30年前の染み
総絞りの振袖に付いた30年前の染みです。総絞りはデリケートな着物なので時間がかかります。写真撮りの予定が迫っているという事情でしたので、急ぎで染み抜きと丸洗いを行いました。
| 【クリーニング前】 | 【クリーニング後】 | |
ワインの染み
慌てて水で拭いてしまい、広がってしまったそうです。出来るだけ早い処理が好ましいです。染み抜きと丸洗いを行いました。
| 【クリーニング前】 | 【クリーニング後】 | |
醤油の染み
染み抜きと丸洗いを行いました。付けた後、すぐにご依頼いただいたため簡単に落ちました。
| 【クリーニング前】 | 【クリーニング後】 | |
血液の染み
染みを落とさずに丸洗いをしてあったため、大変落ちづらくなっていました。染み抜きを行いきれいになりましたが、やや時間がかかりました。
| 【クリーニング前】 | 【クリーニング後】 | |
初めてのお客様からよくいただくご質問があります。
「染み抜きすると、着物が傷んでしまうのではないか?」という質問です。
この質問への返答は、「染み抜きをする人による」ということになります。正しい知識を持った人が正しい方法で行えば着物を傷めることなく染みを落とすことができます。
反対に、知識を持たない人が間違った方法で染み抜きをすると、変色したり、傷ができたり、穴があいたりすることもあります。
ここでは、着物を傷めることなく染みを落とすために必要な、知識、技術、器具についてご説明します。
知識
着物を傷めずに染み抜きするには、なにより正しい知識が必要です。そして、何が正しくて、何が間違っているのかを一般の方が判断することはとても難しいです。例えば、雑誌などには、襟の汚れはベンジンを付けてこすれば落ちるというような方法が載っています。実は、この方法は、間違っているのですが、本に書いてあると、いかにも正しいような気がしてしまいます。
実際にこの方法で染み抜きをすると、確かに染みがなくなったように見えます。
しかし、これは汚れが薄く広がって見えなくなっているだけで、実際には落ちていないのです。そのため年月が経過すると再び、生地が変色したような染みになってしまいます。
クリーニング店でも、染み抜きの知識にはお店ごとにかなり差があります。
年月の経過した染みは特に落とすのが困難で、専門店であっても落とせないということもよくあります。
当店では、染みの成分に合わせた染み抜き剤の調合や、不要になった着物にカビを生えさせて、カビ取り実験をするなど、染み抜き研究 合宿を行い常に新しい研究を繰り返しています。
| 【様々な染み抜き剤】 | 【染みの成分に合わせて調合】 |
技術
いくら知識が豊富でも、技術がなければ染みは落とせません。技術を体得するにはやはり経験を積むしかありません。特に染み抜きに関しては突然できるようになることはなく、地道に数をこなしていくのが技術を得る一番の近道です。
当店では今まで3000着以上の着物の染み抜きを行いました。開店当初は染みを落とせずに着物をお返しした事もありましたが、試行錯誤を繰り返し、数十年前の古い染みでも落とせる技術を確立することができました。
お客様からも「他店できれいにならなかった染みが落ちた」などのご感想をよくいただいております。
器具
「着物の染み抜き」というと職人さんが筆でトントンと叩いて汚れを落とすイメージがあります。全て手作業で行うこの方法でも付けたばかりの染みなら落とすことはできます
しかし、付けてから時間のたってしまった染みは、技術のある職人でも落とすのが難しく、出来たとしても手間と時間がかかるため、引き受けてもらえない場合が多いです。また、このやり方は職人によって仕上がりに差がでてしまうという問題もあります。
当店では、シルクガンという最新の器具を用いて染み抜きをしています。この器具も染みを一つずつ手作業で落としていくという点では筆を使って落とすのと変わりないのですが今まで時間のかかっていた、染み抜き剤をつけたり、乾かしたりという作業が一瞬でできるためかなりの時間を短縮できます。一回ごとの作業が短時間で出来るため、根気よく作業を繰り返し、時間のたってしまった染みでも、たいていは落とすことができます。
| 【シルクガン】 | 【染み抜き剤を下から吸い込む】 |
1.染みの成分判断
まずは、ひとつひとつの染みの成分を正確に判断します。同じように見える染みでも、それぞれ成分が違います。成分によって、落とすための染み抜き剤も違ってきます。成分に合わない染み抜き剤を使用しても染みは落ちないため、正確に染みの成分判断することが重要です。
