皮膚科を受診した方であれば、青や赤のフタのプラスチック容器に入った塗り薬をもらったことがあると思います。
この容器には1種類の塗り薬が入っていることは少なく、ほとんどの場合が2種類以上の軟膏やクリームを混合した塗り薬が入っています。
- この混合軟膏や通常の塗り薬には、使用期限と保存のルールは存在するのでしょうか?
- 飲み薬と保存方法は違うのでしょうか?
軟膏を混合するメリットとデメリットも合わせて解説します。
軟膏の混合方法(塗り薬の混ぜ方)【動画】
軟膏混合機を使えば、薬剤師の混合技術の差がでないため、毎回一定水準の混合薬が作れます。
しかし、軟膏混合機はハイコストです。
実際は薬剤師が軟膏べらと軟膏台を使って混合しているところがほとんどです。
- すべての器具と容器、薬剤師の手をエタノールなどで消毒する
- 軟膏を絞り出す(または計る)
- 軟膏を少しずつ混合する
- 均一に混合されているのを確認する
- 軟膏つぼの壁に擦りつけるように(押しつけるように)つめる
- タッピングをして空気を抜く
- 表面を滑らかにする
- ティッシュなどで横についた軟膏をふき取り、消毒する
<動画を見ていただいた方へ>
軟膏の混合は、結構地味な作業だと思いましたか?
次に軟膏を混合するメリット・デメリットを見ていきましょう
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混合軟膏のメリット
メリット1:
塗り薬を塗る手間の軽減
何回も塗る手間を省き、できるだけ正しい回数を塗るために、軟膏は混合されます。
これがメリットの1つ目です。
アトピー性皮膚炎などでは、毎日1日2回以上塗る場所によって塗り薬を使い分けなくてはなりません。
例えば
- ヒルドイドソフト軟膏を全身に塗り
- マイザー軟膏を体に塗る
- プロトピック軟膏を顔に塗る
といった感じです。
全身に塗り薬を塗る場合は、1回の塗布ですら時間がかかります。
それを毎日数回行うと思えば、たいへんな作業です。
1日2回塗布するように医師から指示があった場合でも、1週間経てば1日1回しか塗布しなくなっている。
そのようなことも十分に考えられます。
メリット2:
皮膚への浸透率を上げる効果
ステロイド軟膏はプロペト(白色ワセリン)で薄まらない
デルモベート軟膏0.05%とプロペト(白色ワセリン)を1:1で混合したとしましょう。
デルモベート軟膏は半分の濃度の0.025%に理論上なり、効果も半分になるはずです。
実際は、デルモベート軟膏0.05%とプロペト(白色ワセリン)の1:1混合軟膏は、デルモベート軟膏の半分の効果にはなりません。
もし、単純に軟膏を混合すれば、効果が100%→50%→25%となるのであれば、
ストロンゲストのステロイド軟膏にプロペト(白色ワセリン)を混合すれば、自家製ベリーストロング混合軟膏、自家製ストロング混合軟膏を作ることができます。
それが可能であれば、メーカーがストロンゲストからウィークの強さのステロイド軟膏を発売する理由がなくなります。
ステロイド軟膏はプロペト(白色ワセリン)で混合して薄めれば、塗り薬の効果もそれに応じて減弱するほど単純ではありません。
ステロイド軟膏のランクと基剤について
ステロイド軟膏と保湿剤の混合
混合軟膏を一般化できるものではありませんが、
ステロイド軟膏に、ヒルドイドソフト軟膏、パスタロンソフト軟膏のような油脂性ベース基剤(W/O型)の保湿剤を混ぜると、皮膚への浸透力が上がることが知られています。
これが混合する2つ目のメリットです。
相乗効果のある混合軟膏の処方例
(ステロイドと保湿剤の混合)
出典:ノバルティスファーマHP
*ケラチナミン軟膏はケラチナミンクリームに名称変更されています
*ケラチナミンクリームは水溶性ベース基剤(O/W型)を使っていますので、軟膏とは混ざりません
パスタロンソフト軟膏
軟膏と名前が付いていますが、実は乳化剤を使った油脂性成分をベースとしたW/O型クリームです。クリームは軟膏に比べて、一般的に皮膚への浸透性が高いと言われています
O/W型クリームとW/O型クリームについて
混合軟膏のデメリット
デメリット1:
混合による塗り薬の相乗効果が不明確
塗り薬の効果は、塗り薬自体の強さ、皮膚の状態、塗る量、塗る回数などによって決まります。
さらに、混合により効果を変化させる要素がひとつ増えます。
混合する2つ目のメリットで示した通り、ステロイド軟膏に(W/O型)保湿剤を混合すると、皮膚への浸透性が上がることがわかりました。
しかし、混合軟膏の効果の増減データがあるわけではないため、混合による相乗効果は経験則でしかないのです。
デメリット2:
混合軟膏の汚染
メーカーが開発したチューブ入りの塗り薬は、理想的な保存状態です。
チューブから軟膏を外へ出せば汚染が始まります。
軟膏容器に詰めた軟膏を、清潔ではない指で触ればさらに汚染は進みます。
軟膏つぼのフタのまわりも汚れやすいので、使用後はしっかりティッシュでふき取って保存してください。
使い終わった混合軟膏容器を持参して「ここへ入れてください」と言われる方がいます。
「もったいない」と言う気持ちなのだと思いますが、汚染と保存を考えると、お応えするのは難しいです。
お気持ちだけいただきます。
混合軟膏の保存の方法、使用の仕方は千差万別で、混合軟膏の汚染について調べた信頼できるデータも見当たりません。
混合軟膏の汚染については、だれもわからないのです。
汚染された軟膏を塗ると、細菌感染・症状悪化などを起こす可能性があります。
飲み薬と同様に軟膏も使い方が肝心
デメリット3:
混合軟膏の使用期限(有効期限)がわからない
開封軟膏の使用期限は?
