2014.06.08 Sunday
イタリア銘革・ブッテーロについて
0
ブッテーロという皮革はCIRCLEでは神戸のル・ボナーさんの小物などでよく使われる、イタリアの中でもとりわけ魅力的な皮革の一つ。
巷でも、ブッテーロの革そのものは随分と多くのブランドで見かけるようになりましたし、ご存知の方も多いやもしれません。
ブッテーロはイタリアのトスカーナ地方にある(トスカーナはイタリアでも屈指の、上質な革を鞣す地域です)、老舗のタンナー(革をなめす業者)の「ワルピエ社」がなめす代表的な牛ショルダー革です。
成牛のショルダー(肩)部分を用いているため、革の厚みもしっかりとあり、ハリとコシの非常に強い革。
鞣しは植物性タンニンによってなめされる、いわゆるタンニン革。特にブッテーロはミモザなどの植物から採れる天然渋を用いており、表面に過度な加工はせず革本来の味わいがしっかりと出ています。
と言っても、表面に全く加工をしていないわけではなく、この美しく滑らかな肌合いと独特な強い光沢感を生み出す銀面には、ワルピエ社独自の仕上げがやはり施されています。
その仕上げはイタリアの他のどのタンナーが真似をしようとしてもなかなか出来ず、イタリアにはたくさんのバゲッタ製法(昔ながらのタンニンや油を用いて仕上げる製法)にてハリのある革を仕上げるタンナーがあるにも関わらず、ブッテーロの仕上がりは唯一無二の評価をされています。
ボナーさんではデブペンケースや万年筆ケース、残心シリーズ小物やバッグのパーツやボディなどなど、多用されますのでCIRCLE店頭ではまずどんなときでも見かけないことはありません。
表面はとてもツルリとしており、一般的にいうスムースレザーの部類。スムースレザーはどうしても表面に傷が付きやすくなりますが、その分凸凹感のない革は肌触りが心地よく、やはりそれぞれも良さがあるものです。
ブッテーロ初め、非常にマットな表情をしており、とても素朴な印象すら感じる皮革です。
しかしながら、使い込んでは年月を経ることにより、革の内部に染み込んでいた油や、使用に応じて手などからつく油分によって、えも言われぬ光沢感を帯びるようになっていきます。
そのエイジングの具合は、数ある皮革の中でもとりわけ変化が大きく、ブッテーロの最大の愉しみの一つであると思います。
またブッテーロの素晴らしいところは、その革の厚みと丈夫さ。
しっかりとコシのある皮革ですので、小物やバッグを仕立ててもカチっとしっかりと固く出来上がります。
そしてタンニン鞣しの革ですので、コバ面(革の裁断面)なども時間をかけて磨き上げることで、ツルリと綺麗に仕立てることができう上、使い込んでも極端にへたれることがなく、強さを保つことが出来ます。
デブペンケースなどを触ると、そのハリ感や革の強い具合が非常に分かりやすいと思います。
前に紹介したドイツのシュランケンカーフの持つ、しなやかでもちもちと弾力のある丈夫さとは、またベクトルのまるで異なる「タフさ」があります。
その分、使い始めのことは少し固く、革を曲げたり開いたりすることがしづらく感じることもありますが、革が徐々に徐々に馴染んでいくことで、ご使用頂く方によくあったしなやかさになっていきます。
そして、ブッテーロのさらに面白いのは、やはりカラーリング。タンニン鞣しの皮革の多くは、どうしても色が沈みがちで明るい色がほとんどないことが多いのですが、ブッテーロはとっても鮮やかなラインナップ。
赤やオレンジ、グリーンなどの発色もとても良く、ここまで綺麗な発色のタンニン革は他にありません。
それでいてブッテーロは顔料は用いず、基本的には染料で総て染色されているため、革らしいギシっとした感触や風合いが感じられます。
香りも特殊でブッテーロは他の皮革とは明らかに異なる、「ブッテーロ香」があったりします。これは、店頭で他の革を比べて見ると少し分かりやすいかもしれません。どことなく植物的なものと金属的なものが混じったような香り。
革を鞣す過程には、植物のタンニンや動物性の油、革によっては魚油や鉱物油なども用いられるため、それぞれの革には特徴的な何かの香りがするものですが、ブッテーロはとても爽やか。
