ジベルばら色粃糠疹闘病記
ボンジュール マダム
しかしもう、こんなヘンな病気になるなんておもってもいませんでしたよ。
身体中にバラ色の発疹が広がる、フランス人医師の名のついた原因不明の奇病。
とっても痒いし、見た目がひどく気持ち悪いです。
でも一過性で熱も痛みもなく、2ヶ月ほどで自然治癒するちょっと優しい病気らしい。
涙の発症編
それはフランス革命前夜の213年後、西暦2012年11月19日夜の出来事だった。
場所は旧仏領インドシナ、現在のベトナム社会主義共和国の首都ハノイ。
11月19日夜:
おや?
20日夜:
ビールを呑んだ後で体がムズムズしてきたぞ。
鏡を見ると、オヘソの下に小豆大の赤い湿疹が20個ほど発生。
胸、上腕部にも小さい赤いブツブツ現る、ナポレオン遠征軍も現る。
21日朝:
ブツブツは一旦引いたるが、その跡がでこぼこ状に残る。
一日様子を見る事に。
21日夜:
食事後に20日夜と同様の症状が再発。
ピンク色の薔薇状の発疹が一気に全身に広がる。
こ、これは怖い。
なせだ?(三越の岡田社長か?)
22日朝:
翌朝、発疹は一旦引いたが、慌てて外国人向けクリニックを受診。
日曜に沢山食べた小粒のミカン、新しい中国製炊飯器で炊いた白米のアレルギーなどを疑う。
週末は様子をみよう。
23、24、25日:
夜になると赤いブツブツが大量発生してとにかく痒い。
発疹の範囲が、腹部全体、脇腹、腕、足の付け根に拡大し、皮脂が損なわれる感じ。
気のせいか頭皮のフケが多くなり、顔の皮膚もカサカサに。
抗ヒスタミン剤が全く効かないので、アレルギーが原因ではない?
原因がわからず、悪化傾向にあるので、精神的にかなり厳しい。
死ぬかも。
というか、気分的にはもう死んでいる。
26日:
クリニックを再診、肝機能、血液検査、アレルギー検査を実施。
同日夜にベトナム人皮膚科専門医の診察を受ける。
医師はジベルばら色粃糠疹(ひこうしん)の可能性が高いと示唆。
その場でiPadで検索した写真と照合しても、この症状の典型例に近い。
一過性の良性発疹のようなので、どうかこれであってほしい。
先週とは別の抗ヒスタミン錠2種と、少し強い塗り薬を処方される。
27日:
日中も赤いブツブツが出たまま状態が続き、範囲は背中や足など全身に拡大。
発疹と発疹の間に新しい発疹が次々生まれている。
これは気持ちが悪い。
仕事に全く集中できないので、午後は早退して今週中は自宅勤務とする。
気分的にはもう死んでいるので、死者としてこの世で仕事をする必要もないのだが。
とにかく体中が常にズーム、ズームして魂が落ち着かない。
こ、これが「魂動」なのかマツダ?
驚きの確定診断編
28日:
肝機能、血液、アレルギー検査の結果がでるが、すべて異常無し。
梅毒も否定される。(当たり前や)
皮膚科医、内科医ともジベルばら色粃糠疹で診断が一致、やっと正体が確定する。
ブラボー。
死なない病気だ、フランス万歳!
ジベル薔薇色粃糠疹、ジベルバラ色ひこう疹という書き方もあるらしい。
英語で書くと Pityriasis rosea 、ロシア語ではПИТИРИАЗ РОЗОВЫЙ。
これ略すとベル薔薇、ベルばら?、ベルサイユのばら。
「自由であるべきは、心のみにあらず!」
なんとWeb上のジベル発疹サイトの76%が「ベルサイユのばら」と絡めているようです。
本当に深刻な病気の闘病記とかならそんな事しないよね。
つまりこれ、大した事無い?
はいそうです。
派手な名前の割にはたいしたことないらしいが、完治に2ヶ月かかるらしい。
このベルばら病、熱や痛みの無いのは幸いだが、夜はとにかく痒いので全く眠れない。
ベトナムでナポレオン遠征軍との消耗戦に突入す。
「さぁ撃て、武器を持たない平民議員に手を出すというのなら、私の屍を越えていけ、私の血で紅に染まっていけ!」
フランス万歳!
29日から12月3日:
赤い湿疹がますます増え、古いものの中央部の皮膚がフケ状に剥がれだす。
この皮が剥がれるところが「粃糠疹」というらしい。
典型例とよく合致したオーソドックスな患者でなんだか嬉しい。
嬉しいので死ぬのはやめて「患者を生きる」ことにする。
不思議なことに顔や手のひらには出ないが、首筋や耳の裏には軽く発疹が出ている。
夜にひどく痒くなり、寝ていても無意識に掻きむしるのか朝起きると満身創痍。
朝、日中の痒みはそれほどでもないが、ゾワゾワ感が継続して仕事に集中できず。
とにかく見た目が気持ち悪くて吐きそうだ。
先の展開が見えないので、精神的に本当に参ってしまう。
神はいないのか?
