Chapter 5 子宮内膜症の治療
Section 1 薬物療法
子宮内膜症の治療にはさまざまな方法があります。ただ、治療の前に理解していただきたいのは、「子宮内膜症は、症状の進み方に差はあるものの、手術をしない限りは基本的に閉経まで続く可能性のある病気」ということです。日本人の平均閉経年齢は50歳前後ですが、この年まで病気と付き合うことになります。例えば、20代半ばで子宮内膜症になった方は、何もしなければ20年以上もの間、病気と付き合わなければならないことになります。
このように、10〜20年の付き合いとなる可能性のある病気だけに、治療にあたっては、自分の意思で治療法を選択し、常に後悔のないようにしておくことが大切です。
子宮内膜症の治療方法は、病気にかかった年齢、症状の程度、初めての症状か再発か、赤ちゃんが欲しいか……など、病状やライフプランに合わせたさまざまな選択肢があります。それだけに、自分の考えに合った治療法について、かかりつけ医師との十分な話し合いが、とても大切といえます。
ここでは、子宮内膜症の治療方法として最もポピュラーな「薬物療法」(病院で処方される医薬品です)について見ていきましょう。
女性は、一生の間に月経が来なくなる時期があります。妊娠したときと、閉経したときです。子宮内膜症は月経のたびに病状が進行する病気なので、薬剤を服用することによって、体内を妊娠したときと同じような状態にするか、閉経したときと同じような状態にすることができれば、病状の進行を遅らせたり、症状を改善させることができます。こうした治療法は、それぞれ「偽妊娠療法」「偽閉経療法」といいます。
妊娠すると子宮内膜症が改善することが多いことから始められたもので、黄体ホルモン製剤や低用量ピルなどを服用して、人為的に「偽妊娠」状態をつくり出す治療法です。
【黄体ホルモン製剤を用いる方法】
黄体ホルモン(プロゲストン)とは、受精卵着床のため子宮内膜を準備し、妊娠を維持するステロイドホルモンで、排卵後卵胞から変化した黄体から分泌されます。この黄体ホルモンを服用することで、「偽妊娠」の状態をつくり出すわけです。
一般的に多く使われる黄体ホルモン製剤は、以下のものです。
・成分名:ジドロゲステロン(主な商品名:デュファストン)
デュファストンは黄体ホルモン療法ですが、薬剤の中に卵胞ホルモンが入っていません。
また入っている黄体ホルモンの質、量から排卵抑制作用がないと考えられています。
このため比較的マイルドな治療を希望される人、赤ちゃんを希望している子宮内膜症の人に選択される場合があります。
その服用方法は、
月経14日目から14日間内服
月経7日目から21日間内服
などがあり、症状や治療方針などによって服用方法と量が異なります。
【黄体ホルモンと卵胞ホルモンを主成分とした薬剤を用いる方法】
黄体ホルモンと卵胞ホルモンを主成分とした薬剤(いわゆるピル)を使って、「偽妊娠」の状態をつくり出す方法です。経口避妊薬はさまざまな種類がありますが、現在は副作用の少ない「低用量ピル」が処方されることが多いようです。
・低用量ピル
月経の1日目あるいは月経の来た週の次の日曜日から(サンデーピルといいます)21日間あるいは28日間用いられるのが普通です。
低用量ピルにはたくさんの種類、服用方法があります。
・中用量ピル
月経の5日目、あるいは7日目から21日間内服します。あるいは月経の1日目から21日間内服をするなど、中用量ピルについてもいろいろな種類、服用方法があります。
・子宮内膜症の新しい薬
ディナゲスト錠(薬剤名)
ルナベル配合錠(薬剤名)
子宮内膜症にはいろいろな薬剤が用いられております。
最近 1.ディナゲスト(薬剤名)という薬剤と 2.ルナベル配合剤(薬剤名)が出ました。
双方とも女性ホルモンが主体の薬剤ですから、今迄の薬剤にはないメリットが考えられています(例えば長期投与が可能)。
ただし幾つかの副作用も考えられていますので、薬剤を使用の時は、担当の先生とよくお話をする事が大切す。
これには
1. 予測される効果
2. 使用目標期間
3. 使用終了後、再発した時の対策
4. 考えられる副作用とその対策
5. 費用 などがあげられます。
1 ディナゲスト錠(薬剤名)(ジェノゲスト錠)
■この薬剤は女性ホルモンの中の黄体ホルモンという薬剤です。
■薬剤はどこに効くのでしょうか
1. 脳の視床下部・下垂体という所に作用して排卵そのものを抑える作用があります。
2. 卵巣の中の卵が入っているお部屋−卵胞の発育を抑え、ここから出るエストラジオールというホルモンの働きを抑える作用があります。このエストラジオールは、子宮内膜症の発育に関係すると考えられています。
3. この薬剤は子宮内膜自体にも働いて、子宮内膜が働くのを抑える作用があると考えられています。子宮内膜症の大もとの子宮内膜の働きを抑えると、子宮内膜症の治療効果はあると考えられます。
■どの位の効果があったのでしょうか
全国的に使われ始めた薬剤ですから、どのような所に効果があったかは、まだまとまったデータは出ていないようです。
予め薬の効果を確かめた製薬会社の調査では、
