脂肪酸
日本食品標準成分表2015七訂 日本食品標準成分表 脂肪酸成分表編
日本食品標準成分表2015
脂肪酸はカルボキシル基1個を持つカルボン酸のうち鎖状構造を持つものの総称であり、脂質の主要な構成成分として、グリセロールとエステル結合した形で存在するものが多い。分子内の炭素鎖に二重結合を持たないものを飽和脂肪酸、一つ持つものを一価不飽和脂肪酸、二つ以上持つものを多価不飽和脂肪酸という。特に、二重結合を四つ以上持つものを高度不飽和脂肪酸と呼んで区別する場合もある。脂肪酸(脂質)の摂取に際しては、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸のバランスが重要であるとされている。本成分表では、脂肪酸は脂肪酸組成に基づき算出し、飽和、一価不飽和及び多価不飽和脂肪酸に分けて表示した。
多価不飽和脂肪酸のうち、末端のメチル基の炭素原子から数えて3番目及び6番目の炭素原子に二重結合がはじめて出現するものをそれぞれn-3系多価不飽和脂肪酸及びn-6系多価不飽和脂肪酸という。これらのうち動物体内では合成されず、食物から摂取しなければならない脂肪酸としてリノール酸及びα-リノレン酸がある。これらを必須脂肪酸と呼び、多くの生理活性物質の原料となる。必須脂肪酸が不足すると発育不全、皮膚の角質化等が起こる。最近の研究では摂取するn-3系多価不飽和脂肪酸とn-6系多価不飽和脂肪酸の比率が重要と考えられている。
測定法の概要を表10 に示した。
なお、脂肪酸の組成(各脂肪酸の成分値)は、脂肪酸成分表編に収載している。
数値の表示方法
| 成分 | 試料調製法 | 測定法 |
|---|---|---|
| 脂肪酸 | 脂質抽出後、エステル化 | 水素炎イオン化検出−ガスクロマトグラフ法 |
| コレステロール | けん化後、不けん化物を抽出分離 | 水素炎イオン化検出−ガスクロマトグラフ法 |
| 食物繊維 | 酵素−重量法(プロスキー変法) |
七訂 日本食品標準成分表 脂肪酸成分表編
-
脂肪酸名は、炭素数と二重結合数による記号と脂肪酸の名称で示した。脂肪酸の記号は、「炭素数:二重結合数」で表わしたが、第2章本表の備考欄では成分値の数値との混同を避けるため、記号の前にCを付けて示した。脂肪酸の名称にはIUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)命名法による系統的名称と慣用名があり 1)、炭素数と二重結合数に基づいた命名方法をとっている系統名が炭素数等の判断がつきやすいが、一方で慣用名が広く使われているものも多いため、本成分表の第2章本表で用いる脂肪酸の名称は四訂フォローアップ脂溶性成分表と同様、両者を混用した形とした。脂肪酸の記号、系統名、本成分表で用いた慣用名及びそれぞれの英名を表2 に示した。
-
脂肪酸はカルボキシル基1個を持つカルボン酸のうち鎖状構造を持つものの総称であり、脂質の主要な構成成分としてグリセロールとエステル結合した形で存在するものが多い。二重結合を持たないものを飽和脂肪酸、一つ持つものを一価不飽和脂肪酸、二つ以上持つものを多価不飽和脂肪酸という。特に二重結合を四つ以上持つものを高度不飽和脂肪酸と呼んで区別する場合もある。脂質摂取に際しては、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸のバランスが重要であるとされている。なお、乳類の脂肪酸には分枝脂肪酸として、末端のメチル基の炭素原子から数えて2番目の炭素原子にメチル基を持つイソ酸と、3番目の炭素原子にメチル基を持つアンテイソ酸が認められる。このほか、食品によっては、二重結合を有する炭素原子につく水素原子の配置の違うトランス酸が認められる。
多価不飽和脂肪酸のうち、末端のメチル基の炭素原子から数えて3番目及び6番目の炭素原子に二重結合がはじめて出現するものをそれぞれn-3系多価不飽和脂肪酸及びn-6系多価不飽和脂肪酸という。最近の研究では摂取するn-3系多価不飽和脂肪酸とn-6系多価不飽和脂肪酸の比率が重要と考えられている。
これらの多価不飽和脂肪酸のうち、動物体内では合成されず食物から摂取しなければならない脂肪酸としてリノール酸及びα‐リノレン酸がある。これらを必須脂肪酸と呼び、多くの生理活性物質の原料となり、必須脂肪酸が不足すると発育不全、皮膚の角質化等が起こる。
α‐リノレン酸は脳や神経系の働きに深く関与しており、生体内である鎖長延長や不飽和化の作用を受け、イコサペンタエン酸(IPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)に変換される((注)IPAはエイコサペンタエン酸とも呼ばれ、EPAの略称が用いられることがある。)。IPAやDHAは、天然には水産物の脂質に含まれ、これらを多く含む魚介類を食べている地域では、脳梗塞や心筋梗塞等の血栓症の少ないことが知られている。また、リノール酸は血清コレステロールの低下作用等が知られているが、過剰摂取による弊害も指摘されている。
