ニコ・ロズベルグ、メルセデスのF1シミュレータを語る
Nico Rosberg at work in the Mercedes F1 simulator
目立たない灰色のビルの中、個人識別コードで保護された2つのセキュリティ・ドアの向こうに、メルセデスGPチームの最も重要な秘密が隠されている。
シミュレータはF1の準備において最も重要なツールのひとつになった。メルセデスのシミュレータは厳重に守られている。チームは、ニコ・ロズベルグがシミュレータを使うところを紹介するために数人のジャーナリストを招待したが、我々はそれが設置されている部屋にすら入れてもらえなかった。
その代り、我々はコントロール・ルームからロズベルグの仕事ぶりを見なくてはならなかった。こちらの部屋には、8人のエンジニアがコンピュータのスクリーンを見つめ、「マシン」からのデータを中継していた。部屋の正面には8台のテレビスクリーンがあり、運転中のロズベルグの姿、彼の見ている映像、ラップタイム・データなどを映し出していた。
もちろん、シミュレータ(油圧コントロールされるF1マシンのシャシーに組み込まれた最先端コンピュータゲームのようなもの)は、実際にグランプリ・マシンをドライブする経験を完全に再現することはできない。
例えば、ドライバーがトラック上で経験する極端な力(ブレーキング中の約6Gや高速コーナーでの5Gなど)を生み出すことはできない。
それでもシミュレータは、ロズベルグが耐火スーツと、驚くべきことにヘルメットを着用するほど、現実的である。
どうしてヘルメットを? 彼は「危険だから」と言う。
「同じ理由でシートベルトも締めている」
シミュレータはドライビングとF1マシンの物性を完全に再現できないかもしれないが、それをできるだけ再現する努力がなされている。
シャシーは油圧ピストンの上に設置されていて、マシンがトラック上で経験するであろう力に応じて可動をする。
持続的な加速、減速、コーナリングを模倣することはできないが、最初の力を生み出すことはできる。そのため、ロズベルグはクラッシュした時のシミュレータの挙動を恐れているのだ。
レーシング・ドライバーにとって事故のときの最も重要なルールは、ハンドルから手を離すことである。さもないと衝撃でハンドルが急回転し、けがの原因になるからだ。
ロズベルグは、シミュレータを初めて使ったときについて「チームは『心配しなくてもいい。ハンドルを握っていても大丈夫だよ。何もしないから』と教えてくれた」と語る。
「でも僕は、(元ワールドチャンピオンのミカ・)ハッキネンが、ハンドルが急に回転して親指を骨折しそうになったことを覚えていた。だからハンドルは握っていたけど、軽く握っていたので、急回転したときには離しそうになった」
これは、量産されているレーシング・コンピュータゲームとシミュレータがいかに違うかという一例である。
ロズベルグは「ああ、ものすごく進んでいる」と語る。
「すべてのフィードバックがあるので、本物のレーシング・マシンをドライブしているようだ。いろいろなことが起きる。アンダーステア、オーバーステア、視界の変化、そういったことすべてがね」
F1におけるシミュレータの利用は、10年以上前のマクラーレンから始まった。
彼らは、望むときにいつでもマシンを走らせることができるテスト・トラックを持っていたフェラーリに対し、不利であることを実感した。そのためマクラーレンはバーチャルでテストできるようコンピュータ技術に投資した。
パイロットが訓練で使うフライト・シミュレータのF1版をつくるというアイデアだった。この最初の試みから数世代後、技術ははるかに進み、今ではどのチームでも、必要不可欠な準備になった。
実際、ホイールは完全な円形になった。フェラーリは、数年前に導入されたテスト禁止によって不意を突かれ、未だにシミュレーション・ゲームでは後れをとっていると見なされている。
メルセデスのシミュレータは、移籍したばかりのルイス・ハミルトンが述べたように、まだマクラーレンのレベルには達していない。しかし、2006年から2009年までウィリアムズに在籍後、メルセデスのシミュレータを使ったロズベルグに、「とても現実的」かつ「とても正確」と言わしめるほどには優秀である。
今や、よく知っているマシンで新しいトラックを走る、あるいは新しいマシンでトラックを走るといった、新しい状況におけるマシンの感触をドライバーが初めて経験するのはシミュレーションになっているほどだ。
2月スペイン南部のへレス・トラックで2013年メルセデスがデビューしたあと、ロズベルグのシミュレータ公開セッションがあった。ロズベルグは、テスト前後にシミュレータのマシンを「ドライブ」した。テスト前はどのような感じかを把握するため、テスト後は感覚と情報を相互参照するためである。
シミュレータは本物のマシンの感覚にどのくらい迫っているのだろう?