1.子宮内膜症に伴う症状の改善
2.卵巣チョコレートのう腫の縮小
等を認めたとの事です。
■どの位使えるのでしょうか
お薬の使用期間は原則医師との相談が必要です。まず主治医の先生と相談しましょう。
お薬の承認を受ける前の治験のレベルでは24週間(6ヶ月間)と、52週間(13ヶ月間)長期的に使用して調べていますが、いずれも重大な異常は出ていないようです。
(持田製薬社内資料−長期投与試験から)
もともと子宮内膜症の薬剤は6ヶ月位の使用が普通です。6ヶ月を一応の目標にするのは将来の骨粗鬆症の予防が大切という事なのですが、この薬剤は女性ホルモンの為、骨粗鬆症が進む可能性は非常に低いと考えられます。(研究上は1/3位です)。
ホルモン剤として副作用が出る時もありますから、(ほてり、乳のはり等)これらの症状を無視して用いる訳にはいきません。しかし理論上は長期間の使用が可能になるでしょう。
■考えられる副作用
1. 最も多い副作用は不正子宮出血だそうです。
この出血は使用期間が長くなると減るそうです。
2. ほてり、頭痛
3. 腹痛、背部痛、下腹痛
4. 乳房の不快感
5. 長く使用すると体重増加、胃部不快感、動悸等も出てくるようです。
■効果や副作用は当ネットで
すでに使用している人の印象などでは当ネットの掲示板に投稿があるようです。参考にされてはいかがでしょうか。
■使用してはいけない人
1. 妊娠している人、あるいはその可能性のある人
2. 診断のつかない異常出血のある人
3. うつ症状のある人は、この薬剤で症状が悪くなる時があるので医師と相談が必要です。
4. 肝機能が悪い人はこのお薬でさらに悪化する事もあるので医師と相談が必要です。
■考えられる副作用
今迄用いられていたピルと同じですから、注意事項はほぼ同じと考えて良いでしょう。
今回の薬剤の発売の前に改めて実施した調査(治験といいます)では、不正出血と悪心(気分が悪くなる)などだそうです。
なお副作用については医師との相談が大切になります。
喫煙は、この薬剤との併用で狭心症などの心血管系の異常が起こる可能性があるため、出来るだけ止める事が必要でしょう。
血液検査、体重、血圧測定等の注目事項は今まで通りです。
なお外国の一部の調査では子宮頚がん、乳がんになる確率が少し高くなるというものがあります。このため使用に際して、これらについて注意がある時があります。
この他この薬剤に対する副作用や注意事項は薬剤のネットを参考にされると良いでしょう。
2 ルナベル配合錠LD(薬品名)(ノルエチステロン エチニルエストラジオール の2種類のホルモン剤の合剤です。)
■この薬剤は女性ホルモンの卵胞ホルモンと黄体ホルモンが入っている薬剤で今迄、経口避妊薬ピルとして用いられていたものです。
実際の所、本来避妊薬として用いられているピルは、半数以上が子宮内膜症の薬剤として用いられています。
つまり、子宮内膜症の治療目的の方が多いという事になります。
この事から、世界中でこれらの薬剤を保険の効かないピルとしてではなく、保険の効く子宮内膜症の薬として許可が出るようになりつつあります。
例えばイギリスでは、子宮内膜症と月経困難症の薬として承認されています。
■今までピルとして使用されていたとすると、何というピルと同じだったのでしょうか
1. オーソM
2. シニフェーズT28
3. ノリニール
などという名前の薬剤と同じです。
つまり「子宮内膜症に伴う月経困難症」を治療する「治療用低用量ピル」と言えます。
■どのような効果があったでしょうか
1. 子宮内膜症に伴う症状を改善し、月経時の鎮痛剤の使用量を減らす事が出来たそうです。
2. 卵巣チョコレートのう腫を小さくする効果があるそうです。
3. 子宮内膜症の時に高くなる腫瘍マーカーCA125を低下させる効果があったそうです。
※しかし、いずれもこれらは薬剤発売前の製薬会社のデータです。実際に全国で使用された時は、またどんな効果が知られるようになるかは分かっていない部分もあります。
ただ既にピルとして用いられ、子宮内膜症の人にも使われていたものですから、大幅な効果の変更などはないと思われます。
■どの位使えるのでしょうか
ピルの使用期間の経験がありますから、一部の薬剤のように6ヶ月が限度という事はなさそうです。
症状の改善度にもよりますが、長期間の使用が可能と考えられます。しかしこの期間については、医師との相談が何より大切になるでしょう。
3 ルナベル配合錠ULD(薬品名)
■ルナベルに加えてルナベルULDが子宮内膜症に使用が可能になりました。
従来のルナベルはルナベルLDと言われるようになり、ルナベルULDと区別されるようになりました。
■ルナベルLDは1錠中に黄体ホルモンとしてのノルエチステロンが1㎎、卵胞ホルモンとしてのエチニルエストラジオールが0.035㎎入っています。
このエチニルエストラジオールをさらに減らして0.02㎎にしたものがルナベルULDです。
■これはエチニルエストラジオールの量を少なくして卵胞ホルモンによる副作用をさらに少なくしようとする薬剤です。