軟膏チューブの下などに書かれている使用期限は、室温(塗り薬によっては冷蔵庫)で保存して開封するまでの使用期限です。
一度開封すると、使用期限までは使用は難しいです。
開封した軟膏の保存状態は人それぞれで、いつまでが使用期限かを決められないからです。
(軟膏の開封後の使用期限が1カ月、3カ月…といわれる場合もありますが、経験則に基づくもので、回答の根拠はありません)
さらに、混合してした場合、2つの観点から使用期限を考える必要があります。
- 混合軟膏の効果と配合変化(保存)
- 混合軟膏の清潔さ(汚染)
混合軟膏の効果と配合変化(保存)
軟膏・クリーム配合変化ハンドブックの第2版がついに出ました。
このような便利な本がありますので、混合後の配合変化(保存)調べることは可能です。皮膚科の混合軟膏の処方箋を受ける薬局は、たいてい常備しています。
これがないと、混合軟膏についての保存を語れません。それだけ内容の濃い本です。
軟膏、クリームの混合の配合変化を、強引に一般化するとこのようなイメージです。
| 軟膏 | クリーム (W/O) | クリーム (O/W) | |
|---|---|---|---|
| 軟膏 | ○ | △ | × |
| クリーム (W/O) | △ | △ | × |
| クリーム (O/W) | × | × | △ |
○:安定
△:分離する場合がある
×:混ざらない(混合不適)
デメリット4:
自己負担が増える
軟膏の混合を計量混合といいます。
2種類以上の塗り薬を混合することで、80点(3割負担で240円)の加算料が発生します。
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混合軟膏の保存方法
混合軟膏の保存は部屋?冷蔵庫?
チューブの塗り薬は、ほとんどが室温(1℃~30℃)保存ですので、混合軟膏も基本的には涼しい部屋での保存で問題ないと思います。
ただし、「軟膏・クリーム配合変化ハンドブック(第1版)」によると
- 室温(部屋保存)×
- 冷所(冷蔵庫保存)○
という混合軟膏も少数存在します。
「室温×冷所○」の薬を「軟膏・クリーム配合変化ハンドブック(第1版)」から引用すると
- マイザーとザーネの混合
- アズノールとザーネの混合
- アルメタとザーネの混合
混合軟膏のブリーディング
夏場の部屋での保存で、混合軟膏がブリーディング(水と油が分離した状態)を起こす場合があります。
分離された水は汚染されやすいため、ブリーディングが起こった場合は、すぐに冷蔵庫保存に切り替えてください。
夏場は室温以上に部屋の温度があがります。
ブリーディング防止のためには、冷蔵庫(5℃くらい)の保存がいいのかもしれません。
まとめ
塗り薬は使用されなければ治療になりません。
混合するデメリットは少なくありませんが、手間を省き正しい回数を塗るために軟膏は混合します。
混合軟膏は汚染しないように、使用前は手を洗って、フタなどに薬をつけたままの状態で保存しないようにしてください。
軟膏を混合するメリット
- 塗る手間の軽減
- 混合軟膏同士の相乗効果
軟膏を混合するデメリット
- 相乗効果が不明確
- 軟膏の汚染と配合変化
- 使用期限(有効期限)がわからない
- 自己負担が増える