大腸メラノーシスは、アントラキノン系という種類の下剤を連用してしまう事によって、大腸に色素が沈着し、大腸の動きが悪くなってしまう疾患です。
「大腸黒皮症」と呼ばれる事もあります。
下剤は高齢者や女性を中心に多くの方が服用しているお薬です。そのため大腸メラノーシスも多くの方に生じる可能性のある疾患になります。
大腸メラノーシスはどのような疾患なのでしょうか。また発症してしまうとどのような問題が生じ、どのように治療していけばいいのでしょうか。
ここでは大腸メラノーシスが生じる原因や、生じる症状、行われる治療法についてお話させていただきます。
1.大腸メラノーシスとは
大腸メラノーシスは、便秘薬(下剤)によって生じるお薬の副作用です。
便秘薬の中でも特定の便秘薬で生じるもので、「アントラキノン系」と呼ばれる大腸刺激性の下剤を長期間連用する事で生じる可能性があります。
アントラキノン系に属する便秘薬は、
- アロエ
- 大黄甘草湯など「大黄(ダイオウ)」を含む漢方薬
などがあります。
また薬局やドラッグストアで購入できる市販薬にもアントラキノン系が含まれている事がありますので、これら市販の便秘薬でも生じる可能性があります。
これらの便秘薬を長期間連用していると、大腸に黒い色素が沈着してしまいます。大腸カメラで診ると通常はピンク色であるはずの大腸壁が真っ黒に染まって見えます。
大腸メラノーシスが生じると、色素によって大腸壁が肥厚し、大腸の動きが悪くなります。するとより便秘が悪化してしまう事になります。
便秘を治すために便秘薬を使用していたのに、便秘薬によってかえって便秘が悪化してしまうというおかしな事態になってしまうのです。
大腸メラノーシスを起こさないため、アントラキノン系の下剤はなるべく連用せず短期間の使用にとどめる事が大切です。
2.大腸メラノーシスが発症する原因は?
大腸メラノーシスはどのような原因で生じるのでしょうか。
大腸メラノーシスの原因は、アントラキノン系の長期連用による大腸の老化だと考えられています。
大腸刺激性下剤であるアントラキノン系は、「大腸刺激性下剤」と呼ばれ、お薬の力を借りて大腸を無理矢理動かすお薬になります。
お薬によって無理矢理ムチを打たれた大腸は動き始め、便が出やすくなります。これは便秘を改善させてくれたと考えても良いでしょう。短期間の使用であれば、確かにアントラキノン系の下剤は有効なお薬です。
しかし長期間にわたってアントラキノン系を使い続けていると、無理矢理動かされ続けた大腸は次第に疲弊していきます。
すると大腸壁にリポフスチンという黒い色素が徐々に沈着するようになります。このリポフスチンは「老化色素」とも言われ、細胞が老化すると増え、リポフスチンが増加していくとその細胞は次第に肥厚して機能が低下する事が知られています。
皮膚が老化するとシミが出来やすくなりますが、このシミもリポフスチンの皮膚細胞への沈着が一因です。
大腸メラノーシスは、アントラキノン系の連用によって無理矢理大腸を動かし続けた事によって、大腸に老化色素が沈着してしまう事が原因なのです。
3.大腸メラノーシスの症状と経過
大腸メラノーシスでは、どのような症状が認められるのでしょうか。
大腸メラノーシスは、その見た目で驚く方が多い疾患です。
大腸カメラで大腸を見ると、通常であればピンク色であるはずの大腸壁が一面真っ黒に染まっています。これはリポフスチンという色素の沈着によるものですが、パッと見て大腸が真っ黒に染まっていると「かなり悪い状態なのではないか」「ガンなのではないか」と感じる方が多く、かなり心配されます。
結論から言えば、大腸メラノーシスは色素の沈着でありガンではありません。
大腸メラノーシスは癌に移行しやすいという意見もありますが、現時点でははっきりとした根拠はないため、「ガン」だと心配する必要はありません。
しかし老化色素であるリポフスチンが大腸壁に沈着しているわけですから、腸の動きは低下してしまい、便秘が悪化してしまいます。
また大腸メラノーシスの状態を放置しておくと、大腸腺腫(良性の腫瘍)が生じやすくなるという報告もあり、ガンでないからといって放置しておいてよいものではありません。
4.大腸メラノーシスの治療法
大腸メラノーシスが生じたら、どのように治療をすればいいのでしょうか。