服用の仕方は、ルナベルLDと全く同じで、21日間内服して7日間休薬をするものです。28日間を1周期として、29日目から新しい薬剤とするものです。
初めて内服する時は原則として、生理第1日目から5日目を目標とされています。
■ルナベルULDは使用されるホルモン量が少ないため、ルナベルLDに比べると不正出血を訴える人が、やや多い感じがします。しかし、そうした場合でもルナベルLDや、ホルモン量の多い薬剤を用いると、不正出血の頻度が減ると考えられています。
| エチニルエストラジオール (卵胞ホルモン) | ノルエチステロン (黄体ホルモン) | |
| ルナベルLD | 0.035㎎ | 1㎎ |
| ルナベルULD | 0.02㎎ | 1㎎ |
4 ヤーズ配合剤(薬品名)(ドロスピレノン・エチニルエストラジオール の2種類のホルモン剤の合剤です。)
■どのような薬なのでしょうか。
この薬剤は女性ホルモンのうち、エチニルエストラジオールという卵胞ホルモンの量を0.020㎎と少なくし(卵胞ホルモン成分が原因となるかも知れない副作用を抑えるためです)、本来の子宮内膜症に効果のある黄体ホルモンと組み合わせたものです。
但し、保険上の適用病名は月経困難症に対してのもので、ルナベルと同じ適応薬剤です。
本剤は月経困難の症状の改善には有効です。しかしピルの効果を保つための卵胞ホルモン剤の成分が少ないため、ピルとしての適応はありません。前に述べたように卵胞ホルモンの量を減らした所に本剤の特徴があります。
■どのように使われるのでしょうか。
1シートに28錠薬が入っています。
この中に本当の薬の成分が入っているのは24錠
プラセボと言って本来の薬の成分が入っていないもの(偽薬)が4錠です。
生理の1日目から内服します。
28日間内服したら、次の日から新しいシートに入ります。
飲み忘れた時
・1回のみ忘れた時は、飲み忘れた事を気付いた時に1錠、次にいつも飲む時間に1錠、その次から通常の内服
・2回のみ忘れた時は、飲み忘れたと気付いた時に1錠、次にいつも飲む時間に1錠、翌日から通常の内服に戻ります。
・もし不正出血があったら医師と相談してください。
■どのような効果があったのでしょうか。
1.子宮内膜症などのない月経困難症の症状が改善されました。
このうち調べた月経困難症の症状とは、仕事や学業に支障が出る症状。鎮痛剤の使用の量などです。症状の改善とは、これらがいずれも良くなった事をいいます。
2.器質的疾患のある人(子宮内膜症などの実際の病気のあった人)の月経困難症状も改善しました。
■副作用はどうだったでしょうか。
1.頭痛
2.気持ちが悪くなる
3.不正出血
4.血液のかたまる能力の低下(凝固検査異常)
5.性器出血
6.その他 幾つか指摘されています。
※副作用について詳しくは製薬会社の情報をご覧下さい。
要 Check! 偽妊娠療法に用いる薬の注意点
黄体ホルモン製剤、あるいはピルの服用にあたって、使用する方は副作用に注意する必要があります。人によっては、のみ始めに吐き気や嘔吐、乳房のはりや痛み、頭痛などを訴える方がいます。こうした副作用は、薬が身体に慣れてくる段階で軽快することが多いようですが、特に以下の副作用などには、十分注意が必要です。
①肝臓機能が低下することがあります
②血液が固まるという機能障害(凝固障害といいます)が起こることがあります。
③タバコをたくさん吸われる方は、狭心症や心筋梗塞の危険率が高まる可能性があると考えられています
④長期間用いると乳がんが発生する確率がやや高まる、という研究結果があります
⑤成分が黄体ホルモンのみのお薬の場合は、「経口避妊薬」としての作用はありません
⑥高脂血症や高血圧のある方には、この療法はすすめられません
⑦授乳中の方は母乳の中にホルモンの成分が出てしまいますので、これらの薬を使うことはできません。
上記の副作用だけでなく、服用によって体に変調を来たした場合には、早い段階でかかりつけ医師に相談してください。
この療法は、下垂体の性腺刺激ホルモン分泌作用を下げる薬剤を服用することで、卵巣のはたらきを抑制して、一時的に閉経した状態(偽閉経)をつくり出すものです。投薬方法には、①注射、②点鼻、③内服の3種類があります。一般的に偽閉経療法のほうが、偽妊娠療法よりも効果が高いと考えられています。
【注射による方法】
1ヶ月に1回の割合で注射をします。約6ヶ月間投薬するケースが多いようです。偽閉経療法の注射薬は、現在3種類あります。
・成分名:酢酸リュープロレリン(主な商品名:リュープリン)
・成分名:酢酸ブセレリン(主な商品名:スプレキュアMP)
・成分名:酢酸ゴセレリン(主な商品名:ゾラデックス)
この3種類の医薬品は、すべて「Gn-RHアナログ」という種類の薬剤です。もともとGn-RHホルモンというのは性腺刺激ホルモン(Gn)を放出させるホルモン(RH)という意味で、脳の視床下部というところから脳下垂体にはたらくように命令を出すホルモンのことです。