ロズベルグはにこやかに「間違いなくよい相関があった。いつも素晴らしいよ」と答えた。
「いいかい、新しいサスペンション(のデータ)や、新しい空力学関係の数字を入力すると、突然新マシンになったように感じるんだ」
シーズン開幕戦のオーストラリアGP前には、ロズベルグは、マシンが金曜日にメルボルンのアルバートパークのトラックを走るときの感触をほぼ知っている。さらに、トップタイムに適切な効果を与えるためにKERSボタンをいつ使うかなど、重要な機能の操作方法もわかっている。
ロズベルグは「個人的にはとても役に立っている」と語る。
「KERSのブーストなど、覚えておく必要がある戦略的なことがたくさんあるんだ。特定の場所でブーストする必要があるから、練習しておけば本能的にできるようになる。メルボルンに到着すると、最初の周回から、考えなくてもできるので、他のことを考える余地がある」
「そういう状態に早くなれる。それに新しいトラックの場合は、コースを覚えるのにとても役立っている」
しかしシミュレータには、ドライバーが慎重にならなくてはならない特徴がある。なぜなら、シミュレータはドライバーと、さらに重要なことにチームに、マシンに関する間違った解釈を与えかねないからである。
この理由のため、ロズベルグはトラックではいつもシミュレータよりも速いラップタイムが出ると語る。本物のマシンよりも頻繁にシミュレータを使うリザーブ・ドライバーではこうはいかない。
「ちょっとした秘密があるんだ。何日もシミュレータを使うドライバーはそういう秘密を見つけることがある」
それが間違った情報になり得るのだ。ロズベルグは「慎重にならないといけない。うん、それは間違いないね」と言う。
「例えば、ターンインのときにオーバーステアの癖があるとする。シミュレータを使うと、僕は本物のマシンのようにドライブするので、(僕は)ターンインでオーバーステアにする」
「でもシミュレータでは、少し早くコーナーに入り、アペックスにより近いところを通ると、このターン・インのオーバーステアをわずかにすることができる。でもそれは、本物のマシンでは絶対にできないんだ」
「そこが慎重になる必要があるところだ。なぜならターンインのオーバーステアはあまりないというコメントになるけど、実際に走ってみると、かなりオーバーステアになるんだよ」
ドライバーとチームが慎重ではない場合、エンジニアは間違った問題を修正しようとして、マシンがさらに遅くなることもある。
細かい欠点にもかかわらず、シミュレータは今まで以上に役に立っている。トラックでのテストが禁止され、2014年にはターボ・チャージャーつきのエンジンと、燃料効率の高い方式という大幅な規約変更が導入されるが、チームとドライバーはシミュレータのおかげで新マシンの進展を把握することができる。
ロズベルグは「とても重要なのは2014年だ」と語る。2014年マシンを走らせるための作業、セットアップやエンジンなどさまざまなことを先取りするために、シミュレータを本当に活用できるのはこのときだ。
「それをここで確かめることができる。それは重要なことのひとつだ。なぜなら、トラックでテストができないし、規約が大幅に変わるから。だからシミュレータを役立てることができる」
-Source: bbc.co.uk
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もちろん、シミュレータ(油圧コントロールされるF1マシンのシャシーに組み込まれた最先端コンピュータゲームのようなもの)は、実際にグランプリ・マシンをドライブする経験を完全に再現することはできない。
例えば、ドライバーがトラック上で経験する極端な力(ブレーキング中の約6Gや高速コーナーでの5Gなど)を生み出すことはできない。
それでもシミュレータは、ロズベルグが耐火スーツと、驚くべきことにヘルメットを着用するほど、現実的である。
どうしてヘルメットを? 彼は「危険だから」と言う。
「同じ理由でシートベルトも締めている」
シミュレータはドライビングとF1マシンの物性を完全に再現できないかもしれないが、それをできるだけ再現する努力がなされている。
シャシーは油圧ピストンの上に設置されていて、マシンがトラック上で経験するであろう力に応じて可動をする。
持続的な加速、減速、コーナリングを模倣することはできないが、最初の力を生み出すことはできる。そのため、ロズベルグはクラッシュした時のシミュレータの挙動を恐れているのだ。
レーシング・ドライバーにとって事故のときの最も重要なルールは、ハンドルから手を離すことである。さもないと衝撃でハンドルが急回転し、けがの原因になるからだ。
ロズベルグは、シミュレータを初めて使ったときについて「チームは『心配しなくてもいい。ハンドルを握っていても大丈夫だよ。何もしないから』と教えてくれた」と語る。
「でも僕は、(元ワールドチャンピオンのミカ・)ハッキネンが、ハンドルが急に回転して親指を骨折しそうになったことを覚えていた。だからハンドルは握っていたけど、軽く握っていたので、急回転したときには離しそうになった」
これは、量産されているレーシング・コンピュータゲームとシミュレータがいかに違うかという一例である。
ロズベルグは「ああ、ものすごく進んでいる」と語る。
