ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 8話2017年3月24日 22:44「こちらの席へどうぞ」 何とか他人のフリをしつつ、川崎姉妹を席へと誘導する。 相変わらず訝しげな視線を向けてくる姉と、俺の後を鼻歌交じりに付いて来る可愛い妹。全く、何で姉妹なのにこんなに違うんだろ。川崎はもっとけーちゃんを見習って欲しいもんだ。「ご注文が決まりましたらそちらのボタンを押してください」「……はい」「はーい!」 ぺこっと一礼してスタッフルームの方へと向かう。店内を見渡すと、少しずつ客も増えてるようで、ホール担当の人達が忙しなく働いている。 ん?まだ開店してそんなに時間たってないよね?もしかして、昼時になるとこれより多くなるとかじゃないよね?……ね? カウンターをすり抜け、奥にあるスタッフルームへと引込み、壁に背中を預ける形で少し休憩。目の前にある電光掲示板ー卓番を示すものーが光るまでの間の短い時間だが。「あ、八幡。どうでした?初接客」 ホールから帰ってきた一色に話し掛けられる。こいついい笑顔してるじゃないの(もちろん悪い方で)。 こいつ最近、プチ陽乃さんみたいで怖いんだよなー。生徒会長やり出してから人の扱いと自分の見せ方に磨きがかかったみたいだ。俺はまだ騙せないみたいだがな(ドヤ)。 …待てよ。てことは、俺もバイトをしたら一色みたいに何か変化があるかもしれない!期待しとこ。 「どう…と言われてもなぁ。強いて言うなら速攻で知り合いと会ったことくらい?他人のフリしたけど」 俺がそう言うと、一色の表情に陰りが生じる。「な、何かすいません。私が行けば良かったですかね」「いや、気にすんな。向こうもあまり話すタイプじゃないし、というかボッチみたいなもんだから」「そうですか」 ホッと一息ついてこちらを見る一色。いつにも無く真面目な表情だが、割と拍子抜けしそうな事言ってきそうであまり身構えはしない。「で、その人誰ですか」 ほらね。「ただのクラスメイトだよ」「先輩の知り合いって時点でただのクラスメイトでは無いんですけど」「ねぇ、それ褒めてるの?貶してるの?」「誰ですか?」「いや、ちょっと無視は…「誰ですか?」…川崎姉妹だよ。バレンタインイベントの時来てたろ?」「あの水色っぽい髪の姉妹さんですか?」「ま、まぁそうだな」「へぇー」 自分から聞いといてその反応はないと思うんだけど。ほら、もうちょいリアクションとってもいいんじゃないの?……もしかして特大ブーメランかな? ふと、目の端に映った電光掲示板が光る。卓番を見ると川崎姉妹の所のようだ。「じゃあ、俺行ってくるわ」「はーい!ちゃんと復唱するんですよー」「了解です。バイトリーダー」 ボールペンとメモ用紙をバインダーに挟み、川崎姉妹のいる卓番へと向かう。 取り敢えずメモ取って、それから復唱、注文取ったら厨房に持ってって、注文をPOSに打ち込むか。 まさか、注文とってからの後にこれだけの工程があるとは思わなかったな。少しというかかなり舐めてたよこの仕事。楽な仕事は無いのか…。 川崎姉妹の卓へと着いた。 練習を思い出せ。練習は嘘をつかない。友達は裏切るが、練習だけは嘘をつかないのだ。現に毎日やってる格ゲーも透かしコンが出来るまでなったからな。「ご注文をどうぞ」「けーちゃんから先に言って」 優しい声でけーちゃんの注文を促す川崎。決めていた料理を注文表から探すけーちゃんを見守るその顔は、普段の彼女からは想像も出来ないくらいに穏やかだ。「これ!この、ハンバーグステーキっていうの!」 けーちゃんの注文をメモ用紙へと書き留めながら復唱する。けーちゃん1人でハンバーグステーキ食べれるかな…八幡ちょっと心配。「あたしは、このミラノ風ドリアで。あ、後ドリンクバーを2つお願いします」「こちらのドリンクバーはセット料金になりますが…」「セットでお願いします」「かしこまりました」 早!川崎早!俺最後まで言い切れてないのに…。「以上でよろしいでしょうか」「はい」「はーい!」「復唱させていただきます…………でよろしかったでしょうか?」「はい」 よし、復唱も終わって再確認も終わった。後は大丈夫かな。「それではしばらくお待ちください」 えーっと、厨房に通達して、POSに打ち込んだら、清掃とか食器を下げたりとかか。