Gn-RHアナログを投与されると、脳下垂体が刺激されますが、長期間投与され続けているうちに脳下垂体が刺激に反応しなくなります。その結果天然のGn-RHにも反応しなくなるため、脳下垂体からのFSHホルモン(卵胞刺激ホルモン)やLHホルモン(黄体化ホルモン)の分泌が低下します。その結果、自然排卵がなくなるため、一時的に閉経状態が起こるというわけです。「Gn-RHアナログ」は下図のようにはたらくと考えられています。
・脳の視床下部からGn-RHホルモンがでます
・脳下垂体にはGn-RHホルモンを受け取るレセプター(受容体)があります
・このレセプターにGn-RHホルモンが付着することで脳下垂体が刺激され、下垂体ホルモンが放出されます
・この下垂体ホルモンが卵巣にはたらいて卵巣ホルモンを分泌させます
脳下垂体にはGn-RHを受け取るレセプター(受容体)というのがあります。Gn-RHアナログをたくさん投与すると、これがGn-RHレセプターにくっついて下垂体ホルモンをたくさん出しますが、Gn-RHアナログ投与を長時間続けるとレセプターの数が少なくなり、下垂体のホルモンを出さなくなります。これを脱感作されたといいます。その結果、卵巣ホルモンの分泌が少なくなります。卵巣ホルモンが少なくなることで子宮内膜症の症状が改善します。
【点鼻薬による方法】
点鼻薬によりGn-RHアナログを投与する方法です。1日2回あるいは3回投与します。1本の点鼻薬は約2週間分の分量で、治療期間は一般的に6ヶ月程度とされています。代表的な点鼻薬としては、下記の2種類があります。
・成分名:酢酸ブセレリン(主な商品名:スプレキュア、イトレリン)
・成分名:酢酸ナファレリン(主な商品名:ナサニール、ナファレリール)
薬の作用機序は、注射によるGn-RHと同じですが、注射薬に比べると作用はやや弱いと考えてよいでしょう。連日投与するものですから、更年期障害のような副作用が強く出て中断したほうがよいと判断されたときには使用を中止します。中止することで、比較的速やかに副作用はなくなります。その意味では注射よりコントロールが容易といえます。
【内服薬による方法】
1日2〜3回ずつ、毎日薬剤を服用する方法です。6ヶ月間治療を続けることが多いのですが、1回の服用量を減らしてさらに長期間治療を続ける方法もあります。使われる内服薬は次の薬品です。
・成分名:ダナゾール(主な商品名:ボンゾール、ダナンカプセル)
ダナゾールは、男性ホルモン(アンドロゲン)に似たホルモンです。この医薬品を服用すると、脳下垂体におけるFSHホルモン(卵胞刺激ホルモン)やLHホルモン(黄体化ホルモン)の分泌を抑えるとともに、卵巣から出る女性ホルモンのはたらきを直接抑え込む作用があります。また、子宮内膜の細胞が増殖しないように、さまざまな方向から子宮内膜の症状を抑えると考えられています。
これまで偽閉経療法に使用される医薬品について紹介してきましたが、一般的に医薬品(商品名)の効果は、強い順から、
リュープリン3.75
↓
リュープリン1.88、ゾラデックス、スプレキュアMP
↓
ナサニール、スプレキュア
↓
ボンゾール
と考えられています。
要 Check! 偽閉経療法に用いる薬の注意点
Gn-RHアナログの各製剤やダナゾールも、黄体ホルモン製剤と同じように副作用に注意する必要があります。一般的にGn-RHアナログでは更年期障害、ダナゾールでは”男性化”(ニキビ、多毛、声の変化など)の副作用があるとされています。特に以下の点には、十分注意してください。
①更年期障害のような症状が出ることがあります。この症状は、少量の女性ホルモン剤を服用することで改善します。少量の女性ホルモンを用いる治療法をアドバック療法(add back療法)といいます。この女性ホルモンは微量を投与するだけですので、子宮内膜症に悪い影響を与えず、偽閉経療法の副作用だけを改善させる効果があります
②肝臓の機能に異常が出ることがあります
③長期間あるいはくり返して何回も用いると、骨塩量の低下を起こすことがあります。
④もともと高血圧症や糖尿病のある方は、注意しながら服用することが大切です。かかりつけ医師とよく相談しましょう
⑤肩こりや関節痛などの症状、吐き気などの胃腸症状、うつ症状などが出ることがあります。症状によっては薬を休むほうがよいときがあります
⑥発疹が出る場合があります
⑦注射薬はやや高価です。保険が利いても1ヶ月の負担額は3割負担でリュープリン3.75が約15,000円、ゾラデックス、リュープリン1.88、スプレキュアMPが約11,000円です
⑧点鼻薬はアレルギー性鼻炎などで鼻水が出ているときは、薬の吸収が悪くなるときがあります。点鼻薬は2週間分(保険3割負担)で2,300円〜3,600円程度と、費用に差があります
⑨内服薬は他の薬に比べて、肝臓障害が出る可能性が少し高くなります。また、ニキビ、多毛、声が低くなるといった男性ホルモンの作用によると考えられる副作用に注意が必要です。また、体重増加も認められることがあり、筋肉痛や、関節痛が早めに出るときもあります。費用は2週間分(3割負担)で約1,000〜4,000円で点鼻薬同様、価格に差があります
※同じ成分の医薬品なのに費用に差が出る理由は、コラム「薬代が安いジェネリック医薬品って何?」をご覧ください
