ComicStudio EXやPhotoshopを使った
デジタルコミックのメイキングです。
※ComicStudioEXはバージョン4.5、PhotoshopはCS5を使用しています。
※この「基礎編」ではComicStudioのみ使用しています。
基礎編
サンプル原稿完成
ラフの段階からすでに、しっかりとコマ割りをしてしまいます。コミックスタジオの場合、枠線定規を使えばコマを割るのも結合するのも簡単ですので、あまり考えずにバンバン割ります。
フキダシのレイヤーの表現色は黒(1bit)です。フキダシやセリフにはあまり階調を必要としないため、軽さを重視してこの設定にしています。
ちなみに僕のネームはまず最初にセリフだけを全てのページに入れていきます。その方が後からの修正が楽なんですよね。
引き続き、絵を入れていきます。このときのレイヤーは解像度300dpi、グレー(8bit)です。
コミスタはグレーレイヤーの減色手法をいくつか選べますが、ここは「減色しない」を選びます。こうすると階調がなめらかに表示される手描きの見た目に近くなり、描きやすく感じます。
デジタルの利点は色々ありますが、こういった「レイヤーを分けて描ける」と言う部分はやはり、かなり便利な利点の一つです。
なお、僕は手描き時代は一度たりとも水色のシャーペン芯を使ったことが無く、通常の黒いシャーペンで下描きを描いていました。しかしなぜかデジタルになってからは常に水色でネームも下描きも描いています。「この方が何となく目にいい気がする」という曖昧な理由によるものなのですが…我ながら不思議です。
ちなみに僕は前者で、どうしても通常のタブレットでは下描き及びペン入れが出来ませんでした。そのため長いこと「ペン入れした原稿をスキャンしてパソコンで仕上げ」と言うことを続けていました。
転換期が訪れたのは液晶タブレットCintiqを購入してから。正直「本当に液晶タブレットがあればネーム、下描き、ペン入れ…全て出来るようになるのだろうか?」と言う疑問はありました。言わば、バクチ。しかし結果としてそれは大当たり。今ではネームから先全ての作業を画面上でこなせるようになりました。
ただし、通常のタブレット歴が長い人の中には「液晶タブレットは手元が隠れるからキライ」という人もいます。確かに通常のタブレットであれば画面全体を見渡しながら描けますので、ペンを持つ利き手の下が隠れると言うこともありません。ですのでそういったタイプの作家さんの場合「液晶タブレットなんて必要ない」と言うことになります。
そんなこんなで、液晶タブレットは万人に勧められる…と言う物ではないですが、少なくとも僕のような~通常のタブレットが苦手な~人であれば、かなり便利に使いこなせる物である、と言えると思います。
ともあれ、この行程においても、レイヤーは大活用しましょう。仕上げよりもむしろ、ペン入れの段階でレイヤーを分けておいた方が、後からの作業が楽になります。
ComicStudioの場合「レイヤーの変換」から「コマフォルダを生成する」事も出来ますが、僕はこれを選びません。これだとレイヤーやらフォルダやらが増えまくって、管理が面倒になる気がするのです。
確かに使いようだとは思いますが、特に最初のうちはコマフォルダを使わず、単純なラスタライズで管理した方がいい気がします。
なお、このときフキダシの中は真っ白に塗っておきます。こうしておけば枠線と同様、不要な部分が隠れますので、ペン入れの時に楽です。
市松模様部分が透明色。ペン入れや仕上げレイヤーはこれらの下に配置する。
レイヤー詳細 | |
効果音 | そのままです |
効果音枠 | 効果音が見やすいようにまわりを白で縁取った物です。 |
枠線定規レイヤー | 枠線定規を変換した物です。 |
フキダシ | 上で紹介した、白く塗りつぶしたフキダシです。 |
カケアミ | 人物の影などに使用しているカケアミです。 |
効果線 | 集中線や流線などの効果線です。 |
主線 | 主に人物を描くレイヤーです。 |
背景 | 主に背景を描くレイヤーです。 |
紙にペン入れをする場合「レイヤーごとに分ける」という考え方はありませんでした。しかし、デジタルの場合は、分けた方がはるかに楽に作業が出来ます。
アナログ作業の経験が長ければ長いほどこのあたりをデジタル的にするのは難しいようですが、なるべく早いうちに慣れて、自分なりのレイヤーの分け方を体得してみてください。。
通常ComicStudioの場合「トーンを貼りたい部分を範囲指定し、素材フォルダから任意のトーンをドラッグドロップ」という作業により、トーンを貼っていきます。
確かに特殊な柄のトーンの場合はそのように貼っていきますが、スタンダードな「アミトーン」であれば、トーン素材を使う必要はありません。グレーレイヤーの減色手法を「トーン化」にし、任意の線数を指定してあげれば良いのです。
例えば最も一般的なアミトーンの線数は「60線」です。従って、まずは解像度600dpiのグレーレイヤーを作成し、減色手法を「トーン化」。さらにそのトーン化の線数を60線なり70線にしてあげて、そのレイヤーをグレーで塗っていけば、一枚のレイヤーだけで複数の濃度のアミトーンを貼ることが出来ます。もちろんグラデーションもOK!
「どうしてもトーンレイヤーが増えてしまう…」と言う人は、このように同一線数のアミトーン、あるいは砂目トーンをグレーレイヤーで管理するようにすると良いかも知れません。
トーン用グレーレイヤーのプロパティ。
表示方法が「自動」になっていますが、ちゃんと網点として表示されます。
上で描いたように、基本的に同一線数のアミトーンであれば一つのレイヤーにまとめられます。
僕の場合は10%、20%、30%あたりの濃度を使うことが多いため、あらかじめカラーセットに10%刻みのグレーのパレットを用意してあります。
縮小するとただのグレーに見えるが、実際はちゃんとトーン化されている(下図参照)。
デジタル作業の場合、アナログにおける「ホワイト」という作業は存在しません。しかし、人物のまわりを白く抜いたり、あるいは髪の毛のハイライトを表現する時など、「ホワイト」的な作業が必要になる時もあります。
そう言った場合、普通に白で消してあげても良いのですが、専用に「マスキングレイヤー」なるレイヤーが用意されています。
今回はそのレイヤーを使って、ハイライトやトーン削りを表現してみました。下記の赤く表示されている部分がマスキングレイヤーで、実際は白く抜かれます。
僕はPhotoshopでの仕上げ歴が長いため「どうにかしてPhotoshop的に、楽にトーン処理出来ないか」と考えた結果、このような仕上げの仕方になっています。
ただし、重ね貼りの時などはこのやり方だと「らしく」なりづらいため、普通にトーン素材を使う場合もあります。
どんな場合もそうですが、作業速度とクオリティとのバランスを考えて、自分なりの仕上げの仕方を体得していくのがベストだと思います。