モトグッツィ V9ボバー

取材・文/佐川健太郎  写真・動画/山家健一  衣装協力/HYOD

トレンドを取り入れたボバースタイルが魅力

V9ボバーはモトグッツィ久々のブランニューモデルである。「ボバー」とは米国を中心に最近広がっているクルーザーカスタムの新たな潮流。派手なエクステリアや豪華装備になりがちな従来のビッグクルーザーとは異なり、装飾を省いたシンプルなデザインや落ち着いたモノトーンカラーが特徴となっている。モトグッツィにはラグジュアリークルーザーとしてのハイエンドモデルである「カリフォルニア1400カスタム」があるが、より軽量・コンパクトな車体とスポーティな乗り味で仕上げられたV9ボバーは、そのコンセプトやスタイルもまったく異なるモデルと新しいジャンルのモデルと言えるだろう。

モトグッツィ V9ボバー 特徴

排気量を拡大しエンジンを刷新
トラコン&ユーロ4対応で現代の走りに

エンジンはV7シリーズに採用される伝統の空冷縦置きV型2気筒OHV2バルブをベースに排気量を850ccに拡大。新型アルミ製シリンダーヘッドの採用による燃焼室形状の変更や、ピストンとシリンダー、動弁系の見直しによるフリクションロス低減と耐久性向上、オイルラインの改良などにより、これまでネックとされていたエンジンの発熱によるパフォーマンス低下に対応。同時に燃費と出力も向上させている。また、シリンダーヘッド内に新設された補助エアシステムと三元触媒、O2センサーとの組み合わせにより、欧州の最新排気ガス基準であるユーロ4に適応している。

車体はV9ボバー専用設計となる高張力鋼管ダブルクレードルフレームにフロントは正立フォーク、リアはスプリングプリロード調整式ツインショックを組み合わせ、ブレンボ製対向4ピストンブレーキ(フロント)を含む前後ディスクブレーキを装備したニューデザインのアルミダイキャストホイールなど、シンプルながら充実した足まわりを採用。前後16インチのタイヤは懐かしさの漂うハイプロファイルタイプで、特にフロントには極太の130サイズが採用され、ボバーらしさを演出するチャームポイントとなっている。

新世代のモデルに相応しい電子デバイスも装備された。前後ブレーキをそれぞれを独立して制御する2チャンネルABSシステムの他、トラクションコントロールシステム(MGCT)を採用。2段階の介入度が設定され、路面状況やライディングスタイルによって任意にセレクトできるなど、安全性も向上している。

また、イモビライザーやUSBポートを標準装備する他、オプションではBluetoothでスマホをリンクできるマルチメディア・プラットフォーム(MG-MP)を用意するなど、単なるスタイルにとどまらない現代的なユーティリティを備えていることにも注目したい。

モトグッツィ V9ボバー 試乗インプレッション

伝統の味わいは残しつつ
走りは現代的に洗練された

イメージしていたよりずっとコンパクトな車体だ。V9ボバーは今年の東京モーターサイクルショーで展示されていたのを見ていたが、クルーザーの印象があったので記憶の中では大きな車格になっていた。

でも、目の前のV9は華奢なほどスリムにまとまっている。ダークトーンのカラーリングも引き締め効果があるのだろう。タンクにペイントされたアンシンメトリーの橙色が映える。ただ、真後ろから見ると、車体から左右に突き出したツインシリンダーがモトグッツィであることを主張している。このアンバランス感がまたいい。

跨ってみると、さらにスリムさを実感。シリンダーなどのボリューミーな部分はヒザの前にあるので、並列エンジンのように大きな塊を挟み込んでいる感じがない。低いシートのおかげで足着きもすこぶる良い。ライポジは上体が起きたネイキッドのような感じでクルーザーっぽくなく、やや前寄りのステップ位置も実用的だ。シートの座面がフラットなので、体格や好みで着座位置をいろいろ変えられるのも便利だ。一点、モトグッツィの伝統でもあるシリンダーブロックとヒザの干渉が最初は気になったが、それも走り込むうちに乗り方の工夫でクリアできることが判明。つまり、ニーグリップを解いて“ユルく乗る”ことがポイントなのだ。そう、新型V9は都会的な感性で普段着でも気軽にふらっと乗れるボバーなスタイルが魅力なのだ。

エンジンは従来からのV7シリーズより排気量が100ccほど増えて、よりパワフルになった。特に発進からの加速が明らかに速くなっている。中速域でのトルクも弾けていて、高速道路などでの追い越しも楽になった。ほとんど新設計ともいえるエンジンは現代的に洗練されて、回転フィールもよりスムーズになり、空冷縦置きVツイン独特の粗粒な鼓動感は残しつつも振動は少なく抑えられている。シフトフィールも滑らかになり、軽いタッチで節度感のあるギアチェンジができるようになった点も見逃せない。モトグッツィならではの、アクセルオンで車体が右に傾きテールがリフトしてくるトルクリアクションが健在なことも、マニアには嬉しい部分だ。

