ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 しみかほSSS詰め2015年11月25日 20:47[chapter:1.1st.Let's play 合奏!]「し・み・ずくーん!合奏しようよ」「………はぁ、構いませんが」「よしっ、なら何やろっか」「チェロとヴァイオリンとなると……今は僕、合わせられる楽譜を持ってないんですが……」「楽譜?」「はい、先輩は何か持ってますか?」「………………………」「先輩?」『どうやら出直しの為、会話終了のようだぞ』さぁ吾輩も協力するから楽譜を取りに疾走するのだ、日野香穂子![newpage][chapter:2.2nd.気を取り直してもう一度。]「し・み・ずくーん!今度こそ合奏しようよ」「………はぁ、構いませんが」「今度はちゃんと楽譜持ってきたよ!」「じゃあ、どういった解釈でやりますか?」「解釈?」「はい、先輩はどちらかと言うと、清らかなイメージが強いですよね。演奏」「………………………」「先輩?」『どうやら出直しの為、会話終了のようだぞ』今度はベル探しに駆け抜けるのだ、日野香穂子!!もちろん、今回も協力してやるから、頑張るんだぞ。[newpage][chapter:3.3rd.三度目の正直]「し・み・ずくーん!もう大丈夫、今度こそ……!」「………はぁ、構いませんが」「さぁ、ラ カンパネッラでイメージは純粋な熱情よ!!」「でも、先輩………」「ん?」「今日はちょっと無理だと思いますよ」「?何で??」「だってもう、六時なんですが………」「!!」『……頑張れ、日野香穂子。負けるな、日野香穂子。そんな日だってあるさ。明日には明日の風が吹く。信じて、さぁまた明日なのだ!』「……ちょっと本気で有り得ないからこの展開ねぇ聞いてるの聞いてる?リリ聞いて」『本日はこれにて学校終了なのだ。学院内に残る生徒は速やかに帰宅するといいぞ!』「ちょっとーーーー!!!」これにて、閉幕。[newpage][chapter:4.指輪の意味]「土浦先輩、プラチナって何でしょうね」「結婚指輪とか……イメージ的にはそんな感じじゃねぇの?」「日野先輩の誕生日が近いそうなんです」「ん?あー……解るように喋れ?とりあえず」「誕生日にはプラチナの指輪がほしいと日野先輩が言ってたんですが……」「は?」「プラチナじゃなきゃ駄目な理由があるのかと思いまして」「あの馬鹿……」「女性がアクセサリーを好むのは、姉や母、伯母を見ても明らかなんですが……」「志水」「はい、何でしょうか」「悪いことは言わねぇ。日野には適当に指輪以外であげろ」「何でですか?」「じゃなきゃお前、気付かぬ内に結婚させられそうだからな……」「結婚?」「科は違うとはいえ、後輩がアイツに騙されて食われるのを黙って見てるのも後味悪ぃしな……(ぶつぶつ)」「食う?」「つかそれ以前にお前、日野と仲良かったっけ?」「最近、名前が解るようになりました」「…………さいで」「土浦先輩も覚えました」「へいへい、有難うよ。……ん?っつーのにアイツの誕生日知ってんのか?」「昨日、日野先輩がひたすら「あー!!皆まで言うな。解りきってはいたが、何か聞いてて切なくなってきたから」「はい?」「………確かにこいつ相手なら、強行手段も取りたくなるか……?(ぶつぶつ)」「??」「で、知り合って何日目だよ」「一週間くらいじゃないですか?」「……………。……志水、俺が悪かった。アイツは無視の方向でいいから」「え?」「大丈夫だ。安心しろ。アイツの魔の手から守ってやるからな!!」「はい?」終われ。[newpage][chapter:5.年末]「志水君にとって、今年はどんな年だった?」「今年……は、そうですね。色んな音楽に触れ合えて、幸せでした」「私もヴァイオリンと出逢えて、幸せだった」「先輩の音、最初は酷かったけど……」「むむ、ホント面目ないな」「でも、今は本当に、眩しくて。ずっと、ずっと、聞いていたい……です」「へへ、有難う。他の誰に言われるよりも、嬉しいよ」「今年はお世話になりました。来年も、宜しくお願いします」「ふふっ私も、宜しくお願いしますだよ」[newpage][chapter:6.始まりは音色と共に]「……日野先輩」「何かな?志水君」初めて耳にしたその音は。とても稚拙で。「もう少し練習量を増やした方が良いと思います」技巧も何もないけれど。「う。や、やっぱりそうだよね……うん、頑張るよ!」けれど。「でも……」でも。「?」