⑩注射や点鼻薬のほうが効果がやや高いと考えられており、また副作用も内服薬のほうが少々強く出る可能性があることから、注射や点鼻薬に比べて内服薬が処方されることが診療の場では少なくなってきています。しかし内服薬も有効、かつ必要な医薬品であることには間違いありません。内服薬は、子宮内膜症治療の最初の医薬品として使用されるほか、ほかの治療を行った後の再発予防の薬として使われるなど、さまざまな使われ方をしています
子宮内膜症に対しては、漢方薬による治療もよく行われます。東洋医学で長年使用されてきた漢方薬が、その作用にどのような科学的根拠があるかを調べる研究も進んでいます。一般的に漢方薬は、ほかの薬剤(Gn-RHアナログや男性ホルモン誘導体、ピルなど)に比べて副作用が少なく、長期間の使用が可能です。ここでは代表的な治療方法をあげておきましょう。
【漢方薬単独で子宮内膜症の治療を行う方法】
● 桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
桂枝茯苓丸は、月経痛のもとになるプロスタグランジン(体内で生成される化学物質で、体温調節、血管拡張、痛みの伝達など、さまざまな生理作用を示す)の作用を抑えるという研究結果があります。
● 芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)
芍薬甘草湯は、筋肉の痙攣に幅広く効く薬で、手足の筋肉痛から内臓の痙攣まで幅広い効果があります。痛みが強いときの鎮痛作用が期待されます。
● 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
当帰芍薬散は、貧血、冷え性に効く薬ですが、このほかにも生理中の貧血、手足の冷え、生理不順、更年期障害など、さまざまな婦人病に効果があるとされています。
【漢方薬を交互に服用する方法】
月経時を中心に2週間芍薬甘草湯を用い、そのほかのときには当帰芍薬散を用いると、子宮内膜症の症状の改善の効果が高いという研究結果があります。
【漢方薬以外の薬剤と一緒に治療を行う方法】
桂枝茯苓丸とダナゾール(成分名)を組み合わせて内服する方法、あるいはGn-RHアナログ製剤と組み合わせて内服する方法があります。桂枝茯苓丸と一緒に服用する場合には、ダナゾール、Gn-RHアナログ製剤の使用量を少なくすることも可能と考えられています。
こうした服用方法により、両製剤につきものの副作用が、減少することが期待されます。また治療後、桂枝茯苓丸を用いると、再発率が低くなることも期待できるという研究結果もあります。
【症状の改善、他剤の副作用改善のために用いる方法】
腹痛の改善
芍薬甘草湯
当帰芍薬散
葛根湯
むくみの改善
柴苓湯
月経量の多いときの改善
当帰膠湯
桂枝茯苓丸
漢方薬治療には長い歴史があります。また、上記に記載した以外にも数多くの漢方薬が子宮内膜症の治療に用いられています。ただし漢方薬といえども副作用がまったくないわけではありません。
さらに大切なことですが、漢方薬は「症状に応じて処方される」のではなく、「病気にかかった方の体質を考慮して処方される」ものです。漢方薬の多くは、薬局でも販売されているため、自分で選んで購入する方も多いと思います。漢方薬での治療にあっては、漢方薬に詳しい医師あるいは薬剤師のアドバイスを受けて、自分に合った処方を受けることが大切でしょう。
Column4
病院で出る薬剤(医療用薬剤)の中には特許をもつ医薬品(先発品)と主成分、治療効果、副作用などすべての点でほぼ同じであるにもかかわらず、価格が20%〜70%程度安いという医薬品があります。
ジェネリック医薬品とは、ひと言でいうと「特許期間を終えた先発品と同じ主成分で製造された製品」のことです。通常医療用薬剤を開発するためには、長い年月とたくさんの費用が必要なため、新しいよい薬ができると、その分だけ薬剤代が高くなります。また、国も特許のかたちでしばらくは新製品を保護します。
しかしこうした新薬は、発売から10年〜20年たつと特許満了を迎えます。特許満了後はどんな会社でも「新薬とまったく同じ製品」を製造することができます。こうして新薬と同じ成分で後からつくられた医薬品が、ジェネリック医薬品です。ジェネリック医薬品の製造にあたっては、莫大な研究投資などの必要がないため、新薬の価格に比べて20%〜70%程度の価格に設定することができるのです。
また、これまでの使用経験から、その効き目や安全性について十分確認されているというメリットもあります。
子宮内膜症で使われる医薬品について見ると、酢酸ブセレリン製剤では、新薬の「スプレキュア」(商品名)が3,660円であるのに対し、ジェネリック医薬品の「イトレリン」(商品名)は2,300円ですし、酢酸ナファレリン製剤では、新薬「ナサニール」(商品名)の3,610円に対して、ジェネリック医薬品の「ナファレリール」(商品名)が2,540円です。
ただ先発品と同じ成分、効果をもつ薬であっても、わずかにのみ心地や効果などに差が出てくると感じる場合があります。ジェネリック医薬品に限らず、病院から処方された薬に違和感を感じた場合は、かかりつけの医師にその旨を必ず話すことが大切です。
