五月病という言葉があるように、春になると落ち込みやすくなったり、不安定になる人が多いといいますね。うつ病を患っていらっしゃる方は悪化してしまうことも多いのではないでしょうか。

そこで、今回は、現代病といわれる心の病気「うつ病」についてのお話しです。(正食協会 マクロビオティックマガジン むすび誌 記事より)

 

 

 

 

 

 

 

 

一般的なうつ病は心と体の両方に症状があらわれます。心が落ち込むなどの精神的な症状だけでなく、体の調子も悪くなります。これらの症状は1日の中でも時間とともに変化しますが、多くは午前中が悪く、夕方にかけて回復していきます。

 憂うつになる、悲しい、寂しい、自分はダメだと思う。そして不安や焦りを感じてイライラし、時には死にたいと思ったりします。

 体にあらわれるうつ症状は、よく眠れない、疲れる、めまい、腰痛、腹痛、便秘などです。

精神的な症状があまりなくて、体の症状だけが現れるタイプがあり、「仮面うつ病」と呼ばれます。

 うつ病の原因のひとつとして、神経伝達物質であるセロトニンノルアドレナリンが非常に少なくなることがあげられます。そのために意欲が無くなったり、気分が落ち込んでしまうのです。

抗うつ薬はこのセロトニンとノルアドレナリンの量を増やし、脳の活動を活発にして、症状を良くしようとするものです。

 

「若い世代に多いうつ病(非定型うつ病)」

 

「非定型うつ病」ってあまり馴染みがある言葉ではありませんね。

 ふつう、うつ病の特徴としては「すぐ落ち込んでしまい、好きなことも楽しめない、朝に調子が悪く、夜になると回復する、不眠」などですが、これらに当てはまらない症状があります。それは若い人に増えている「非定型うつ病」です。

 一般的なうつ病の発症は平均32歳であるのに対し、非定型うつ病は約17歳と低年齢で発症し、とくに女性に多いといわれています。双極性障害(躁鬱病)などが重なっている場合もあるようで、これらの診断は専門家でも難しいといわれています。

 

【非定型うつ病の症状】

  • 良いことや楽しいことがあると気分が明るくなる

 うつ病はどんな出来事があっても元気がないのですが、非定型うつ病は良いことがあると気分が明るくなるという傾向があります。

  • 過剰に眠る

 早朝に目が覚め、寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、というのが一般的なうつ病の傾向ですが、非定型うつ病はどんなに寝ても眠くなり、夜にかけて不安やイライラが出てきて具合が悪くなる傾向があります。

  • 過食

 うつ病は一般的に食欲がなくなり体重が落ちるのに対して、非定型うつ病は気分を紛らわすためにむちゃ食いをする、という過食の傾向があり、体が鉛のように重いと言います。

 

  • 対人関係に過敏になる

 人から拒絶されたり批判されると、誰でも一時的に落ち込むのですが、非定型うつ病は過剰に落ち込んだり怒ったりする傾向があります。また、人から拒絶されることが怖いので、対人関係をうまく保てなくなったりします。

 これらの症状は甘いものお酒、つまり糖分が多い人にも見られる症状です。

 

「治療法」

SRIやSNRIはアセチルコリンやヒスタミンに関係する副作用が抑えられ、比較的使いやすく、今では抗うつ剤の主流になっています。

 ただし、抗うつ薬は効果が出る前に副作用が先に出ることがあります。とくに投与初期には、吐き気や便秘など胃腸に関連する副作用が現れることがあるため、薬は少ない量から始め、様子を見ながら増やしていきます。症状を和らげる薬をあわせて飲むこともありますので、もし副作用が起こっても、自分で勝手に薬をやめず、まずは医師に相談しましょう。

 

「足りない栄養素が不安をつくる」

SRI(抗うつ剤)はうつ病を改善しますが、これは単に神経細胞から放出されたセロトニンが再取り込みされるのを妨げることによって、セロトニンレベルだけを人工的に上げているだけです。セロトニンは役目が終わると再取り込みをして脳内のセロトニンレベルが下がって再び精神が不安定になってしまうのです。SSRIは副作用がなく、素晴らしい効果が絶賛されましたが、のちに副作用についてのマスコミ報道や訴訟がつぎつぎに起き、考え直さざるを得なくなりました。

 

