Interviewer「Why did you want to climb Mount Everest?」
George Mallory「Because it's there.」
世間がポケモンGOだペンパイナッポーだトランプ大統領だと言っている中、私はこれで遊ぶ。今から18年前にプレステ1で発売された、高峰登山シミュレーションゲーム”蒼天の白き神の座(そうてんのしろきかみのくら)”。”座”と書いて”くら”と読む!
Amazonで中古品が6100円~で売られているのだが、ソフトの状態が良さそうでお届け日時指定便ができるやつを買ったら手数料込みで10490円だった。18年前の中古品がだ。新品もあるが2万円近くの値がついているぞ。まあそれは流通量が少なかったから仕方ない。さあ、プレイを開始しよう。そこに山があるから・・・。
隊員募集
登山隊名、プレイヤー自身である隊長名(隊長は登山せず、ベースキャンプ(以下BC)から指示だけを出す)を決めたら、新規隊員を入隊させる。プレイヤーの隊にはあらかじめ8名の隊員がいるが、最大で40名まで登録できる(登山作戦に参加できるのは最大25名)。入隊させられる人物の顔ぶれは毎年変化するので、高い能力を持つ人材がいれば積極的に入隊させたい。隊員は年齢が高くなるほど高能力だが、だいたい50歳前後で引退してしまうので、のちのちのことを考えて若い隊員を育てることも必要となる(登山して生きて帰国できれば各種能力が上がる)。人物の顔グラフィックはおそらく本作を製作したスタッフなのかもしれないが、実写取り込みの顔でいい味出している。
挑む山の選択
本作には実在の山をモチーフとした、マヌーツェ、ダウラチェンリ、カンガプルナ、シシャカンリ、K-0(ケーゼロ)の5つの山があり(どれも7000m~8000m級の高さ)、挑む山を選択する。山を選択するとさらに、BCの位置(スタート地点。どの方角から攻めるかが決まる)をいくつかの中から選択する。この時点で登山の難易度が変わってくる。また、山への挑戦は一年に一回できるのだが、何月に挑むのかも選択することになる。天候が安定する月に挑めば難易度は低くなるが、あえて高難易度の厳冬期に挑戦したりとプレイの幅は広い。
装備品の選択
参加させる隊員を決めたあとは、参加隊員による積立金と国際登山連合からの協賛金(初年度は0)、前年度からの繰越金で装備品を購入する。装備品は食糧パック、酸素ボンベ、テント、登攀セット(登山ルートをより安全にする工作に使う)、登壁セット(岩壁を登りやすくする工作に使う)、整地セット(テントを張る場所をより安全にする工作に使う)の6種類ある。登山を終えた時にこれらの装備品を余らせるとその量に応じてプレイヤーの評価が下がってしまうので、最初は多めに購入するにこしたことはないが、ゲームに慣れてきたら使い切れるギリギリの量を推測し購入していきたい。
登山開始・ルート選択
以上の項目を決定したら、いよいよ山へと向かい登頂への挑戦が始まる。参加隊員の中で自由に隊を組み(隊員の能力、装備品の数によって歩く速度が変化する)、BCを出発させる。まずはルート探索。大体の場合複数のルートが見つかり、どのルートを通って登っていくかを随時選択していく。当然ルートによって危険度が変わってくる。ルートは頂上に至るまでどんどん枝分かれし分岐していくので、最初のBCをどこにするかという選択を合わせると、頂上までのルートは無数に存在することになる。これにより、一度登頂に成功した山でも今度は違うルートで登ってみたりもでき、繰り返しプレイにも耐えうる優れたゲーム性を持つ。
キャンプ設営
一気に頂上まで登ることなど当然不可能。頂上に至るまでの、雪崩や落石の危険性の低そうな地点に休息のためのキャンプを設営していかなければならない。そしてより高い場所に新たなキャンプを設営するためのテントや、食料、酸素ボンベなどの装備品もどんどん運び込んで行く必要がある。天候や風速は刻一刻と変化していく。風の強い日には滑落の危険性が高まるので、風が止むまで、悪天候が回復するまで、早く登頂したいという気持ちを押さえて一日中テントの中で過ごす、そんな忍耐力も要求される。
高度順化