Section 2 手術療法
子宮内膜症の治療のひとつは、薬物療法により症状を緩和し、病巣の成長を抑えることです。しかし、症状が進行した結果、薬物療法で病状をコントロールできなくなっている場合には、手術による治療がすすめられます。
子宮内膜症の手術には、目的別に痛みの緩和、不妊症治療、病巣除去などを行う「保存手術」と、病巣となっている子宮と卵巣を摘出する「根治手術」があります。また、手術方法は「腹腔鏡下手術」と「開腹手術」があります。
子宮内膜症の病巣だけを切除して、子宮や卵巣を”保存”しておく手術方法です。このため手術後も妊娠、出産することが可能です。
ただ、この場合は、手術の際に見つからなかったごく小さな病巣から子宮内膜症が発症、再発してしまう可能性があります。
子宮内膜症を発症している子宮、卵巣をすべて摘出して、症状の”根治”を目指す手術方法です。発症している子宮と卵巣をすべて摘出してしまえば、子宮内膜症は完治します。しかし一方で、女性ホルモンを分泌する卵巣をすべて除去した場合は、更年期障害を発症するとともに、妊娠・出産も望めなくなってしまいます。子宮を除去した場合も、妊娠・出産はできません。ただ、卵巣については、ひとつ、その3分の1でも残っていれば、女性ホルモンが分泌されるので、更年期障害が出ることはありません。
次に手術方法について説明しましょう。手術方法には、大きく分けて「腹腔鏡下手術」と「開腹手術」のふたつの方法があります。
一般的に、保存手術を行う場合は腹腔鏡下手術、根治手術を行う場合は開腹手術を行うことが多いですが、保存手術でも開腹手術を行うことがあります。
【腹腔鏡下手術】
腹腔鏡下手術とは、お腹に小さな穴(約0.5cm)を数ヶ所開けて、そこから腹腔鏡という機械を挿入し、モニターで内部の様子を見ながら行う、高度が技術が必要な手術です。この手術は、手術後のメリットが多いため、現在多数の病院で行われています。
【開腹手術】
病巣の癒着が強固な場合の卵巣のう腫の摘出、子宮摘出あるいは癒着剥離手術の場合には、開腹手術を行うことがあります。
開腹手術は、下半身だけの腰椎麻酔あるいは全身麻酔で行われます。手術による傷の長さは下腹部に約10〜15cm程度で、入院期間は約2週間くらいです。
開腹手術は、手術例も多く、手術の際の安全性も確立されており、子宮内膜症のどんな状態でも対応できるのが特徴です。
子宮内膜症の症状、年齢、合併症の有無などを考えて、腹腔鏡下手術か開腹手術がすすめられます。手術方法は医師とよく相談することが大切です。ここでは、それぞれのメリットとデメリットをまとめてみました。
| 腹腔鏡下手術 | |
| メリット | デメリット |
| ・傷が小さくて済む ・入院期間が短い ・手術後の痛みが軽い ・手術後の癒着が少ない可能性が高い ・再発した際、何回か手術することができる | ・癒着が強過ぎると手術が難しくなることがある ・予想外の出血や傷がついたときは開腹手術になることもある ・ガスを入れて行うタイプのときは、ごくまれに血管にガスが入り込むことがある |
| 開腹手術 | |
| メリット | デメリット |
| ・病変が大きかったり、癒着が強くても手術が可能 ・子宮の全摘などの際に適している ・婦人科専門医であれば、手術経験の豊富な医師が多い | ・傷がやや大きくなる ・入院期間が腹腔鏡下手術に比べ長い ・再発し再手術が必要なとき、開腹手術を何回もくり返すことが難しい |
実際にはどのような手術が行われるのか見てみましょう。それぞれ腹腔鏡下手術と開腹手術があります。また、特殊な手術法もあります。
【保存手術の手術方法】
保存手術は、「子宮」と「卵巣」を保存し、手術後も妊娠が可能な状態を維持する手術です。子宮や卵巣をすべて摘出することはありません。手術は主に、子宮や卵巣の病巣だけを摘出したり、癒着を切除(除去)するものです。このため手術後の再発の可能性は常にありますし、場合によっては何回か手術をすすめられることもあります。
① 腹腔鏡下手術による子宮、卵巣の病巣切除
子宮内膜症がどこまで広がっているかについては、超音波検査、MRI検査でかなり正確に推定されます。あらかじめ異常の程度が推測されれば、ほとんどの子宮や卵巣の異常、周辺の癒着の治療などは腹腔鏡下手術で可能と考えられています。
② 腹腔鏡下手術による仙骨子宮靭帯切除術
月経痛が強い子宮内膜症の方に用いる手術方法です。子宮の後ろにある仙骨子宮靭帯(子宮の後ろの壁と直腸をつないでいる靭帯)を腹腔鏡下で切除します。ここには痛みを感じる神経が走っているので、月経痛が強い場合、この靭帯を切ることで月経痛を緩和することができます。この手術による妊娠などへの影響はありません。
この手術を「LUNA(laparoscopic uterosacral nerve ablation)」といいます。最近はさらに深く切除する「deep LUNA」という方法があります。
③ 開腹手術による子宮、卵巣の病巣切除
開腹手術では、お腹を十数㎝程度メスで切ります。こうしてお腹を”開ける”ため、子宮や卵巣の病巣や癒着が肉眼で細部に至るまで観察できます。