「すべてのフィードバックがあるので、本物のレーシング・マシンをドライブしているようだ。いろいろなことが起きる。アンダーステア、オーバーステア、視界の変化、そういったことすべてがね」
F1におけるシミュレータの利用は、10年以上前のマクラーレンから始まった。
彼らは、望むときにいつでもマシンを走らせることができるテスト・トラックを持っていたフェラーリに対し、不利であることを実感した。そのためマクラーレンはバーチャルでテストできるようコンピュータ技術に投資した。
パイロットが訓練で使うフライト・シミュレータのF1版をつくるというアイデアだった。この最初の試みから数世代後、技術ははるかに進み、今ではどのチームでも、必要不可欠な準備になった。
実際、ホイールは完全な円形になった。フェラーリは、数年前に導入されたテスト禁止によって不意を突かれ、未だにシミュレーション・ゲームでは後れをとっていると見なされている。
メルセデスのシミュレータは、移籍したばかりのルイス・ハミルトンが述べたように、まだマクラーレンのレベルには達していない。しかし、2006年から2009年までウィリアムズに在籍後、メルセデスのシミュレータを使ったロズベルグに、「とても現実的」かつ「とても正確」と言わしめるほどには優秀である。
今や、よく知っているマシンで新しいトラックを走る、あるいは新しいマシンでトラックを走るといった、新しい状況におけるマシンの感触をドライバーが初めて経験するのはシミュレーションになっているほどだ。
2月スペイン南部のへレス・トラックで2013年メルセデスがデビューしたあと、ロズベルグのシミュレータ公開セッションがあった。ロズベルグは、テスト前後にシミュレータのマシンを「ドライブ」した。テスト前はどのような感じかを把握するため、テスト後は感覚と情報を相互参照するためである。
シミュレータは本物のマシンの感覚にどのくらい迫っているのだろう?
ロズベルグはにこやかに「間違いなくよい相関があった。いつも素晴らしいよ」と答えた。
「いいかい、新しいサスペンション(のデータ)や、新しい空力学関係の数字を入力すると、突然新マシンになったように感じるんだ」
シーズン開幕戦のオーストラリアGP前には、ロズベルグは、マシンが金曜日にメルボルンのアルバートパークのトラックを走るときの感触をほぼ知っている。さらに、トップタイムに適切な効果を与えるためにKERSボタンをいつ使うかなど、重要な機能の操作方法もわかっている。
ロズベルグは「個人的にはとても役に立っている」と語る。
「KERSのブーストなど、覚えておく必要がある戦略的なことがたくさんあるんだ。特定の場所でブーストする必要があるから、練習しておけば本能的にできるようになる。メルボルンに到着すると、最初の周回から、考えなくてもできるので、他のことを考える余地がある」
「そういう状態に早くなれる。それに新しいトラックの場合は、コースを覚えるのにとても役立っている」
しかしシミュレータには、ドライバーが慎重にならなくてはならない特徴がある。なぜなら、シミュレータはドライバーと、さらに重要なことにチームに、マシンに関する間違った解釈を与えかねないからである。
この理由のため、ロズベルグはトラックではいつもシミュレータよりも速いラップタイムが出ると語る。本物のマシンよりも頻繁にシミュレータを使うリザーブ・ドライバーではこうはいかない。
「ちょっとした秘密があるんだ。何日もシミュレータを使うドライバーはそういう秘密を見つけることがある」
それが間違った情報になり得るのだ。ロズベルグは「慎重にならないといけない。うん、それは間違いないね」と言う。
「例えば、ターンインのときにオーバーステアの癖があるとする。シミュレータを使うと、僕は本物のマシンのようにドライブするので、(僕は)ターンインでオーバーステアにする」
「でもシミュレータでは、少し早くコーナーに入り、アペックスにより近いところを通ると、このターン・インのオーバーステアをわずかにすることができる。でもそれは、本物のマシンでは絶対にできないんだ」
「そこが慎重になる必要があるところだ。なぜならターンインのオーバーステアはあまりないというコメントになるけど、実際に走ってみると、かなりオーバーステアになるんだよ」
ドライバーとチームが慎重ではない場合、エンジニアは間違った問題を修正しようとして、マシンがさらに遅くなることもある。
細かい欠点にもかかわらず、シミュレータは今まで以上に役に立っている。トラックでのテストが禁止され、2014年にはターボ・チャージャーつきのエンジンと、燃料効率の高い方式という大幅な規約変更が導入されるが、チームとドライバーはシミュレータのおかげで新マシンの進展を把握することができる。
ロズベルグは「とても重要なのは2014年だ」と語る。2014年マシンを走らせるための作業、セットアップやエンジンなどさまざまなことを先取りするために、シミュレータを本当に活用できるのはこのときだ。
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-Source: bbc.co.uk
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