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雇用契約と業務委託契約とで何が異なるのか?
これまでに何軒かのマッサージ店で勤務したご経験のある方ですと、マッサージ店によって雇用契約を結んでくれるケースと、業務委託契約を結ばされるケースとがあることにお気づきかもしれません。
法令を厳密に守ろうとすると、ほとんどのマッサージ店ではスタッフとの間に雇用契約を結ばなくてはならないのではないかと思うのですが、業務委託契約を締結しているケースは今でもあるようです(最近減ってきているようですが)。
このような契約形態の違いはなぜあるのでしょうか?
いくつか理由があるのですが、そのうちのひとつが消費税です。
スタッフとの間に雇用契約を結んで給料を支払った場合、支払う給料は消費税の計算において「仕入れ」に該当しません。
そのため、消費税の額は安くなりません。
一方、スタッフとの間に業務委託契約を結んで業務委託費を支払った場合、支払う業務委託費は消費税の計算において「仕入れ」に該当するから消費税を安くすることができるというのが、こういうことをするマッサージ店の論理です。
本当それが正しい理論なのかどうかは別にして、現在のマッサージ業界はここまで緻密な計算の下、動いています。
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マッサージ店のスタッフへの支払は外注費ではなく給与だとされた事例
マッサージ店のスタッフへの支払いが本当に外注費なのか、それとも実態は給与なのかについて税務当局とマッサージ店が争った事例があります。
国税不服審判所のウェブサイトにも掲載されている有名な事例です。
平12.2.29裁決、裁決事例集No.59 372頁
要約しますと次のような争いだったそうです。
マッサージ師との業務委託契約書には、甲をGマッサージ代表者Fとし、乙をマッサージ師個人として署名、押印がなされている上、要旨次のとおり記載されている。
A 甲は乙に対して、甲の顧客に対するマッサージ業務を委託し、乙はこれを実施する。乙は甲の指示に従い、甲のサービス向上を目的とした業務を誠実かつ健全に遂行する。
B 営業時間は平日午前10時より午後8時、日曜祝日は休業とし、変更については、甲乙協議する。
C 業務委託料は、マッサージの技術、経験を基に、15分又は30分のクイックマッサージコース及び20分又は60分のベッドマッサージコースの4コースの施術内容別に定める。なお、支払は、15日締めの当月未払い及び月末締めの翌月15日払いの月2回とする。
D 甲は、乙が甲の営業方針及び業務規則に従わない場合、本契約を即時解除することができる。乙が契約解除をする場合は、2週間前に甲に通告し、これに反する時は、ペナルティーとして、業務委託料の2割を差し引くものとする。
E 甲は、マッサージ業務における一切の顧客からのクレーム、トラブル及びそれらに関する一切の損害賠償責任に関して責任を負う。
F 業務時間は、早出、遅出出勤を隔日とし、早出出勤は午前9時30分に入店、清掃を行い、午後6時に業務を終了する。遅出出勤は午前12時までに入店し、午後8時に業務終了とするが、業務終了時間直前の顧客に対しては、その業務終了までとし、閉店間際の店内の後始末は全員で行う。服装は、ポロシャツを制服として店より貸与するが、ズボン、サンダルは各自で用意し、常に清潔を保つこと。食事休憩は、随時、手の空いた時間に取り、原則として、業務中の外出を禁じる。
さらに、平成9年8月の上・下期のマッサージ師各人に対する給与支払明細書には、マッサージ師名、コース別の時間、顧客数及び出来高金額に皆勤、特別手当等を加算した支給額、また、Jに係る平成9年8月分の給与支払明細書(控)には、時間給により計算された支給金額がそれぞれ記載されている。
また、Gマッサージあての支払証明書には、マッサージ師各人に対する支給金額、計算期間及び年月日等の内容が記載されており、マッサージ師各人が受領した旨を証明者として署名、押印し、領収書兼用としてマッサージ店に提出している。
このようなケースで、国税不服審判所がどのように判断したかと言いますと、
消費税法第30条第1項に規定する課税仕入れにつき、同法第2条第1項第12号は、事業者が事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供(所得税法第28条第1項に規定する給与等を対価とする役務の提供を除く。)を受けることをいう旨規定している。
また、一般に、所得税法第27条第1項等にいう事業所得とは、自己の危険と計算において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいい、他方、同法第28条第1項にいう給与所得とは、給料、賃金、賞与等その名目のいかんにかかわらず、雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の提供の対価として使用者から支給されるものをいうと解される。
さらに、給与所得の認定については、給与の受給者が、支払者から何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供をし、その対価として支給されるものであるかどうかを、一般社会通念に従って判断すべきであると解される。
と税法を解釈してみせた上で、
事実関係について、マッサージ業務を遂行するに当たっては、営業時間、施術種目(コース)及び施術料金、出退勤時間等を含めた業務時間、服装、休憩及び業務上の心得等の業務規則が定められ、営業方針・業務規則に従わない場合にはマッサージ店に契約解除権が認められており、マッサージ師各人は、この定めに服して、マッサージ店の賃借する施術所内において、マッサージ店所有の設備備品を使用し、業務に従事していること、また、出張業務はなく、マッサージ業務の遂行場所はマッサージ店の賃借する施術所に限定されていること、顧客が支払う施術代金は、マッサージ店に入金され、マッサージ店が支配管理し、その後、マッサージ店が各マッサージ師に対し、本件外注費を支払っていることが認められる。
そうすると、マッサージ師は、マッサージ店の指揮監督ないし組織の支配に服して、場所的、時間的な拘束を受けて継続的に労務を提供し、マッサージ業務に当たり独自に費用を負担していないものと認められるから、マッサージ店とマッサージ師は雇用関係があるということができる。なお、本件では、いわゆる出来高払制に基づいてマッサージ店が報酬を支払っていると認められるが、かかる報酬支払形態であっても、使用者の指揮命令によって労務を給付する以上、雇用関係があるというに妨げない。
この点について、マッサージ店は、マッサージ師は自己の危険と計算において独立して営んでいるから事業者に該当する旨主張するが、顧客に対する事故の責任負担については、マッサージ師との業務委託契約書の記載によれば、マッサージ店が負うものと認められ、また、マッサージ師がマッサージ店の施術所におけるマッサージ業務の宣伝企画に参画しているとしても、このことのみをもって、独立した事業者であるということはできない。さらに、マッサージ店の答述によれば、施術所に在籍しているマッサージ師22名のうち、正規の資格があるのは僅か3名のみであり、大半が無資格のマッサージ師であると認められ、そのような者が事故における責任を負担して独立してマッサージ業を営んでいると解することは不合理である。
以上によれば、マッサージ師が自己の危険と計算において独立して営んでいるとはいえない。
と事実関係を認定し、結論として、
「したがって、本件外注費は、マッサージ店におけるマッサージ師に対する給与と認められ、消費税法第2条第1項第12号のかっこ書きに規定する給与等を対価とする役務の提供によるものに該当するから、仕入税額控除の対象にならないとして行った更正処分は適法である。」
と判断したのです。
つまり、マッサージ店のスタッフに業務委託費の形式で支払いをしても、消費税の計算においては給与に該当するから消費税を安く計算することはできないというのが国税不服審判所の考えであるわけです。なお、これは全てのマッサージ店に該当することではありません。
個々のマッサージ店の営業形態や契約の内容によって、その扱いは異なりますから、マッサージ店のスタッフへの支払が業務委託費として認められるケースも中にはあるでしょう。
けれど、体裁を繕ってスタッフへの給料を外注費として扱い消費税の納付額を減らすことについては、税務上問題となる可能性があることをご理解下さい。
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