2012年01月28日

たとえばこんな文章見かけませんか。

「最近のおコメって虫が湧かなくなったと思いませんか?
これは農薬をたっぷり使っているからです。
我が家はオーガニックのおコメを農家から直接買っていますが、夏場にはいつも虫が湧いてしまいます。
虫は気持ち悪いけど有害じゃありません。農薬は危険なんです。
だからオーガニック」

オーガニックで頭がおかしくなっているというか。オーガニックってなにか変な薬が入っていないか(嫌味)。

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もちろん農薬は使わないに越したことはなかろう。使いすぎは消費者の健康も生産者の健康も損なう。さらに漫然とした使用は耐性をもつ害虫や病原体の登場を招く。
病害、虫害の兆しが見えてそれが許容閾値を越えたら使う。それなら効果も上がるし最低限の安全も確保できる。農家の支出も最低限に抑えられる。
必要あろうが無かろうがこの農薬をこれだけ撒けと農協が指導してきたという暗部もある。

だが、先に挙げたオーガニック云々の例は論理に飛躍がある。

なるほどコメに虫が湧かないというのはあるのかもしれない。だが農薬が有害だオーガニックだというには以下のことを論理的に証明せねばなるまい。

・農薬は虫の発生を抑える
・農薬以外の方法では虫の発生を抑えられない

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オーガニック信者が言うとおり、オーガニック以外のコメにふんだんに農薬がかかっているとすれば、農薬耐性を持つ個体がどんどん増えて既存の農薬がどんどん無効になっていなければおかしい。行き詰まればいずれ「農薬をつかっても虫が湧く」のである。
調べた範囲ではそんな事実はないし、一部の農薬が使用不可になったのは主に知られていなかった危険性が明らかになったからである。耐性害虫が増えて使い物にならなかったというのはどれだけあるだろうか(抗生物質にはこういう問題はあるのだけれど)。

農薬の影響がないとは言わない。

しかし、コメの農薬は生えている「稲」に使うもので、収穫した「米」に使うことは許されていない(輸入品は別。ポストハーベストとか検疫時の薫蒸という言葉は聞いたことがあろう)。稲本体の病気や茎や葉、実を食べたり吸ったりする害虫のためである。

収穫後のコメを食害する虫として有名なのはコクゾウムシである。
田にまかれる農薬はコクゾウムシがターゲットじゃないし、収穫直前の撒布はしないし、脱穀もするわけであって、果たしてコクゾウムシが影響を受けるのかどうか。
残留農薬の影響が全くゼロとは言わない。だが一網打尽で全滅ということはあるまい。ましてや低濃度の残留農薬が問題ならそれこそ耐性ができてしまって今ではコクゾウムシうじゃうじゃでなければおかしい。


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拙宅では普通のコメを食べていて、ずっと虫は湧いていない。
若い頃は見たことがある。米だけではなくオートミールも虫だらけになってびっくりしたことがある。オートミールは無農薬なのか?

簡単な理屈である。大きな冷蔵庫に買い換えてからコメを野菜室で保存するようになったからだ。代表的なコクゾウムシは18度Cを下回ると活動を止めるそうだ。オートミールは開封して棚に放置しておいたら虫が湧いた。

こういう家庭は増えているのではなかろうか。
農薬の影響がゼロというのではないが、他の可能性があるのは明らかだ。
少なくとも私が若かった時代に比べれば農薬の利用には大きな制限がかかっているし、農家の知識や意識も高まっている。


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代表的な「コメに虫が湧く」の虫、コクゾウムシについて考えてみる。

コクゾウムシは貯蔵中の玄米・白米に卵を産み付ける。卵は孵化するとコメを内部から食い荒らす。幼虫は白いから白米の中では目立たないが、成虫は褐色であるので目立つ。よっていきなり湧いたように見える。

いかにコクゾウムシといえど「無から湧く」わけではない。
コクゾウムシが外部から侵入し卵を産みつけるタイミングはいくつかある。

まず脱穀後の玄米を一時保管しているとき。脱穀は主に農家で行われる。
農家が玄米を集荷場に出荷しているとき。ここで選別が行われるので、選別前と選別後のタイミングがある。選別機を持つ大きな農家もある。
玄米が精米業者あるいは精米設備を持つ販売業者に売り渡され保管されているとき。
精米されて販売を待っているとき。精米の際、大手の精米所ではさらに選別が行われる場合もある。
買った白米を家庭で保管しているとき。