いずれの脂肪酸も、主な供給源は脂質含量の高い食品であり、これらの食品の過剰摂取がエネルギーの過剰摂取につながるため、注意が必要である。
-
脂肪酸は、原則として炭素数4〜24の脂肪酸を測定の対象とし、脂質1当たりの各脂肪酸を定量して、脂肪酸総量、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の成分値及び総脂肪酸100当たりの脂肪酸の成分値を算出した(第1表)。また、各食品の脂質量と脂質1当たりの脂肪酸の成分値から可食部100当たりの脂肪酸の成分値を算出するとともに、n-3系多価不飽和脂肪酸及びn-6系多価不飽和脂肪酸について、それぞれの合計を算出して表示した(第2表)。
なお、第2表については、成分値の測定を行っていない食品についても、利用者の便宜を考慮して、原材料の配合割合等に基づく計算や文献値により成分値を算出して収載した。
脂肪酸の測定法の概要を 表3 に示した。
-
端数の取扱い方から、また、四訂フォローアップ脂溶性成分表の成分値を用いたものについては未同定脂肪酸があることから、総量と各脂肪酸の成分値の合計が合わない場合がある。
また、四訂フォローアップ脂溶性成分表の成分値を用いたものについては、個々の脂肪酸の中で測定の対象としなかったものがあることから、それらについては、未測定として−で示した。
数値の表示方法
| 記号 | 脂 肪 酸 | |||
|---|---|---|---|---|
| 炭素数:二重結合数 | 系 統 名※1 | 慣 用 名 | ||
| 和 名 | 英 名 | 和 名 | 英 名 | |
| 4:0 | ブタン酸 | butanoic acid | 酪酸* | butyric acid |
| 6:0 | ヘキサン酸* | hexanoic acid | カプロン酸※2 | caproic acid |
| 7:0 | ヘプタン酸* | heptanoic acid | ||
| 8:0 | オクタン酸* | octanoic acid | カプリル酸※2 | caprylic acid |
| 10:0 | デカン酸* | decanoic acid | カプリン酸※2 | capric acid |
| 12:0 | ドデカン酸 | dodecanoic acid | ラウリン酸* | lauric acid |
| 13:0 | トリデカン酸* | tridecanoic acid | ||
| 14:0 | テトラデカン酸 | tetradecanoic acid | ミリスチン酸* | myristic acid |
| 15:0※3 | ペンタデカン酸* | pentadecanoic acid | ||
| 16:0※3 | ヘキサデカン酸 | hexadecanoic acid | パルミチン酸* | palmitic acid |
| 17:0※3 | ヘプタデカン酸* | heptadecanoic acid | ||
| 18:0 | オクタデカン酸 | octadecanoic acid | ステアリン酸* | stearic acid |
| 20:0 | イコサン酸 | icosanoic acid | アラキジン酸* | arachidic acid |
| 22:0 | ドコサン酸 | docosanoic acid | ベヘン酸* | behenic acid |
| 24:0 | テトライコサン酸 | tetraicosanoic acid | リグノセリン酸* | lignoceric acid |
| 10:1 | デセン酸* | decenoic acid | ||
| 14:1 | テトラデセン酸 | tetradecenoic acid | ミリストレイン酸* | myristoleic acid |
| 15:1 | ペンタデセン酸* | pentadecenoic acid | ||
| 16:1 | ヘキサデセン酸 | hexadecenoic acid | パルミトレイン酸* | palmitoleic acid |
| 17:1 | ヘプタデセン酸* | heptadecenoic acid | ||
| 18:1 | オクタデセン酸(n-9)※5 | octadecenoic acid | オレイン酸* ※4 | oleic acid |
| 18:1 | オクタデセン酸(n-7)※5 | octadecenoic acid | シス-バクセン酸* | cis-vaccenic acid |
| 20:1 | イコセン酸* | icosenoic acid | エイコセン酸※6 | eicosenoic acid |