僕は――なぜかこの音が、とても気になった。「僕は日野先輩の音、何だか好きです」その素直な音色。もう一度聞きたくなるような音色。何故か、『もう一度』を望んでしまう音。「!」僕にはない、何かを持っている。そんな音色。「また聞いてみたいです」「ほんと?なら次はもっとマシな演奏になるよう頑張るよ!」「はい、楽しみにしています」「約束だよ、志水君!」そう言った、先輩の笑顔はとても綺麗で、眩しくて。つられてなのかは定かではないけれど。僕は自分の頬が緩んでいたことに、暫くしてから気付いた。そうしてどうしてか、心もポカポカと温かくて。「………………?」不思議な感覚に首を傾げる。けれどその感覚は、決して心地の悪いものではなくて。何故かまたしても、僕は頬が緩むのを抑えきれなかった。Fin..?[newpage][chapter:7.貴女だけに贈るメロディ]貴女の音色は、軽やかに弦の上を跳ねるように響いて、何処までも高らかに透き通るかの様。貴女の音域は果てしなく広く。貴女の音色は風さえ味方につけてしまう。貴女の音色は、貴女の言葉。貴女の音色は、貴女の想い。貴女のその音色は、とても僕には甘く響き渡って。初めてのこの想いを優しく包み込む。それは、僕にとって程良い甘さとなって。更にこの想いは強くなる。貴女が愛しいのだ、と。今度は僕が風に乗せて、音色を届けます。貴女だけへ響く、音色を。甘い、甘い、貴女だけへのこのメロディを。[newpage][chapter:8.my pace]「志水君ってプレッシャーとか感じたりする?」二人して、のんびりと森の広場で椅子に腰掛けて。あまりにゆったりと流れる時間を忘れて、心地よいこの空間に微睡みながら。そんな一時を楽しむ中、隣の少女が呟いた。「プレッシャー………ですか」「うん。プレッシャー」「………日常の中で、ですか?」もし、少女が尋ねているのが日常での出来事であるならば、自分はそんなものを感じる瞬間があるのだろうか。マイペースに生きている自分には、世の中で言う緊張感というものは大して感じる時が無い気がする。コンクールにしても、特に緊張した覚えは無い。強いて言えば、最終セレクションだけは緊張したかもしれない。今までチェロと長い間、付き合ってきたけれど、あの時程に真っ直ぐチェロと向き合った日は無いと思う。それくらい、あの最終セレクションは自分にとって意味があった。随分、長い間考え込んでいたならば、そんな少年に彼女は笑って言う。「無い?」声を掛けられて、また自分が一人の世界へと没頭していたのだという事に気付いて、隣の少女に詫びる。「すみません、また考え込んでしまいました」すると、少女は「いいよ。答えが出るまで考えてくれたら」くすくす笑って、そう言った。「私は隣で待ってるから」その言葉がとても擽ったい。何だか、嬉しいやら恥ずかしいやら。色んな気持ちでいっぱいになる。「私、志水君を待つのは結構好きだもの」そう言われてしまうと、どうしてだろう。とても幸せな気持ちでいっぱいになって。頬が緩んでしまう。もしかしたら、と。志水は思った。(僕にはプレッシャーなんて、もう存在しないものなのかもしれない)だって、隣にいる貴女は僕を待っていてくれる。僕のペースでいいのだと微笑(わら)ってくれるから。だから、そうやって待っていて下さい。必ず、追い付くから。だから………待っていて下さいね?Fin..?[newpage][chapter:9.世界は音楽に満ちている]僕は、ずっと不思議で仕方なかったんです。先輩の音はどうして、こんなに気になるのか。ずっと、ずっと、気になって、気になって。考えても解らなくて。技巧とか正確さとか。絶対的に足りない筈なのに、どうしてか“もう一度”を求めたくなる。その音が気になって、気になって。確かめたくて。そうすると、繰り返し聞きたくなって。そうして貴女の音に耳を傾けたら、僕は気付いたんです。この世界には沢山の音が溢れているんだ、と。色々な形の、様々な種類の音楽がその人の数だけあるんだ、と。それは今更なのかもしれない。けれど、こんなにも世界には、数多の音色が彩り豊かに存在している。それは何て凄いことなんでしょうか。僕が奏でる音も、先輩が奏でる音も、違っていて。周りにも、もっと沢山の音色が溢れていて。それが、当たり前なんですね。違っていて、だからこそ求めたくなる。貴女の音色に、殊更そう感じるのはきっと、もっと特別な何かだけれど。コンクールで気付いた、大切な――……もの。きっとこれからも、ずっと。