*生活習慣 De 病気予防 6. 各排泄器官の代謝(デトックス)反応
各排泄器官で起きている代謝反応をみていくと、デトックスのメカニズムがより理解しやすくなります。
患者さんに説明できるようになるためにも、メカニズムを生理学・薬理学・薬物動態学の観点からきちんと理解しておきましょう。
Q. それぞれの排泄器官ではどのようなデトックス反応が起きているのでしょうか?
- 肝臓・小腸
小腸では、物質を代謝する過程で酸化・還元反応(第一相反応)と抱合反応(第二相反応)が起きており、これらの反応には酵素を必要としています。 その酸化還元反応に関わっている酵素が皆さんもご存じのチトクローム(シトクロム)で、人や動物においては肝臓に多いと言われています。それが小腸にも存在しています。
薬理学では、肝臓における薬物の解毒酵素(チトクロームP450:CYP)として覚えている人も多いのではないでしょうか。
これらの酸化還元酵素(CYP)は、NADPH(VB3)(補酵素)が存在することで反応が起こり易くなるため、代謝を円滑にするためにもビタミン(VB3)の摂取が有効になります。
ただし、この酸化還元反応(第一相反応)により、毒性が高まることもあるため、速やかに抱合反応(第二相反応)を引き起こす必要があります。抱合反応には、UDP-α-グルクロン酸(VC生合成中間体)やアセチルCo-A、グリシン、メチオニン、グルタチオン等のアミノ酸等が補酵素として利用されるため、タンパク質の摂取が重要になります。
ビタミンやタンパク質(アミノ酸)以外にも、ミネラル(亜鉛・マンガン・マグネシウム・鉄・銅等)が補因子として酵素の活性に大きな役割を担っているため、摂取が重要になります。
※ これらの物質が存在しなくても、酸化還元反応(第一相反応)及び抱合反応(第二相反応)は起こりますが、反応速度が遅くなるため効率的な代謝、すなわちデトックスが出来なくなります。
また、運動を行うと血流速度・血流量が高まり*代謝を活性化させるため、上記の反応はより速くなる傾向にあります。
逆に、心疾患等で心機能の落ちている人は血流速度が低下するため、上記の反応は遅くなる傾向にあります。
※ 肝血流量と薬物代謝の関係
≪酸化還元酵素<チトクローム>&抱合反応に関する復習≫
⇒ 「英語 De 薬学」 酸化・還元酵素 [coming soon!]
⇒ 「英語 De 薬学」 抱合反応 [coming soon!]
- 小腸・大腸
腸内に存在する腸内細菌は、デトックスにおいて非常に重要な役割を担っています。
腸内細菌の役割
● 代謝に必要なビタミンを生成する (特にVBは補酵素として重要)
● 酵素群(グルクロニダーゼ、グルコシダーゼ等)を生成する
● 外部から侵入した病原菌の感染を防ぐ
肝臓でグルクロン酸抱合されたものは胆嚢へいき、胆管を通って胆汁と共に小腸へ分泌されます。
抱合体のままでは小腸で吸収されませんが、腸内細菌によって産出されるグルクロニダーゼ(グルクロニド結合 加水分解酵素)によって抱合体が分解されると、小腸で再吸収されるようになります*。
※ 腸肝循環 : 腸→肝臓→[グルクロン酸抱合]→胆汁→腸-[抱合体脱抱合]-[再吸収]→肝臓→・・・
この腸肝循環が繰り返されるほど、”毒(不要なもの)”は排泄されず体内に残留するため、実質的に代謝(すなわちデトックス機能)が低下していることになります。
腸肝循環を引き起こすグルクロニダーゼの活性は、腸内細菌のバランスが崩れると上がることが知られているため、代謝を上げるためには腸内細菌のバランスを維持することが重要です。
また、腸内細菌のバランスが崩れると、有毒なガスや有毒物質(大腸がんの原因になるものもある)を産生する菌が増えるため、腸内細菌のバランスを維持することは、代謝を考える上でとても重要になります。
腸内細菌のバランスが崩れる原因に、”抗生物質の服用”や”乳糖不耐症”等が挙げられます。(下痢等の症状)
抗生物質は、悪い菌のみでなく身体に必要な菌も除菌してしまうため、抗生物質服用時には耐性乳酸菌(抗生物質に耐性の乳酸菌)の服用をお勧めしています。
乳糖不耐症とは、乳糖(ラクトース)を分解する酵素(ラクタマーゼ)をもたない、もしくは十分にないため分解できず、消化不良となり下痢のような症状を引き起こすことをいいます。
乳製品を食べたあとにお腹がゆるくなり、下痢気味になる人は注意が必要です。
(腸内細菌のバランスが常に崩れた状態では、代謝(デトックス)の機能も低下します。)
ラクタマーゼの活性度合いや乳製品の摂取量によって、症状には個人差がでますが、症状が軽いため気付いていない人もいるといわれています。