レ・ミゼラブル。
眠れないのでロゴを作ってみたの編
12月3日深夜:
痒くて痒くて眠れないので、気を紛らわすためにジベルのロゴを作ってみた。
エンジェルの背中のバラ色発疹がデザイン上の訴求ポイント。
夜中に何してるオレ?
奇病にかかった心の動揺がデザインに顕われている。
これではダメだ。
このロゴはコピーフリーですから、持って帰ってあちこちに貼ってね。
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デザインスタジオたぬき
(うそ)
鮫皮おろしを買わずに済むの編
12月4日、5日:
もう体中の皮膚が凸凹になってきた。
発症2週間を超えたが、まだピークへの到達感がない。
魂動のゾワゾワ感が相変わらずだが、なぜか少し慣れてきたような気がする。
でも、ここから更に悪化するとイヤだな。
強いなジベル。
不思議な宇宙のエネルギーを全身の皮膚に感じる。
なぜか太陽の沸騰する音や土星の輪が回転する音まで聞こえだした。
これはメンタルが悪い。
12月6日:
今朝起きると体が病気に慣れたのか、ゾワゾワ感が少し和らいだような気がした。
ブツブツも新たな発生は無いようだが、既に体中びっしりブツブツなので空き地が無く、出るに出れないのかもしれない。
ここから更に悪くなる感じもしないので、昨日あたりがピークだったのかも?
12月10日に予約を入れた皮膚科専門医の再診まで、このまま様子をみるという対応でいいだろう。
12月7日:
これは小康状態といっていいんじゃないだろうか。
どうもピークを折り返したようだ。
あいかわらず痒いし、皮膚のカサカサ感は相変わらずひどく、ブツブツ一つ一つの核が小さく赤い血豆のようになってきた。おまけにフケ状に皮がはがれる状態が続いている。
それにしても不思議とゾワゾワ感がなくなったのがとてもうれしい。
このまま収束してほしいものだが、まだ油断はできないな。
もっと光を、もっと脂をの編
12月8日、9日:
土日は安静にし、なるべく窓際で太陽に体を当てて様子を見る。
12月のハノイは曇天が続き、UVBが全く足りない。
もっと光を。
痒さが和らいだ代わりに、全身のカサカサ感がひどくなってきた。
しかしこの局面でケモノの脂を入れてよいものか?
魚の脂のほうがよくとは思うが、旨いマグロのトロはハノイで高いぞ。
12月10日:
今日、皮膚科専門医の再診を受けた。
皮膚がカサカサになるということは順調に回復しているとのこと。
抗ヒスタミン剤2種をさらに2週間継続、かゆみ止めクリームも処方される。
あと2週間様子を見て、悪化しないようであれば再診の必要なしとのこと。
よかった。
本発疹の発症が11月19日なので、3週間弱で折り返したということになる。
ここから回復に3週間要するとすれば、自然治癒に6週間となり、典型事例とよく一致する。
峠を越えたお祝いに福寿司ですき焼きを食す。
12月11日:
朝起きると、痒みがかなり引いた。
あれだけ大暴れしたジベルも力尽きた感じ。
あいかわらず全身がカサカサでタクラマカン砂漠のようだ。
カサカサカサカサカサカサ。
12月12日:
痒みやブツブツはかなり引いた。
カサカサ感が消えないので、ハノイ旧市街の有名専門店でヤギ鍋とヤギの乳腺の焼肉を食し、とにかく油脂分を体内に入れることに。
精力付きすぎとコレステロールに注意。
12月13日、14日:
アレアレアレ?
これはもうほとんど治ったといってよいのではないだろうか?
夜も痒みは消え、ブツブツもほとんど無いぞ。
風呂に入るとブツブツのあったところが少し赤くなるくらいだ。
11月19日に発症、12月6日くらいが今おもえばピークで全身ブツブツのひどい状態、そしてそこから10日かけて一気に自然治癒し、跡もほとんど残っていない。
ヤギ肉が効いたか?
12月15日:
カサカサ感もほとんど無くなった。
自然治癒するとは聞いてはいたが、これほどあっけなく治るとはおもわなかったよ。
10日前のブツブツ、ゾワゾワ、宇宙との一体感がウソのようだ。
本当に不思議な病気だった。
結果論だけども、このヘンな病気になってよかった。
原因不明ということなので、何か悪いことをしたのではと考えさせられたぞ。
これは暴飲暴食を慎み、規則正しい生活をしろという神の啓示だろう。
メルシージベル。
ジベル撤収。
この闘病記の公開趣旨
この病気、病名が派手な割には熱も出ずに治りも早いです。
でも、薔薇状のブツブツが急に全身広がっていく悪化過程は本当に怖いし、顔や手には出ないので周りの人に苦しさが理解されません。確定診断前後にはインターネットで症状から検索しまくり、皮膚科のWebページやブログ状の闘病記に本当に助けられました。
正確な情報が得られたので精神的に安定したのが良かったです。
だから私もご同病の皆様に情報を提供することにしました。
ジベルを一言で現すと。
「大したことない」
心配いりませんよ、でもお大事に。
フランス万歳!