業界に激震が走ったが、drupa2016では、次世代インクジェット技術のプラットフォーム「ULTRASTREAM(ウルトラストリーム)インクジェットテクノロジー」やプロスパーSによる水性インクを使った軟包装フィルム印刷システムを発表するなど、インクジェット分野での存在感を改めて見せつけた。そこで今回、国内インクジェットビジネスを担当する執行役員エンタープライズインクジェットシステム本部長の河原一郎氏に、そのソリューションの実力と開発の方向性などについて聞いた。
DODとコンティニュアス
 コダックにおけるインクジェット技術開発の原点は1967年、およそ50年前に遡る。オーナーはミード→ダイコニクス→コダック→サイテックス→コダックと移り変わってきたが、この間、研究開発をはじめ、製造・サポート&サービスは一貫してオハイオ州・デイトンの組織で行われており、現在では5,000社以上のユーザーと1万台以上の導入実績を誇っている。そのコア技術となっているのがコンティニュアス方式の「Streamインクジェットテクノロジー」だ。私は今回のdrupaで、この「コンティニュアス」の優位性を改めて再認識することができた。
 drupaにおいて発表、展示されたインクジェットシステムは、コダック以外すべてがドロップ・オン・デマンド(DOD)を採用しているが、まず、これらのアプリケーションにあまり進化が見られなかったという印象が強い。実際に公開されているデモンストレーションは、ドキュメント主体のものが多く、すべてではないものの、商業印刷やパッケージ向けにはチャンピオンサンプルを展示し、実際のサンプルを持ち帰ることができないブースも見受けられた。
 一方、当社が展示実演した輪転デジタル印刷機「プロスパー6000Cプレス」は、40m/分程度でアイドリング稼働しながら実際のデモに入ると300m/分のスピードで印刷。出来上がった印刷サンプルをそのまま配付していた。
 これは、やはりDODとコンティニュアスの違いである。DODはどうしても「ノズルのつまり」という問題がつきまとうからだ。
 複数のお客様から聞いた話だが、DODの場合、インクカバレッジの小さい書籍などのドキュメント系の仕事の後に、インクカバレッジの大きい商印系の仕事に変わった瞬間、使っていなかったノズルからインクが出ず、クリーニングやパージ処理によってそれを調整するのに数時間費やすこともあるという。つまり、ヘッドをパーフェクトな状態に戻すために時間が掛かり、展示会などでのデモではその欠点が如実に表れてしまうということである。これは実際の生産現場での運用が非常に困難であることを示唆する事象と言える。
インクカバレッジの大きな仕事に有利
 いままではトランザクションや書籍がメインだったインクジェット分野も、drupa2016では「商業印刷やパッケージ分野へのアプローチ」という方向性を明確に示していたと言える。つまり、インクカバレッジの大きな仕事へのニーズだ。コンティニュアスの「プロスパー6000Cプレス」には、この点で大きなアドバンテージがある。
 Streamインクジェットテクノロジーは、均等に配列されたノズルから加圧し、コンティニュアスインクジェットノズルで常に一定の液流を形成する。その液流が熱エネルギーの刺激を受けてインク液滴に分裂し、用紙方向あるいは再循環用のガターに向かって進むというもの。一方、DODの場合、前述のようにノズルからインクが常に出ているわけではなく、信号によってドロップを落とすため、ノズルが乾かないようにインク中にウェッティングエージェント(保湿剤)を混入させる必要がある。これが紙に塗布されると「乾きづらい」ということになる。Streamインクジェットテクノロジーには保湿剤が不要なため、乾燥性が高く、高カバレッジの仕事への対応、あるいは用紙多様性というメリットをもたらし、さらにインクの製造コストも低く抑えることができる。
 一方、乾燥方式については、CMYK印刷後に単一ポイントで乾燥させる「ウェット オン ウェット」という従来方式に対し、プロスパー6000は、CM+乾燥+Y+乾燥+乾燥+K+乾燥といった複数ポイントで乾燥させるインターステーション近赤外線乾燥の機構を持つ。これにより用紙の水分量を抑えることでインクや用紙のトラブルが起きにくく、コントラストやディテールも向上する。
 しかし、各色間で乾燥させるこの方式では、多量な水分を乾燥できるという大きなメリットがある反面、紙の伸縮による色間精度の低下という課題を誘発する。そこでプロスパー6000では、オペレーションを常にカメラで監視・評価・調整して出力品質を確保するインテリジェントプリントシステム(IPS)を搭載。高度な5種類のリアルタイム調整で、色間のズレを瞬時に補正している。