この全てにおいてコクゾウムシの立場では厳しい状況になっている。

まず産卵のために侵入することが難しくなった。
全般に保管する場所の密閉度が上がり、防虫対策(細かい網戸など)が進んでいる。
この中では農家での保存については費用が掛けづらく一番弱いのだが、最上流であるためその後の選別で取り除ける可能性が高い。
またコメの品質を問う声が高まった中保冷倉庫を使う例もある。有名なのは国家備蓄米を長期保存する倉庫。巨大な倉庫が丸ごと冷やされている。
家庭での保管も昔は開放度の高い米びつや自動で計量できる「ハイザー」(これってハイって押すとザーっとでるってこと!?)だったが、今は密閉容器や冷蔵庫である。
また、虫を寄せ付けない防虫剤を使うのが常識になっている。米びつの蓋に貼り付けておくカプサイシンのシートなど。食品の成分でなんら問題ない。


次に選別技術の進歩がある。
コメを細い溝に流して、一粒ずつカメラで撮影し、異物やダメなコメを弾き飛ばすというから恐れ入る。
孵化前や孵化直後の状態では外見ではじくのは難しいが、ある程度成長すると白くにごることになり選別できる。産卵後1ヶ月で成虫になるというから、流通前半で産卵されたら精米時にはほぼ完璧に取り除けるだろう。

完全に低温流通させ、家庭で常温保管することで初めて孵化というケースが無いとは言わないが、確率はかなり低いといえよう。冷蔵車で運搬するところまでは進んではいないだろう。


また、農家はともかく、流通段階と家庭での保管については、仮に産卵されたコメが入ったとしても、それが成虫になって外に出て、別の場所に産卵するという生命環を完結することが難しくなっている。成虫の段階で目立つため駆除されてしまう。外に出ても今度は侵入が難しい。住宅の密閉度も上がった。

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これを考えるとオーガニックだ有機農法だ、農家から直接契約だというコメに虫がわくのも納得できるのである。

オーガニックや有機農法のコメはまだまだ生産量が少ない。
多くの地域ではいもち病などの病害虫害を防ぐために農協が農薬の撒布を推進している。その是非はともかく、オーガニックや有機農法の農家と農協のそりは悪いだろう。

結果、小規模な独自の流通に頼ることになる。
脱穀機は多くの農家が持っているから玄米の生産はできる。だが、管理が厳しいとはいえない。その後の流通でも大規模な冷蔵倉庫が持てるわけではない。
精米とて選別機がついた大規模な施設が使えるわけではなかろう。巨大な施設のラインを一旦止めて清掃して、高々数百kgのコメを流してもらってまた戻すなんてことができるはずが無い。

さらに農家から直接買った米は虫が湧いたという記事を読んだらあきれた。
夏場にコンクリート製の物置においておいたのだが湧いた。。。というのだ。当たり前だ。
農家から直接買う場合、時期が限定されたり、発注単位が大きかったりする。農家できちんと備蓄して頻繁に発送する、つまり問屋や小売店のようなことをする余力があるとは限らないからだ。
通常ならスーパーで5kgのコメを時々買う程度の家庭が30kgとか一度に買ってしまうわけだ。

30kgのコメが収まる冷蔵庫を持っている家庭は限られるだろう。ウォークイン冷蔵庫を持つ一般家庭なんてギャル曽根さんの家くらいだろう(嘘)。
オーガニックや有機農法のコメが悪いものだとは言わない。いいものなんだろう。生産者も必死の取り組みだと思う。
だからそれを粗雑に扱うというのは失礼というものだ。冬場以外に常温に置くというのは私に言わせれば「ありえない」。コメだって生の食べ物だよ。

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ここまで述べたことは一例であって、他の理由もあるだろう。私の推測が全て当たっているとも言わない。
だが、ここまで述べたことは事実を論理的に組み立てた上のことである。
もちろん間違いがあればご指摘大歓迎。

私の論が精緻とは言わないが、「虫が湧かない→農薬たっぷり」という短絡よりはよっぽどましだという自信がある。
こうした短絡的な論法を声高に主張するのはなぜか。オーガニックや有機農法を信奉するあまり暴走しているのかもしれないし、なにか経済的政治的背景があるのかもしれない。
ま、迷惑かけてくれなければどうでもいいことではあるが、あまりヒステリックに声高に主張されると感じのいいものではないな。
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