絶賛公開中の映画『T2 トレインスポッティング』。トレスポと言えばGRIND世代にとって
西の横綱『KIDS』と並び、 1990年代のユースカルチャーの危うい魅力を心に刻み付けられた東の大横綱である。
前号の本誌(Vol.71)でも本作のことは取り上げたが、今回は<キャサリン・ハムネット・ロンドン>とのコラボで
良い感じのオフィシャルグッズが発売されたのでそちらに焦点を当てて紹介してみたい。
特集のお相手は人気ブランド<ネーム>のデザイナーであり、
若かりし頃は映画館でアルバイトしていたという経験も持つ清水則之氏。
公開から少し時間も経ったので、ネタバレ多めでお届けします。
時代は違えど根底で繋がっている
UKユースカルチャーの奥深い魅力
舞台はスコットランドの首都エディンバラ。ヘロイン中毒のマーク・レントン(ユアン・マクレガー)と3人の不良仲間、シック・ボーイ(ジョニー・リー・ミラー)、スパッド(ユエン・ブレムナー)、そしてベグビー(ロバート・カーライル)の物語。ブラーとオアシスがブリットポップ・ムーブメントを牽引し、デヴィッド・ベッカムがプレミアリーグでデビューするなど、世界の若者たちの目がUKに向いていた現実世界と同じく、あの時代を生きた男たちは誰だってトレスポのドン底な青春群像劇に衝撃を受け、夢中になっていた。みんな「Lust For Life」を聴いて走り、「Born Slippy」を聴いて踊り、「Perfect Day」を聴いて泣いたのだ。今となっては恥ずかしいピチTも、スキニーデニムもコンバースもアーガイルのセーターも、当時オアシスのスタイリングを手掛けていたレイチェル・フレミングが作り上げたトレスポのファッションスタイルをみんなが真似した。まさしく『トレインスポッティング』は1990年代を代表するポップカルチャーの革命だったのだ。
あれから20年。アムステルダムでうだつの上がらない生活を送っていたレントンが故郷エディンバラに戻るところから『T2』の物語は始まる。ゆすりや売春に手を染めるシック・ボーイ、相変わらずドラッグから抜け出せないでいるスパッド、ベグビーは殺人罪で服役中だ。”CHOOSE LIFE”と掲げられたスローガンが虚しく響く。「人生を選ぶ」とは何なのか?ブランド物の洋服を選ぶことも、インスタにポストする写真を選ぶことも、ドラッグから更生するという道を選ぶことも、大学進学を選ぶことも”CHOOSE LIFE”だが、じゃあ俺たちはいつ選び損ねたのだろうか。それすらも分からない。それでも人生に活路を見出そうと苦しみ、もがき、闘うことを決意する(刑務所からの脱獄も含まれているが)4人の姿が『T2』ではリアルに描かれている。
本作はもう公開中なのでストーリーの話はこのくらいにして、今回は〈キャサリン・ハムネット・ロンドン〉とのコラボで実現したオフィシャルグッズにスポットをあてたい。ファッションデザイナー キャサリン・ハムネット女史と言えば社会、環境、政治性の強いメッセージをプリントしたスローガンTシャツという手法で、社会におけるファッションの在り方を革新した先駆的ブランド。マーガレット・サッチャーがイギリスの首相だった当時、 “58% DON’T WANT PERSHING”(国民の85%はアメリカ製弾道ミサイル「パーシング」を望んでいない)というスローガンTシャツを着用して会談に臨んだという逸話もある。そんな彼女は現在もメッセージを叫び、発信し続けているが、近年あのカニエ・ウェストが<YEEZY>の洋服作りの際にキャサリン・ハムネット女史の過去のクリエーションから多大な影響を受けたことや、自身のファッションにおけるミューズであると公言するなど、時代を超えて今も支持され続けている。そして現在、このグッズもまた”CHOOSE LIFE”なのだ。とは言えGRIND世代なら知っている人も多いと思うが、このスローガンを使用したのはキャサリン・ハムネット女史の方が遥かに先で、1983年春夏コレクションに”CHOOSE LIFE”は、ブランド設立以来初のスローガンTシャツとしてリリースされていた。そこにトレスポと呼応する形で今回のコラボが実現するというエピソードに、時代は違えど根底で繋がっているUKユースカルチャーの奥深い魅力を感じずにはいられない。単なる映画グッズではない。GRIND読者にとってもグッと来る、”選ぶ”べき理由のある逸品ではないだろうか。CHOOSE LIFE!
interview with Noriyuki Shimizu
“僕も『T2』の登場人物と同じで
いつもまわりからきっかけをもらって
動いて来たという感覚はありますね”
ーーまずは『T2 トレインスポッティング』を鑑賞した感想を率直に聞かせて下さい。
まあ、面白かったですよ。1作目から20年が経ってキャストも老けたなって感傷に浸ってたら、同じく自分も老けてて(笑)
ーー(笑)。1作目を観た時のことは覚えていますか?