ハンドリングはとても素直で安定感があり、見た目以上に軽快。エンジンフィールはこの上なく個性的であるのに、これだけ普通に乗りこなせるところが素晴らしい。縦置きVツインのメリットでもあるロール方向への動きの軽さを生かした軽快なコーナリングもまた魅力。それでいて、前後16インチのファットタイヤによるゴロっとした倒し込みの手応えも味わい深く、それが特にフロントの接地感にもつながるなど、ハンドリングもじっくり作り込んできたな、という印象だ。

ブレーキは前後ディスクタイプで、クルーザーとしてはフロントもしっかり効いてくれるし、前後サスペンションの味付けも比較的カッチリしているのでスポーティな走りも無理なく楽しめる。そして、電子制御の恩恵。トラクションコントロールの介入レスポンスは穏やかだが、路面のうねりやマンホールの通過でグリップを失ったときなどは、確実に作動してくれることを確認できた。2チャンネルABSともども走りに余裕と安心感をもたらしてくれる、頼もしいデバイスだ。

モトグッツィらしい個性と新鮮味のある美しいスタイリングに加え、ライディングフィールも洗練されるなど、完成度の高いパッケージングに仕上がっていると思う。つい見た目のデザインや雰囲気に目を奪われがちなV9ボバーだが、実はけっこうイイ走りをするスポーツモデルの一面も持っていることが強く印象に残った。

詳細写真

伝統の空冷縦置きV型2気筒OHV2バルブ853ccエンジンを搭載。V7シリーズをベースにボア・ストロークともに拡大して排気量アップし、シリンダー&シリンダーヘッド、ピストン、オイルラインなどを刷新するなど、クランクケース以外は新設計となった。

シリンダーヘッド内部に補助エアシステムを新設、三元触媒やO2センサーを装備するなど欧州の新排気ガス基準「ユーロ4」に対応するなど環境性能も高められた。ロゴ入りの新作ヘッドカバーを採用するなどV9専用のハイグレードなディテールもポイント。

扁平タイプの薄いデザインのスチール製燃料タンク(容量15リットル)がユニーク。鮮明なオレンジカラーを使い左右非対称に塗り分けられたタンクが外観上のポイントとして強い印象を残す。

グレーステッチとパイピングを施されたシートがノスタルジックでお洒落。ほぼフラットな形状で着座位置の自由度は抜群。滑りにくい素材でホールド感がありタンデムもしやすい。

シートはメインキーで簡単に脱着可能。スペースはわずかで最低限の車載工具が納まるのみ。ロゴ入りのサイドカバーはスチールに見えるが実はアルミ製というこだわり様。

フロント足まわりは正立フォークとブレンボ製対向4ピストンキャリパー&シングルディスク、アルミ鋳造ホイールの組み合わせ。ハイプロファイルの16インチ、130サイズタイヤがボバーらしさを強調。前後フェンダーともスチール製を採用するなどディテールの質感へのこだわりが光る。

リヤまわりはドライブシャフト一体型スイングアームとプリロード調整付きツインショック、2ピストンキャリパー&シングルディスクの組み合わせ。リヤタイヤも16インチ、150サイズでフロントとのバランスも良い。マフラーはオーソドックスな左右2出し。

丸目1灯のヘッドライトは一般的なマルチリフレクタータイプを採用。クリアレンズのウインカーと合わせてシンプルなイメージでまとめられている。

一文字タイプのハンドルバーにデザインされたスイッチボックスをマウント。現代のバイクらしく、メーターのモード切り換えスイッチ、トラクションコントロールのボタンなどが配置されている。

スマホなどのITガジェットに対応するUSBポートをステアリングヘッド下の右サイドに配置。防犯対策用のイモビライザーも標準装備する。

ステップまわりはホルダー、バー、ペダルなどすべてのパーツが高級感のあるアルミ製。ステップ位置も自然な前寄りで、快適かつスポーティなライポジとなっている。操作性も良い。

ホワイトパネルに細めのブラックレターのアナログ式速度計と、その中に控えめに設けられたデジタル表示が、シンプルで上質な雰囲気をかもし出すメーターまわり。

モトグッツィ V9ボバー 動画でチェック!

SPECIFICATIONS – MOTO GUZZI V9 BOBBER

価格(消費税込み) = 124万8,000円
※表示価格は2016年9月現在

モトグッツィV7シリーズの排気量を拡大した伝統の縦置きVツインエンジンを、現代的なクルーザーカスタムの流行である「ボバー」スタイルの車体に搭載した最新モデル。

■エンジン型式 = 4ストローク 空冷90度 V型2気筒 OHV2バルブ

■総排気量 = 853cc

■ボア×ストローク = 84×77mm

■最高出力 = 40.44 kW (55 HP) / 6,250 rpm

■最大トルク = 62 Nm / 3,000 rpm

■トランスミッション = 6速リターン

■サイズ = 2,185×840×1,160mm

■車両重量 = 199kg

■シート高 = 780mm

■ホイールベース = 1,465mm

■タンク容量 = 15リットル

■Fタイヤサイズ = 130/90-16

■Rタイヤサイズ = 150/80-16

この記事を読んでいる方におすすめの商品

あわせて読みたい記事

この記事を読んでいる人はこんな記事も読んでいます