| 22:1 | ドコセン酸* ※7 | docosenoic acid | ||
| 24:1 | テトラコセン酸* | tetracosenoic acid | ||
| 16:2 | ヘキサデカジエン酸* | hexadecadienoic acid | ||
| 16:3 | ヘキサデカトリエン酸* | hexadecatrienoic acid | ||
| 16:4 | ヘキサデカテトラエン酸* | hexadecatetraenoic acid | ||
| 17:2 | ヘプタデカジエン酸 | heptadecadienoic acid | ||
| 18:2 | オクタデカジエン酸 | octadecadienoic acid | ||
| 18:2 n-6※5 | オクタデカジエン酸(n-6) | octadecadienoic acid(n-6) | リノール酸* | linoleic acid |
| 18:3 | オクタデカトリエン酸 | octadecatrienoic acid | ||
| 18:3 n-3※5 | オクタデカトリエン酸(n-3) | octadecatrienoic acid(n-3) | α‐リノレン酸* | α‐linolenic acid |
| 18:3 n-6 | オクタデカトリエン酸(n-6) | octadecatrienoic acid(n-6) | γ‐リノレン酸* | γ‐linolenic acid |
| 18:4 n-3 | オクタデカテトラエン酸* | octadecatetraenoic acid | ||
| 20:2 n-6 | イコサジエン酸* | icosadienoic acid | エイコサジエン酸※6 | eicosadienoic acid |
| 20:3 n-6 | イコサトリエン酸* | icosatrienoic acid | エイコサトリエン酸※6 | eicosatrienoic acid |
| 20:4 n-3 | イコサテトラエン酸(n-3)* | icosatetraenoic acid(n-3) | エイコサテトラエン酸※6 | eicosatetraenoic acid |
| 20:4 n-6 | イコサテトラエン酸(n-6) | icosatetraenoic acid(n-6) | アラキドン酸* | arachidonic acid |
| 20:5 n-3 | イコサペンタエン酸* | icosapentaenoic acid | エイコサペンタエン酸※6 | eicosapentaenoic acid |
| 21:5 n-3 | ヘンイコサペンタエン酸* | henicosapentaenoic acid | ||
| 22:2 | ドコサジエン酸* | docosadienoic acid | ||
| 22:4 n-6 | ドコサテトラエン酸* | docosatetraenoic acid | ||
| 22:5 n-3 | ドコサペンタエン酸(n-3)* | docosapentaenoic acid(n-3) | ||
| 22:5 n-6 | ドコサペンタエン酸(n-6)* | docosapentaenoic acid(n-6) | ||
| 22:6 n-3 | ドコサヘキサエン酸* | docosahexaenoic acid | ||
- ※1 IUPAC命名法の系統名では上記の表中で記載した系統名の前にカルボキシル基側から数えた二重結合の位置を数字で付しているが、ここでは省略した。
- ※2 IUPAC、日本化学会、日本油化学会はカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸という従来使用されてきた呼び方を廃止した。
- ※3 乳類の脂肪酸には分枝脂肪酸であるイソ酸とアンテイソ酸が認められている。(本成分表ではそれぞれ「iso」、「ant」と表示した。)
- ※4 オレイン酸以外の位置及び幾何異性体が含まれる。なお、オレイン酸に限らず二重結合を有する脂肪酸では上記名称以外の位置異性体及び幾何異性体を含むことが多い。
- ※5 末端のメチル基の炭素原子の位置を基準として、他の炭素原子の位置を示す方法として従来ω3、ω6の記号が用いられてきた。しかし、最近はω(オメガ)に代わり、n-3、n-6のごとくn-(エヌマイナス)の使用が多くなってきた。
- ※6 かつては「エイコサ・・(eicosa-)」と呼ばれていたが、IUPAC、学術用語集(化学編)、日本化学会、日本油化学会では「イコサ・・(icosa-)」という呼び方を採用している。
- ※7 n-13をエルカ酸という。
| 成分 | 試料調製法 | 測定法 |
|---|---|---|
| 脂肪酸 | 脂質抽出後、エステル化 | 水素炎イオン化検出−ガスクロマトグラフ法 |