【根治手術の手術方法】
根治手術は、子宮内膜症の病巣ができている「子宮」と「卵巣」のすべて、または一部を切除することで、子宮内膜症を根治する手術方法です。子宮内膜症を発生させる可能性のある子宮、卵巣がなくなってしまえば、再発の可能性もゼロになるため”根治”するというわけです。ただし子宮をすべて切除してしまえば妊娠は不可能となります。また卵巣をすべて切除してしまえば妊娠ができなくなってしまうことに加え、卵巣由来の女性ホルモンが体内で生成、分泌されなくなってしまうことから、更年期障害などホルモン不足の症状が起こることがあります。ただし根治手術でも、卵巣の一部だけでも残っていれば、ホルモン不足の症状が出ることはほとんどないと考えられています。手術を受ける前の医師との話し合いが大切です。
①腹腔鏡下手術による子宮と卵巣の摘出
腹腔鏡下で癒着などをすべて切除したうえで、最後に膣から子宮や卵巣だけを取り出す手術方法です。手術の際の傷や身体への負担が小さくて済みます。ただし、すべての手術がこの方法でできるとは限りません。
②開腹手術による子宮と卵巣の摘出
開腹手術を行い、子宮、卵巣を摘出する手術です。現時のところ、子宮内膜症の根治手術となる「子宮、卵巣に関する手術」は、開腹手術で行われることが多いようです。また、病巣が子宮に集中している場合は、子宮のみを摘出する手術が行われ、同じように卵巣に集中している場合は、卵巣のすべてあるいは病気のある部分のみを摘出する手術が行われます。
【特殊な手術】
①卵巣チョコレートのう腫内容吸引‐アルコール固定術
卵巣チョコレートのう腫の内容(古い血液など)を吸い出した後、アルコールを入れて病巣をアルコールで破壊するという手術方法があります。簡単な手術のため、日帰り手術が可能なときもあります。
またこの方法は腹腔鏡下でも行われます。
卵巣チョコレートのう腫の場合、その部分を切除するよりアルコール固定術のほうをすすめられる傾向があるようです。
②子宮動脈塞栓術(UAE)
子宮筋腫の治療と同じく、股のところの動脈からスポンジのような物質を入れ、子宮に栄養を与える血管(子宮動脈)をつまらせてしまう方法です。治療後、痛みや発熱が起こることがあるため、通常は数日の入院が普通ですが、日帰り手術が可能なときもあります。
この治療によって子宮内膜症のかなりの部分が縮小しますが、完治するわけではありません。
Section 3 妊娠を望まれている方の治療法
現在、約10組に1組の夫婦に子どもがいないとされています。これは先進国では共通のことです。もちろん最初から子どもを望まれていない方もいることは確かですから、すべての夫婦が不妊症とはいえません。ただ、もし子どもを望まれるようであれば、不妊の原因を探ることは大切です。
不妊症の主な原因には、次のようなことが考えられています。
| (1)両側の卵管の異常・・・ | 約30% | ||
| (2)精子の異常・・・・・・・・・ | 約30% | ||
| (3)排卵の異常・・・・・・・・・ | 約15% | ||
| (4)子宮内膜症(重症)・・・ | 約15% | ||
| (5)その他・・・・・・・・・・・・・ | 約10% |
このように不妊症の原因では、子宮内膜症が大きなウェイトを占めているのがわかります。
もうひとつ大切なことは、原因不明の不妊症の方は、何も治療をしなくても21.1%の方が妊娠できるのに対して、子宮内膜症(重症)の方は何も治療をしないと1.1%しか妊娠しないという研究結果があるということです。
つまり、子宮内膜症が原因の不妊の方は、早めの治療を受けることが必要だということを示しています。
【腹腔鏡による検査と治療】
大変有効な治療法のひとつです。
腹腔鏡を使って、お腹の中にある病変を検査し、治療します。
・卵巣チョコレートのう腫の内容を吸引し、アルコール固定を行う
・卵巣チョコレートのう腫を摘出する
・子宮や卵巣、卵管や靭帯にある子宮内膜症を電気メスやレーザーで焼灼する
・卵管の周囲の癒着を剥がす
・お腹の中を水で洗う。洗うことで、お腹の中にある卵に対する有害な物質を身体の外に出してしまう効果があります。これだけでも妊娠率が上昇するといわれています
【開腹手術による治療】
あまりにも癒着が強かったり、子宮筋腫を合併しているような場合は開腹手術がすすめられることがあります。また、最近は子宮筋層の中に子宮内膜症がある場合、切除可能と判断された部分だけを切除する方法も試みられています。この方法は主に赤ちゃんが欲しい方に行われます。
年齢、赤ちゃんができない期間、子宮内膜症の程度により異なりますが、手術療法(主に腹腔鏡下手術)にメリットが多いとする研究結果が数多く出ています。
こうした研究結果を総合的に判断すると、腹腔鏡下手術を受けた方では、子宮内膜症の初期の段階で40%〜50%、進行した段階でも20%〜40%前後の妊娠率が達成されると考えられています。
薬剤による治療中でも、妊娠計画を立てられる場合があります。
①黄体ホルモン製剤を服用する場合
黄体ホルモン製剤のジドロゲステロン(主な商品名:デュファストン)は排卵を抑制しないため、子宮内膜症の治療をしながら妊娠することが可能です。