 さらにプロスパーの網点再現性の高さは実証されているところ。コンティニュアスインクジェットノズルによって強い圧力で水性顔料ナノサイズインクを噴射しているため、印刷スピードの影響を受けず、まるでオフセット印刷のような均一できれいな網点を再現できるのも特長のひとつだ。
 当社はdrupa2016の会期中、トッパン・フォームズ様にプロスパープレスの5台目を販売したことを発表させていただいた。これによりトッパン・フォームズ様は世界最大のプロスパーユーザーとなった。主な用途は、パーソナライズ教材やビジネスメール等のバリアブル印刷で、まさに「稼ぐデジタル印刷ビジネス」を実践する数少ない事例と言える。
 トッパン・フォームズ様がはじめてプロスパープレスを導入したのは2010年。それから数年かけてシステムを作り上げた経緯がある。その後も度重なる改良を加えてきたわけだが、そこには、インク・ヘッド・デジタルフロントエンドのすべてを自社で開発し、最適化できるコダックの総合力があり、トッパン・フォームズ様にもこの部分を評価いただいたと認識している。
存在感見せつけた新ソリューション
 近年、軟包装印刷市場では小ロット・多品種化、短納期化への対応が大きな課題となっている。
 コダックは、この課題解決に向けたソリューションとして、イタリアのフレキソ印刷機メーカーであるウテコ社の搬送システムにプロスパーSプリントヘッドを搭載した軟包装フィルム印刷システムをdrupaで展示実演した。小〜中ロットをカバーする低ランニングコストの水性軟包装印刷システムとして帰国後も多くの問い合わせを頂戴している。
 同システムの最大の特徴は、水性インクでフレキシブルフィルムに高速印刷できる点。CMYKにオレンジ、緑、紫を加えた7色で色域を拡張し、ラベルやパッケージの印刷で使用されているPantoneカラーに対応。最後に水性デジタルバーニッシュでニスコーティングしている。インクは食品包装材料規制に準拠したパッケージ専用水性インクを使用。会場では最高125メートル/分のスピードで印刷デモを実施した。
 本来、裏刷りも必要だが、白インクは現在開発中。デモでは事前にコダックが開発したプレコート剤が塗布された白いフィルムが使用されていた。
 なお、同システムはdrupaで正式リリースされ、今後はウテコ社がグローバル販売を行っていく。
 一方、大きな可能性を秘めた次世代インクジェットテクノロジープラットフォームとして「ULTRASTREAMインクジェットテクノロジー」を公開した。
 従来のStreamインクジェットテクノロジーは、インクノズルに熱を加える時間の長さによって大小のインクドロップを生成。小さいドロップを風で飛ばし、大きいドロップでイメージを形成する。
 一方、今回発表されたULTRASTREAMは、小さいサイズのドロップを均一に落とし、印刷されない部分に電荷をチャージして、それを抜き取るという技術。印刷部分は電荷に影響されずに落ちてイメージを形成する。
 この技術により、インクサイズはStreamのおよそ1/3になり、各種の用紙やフィルムに最高150メートル/分の速度で600×1,800dpi(3.75pl)の高精細印刷が可能になるというものだ。
 また、大きな特長は、最大97インチ(24ヘッド)まで拡張が可能なこと。プロスパーSヘッドはスティッチングを認めておらず、現行機種による幅広の印刷はプロスパー6000プレスで使っている24.5インチのラインヘッド、もしくはボブストに供給している49インチのラインヘッドの2機種となっており、限定したOEM先のみに供給されている。
 ULTRASTREAMは、インクを風で飛ばさないため、エアダクト部分を省けることからコンパクトになっており、拡張も容易で、かつコストダウンにも成功している。1ノズルあたりのコストはDOD並みになる見込みだ。
 製品化は2年後を予定。あくまでプレスベンダーへオープンにOEM供給されるもので、2019年くらいからシステムが上市される見込みである。プリント幅の制約がなくなることから幅広の建材やグラビアなどにも対応できる可能性がある。従来のStreamは生産性重視、ULTRASTREAMは品質重視として並行販売していく計画だ。
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 drupa2016でのソリューション展開によってコダックのインクジェット事業におけるロードマップが見えてきた。プロスパープレスにおいても大手のオフ輪印刷会社での反応が少し変わりつつあり、市場にも変化が見られる。その中でも当社の強みであるダイレクトメールや薄紙のカタログ、新聞などへの展開を強化するとともに、大きなポテンシャルを秘めた軟包装印刷や建装材分野で新たな事業領域創出を目指したい。