大腸メラノーシスはアントラキノン系の便秘薬の連用が原因ですから、治療法としてはこれらの原因薬物を中止する事に尽きます。
幸いな事に大腸メラノーシスは可逆性の疾患であり、原因である薬物を中止すれば1~2年で元の通常の色の大腸壁に戻る事が確認されています。それに伴い大腸の動きも元に戻っていきます。
しかしアントラキノン系の便秘薬を使用していた方というのは、元々便秘であったからアントラキノン系の下剤を使っていたわけで、お薬を辞めてしまうとまた便秘になって困ってしまう可能性があります。
そのため、アントラキノン系を使わなくても排便コントロールが出来るようになる生活習慣の工夫が大切になります。
ここではアントラキノン系の下剤の代わりになる排便コントロール法を紹介します。
Ⅰ.便通を良くする食生活を
食べ物の中には、便通を改善させるものがありますので、このような食べ物を積極的に摂取するのも有効です。
まず大切なのは「野菜」になります。具体的には野菜に含まれる食物繊維(セルロース)は、腸管内で水分を含んで膨張するという特徴があります。
食物繊維が水分を含んで膨張すると、腸管を刺激するため、腸管の動きを活発にしてくれます。また膨張したセルロースが便も取り込むため、固い便が柔らかくなるという作用も期待できます。
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、食物繊維の目標摂取量は、18歳以上の男性は20g以上/日、女性は18g以上/日となっています。
普段から野菜の摂取量が少ないという方は野菜をしっかりと取るようにしましょう。
また、「水分」も大切です。
私たちが1日に必要な水分量は1.5L前後と言われています。水分が少なければ便も固くなってしまい出にくくなってしまいますので、十分量の水分を摂取するようにしましょう。
ヨーグルトなどの乳酸菌を摂取する事も有効です。乳酸菌はいわゆる「善玉菌」であり、腸内細菌のバランスを整えてくれます。腸内細菌のバランスが整うと腸管は活発に活動できるようになるため、便通も改善します。
またオリゴ糖は乳酸菌などの身体によい腸内細菌の栄養となり、これら善玉菌を増やしてくれますので、同様に便秘の改善に有効です。
Ⅱ.便通を良くする生活習慣を
便通を改善させるためには、生活習慣を規則正しくする事も大切です。
- 食事は3食、適切な量を食べる
- 日中は適度に身体を動かし、夜はしっかりと寝る
- 毎日適度な運動をする
このような習慣を付けましょう。
身体を動かさないと、腸管の動きも悪くなります。
寝たきり状態の方は必ずといっていいほど便秘になりますが、これは身体を動かさないと腸管も動かなくなってしまうためです。
反対に適度に身体を動かす習慣があると、腸管も活発に動くようになります。
適度な運動は便通改善のためにも非常に重要です。
Ⅲ.ストレスを溜め込みすぎない
胃腸の動きは、手足の筋肉のように自分の意識で動かしたり止める事は出来ません。
胃腸は特に私たちが意識しなくても、自動で動いてくれています。
このように自分の意志とは関係なく腸管が動いているのは「自律神経」という神経が自動で腸管の動きを適切に調整しているからです。
ちなみに腸管に限らず、心臓や呼吸なども自律神経が調整しています。
この自律神経は、ストレスや生活習慣の乱れがあると、適切に活動できなくなってしまいます。これはいわゆる「自律神経失調」と呼ばれる状況です。
過度なストレスが続くと、自律神経のバランスが乱れ、腸管が適切に活動できなくなります。すると便秘が生じる事があります。
便通を改善させるには、ストレスを溜め込みすぎない事も実は大切です。
Ⅳ.お薬を使う場合はアントラキノン系以外を
それでも便秘があってお薬を使わないといけない、という場合も、大腸メラノーシスのリスクがある場合は、アントラキノン系以外の下剤を検討するようにしましょう。
下剤はどれも一長一短ありますので、どの下剤が適切かは医師と相談しながら決めるのが最良ですが、同じ大腸刺激性下剤(大腸を刺激する事で腸管を動かす下剤)でアントラキニン系以外のお薬としては、
が挙げられます。
あるいは、便に水を含ませ柔らかくする事で排便を促すお薬として、
などがあります。
その他にも下剤はありますので、自分に最適な下剤を主治医に選んでもらいましょう。