覚えてます。専門学生の時ですね。あの頃は映画館でバイトしてたんですよ。
ーーそれは異色の経験ですね。やはり映画の見方も玄人目線になるんですか?
いや、まわりに映画が好き過ぎる人たちがいっぱいいることで逆に楽しめなくなっちゃって……。「あの映画はライティングが良くない」とか言われると、単純に映画を楽しめなくなっちゃって。それが苦痛で辞めました(笑)。
ーーそれは大変でしたね(笑)。ちなみに1作目は公開当時、清水さんのまわりでも話題になっていましたか?
なってましたよ。
ーーそれはどんな部分が?
新鮮だったからじゃないですかね。スコットランドを舞台にしたああいう疾走感のある青春映画ってそれまであまり観たことがなかったので。『さらば青春の光』や『ジュース』が好きな僕としても新鮮に楽しめました。
ーー清水さんは登場人物たちと比較的近い世代ですよね?
そうですね。
ーー20年ぶりの新作を観て、同世代として共感できる点などはありましたか?
(登場人物たちの)変わらないダメさみたいな部分というか、大人になってからの20年って、20年経っても根っこの部分はあまり変わらないんだなっていうことに共感したというか、ヘコみましたね(笑)。
ーー思い入れのあるキャラクターっています?
思い入れってほどではないですけど、『T2』だとスパッドが良かったですね。ヘロインを断つために夢中になってる姿が微笑ましかったです。残りの人たちが変わらない分ね(笑)
ーー『T2』では”CHOOSE LIFE”という言葉がスローガンとして作品中でも使われていますけど、このスローガンには何か思うことはありましたか?
これってアイロニーとして使われてるんですかね?と言うのも単純に”CHOOSE LIFE”っていう言葉の意味ほどポジティブな映画でもないし、自分で人生を選べない人たちの話だと思ったんです。ベグビーとか特に、「大学に行くっていう選択肢は俺にはなかった」みたいな台詞もありましたし。そういう社会的な問題を皮肉ってるのか、単に選択肢がない中で選べっていうメッセージなのかとか、矛盾を感じつつ色々考えさせられましたね。ちなみに映画の中で出てくる”CHOOSE LIFE”って描かれたTシャツって<キャサリン・ハムネット・ロンドン>のものなんですよね?
ーーそうなんです。あれは元々キャサリン・ハムネット女史が過去に”CHOOSE LIFE”っていうスローガンTシャツを作っていて、そのTシャツをワム!(1980年代に一世を風靡したイギリスの2人組ミュージシャン)が着てライブしている実際の映像らしいです。
なるほど。かなり唐突に出て来ますよね(笑)。その分印象に残りましたけど。
ーーあそこだけ現実の映像ですからね(笑)。そういうお互いのメッセージが繋がりあった上で、オフィシャルグッズとして『T2』と<キャサリン・ハムネット・ロンドン>のコラボが実現したらしいです。
目に付くデザインですよね。それに全部の映画がこれだけのバリエーションでグッズを作っているわけじゃないから、この先も古着屋とかで見かけそうですね。実際1作目もそうなっているわけですし。
ーー今回はもちろん”CHOOSE LIFE”という言葉がキーワードになってくるわけで、清水さんにとってファッションデザイナーという”人生を選んだ”きっかけはいつ頃でしたか?
ファッションへの興味はもう少し前からありましたけど、中学生の時に親の洋服を勝手に壊したりしてましたね(笑)
ーー(笑)。偶然ですがキャサリン・ハムネット本人も親の軍服を切り刻んでアレンジするところから洋服作りを始めたらしいですよ。
僕は壊していただけですけどね(笑)。プラモデルやラジコンを作るのと一緒で、組み立てたり仕組みを知るのが好きだったんです。ファッションの道に進むと決めた時、最初にパタンナーの技術を覚えようと思ったのもそのためなのかもしれません。でも今思うと、僕も『T2』の登場人物と同じでいつもまわりからきっかけをもらって動いて来たという感覚はありますね。専門学校に行ったのも、パタンナーという職業を最初に選んだのもまわりの人たちからのアドバイスでした。良くも悪くもまわりの人たちに人生を動かされているという点では、彼らにも共感できているのかもしれませんね。
Collaboration Goods
オーガニックコットンTシャツ 各¥6,480
Tシャツ 各¥3,780
Tシャツ 各¥3,780
キャップ ¥3,996
トートバッグ ¥1,944
クリアケース 各¥648、ステッカー 各¥540、ライター 各¥2,160、タオル 各¥864
(左)水筒 各¥3,240、(中)タンブラー 各¥3,240、(右)タンブラー ¥2,160
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PHOTO_Daisuke Okabe, Haruka Shinzawa(horizont)
TEXT_Yohsuke Watanabe