うん、思ったよりしんどいね!(白目) ま、まだ慣れてないだけだし。1日目だし。慣れたら本気出すし。✕ ✕ ✕「あー」 元々あったパイプ椅子に座り、体に溜まった疲れを吐き出すように自分でもヤバイなと思う声を出す。これが割といい。現に少し疲れが取れた。 ホールへの料理運び、食器下げ、他の卓の注文取りとかその他もろもろ。それほど重労働ではないにしても、慣れないことをやってるからか少しばかり疲れを感じてきた。 早くお家帰りたい。小町に癒されたい。カマクラ捕まえてめちゃくちゃ撫でたい。誰か俺にベホマズン唱えてくれ。「あ、比企谷くん今空いてる?」「はい、空いてますけど」「休憩中悪いともうけどレジの方行ってくれない?私今料理運ぶのにいっぱいいっぱいで」「分かりました。すぐ行きます」「ごめんね」 そう言って、ドタバタと駆け出していく同僚さん。てか、俺の名前知ってるんですね。俺あなたの名前知らないんですけど。だからといって知りたいとは思わないけどな。「あー」 今度はここから動きたくない体を無理矢理動かす為に声を出す。「よっこらせ」的な感じ。最近自分でも分かるくらいにはジジ臭くなってきたなぁ。自重せねば。 レジの方へと顔を出すと川崎姉妹がいた。けーちゃんがレジ前にあるガムを取って川崎に渡してる。「さーちゃんこれ買ってー」「さっき食べたばかりでしょ?」「えー。さーちゃんのケチ。そんなんじゃいい人見つかんないよ?」「な!」 まさかのけーちゃんの反撃が川崎にクリティカルヒットしたようだ。しかもピンポイントだったらしく、割と瀕死状態のようだ。息も絶え絶えで、目も血走って……これは瀕死じゃないな、怒りに染まってるんだな。今にもけーちゃんに飛びかからんとしている。「すいません。お待たせしました」 すかさず声掛けという名の仲裁を行う。仲のいい姉妹が喧嘩するという珍しい光景を見れそうだったが、あいにくここは店の中。場所は弁えないと。「す、すいません。……けーちゃん。それ頂戴」「え?買ってくれるn「その代わり」……「覚えときなさいよ」!!は、はいぃ」 こっわ!川崎こっわ!直接お叱りを受けてない俺でもビビりそうだったんだけど!? 絶対番長とかやってた。面倒見のいい女番長か…小さいの好きそうだな。「お会計○○○○になります」「はい」「丁度ですね」 精算を終え、レシートを渡す。 川崎はそれを受け取ると、けーちゃんの手を握り出口の方へと向かう。あ、ありがとうございましたって言わないとな「ありがとうござ「ねぇ、バイト生の人」…いました」 俺の言葉を途中で遮る形で、こちらを向いて川崎が喋り出した。「何でしょうか?」 次の言葉を促す。「また会えるといいですね」 そう言って顔を綻ばせる。 ……これはどういう感じで受け取るといいのだろうか。仕事中の俺に会いたいのか、それとも学校で会って根掘り葉掘り聞くのか。でもこいつの性格上後者は限りなくゼロに等しいが、ゼロとは言えない。ここは無難に「そうですね。また来てください」 自分でもビックリするくらい、自然と口角が上がる。今どんな顔になっているのか、何故川崎が顔を赤くして固まっているのか…私!気になります!「ありがとうございました」 早く帰ってもらおうと思い、一礼して見送りへと状況を運ぶ。 硬直が解けた川崎は逃げるように歩き出し、けーちゃんはそれに付いていく。 ふと、後ろを振り向いたけーちゃんが控えめに手を振ってくる。おぉ…なんと愛らしい。第3の天使が降臨なかった。ケイカエル、いやケーカエルか?「なーにニヤけてるんですか」「いや何、やっぱけーちゃん可愛いなあって」「…ロリコン」「待て、俺は至ってノーマルだ」 あらぬ誤解を生みそうだ。ホントこんな事店長に聞かれたら俺死にそ。「比企谷くん」「ヒィ!」 ……どうやら俺はフラグ建築が上手くなったようだ。行きたくないなぁ。 恐る恐る後ろを見ると、額に青筋を立てた店長が仁王立ちで立っていた。「今すぐ私のところに来てください」「あ、はい」 小町、どうか先立つ兄を許してください。[newpage]「さーちゃん」「ーーーーー」「さーちゃん」「ーーーーー」「さーちゃん!」「ーーーーーん?あぁ、ごめん」「どうしたの?さーちゃん」「あー大丈夫。気にしないで」「そっかー。早く帰ろ!」「そうだね」「…………私もあそこでバイトしよっかな」