アトピー

アトピーは保湿がいいの?脱保湿すべき?

アトピーの大まかな仕組みについては前回までで、ほぼ説明を終えました。

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今回は、「そもそもどうして皮膚に症状が来るの?」という事と「アトピーの完治について」をお話ししようと思います。そもそも何で、皮膚で炎症が起こるのでしょうか。最初の方の記事で、「皮膚に出るのはたまたまで、人によっては喘息で症状が出たり、アレルギー性鼻炎で出たりするよ、構造としてはどれも同じで、出る場所が違うだけなんだよ」というような内容のお話をしました。しかし、なぜあなたは皮膚に症状が出たのでしょうか。「なぜ私だけアトピーなの?」まずはこれを考えていきましょう。

なぜ皮膚に症状が出るの?

ま、簡単に言うと、「あなたの身体の中で皮膚が一番弱いから」というのが理由なんですが。うん。これで終わっちゃイカンよね。続けましょう!


(図;「アトピー性皮膚炎のスキンケア」主婦の友社より)

本来皮膚には、表面に角質層というかたい細胞のバリア機能の層があって、その上をさらに皮脂膜が覆っていて、アレルゲンや有害物質、刺激物を「ココから内側には入れないよ」という体のしくみがあるわけなんです。

皮脂膜、セラミド、NMFが保湿のカギ

皮脂は体内で作られ分泌される脂質で、言ってみれば、天然のクリームです。角質層と皮脂膜で皮膚表面を覆うことで、外部からの色んな刺激が入り込むことを防ぎ、なおかつ皮膚に含まれる水分が外に逃げないようにするという、バリアと保湿を担う役目をしています。

保湿についての人体の工夫は、皮脂膜だけでなく、皮膚内部にもあります。それは、角質細胞と角質細胞の間にあるセラミドと、角質細胞の中にあるNMF(天然保湿因子)です。



 

角質層にはたくさんの角質細胞がびっしり並んでいますが、その細胞と細胞は角質細胞間脂質によってつなぎ合わされています。言ってみれば接着剤のような役目をはたしています。そして、その接着剤のうち、約半分を占めているのがセラミドです。このセラミドが細胞同士をしっかりつないで、皮膚のバリア機能を強化しています。

角質細胞の中にあるNMFは、アミノ酸が主となっている成分で、細胞の中に水分を取り込む働きをしています。

アトピーの人に不足しがちなもの、それは・・・



つまり、健康的でみずみずしい肌は、皮脂膜、セラミド、NMFという3つの成分がきちんと働き、角質層の水分が適度に保たれている肌である、という事が出来ます。そういう肌はバリアの働きがしっかりしていて、外界からの刺激にも強いというわけです。アトピー性皮膚炎の方の皮膚というのは、このセラミドとNMFが不足しやすい人が多いのです。

東洋医学的には、外界から体表を守る働き、外部からの侵入を防ぐ働きの事を「衛気(えき)」という言葉で定義しています。そして、生まれつき「衛気」というバリア機能が弱い状態のことを「腎精不足(じんせいふそく)」なんていう言い方で呼んでいます。ま、とにかく、「なんで私は小さいころからアトピーなのさ?」という疑問には、「そりゃさ、もともと、バリア機能が弱いんだから、弱いところから症状が出てくるのは当然だわさ。それで皮膚炎がでるのよ」という答えになります。

脱保湿すれば治る?

よく「アトピーには脱保湿がいい」「保湿をやめれば皮脂は自力で出てくる」と言われることがありますが、脱保湿をして自力で皮脂が出てくる人も居るのですが、どうもアトピーになりやすい人は、もともとこのセラミド・NMFという保湿成分が遺伝的に少ない、作られにくいという人も多いようで、そういう研究が発表されています。東洋医学はすごいですね。何千年も前に「遺伝的な問題もあるよ」と既に言っているわけですからね。使っている言葉自体は古いですが、現象の観察、事実の認識はほんとに正確で驚かされます。

根性で耐える脱保湿に意味は、無い

ま、それはともかく、脱保湿してもうまくいかない・改善しない人も居るという事です。なので、根性で耐えていても、出ないものはいつまでたっても出ないんです。セラミド・NMFを自力で作る量が少ないからと言って、アトピーが永遠に治らないかというと、そんなことは全然ありませんので、脱保湿して改善しない人は肌に合う保湿剤を使用した方がいいと思います。1年中、薄着で過ごして風邪をひかずに丈夫になる人も居るけど、それに適応できずにしょっちゅう風邪をひいてしまう人も居るわけですよね。そんな人はムリしちゃいけません。「寒いなら、着れば!」ってわけです。保湿も一緒で、「出ないなら、塗れば!」ってな具合です。

