新陳代謝を経て、さらにスパークし続ける
ATARI TEENAGE RIOTが、再び日本を急襲!!
を引っさげて来日したATARI TEENAGE RIOT(ATR)。その
パワーは衰えるどころか、まだまだ勢いと鋭さを増すばかり
であることを思い知らされたライヴだった。
今回はGrindHouse magazine Vol.83での取材に応じてく
れたロウディはもちろん、総帥アレック・エンパイアがインタ
ヴューに登場。ステージとは一転、笑顔で、饒舌に質問に答
えるアレックと、初の日本を喜ぶロウディの様子をどうぞ。
――今回の日本ツアーはいかがでしたか?
アレック「全体的に、ライヴそのものはすごくよかったと思う。でも、初日は
会場の照明やストロボライトを、存分に使うことができなかったんだ。フルに
使った照明とオレたちの音楽とが完璧に融合していたら、もっとすごいもの
になっていたと思う。でも昨日は映像の収録も入っていたから、あまり強い
ライトが点滅させてはいけないということで、フルに活用できなかった。そこ
が残念だったけど、エネルギーにあふれたものにはできたんじゃないかな」
――ロウディは日本に来るのを楽しみにしていましたが、実際に体験した
感想は?
ロウディ「期待していた以上にいい国だね。アレックからどんなところかを
聞いていたとはいえ、みんなすごく暖かく迎えてくれたし、熱狂的に盛り上
がってくれてうれしかったよ。みんな、オレがバンドに新しい風を吹かせて、
これまでとは違った側面を表現できるようになったことを、理解してくれた
みたいだった」
――実際、ロウディはすごくエネルギッシュなパフォーマンスを見せてくれ
ました。若いメンバーが暴れ回ることで、アレックも煽られるようなところが
あったのではないですか?
アレック「オレたちはチームだからね。ただ操られて甘いことを歌うだけの、
ボーイ・バンドとは違う(笑)。全員が同じ目的地を向いて、それぞれの力を
発揮しながら真剣に取り組むことで、いい音楽が生まれるんだ。ここのとこ
ろ、ライヴの終盤ではニックの歌がフィーチャーされているけど、それは彼
女がメインのシンガーだということではなくて、後ろでエレクトロニクスを操っ
ているオレやロウディも、サウンドの重要な部分を担っている。それはオー
ディエンス、ライティング、エンジニアも同様で、ATRに関わっている全員が
チームの一員なのさ。だから競うというよりも、協力し合うという感じかな」
――ロウディが「ATRはギャングのようなものなんだ」と言っていました。
だからこそ、ロウディ自身もATRにすんなり馴染めたのだとか。その意味を、
アレックから改めて教えてもらえますか?
アレック「ほかのバンドだと、ファミリー意識が強すぎるあまり、殻に閉じこ
もってしまうことがある。外部からのインプットを極端に避けてしまうんだね。
でもオレたちは常に外を見ているし、バンドの扉は開かれているんだ。例え
ば昔、RAGE AGAINST THE MACHINEのトム(・モレロ)を招いて、ギター
を弾いてもらったことがあった。もちろんオレもギターは多少弾けるし、プロ
グラミングでギターの音を作り出すことは可能だ。でもトムのギターはすご
く独特のサウンドがあるから、それを取り入れることで、オレたちだけでは出
すことのできない、普段とは違ったサウンドを編み出したかったんだ。今も
ステージでは三人が代わる代わる前に出て、歌ったり叫んだり、オーディ
エンスを扇動したりする。誰かひとりだけに集中するとかではなくて、常に
全員が並列でいるように意識しているんだ」
――最新作『RESET』ではスピード感のある曲が減ったかわりに、ニックの
歌うメロディを強調しているように感じたのも、メンバーが変わったことで生
まれる変化ということですよね。
アレック「例えば小説や映画には、ストーリーがあって、起承転結がある。
だからこそ面白いものにできると思うんだ。それを音楽…それもでもっと表
現できないかというのは、ずっと考えていることなんだ。今は情報化社会で、
誰もがインターネット上で曲を聴く。それで、2秒聞いただけで“これはバラー
ドだから、オレには合わないな”とか、“この曲はうるさいから好きじゃない”と
判断し、次の曲やアーティストに行ってしまう。オレはそれがいやなんだ。