乳糖は牛乳やアイスクリームなどの乳製品だけでなく、チョコレートなどのお菓子にも含まれているので、心当たりのある人はサプリメントによる乳酸菌の摂取が勧められることもあります。
腸内細菌の善玉菌である乳酸菌の補助的摂取として、”プロバイオティクス(人に良い影響を与える微生物:善玉菌)”の研究が進んでいます。
プロバイオティクスが実際に治療に利用される例として、過敏性腸症候群(略称:IBS)が挙げられます。
セロトニン受容体に作用する薬がIBSの治療薬として使われていることから、プロバイオティクスが血中のトリプトファン(セロトニン前駆体)の量を増やす可能性があるのではないかという仮説もあります。
- 腎臓
腎臓の主な役割として、老廃物(水溶性)の排泄、体液量の調節、電解質、pHの調節(7.35~7.45) 等があります。
このうち、老廃物(水溶性)の排泄がデトックスにおいては非常に重要で、糸球体や尿細管での①単純ろ過、②再吸収、③分泌を正常に機能させることが、代謝(すなわちデトックス)を良好に行うカギとなります。
糸球体でのろ過は、血管内圧と糸球体嚢内圧、血漿浸透圧の差*で起きており、血管内圧が下がるとろ過は起こりにくくなります。
※ ろ過圧 = 血管内圧 - (糸球体嚢内圧 + 血漿浸透圧)
高血圧になると臓器に負担をかけますが、正常な範囲である程度の血圧を維持することは大切です。
また、一定の血流量を維持することも重要なので、水分摂取を十分に行うことが大切です。
長風呂をした後に体重が減ったからといって水分を摂らない人がいますが、汗で水分の重量が減っただけなので水分摂取を行わないのはかえって腎臓に負担をかける原因となってしまいます。
汗腺より腎臓による代謝(デトックス)機能は高いので、こまめな水分摂取を心がけて腎臓を守りましょう。
利尿作用のある飲料(お茶、コーヒー等)はせっかく補給した水分が尿により排泄されてしまうので、水(特にミネラルウォーター)の摂取が効果的です。
糖尿病や高脂血症等の持病を持っている人は、血流が悪くなっているため、腎臓のろ過機能が普通の人よりも落ちている可能性があります。
≪腎臓の機能に関する復習≫
- 肺
肺の大きな役割として皆さんがご存じなものに、酸素と二酸化炭素のガス交換(呼吸)があると思います。
二酸化炭素は、炭水化物や脂肪酸の代謝物(老廃物)として体内で産生されますが、呼吸(外呼吸・内呼吸)によって、酸素を取り込む代わりに肺から排泄されます。
この呼吸による二酸化炭素の排泄が、デトックスにおいて重要な役割を果たします。
また、呼吸による酸素の取り込みは、エネルギー(ATP)を生じる好気的化学反応に必要であると同時に、細胞を酸化させる物質であることも忘れてはいけません。
取り込まれた酸素は、容易にフリラージカル(活性酸素)になり、生体内のタンパク質、脂質、核酸やDNAに傷害を与えます。
肺は、酸素に最もさらされる臓器であることから、これらのフリーラジカルによる酸化的障害を防ぐ効果(抗酸化作用)をあらかじめ備えていると言われています。内呼吸(体内でのガス交換)を行う体内細胞も、高い抗酸化作用をもっています。
≪肺の機能に関する復習≫
- 汗腺
汗腺は皮膚にある汗を分泌する腺で、発汗することで体温調整を行う重要な器官の一つです。
デトックスにおいては、もっとも有名な排泄経路としてご存じの方も多いと思いますが、実際に汗腺から排泄されている物質のほとんどが水分(約99%)で、残りの約1%は塩化ナトリウムや代謝老廃物です。
その他、内服薬(抗生剤やオピオイドなど)の排泄経路となることもあります。
半身浴などで汗をたっぷりかくと、気分的にもスッキリして大量の老廃物が体外に排泄されたように感じますが、実際発汗そのものに老廃物を排泄する効果はほとんどないことになります。
ただし、血流を良くすることで代謝は上がっているため、他の臓器(肝臓、腎臓、腸、肺)の機能を高める意味ではデトックスに効果があることには変わりはありません。
たくさん汗をかいたあとは、水分摂取を行い、必ず失った分の水分を補うように心がけて下さい。
冷房の頻繁な使用や運動不足は、汗腺の機能を低下させることになるので注意をしましょう。
以上の、各排泄器官における代謝(デトックス)反応を理解することで、どのようなデトックス方法が効果的か、またその逆もご自身で判断が出来るようになると思います。
それでは、次の記事で「デトックス方法」を見ながら、その理由をこれまでの知識を活用して考えてみましょう。
≪次の記事≫
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