そういうわけで、これらの成分は、炎症によって失われることもあるけど、アトピー素因のある人はもともと体質的に不足していることもあるんだよという事ですね。


保湿できないと、バリア機能が低下する

で、保湿成分が不足していると、細胞の中に隙間が出来て、皮膚のバリア機能が弱くなり、細胞内の水分が失われ、肌が乾燥してバリア機能が弱くなってきます。

そして、バリアの働きが弱まり、乾燥した角質細胞は剥がれ落ちやすく、その隙間からたやすく色々な刺激に侵入されてしまうのです。アレルゲンや刺激物が入り込めば炎症が起こるし、細菌が入り込んじゃうと繁殖して化膿することもあります。

本当は、皮膚というのは、自分の皮膚を守る機能があるのに、何かしらの理由でバリア機能が下がっていると刺激が皮膚を通過してしまいます。バリア機能(セラミド、NMF)というのは、もともと消化吸収したものから作られているので、元の出発点から考えると、胃腸による分別する力がバッチリ働いていれば、どれだけ胃の中に入ってくる量が多くても、老廃物は残らないのです。しかし、アトピーになりやすい人というのは、胃の中に入れすぎたら残ってしまうような、脆弱な分別力なので、吸収できてる量も、実はそんなに大したことが無いんですね。



で、炎症によって、引っ掻くことによって皮膚が破壊されているので、その部分の組織を作り直さないといけませんね。まあ、言ってみれば焼け野原を復興するようなものです。復興するためには材料が当然必要になります。そうしないと傷ついた組織を再生することとバリア機能を強化するという目的が達成されません。この復興作業が順調に進まないと、つまり、きれいな丈夫な皮膚に作り替えることができていない状態だと、またちょっとした刺激で皮膚症状が再燃してしまいます。

よく、「いったん良くなったんだけどまたすぐに悪化してしまう」なんていうかたがいますが、それは「丈夫な皮膚を作る」という段階までは状態が良くなっていなかったという事なんです。見た目に傷は無くても、なんとなく皮膚が薄かったり、カサカサ乾燥していたりという状態では、丈夫なお肌とは言えないのです。だからちょっとした刺激でいちいち反応してしまうのです。

ほんとうの「完治」を目指そう

アトピーをしっかり完治したいという方は、かゆみがあるとかないとかそういう物差しだけでなくて、皮膚の状態まで見極めていく必要があるというわけですね。



そして、もともとどういう理由で症状が出やすいのか、自分のどこが身体の弱点なのかを把握することが大事です。胃腸の分別機能が弱いためなのか、ストレスに負けやすいことから影響しているのか、もともとバリア機能が弱いのか、それぞれその人の弱点が異なり、それをその人に合わせてウィークポイントを見極めながら、破壊された皮膚組織をしっかりして、バリア機能を強くしていく必要があります。この段階では、皮膚は真っ赤な状態の急性期ではなく、普通の肌色の状態です。言ってみれば慢性期のアトピーというわけです。



ある程度かゆみが落ち着いてくると、患者さんご本人が「もうそろそろ治療を終了してもいいですか?」と聞いてくる方がいるのですが、私としては、かゆみが落ち着いたところでやっと「道半ば」といった感じなのです。これからやっと体質強化を図っていこうと考えているところなのです。ですので、症状が出てないという事が治ったという事ではないですよ、という事と、皮膚の質にこだわって丈夫で健康な、つやと潤いのある皮膚を作っていきましょうという事を合わせて説明していきます。

中途半端なところで、治療・養生を中断してしまうと、あとになって再発してしまうという、双方にとってがっかりなことになりかねないので、その辺はしっかりご理解いただいています。

あなたのアトピーが治りにくい理由。今回は「皮膚のバリア機能」という側面から「セラミド」「皮脂膜」「NMF」「衛気」「腎精」なんて言う言葉を使いながら解説していきました。また、「完治」とは何を指すのか、「痒くないというだけでは完治ではないよ」という事をお話しさせていただきました。

今、自分の肌がどんな状態なのか、ゴールはどこなのか、ある程度想像できたのではないでしょうか。まずは知ること。ここから始まります。参考にしてください。