だから2秒聴いただけでは理解できない、いろんな要素があって、複雑に
絡み合った音楽を作りたかった。90年代には即興のノイズを出し続けるこ
とをステージでやったけど、あれはあの当時に斬新だったから成り立って
いたんだ。今はそれが特に珍しいことではなくなったし、オレたちがそういっ
たことをやると、みんなもわかっているからね。だからこそ新しいことを表現
することで、注目してもらいたかった。それはライヴでも同じで、ロウディも
貢献してくれていると思う」
ロウディ「曲作りのとき、部屋を真っ暗にして、なんとか曲にエネルギーを
注ぎ込もうと努力したんだ。今回は、イギリス出身の黒人というオレのフィー
リングやアイデンティティ、エネルギーを反映してもらえたんじゃないかな。
カール(・クラック/2001年に急逝)やCXキッドトロニックも素晴らしい実力
があったけど、オレの存在によって違ったタッチが生まれていると思う」
――つまり、これまでになかった要素を取り入れることで、ATRというバンド
が常に新鮮な状態にいて、かつ音楽もより進化したものをやっていると知ら
しめたかったということですよね。
アレック「その通り。オレたちの音楽は、ひとつひとつをしっかりと聴き、全体
を把握しないとわからないものなんだ。1曲だけ聴いてオレたちのことを判断
する人もいれば、ある特定のメロディを聴いて、これは日本の音楽だなと判
断する人もいる。しっかりと森のなかに入って、一本一本の木をみるべきだ
。山の上から森を見下ろして、それだけですべてを判断するのは、危険だよ。
森の中には、たくさんの種類の木があるんだから。人種差別等の問題も、
そういったところから生まれていると思う。大枠だけでなく、詳細をみるべき
だ。老人が“最近の若い連中は…”と文句を言うのと同じだよ。若い人にだっ
て、ひとりひとり個性があるし、なかにはすごく斬新な考え方をしていたり、
とても礼儀正しい人だっている。実際に話してみないとわからないことだよ。
先入観だけで判断するのは、とても危険だ。ひとつひとつを見て判断すべ
きなんだ」
――新作に関しては、ロウディが「世の中が少しずつポジティヴな方向に向
かっていることを反映させた作品」だと言っていました。世の中に警鐘を鳴ら
してきたアレックが、今の世の中をそう捉えるのは意外でしたが、どんな心境
の変化が?
アレック「怒りとか激しい感情というのは、人の内に蓄積されて、限界が来た
ときに爆発するものだと思う。今回は、そういう気持ちがあってもいいんだけど、
それをエネルギーとして、何か前向きな行動を起こそう、ということを主張し
ているんだ。もちろん激しい怒りを感じることはある。オレたちは、ただ動いて
いるだけの、痛みを感じないゾンビではないからね。世の中で起こっているこ
とに、何か反応をしなければならないし、そうしたいんだ。今回は何か行動を
起こすためのエネルギーを与えたいと思った。怒りだけが残るのではなく、
それを糧に行動を起こし、何かを変えてほしいんだ。それを意識して表現した
んだよね」
――ロウディが加入したことで、バンドに新陳代謝が起こったのはよくわかり
ました。そうなると、今後の活動や制作でもいろいろな変化が続いていきそう
ですね。
アレック「一般的なバンドの場合、例えばメンバーの誰かが亡くなったり脱退
してしまい、新しいメンバーが入ったら、その後任メンバーは前任がやってい
た通りにプレイすることが求められるよね。でもオレたちの場合は、それはまっ
たくない。ロウディが入ったことによって、昔の曲もガラリと生まれ変わったん
だ。それも含めて、メンバーが持っているスキルによって、別の側面が生まれ
ることが楽しい。例えばひとつのフレーズをリフレインさせるでも、ミニマルに
ずっと同じことをやるのではなく、少しずつ変化させていくのがいい。そうする
ことで、バンドを更新していきたいんだ。ニックも昔はステージの後ろで叫ぶ
ばかりだったけど、今では歌でヴォーカルの重要なパートを担っている。そう
してバンドをブラッシュアップすることで、ATRのコアはそのままに、いろいろ
な変化を加えていくことが理想だね」
文・望月裕介/text by Yusuke Mochizuki
translation by Miho Haraguchi
photography by TEPPEI
ツイート
シェア