隊員はより高く酸素の少ない地点へ行くほどに高度障害にかかるようになる。高度障害が重度まで進むと最悪死亡する危険性もあるので、高高度に慣らしながら登っていかなければならない。慣らす方法は一度高い地点まで登ったあと下り、しばらく休むこと。これを繰り返すことで隊員は高度順化し、より高みへ登れるようになる。体調不良に陥った隊員は途中のキャンプではなく一番下のBCまで戻さなければ回復しない場合がほとんどなので、登頂を果たすには登り下りを繰り返し、少しずつ少しずつ高度を上げて行かねばならないのだ。
突然の死・そして登頂
高峰登山は危険と隣り合わせであることは言うまでもない。体調不良、空腹、睡眠不足、突風、滑落、落石、雪崩、凍傷、高度障害、遭難・・・これらの問題が常に隊員に襲い掛かり続ける。遭難した隊へ別の隊を捜索に向かわせるという助け合い、連携が重要になるが、救助隊が二次災害にあうなんてことになると目も当てられない。より安全なルートを選択したり、能力に優れた隊員なら危険を回避できたりもするが、それでも大自然の驚異の前では人間は余りに無力。長年かけて育て上げた隊員が一瞬で死亡することなど頻繁にある。それはプレイヤーの力の及ばない突然の雪崩の発生であったり、体調のよくない隊員に無理をさせた、ルートの選択を間違えたなどのプレイヤーの判断ミスによるものであったりする。高峰登山は簡単に成功させられるものではないということをまざまざと教えられる。死亡事故が発生してもそのまま進めるか、リセットしてセーブしたところからやり直すかはプレイヤーの自由だが、リセット無しの縛りプレイも悪くない。物資が少なくなったり、負傷者、死亡者が多くなれば登頂を果たせずにやむなく撤退しなければならない場合も多くあるだろう。無登頂で撤退しても各隊員の能力は成長するのでまったくの無駄足ということでもないが、登頂を果たしてから帰国した方がより成長度合いは高くなる。私自身は一番難易度の低い山を3年目(3度目の挑戦)にして初登頂するにいたった。困難の数が多ければ多いほど、登頂を果たした時の達成感は格別のものとなる。
撤収作業
登頂を果たせば終了・・・とはならないのが登山の厳しさであり、本作の面白さでもある。死亡事故の7割が下山中に発生すると聞く。ある人は言う。「頂きに立ち、生きて帰って来てはじめて”登頂成功”と言えるのだ」と。下山で大切なことは事故を起こさないことはもちろん、“ゴミを残さない”ことが重要となる。途中のキャンプで張ったテントは解体し、中に運び込んでいた装備品と共にBCまで持って降りなければならないのだ。なので、登山中に装備品をキャンプに運び込みすぎていても帰りが大変になるということ。この辺の量の調整、登山中にも下山のことを考えておかなければならないというのは難しくも面白い要素である。テントや装備品を残して帰国してしまうと国際登山連合から注意され翌年度の協賛金が少なくなってしまう。装備品を全てきれいに持ち帰ると協賛金が増え、プレイヤーのランクもアップしさまざまな称号を取得できる。この称号はイーグル、ファルコンなど鳥の名が付けられている。まさに”立つ鳥あとを濁さず”精神を持たなければならないのだ。
アワード
本作はやり込み要素も充実している。優れた功績を達成した隊員には”アワード”が贈られ、コレクションしていける。これは各山への登頂成功アワードの他に、女性隊員のみで山におもむいての登頂、酸素ボンベを使用しない無酸素登頂、厳冬期登頂などさまざま。いくつかのアワードを組み合わせたグランドスラムや、殿堂入りなどもある。また、通常は複数人の隊員で挑むところを、鍛え上げたたった一人の隊員のみで山におもむき登頂を果たす単独登頂アワードなんていうのもある。これは、危機に陥った際に救助に向かえる隊員がいないということで難しい挑戦となるが、いつかはやってみたくなるプレイ方法だ。
あとがき
”高峰登山”というこれまでにない題材を見事にゲームにしたこと、繰り返しプレイしたくなる作り、難しいからこそ得られる達成感など、あまり売れなかったことが本当に残念でならない素晴らしい作品である。ゲームの面白さとはやはりグラフィックの良さではなく、これまでに無い斬新なアイデアなのだと痛感させられる。続編が出ることはほぼ期待できないが、続編が出てほしいとはとくに思わない。なぜなら本作はすでに、もはやこれ以上余計な要素など付け足す必要もない、ほとんど不満点の無い完璧なゲームだからだ。私は本作が存在するということに感謝し、長く楽しみ続けたい。