…と、カラーの話からずれてしまいましたが、こんな風にボナーさんで使われるカラーだけでも多岐にわたるものの、実はこれ意外にもピンクやイエロー、ターコイズやブルーといった具合に様々なカラーが。
ちなみに、店頭ではボナーさんによく使われるカラーに関しては、カラーサンプルを頂いているので、モノで在庫がない際もカラーはご確認頂けます。
店頭ではお客様よりサインなどを頂く時にも、実はお客様よりオープン記念として頂きました、同様のブッテーロの革パットを使わせてもらっています。ハリがあって、とっても素敵。
と、色々と言いつつも、やはり多くの皆様が気になるのは、その経年変化の様子。
少しではありますが、店頭でもご覧頂けるサンプルを交えながら、ご紹介致します。
画像はボナーさんの万年筆ケース3本挿し、ブラックです。右側が新品の状態、左側が約3年ほど使用されたもの。
こうして見るだけでも、まるで別物というほどに表情が異なり、驚くほどの光沢感に包まれることが分かると思います。
ブッテーロのお手入れは複雑なことはございません。油分はたっぷりと入っているのでクリームなどを塗布する必要はありませんので、気が向いた時に乾拭きをして頂ければ十分です。
ただし、表面に傷はつきやすいので、その辺りは少しご注意頂いても良いかもしれません。また、多くの皮革において同様のことが言えますが、水分には強くありません。
水が表面に染み込んでしまうと、ブクと呼ばれる水ぶくれのようになってしまうことがございますので、そこは十分にお気をつけ頂きたいところです。(ブクは後のメンテナンスなどでは完全に消すことはできません。ご使用頂きながら光沢を出していくことで、エイジングの味わいの一部としていくことは出来ますが……)
はじめのこのマットな表情も良いのですが、これが使い込んで……
こうなると思うと、やはり大切に乾拭きをしてあげたくなりますよね。
ちなみに、乾拭きを頻繁にして頂く方が、ツヤのあがりは早くなる傾向があります。乾いた柔らかい布で優しく磨いてあげるのが基本です。
また、これは個人的には好きな手法ですが、柔らかな馬毛やヤギ毛のブラシで、定期的にはじめからブラッシングを繰り返していると、通常の全体的な皮膜のような艶感とはまた異なり、どことなく細かな光沢の粒が輝くような、不思議と綺麗なエイジングをしたりもします。
この辺りは、お好みなどもありますので、それぞれの使い方で馴染ませて頂いて、それぞれのブッテーロの味わいを愉しんで頂くのが良いと感じています。
裏側ももちろん、こんな風に差が。
ブラックはより深くブラックの色が生まれるイメージ。他の濃い色なども同様に美しい変化をしていきます。
では鮮やかな色は……というと。
こちらは右がデブペンケースのグリーンの新品のもの、左は店主が個人的に使っている某ブランド(店主が以前いろいろとしていたブランドです)のキーケース。いずれも同じブッテーロのグリーン。
基本的にはヘビーにただ使っているだけでしたが、やはり光沢は自然と強く出てきます。
薄めの色ですと、もちろん経年変化の過程で黒ずみや色がかなり濃くなる部分なども出てきますが、そういったムラ感も愉しみのポイントかもしれません。
こんな風にマットなグリーンから……
どことなく透明感のある光沢感が覆うようになります。
これはグリーンだけでなく、オレンジやレッドなどの明るめのカラーはやはり同様。
ギラリとした強さも感じることができる、深い味わい。キーケースゆえに細かな傷はかなり多いですが、それはむしろ迫力に代わり、特に気になるほどでもなくなります。
もちろんなるべく傷をつけないようにする、というのも素敵なことですし、そういったエイジングも綺麗とは思いますが、ブッテーロは頑丈でワイルドな風合いも素敵な皮革ですので、ぜひガシガシと使って頂くと愉しいと思います。
イタリアの中でも、これだけ優れた皮革はなかなかありませんし(バダラッシー社のミネルバ系などは、また違う意味で凄い革ではありますけれど)、ボナーさんが好む革でもあるので様々な形式でお使い頂けることが、とても嬉しいこと。
経年変化好きな方は、まず試して頂きたい皮革の一つです。
どうぞ、お愉しみ頂ければと思います。
- コメント
- コメントする