②Gn-RH誘導体製剤を服用する場合
酢酸ナファレリン(主な商品名:ナサニール、ナファレリール)、酢酸ブセレリン(主な商品名:スプレキュア、イトレリン)などの点鼻薬を用いる方法もあります。Gn-RH誘導体製剤と排卵誘発剤をほぼ同時に用いると「フレアアップ」(刺激作用によって卵胞が急激に発育する)という効果によって、よい排卵が起きます。
③男性ホルモン製剤を服用する場合
子宮内膜症の改善をはかるため一定期間の治療を行った後、不妊治療の計画を立てることがあります。この治療計画を進める際には、男性ホルモン製剤のダナゾール(主な商品名:ボンゾール)を使用する方法があります。ダナゾールを使用している間は妊娠できませんが、これを数ヶ月使用した後に積極的な不妊治療を行うと妊娠率が高まるという研究結果があります。
子宮内膜症が不妊の主な原因になっている方では、卵巣の中には異常がなく、受精卵が着床する子宮内の環境に問題があることも比較的少ないと考えられています。
このため子宮内膜症の方で、治療を受けてもなかなか妊娠されない方は、次のステップとして、健全な卵を保護しやすい体外受精がすすめられることがあります。
現在、子宮内膜症の方が体外受精で妊娠される割合が増えており、赤ちゃんが欲しい方の大変有力な治療法のひとつになっています。
体外受精は、卵巣に針を刺して卵子を取り出し、体外で受精させて子宮に戻すという治療法です。体外受精の妊娠率は、日本の平均で約30%程度です(施設により多少の差があります)。
体外受精による妊娠の確率、考えられる治療上の副作用など、体外受精を専門としている医師との話し合いが、とても大切になります。
赤ちゃんを望まれている方の治療法のまとめ
・不妊期間が短い方
・年齢が若い方(30歳くらいまで)
・子宮内膜症の程度の軽い方
↓
| 一般的な不妊治療を受けることで、妊娠が可能なことがあります |
| ・タイミング指導を受ける ・排卵誘発剤を用いる ・人工授精 ・小さなチョコレートのう腫を膣のほうからアプローチしてアルコール固定を行う ・子宮内膜症の薬物療法を併用する ・腹腔鏡下の検査を受けることを考える |
・一般不妊治療でなかなか妊娠できない方
・年齢が32〜33歳以上
・子宮内膜症の程度が進んできた方
↓
| そろそろ子宮内膜症対策を考えましょう |
| ・腹腔鏡下の治療を積極的に受けることを考える ・手術後、排卵誘発剤の使用や人工授精を行う ・Gn-RHアナログ製剤を有効に併用する ・体外受精についての話を聞いておくことも、悪いことではない |
・腹腔鏡下治療後も妊娠しないとき
・年齢が進んでいる方
・子宮内膜症が進んだ方
↓
| 体外受精を選択することも考えましょう |
| ・体外受精も有効な治療法。子宮内膜症の方でも妊娠率は上がっている ・手術(腹腔鏡下手術、開腹手術)も一緒にすすめられることがある ・治療を受けるチャンスがあるのに、考え過ぎて治療のタイミングを逃すことのないように注意 医師とよく話し、妊娠率をはじめ治療効果だけでなく、考えられる副作用についても話してみる |
Section 4 セカンドオピニオンを受けましょう
最近、病気の治療に関する情報の中で、「セカンドオピニオン」という言葉を耳にする機会が増えてきました。治療方法について、ひとりの医師の判断だけでなく、ほかの医師の意見を聞いて治療にあたることを、「セカンドオピニオン」といいます。
実際、これまでも診察に来られた方が「前の病院ではこういわれたのですが……」と医師に話をすることは診療の場でよくありました。最近は「もっと積極的に多様な意見を聞いて治療にあたろう」というムードが全国的に出てきています。
ただ現在の医療体制を考えると、突然「セカンドオピニオンを聞かせてください」といって受診しても、対応できない病院・医院も少なくありません。これは、専門医の対応体制が整備されていないこと、患者さんの数が多いため、ひとりあたりに十分な診察時間がとれないといったことが背景にあります。
【セカンドオピニオンを受ける前の準備】
セカンドオピニオンを受けるにあたって次のことに注意されるとよいでしょう。
①その病院がセカンドオピニオン専門の外来を設けているか。
②専門外来を設けていなくても、そういう相談に応じているか。
最近、セカンドオピニオン外来を主体とする会員制の医療施設もできてきました。また、実際にセカンドオピニオンを受けるにあたっては、そのための準備も重要です。前医の治療情報(治療方針、実際の治療など)を自分なりにまとめておきましょう。また可能であれば、前医から紹介状と検査データをもらいましょう。
【事前に確認すること】
①セカンドオピニオンには十分な時間をかけましょう。セカンドオピニオンを受ける病院に、あらかじめ、どの程度時間がとれるかを聞いておくとよいでしょう。
②セカンドオピニオンを受けようとする医師がその病気の専門医かどうか確かめておきましょう。
③現在、セカンドオピニオンについては保険制度の対象になっていませんので、費用については、事前に確認しておくとよいでしょう。