具体的には、ルーペで染みを見る事と、触る事で成分を判断していきます。触っただけでわかるのか?と感じると思いますが、例えば、たんぱく質系の汚れは固いなど、染みの成分によって触りここちが違うのです。
ただし、この違いは少なくとも2000枚くらいは着物をみていないとわかりません。実は当店でも最初の頃はよく成分を見誤っていましたが、経験と共に判断が的確になり、今ではスタッフ全員が正確に染みの成分を判断することができます。
| 【染みをルーペで確認】 | 【染みを触って確認】 |
染みの成分は、大きく3パターンに分かれます。
油性のものが付いてできた染み、水性のものが付いてできた染み、生地自体が変色している染みの3つです。
染みの成分が判断出来たら、成分ごとに順番に染みを落としていきます。
2.油性の汚れを落とす
マジックペン、ボールペン、口紅、ファンデーションなどが油性の汚れです。
油性の汚れは染みの一番外側に被膜を作るように付きます。
3.水性の汚れを落とす
水、ジュース、雨、汗、尿などが水性の汚れです。
水性の汚れの周りには、必ず油性の被膜ができています。そのため、水性の汚れであっても、まずは油性処理をします。油性処理が不十分だと油が固まって、汚れが落ちにくくなります。
油性処理をした後、水性の汚れを落とすための染み抜き剤を塗り、シルクガンを使用して水で洗い流します。
4.生地が変色してできた汚れを落とす
生地に汚れが付いたまま、長期間放っておくと、繊維が劣化して黄色っぽく変色します
何年もタンスにしまいっぱなしで着物に黄色や茶色の染みが出来てしまったというご相談が多いのですが、この場合は生地が変色しています。この汚れは落とすのにかなりの時間が必要になります。
まずは、生地に付着した汚れを落とすため、油性処理と水性処理をしっかりとほどこします。
次に、5種類の溶剤を調合して作った染み抜き剤を塗り、スチームを当てます。変色が薄くなるまで同じ作業を繰り返します。
その後、シルクガンを使用して染み抜き剤を水で洗い流します。乾燥させて変色箇所がなくなっていることを確認します。
5.丸洗い
※染み抜きのみのご依頼をご希望の場合にも、丸洗いをお勧めする場合がございます。多少でも着用した際の汚れが全体にあると、染み抜きをした箇所だけきれいになってしまうことがあるため、その場合は必ず丸洗いもおすすめしております。
| 【丸洗い専用の機械】 | |
6.乾燥・仕上げ
洗い終わった着物は日に当てないように干して自然乾燥させます。
着物が乾いたら、蒸気だけを当てて仕上げていきます。アイロンを直接当てて仕上げるのが一般的ですが、アイロンを当てると生地がテカったりあたりが出たりすることがあるため、当店では蒸気だけで仕上げを行います。
7.色補正
染み抜きや、丸洗いの過程で生地や柄の色が抜けてしまう場合があります。そのような場合にはエアブラシで染料を薄くのせたり、細い筆で1箇所ずつ柄を入れて補正します。
染み抜きの料金は、落とすのに必要な所要時間によって決まります。ひとつの染みがいくらという基準はございません。
たくさんの染みがあってもすぐに落ちるものばかりなら料金は安くなります。逆にひとつだけでも、古い染みや落とすのが難しい染みは時間がかかるため料金は高くなります。
そのため染み抜きをご依頼いただく場合には、作業前に必ず着物を見せていただき、見積もりをさせていただきますす。
染み抜きの見積もりは経験がないと難しく、「5000円~20000円の間」など、金額の幅を広く見積もる業者もあります。当店では染みの色や形状から成分と古さを予測し、的確に見積もりを出すことができます。万が一、お見積りよりも染みを落とすのに時間がかかった場合にも追加料金が発生することはありません。
以下に、よくある染みの参考料金を掲載しておきます。
あくまでも目安の料金ですので、これより高い場合も安い場合もございます。
| 普通の衿汚れ | 3,240円~ | 普通の袖口汚れ | 3,240円~ |
|---|---|---|---|
| 変色してる衿汚れ | 16,200円~ | 変色してる袖口汚れ | 16,200円~ |
「久しぶりに着物を出してみたら染みがあった」「他店に持っていったら、古い染みは落とせないと断られてしまった」など、どうしていいかわからない方はご相談ください。ご相談だけでも大丈夫です。
たとえ着物1枚のお手入れでも、詳しい説明をさせていただきます。着物の状態や、お客様のご事情に合わせて最適なプランをご提案します。