セロトニンをつくるためにトリプトファンをとる

私たちの体ではトリプトファンからセロトニンがつくられます。この変換には酵素や補酵素の協力が欠かせません。その補酵素がビタミンB群ですが、特にB6とビタミンCは抗ストレスビタミンと言われます。B6とナイアシンが十分に取れれば、トリプトファンが無駄なくセロトニンに変わります。セロトニンは脳を興奮させる伝達物質ですが、ノルアドレナリンやドーパミンとは異なり、落ち込んだ心を励ますと同時に、感情の爆発を抑えながら、心を穏やかにする「感情物質」です。

そして摂食障害や暴力行動は、セロトニン不足が大きな原因となっています。セロトニンは感情を安定させるのに欠かせない成分なのです。

 

 このセロトニンをつくるただ一つの原料が、必須アミノ酸のトリプトファンです。だから、不足しているセロトニンを補充すると、気分の落ち込みをすばやく改善し、不眠も解消されるのです。

また、セロトニンの総量では、男性が女性よりも52%も多いことが分かっています。このことは、女性は、「感情物質」であるセロトニンの不足に男性よりも陥りやすいこと、女性が、男性よりも、うつ病や摂食障害にかかりやすい理由でもあります。

 

「トリプトファンを含む食べ物」

 

トリプトファンを含む食べ物には、胚芽、しらす干し、大豆、タラコ、ごま、かつお、チーズ、肉類、赤身魚、納豆などがあります。

 それから、ビタミンB群の1つであるイノシトールも積極的にとりたい食品です。

イノシトールの抗うつ効果は確認されています。イノシトールはセロトニンの効果を高める物質に変換されるからです。イノシトールは小麦胚芽、キャベツ、トマト、サツマイモ、発芽玄米などに含まれています。

チロシンも不安症候群には重要な食材で、脳を活性化させてドーパミンやノルアドレナリンなどの神経物質をつくり出すため「やる気」を出させる働きがあると言われています。チロシンはうつ病、痴ほう症、パーキンソン病の予防と回復に効果があるといわれるだけでなく、細胞の老化を抑えたり、高コレステロール改善の働きがあります。

チロシンはチーズ、タラコ、しらす干し、たけのこ、落花生、大豆(これらは精神安定に欠かせないセロトニンを作るトリプトファンも多い)などに含まれます。

 

 今までうつ病や、強迫神経症、統合失調症などの食事相談を受けてきましたが、症状が重くて、妄想や幻聴、幻覚があったり、自殺企図の気配がある時はとても危険なので、お医者さんのお薬に加え、玄米食に、しらす干し、鰹、たらこ、マグロ、イカ、桜エビ、チーズなど動物性食品を積極的に摂ってもらって効果を上げてきました。

また、利尿の食材に加えて苦味も献立にいれます。もちろん甘いものやお酒をきっちり止めるという前提のもとでです。最近うつ病や統合失調症に抑肝散などの漢方薬が注目を集めているので、医師と相談の上これらの漢方をおすすめする場合もあります。

 

「心の持ち方」

 

もう一つ大事なことがあります。それは心の持ち方です。心を病んでいる方は自分のことにこだわりすぎる傾向があります。ふつうなら忘れてしまうような些細なことも、気になってしまいます。また、人にどう思われるかが気になって仕方がないので、ちょっと嫌なことを言われたりすると、どーんと落ち込んでしまいます。誰でもそんなことがあるものですが、どうしたら改善できるのでしょう?  とても難しいですね。

赤ちゃんが歩き始めた時を思い浮かべてみて下さい。たっては転び、転んでは立ち上がることを何度も繰り返します。赤ちゃんは何度転んでも「どうしてボクは転ぶんだろう」「ボクは永遠に歩けないんじゃないだろうか」と思い悩むことはありません。ただ歩けるようになることだけを考えているのです。

このような心の持ち方の練習を少しずつして、思い悩まずに目の前の課題を淡々とこなすことだけに集中する練習をします。これはほんの一例ですが、こうやって一歩ずつ前に進んで行くと元気になれます。もちろん食事もしっかりと守ってね。

 

やまむらしんいちろう

1949年岩手県生まれ。77年、岩手山麓の雫石町で自然食品店を始め、80年に 「盛岡マクロビオティックセンターいーは・とーぶ」と改名、盛岡市に店舗を構える。99年に渡米し、クシインスティチュートMCTを卒業。帰国後、同市で ゴーシュ研究所を設立して現在に至る。東京を拠点に全国で食事指導や講演会などを中心に活動。正食協会理事。

 

(正食協会 マクロビオティックマガジン むすび誌 記事より)

 

Written by オーガニック倶楽部通信

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