「下痢」はどうして起こるの?
腸の働きと密接に関係する「下痢」
お腹のトラブル「下痢」。急な外出先で起こるお腹の痛みに、焦る人も多いでしょう。下痢とは、腹部に痛みを感じ、水っぽい便が出ることをいいます。
そもそもお腹にどのような異常が生じて下痢になるのでしょうか?下痢の発生は、腸の働きと密接に関係しています。今回は、下痢が起こるメカニズム、下痢の種類についてご紹介します。
「大腸」の働きとの関係
体内の水分をつかさどる大腸
「小腸」では、胃から運ばれた内容物の消化や「吸収」が行われますが、この時、小腸で吸収されずに残った内容物が、「大腸」へと運ばれます。大腸では、小腸から運ばれた内容物の水分吸収が行われ、徐々に内容物が硬くなって大便になります。
また、大腸の長さは約1.5mもあるため、内容物を直腸へスムーズに運ぶために、大腸の粘膜からは水分が「分泌」されています。
このように大腸は、内容物を大便にするために「水分を吸収する」働きと、大便を運ぶために「水分を分泌する」働きを同時に行っており、大腸が正常な時は、この水分吸収と水分分泌のバランスが保たれています。
「下痢」が発生するメカニズム
一方、「下痢」は、水分吸収と水分分泌のバランスが崩れ、結果的に内容物の水分が多くなりすぎた時に起こります。
下痢が発生するメカニズムとしては、次のようなものが考えられます。
1. 内容物が腸を速く移動してしまい、水分が十分に吸収されなかった
2. 腸から分泌される水分や粘液が多くなり過ぎた
3. 腸の粘膜の病変により、腸の水分吸収能力が低下した
こうした異常が、お腹のどこで発生するのか、具体的に見ていきましょう。
1.胃から小腸へ
食べ物は、食道を通って胃に到達し消化されます。胃で消化された食べ物は、小腸でさらに消化や吸収され、小腸で吸収されずに残った内容物が次の大腸に移ります。
2.大腸での処理
大腸に移った時の内容物はまだユルユルの状態で、排泄されるまでに次の2つの処理が同時に行なわれます。
○内容物を大便にするために大腸で適度な水分を吸収する
○大便を肛門までスムーズに移動させるために、大腸の粘膜から水分が分泌される
この2つの処理が終わると、内容物は排便に適したかたさになって排泄されるのです。
3.下痢の発生
ところが、大腸での処理の過程で、水分吸収と水分分泌とのバランスが崩れてしまったり、腸の運動が活発になって便の水分が十分に吸収されないうちに肛門まで移動してしまったりすると、水分の多い便が排泄されてしまいます。これが「下痢」の正体です。
下痢の種類は「急性」と「慢性」の2タイプ
下痢の種類は大きく分けて2タイプあります。突然起きる「急性」下痢と、長く続いたり、再発を繰り返したりする「慢性」下痢です。
1.急性下痢
突然の腹痛とともに、何度もトイレに駆け込んでしまうのが急性下痢です。食べ過ぎや飲み過ぎ、冷え、乳糖不耐症、特定の食品に対するアレルギー反応、精神的ストレス、ウイルスや細菌の感染などが主な原因です。2~3日で治るものが多いのですが、回復するまで1週間程度かかることもあります。急性下痢でも、腹痛や発熱、吐き気、嘔吐を伴う場合は、食中毒による感染性下痢が疑われます。
2.慢性下痢
慢性下痢は、3週間以上続いたり、再発を繰り返したりすることが特徴です。原因は多岐にわたり、それぞれの原因に応じた治療が必要です。しばらくしても症状が治まらない時は、ほかの病気が潜んでいる可能性もあるので、おかしいと感じたら、すぐに医師の診察を受けるようにしましょう。
「下痢」の原因は?
腸の「働き」や「状態」の変化によって発生する
下痢の原因としては、ストレスや緊張、暴飲暴食、食あたり、ウイルスや細菌による感染、生理周期、冷えなど、様々です。いずれの場合も、腸の「働き」や「状態」が変化を起こすことによって下痢が生じます。
原因①「ストレス」や「緊張」による下痢
「ストレス」や「緊張」が原因となって、下痢を起こすことがあります。ストレスや緊張によって、腸をコントロールする「自律神経」が刺激を受け、腸が異常収縮してしまい、腸を通る便の水分が十分に吸収されずに排出されて、下痢になります。また、特定の状況下でよく下痢を起こす場合は、「過敏性腸症候群」の可能性があります。
「過敏性腸症候群」とは?
「過敏性腸症候群(IBS)」とは、検査を行って炎症や潰瘍(かいよう)など目に見える異常が認められないにもかかわらず、下痢や便秘、下腹部の張りなどの症状が起こる病気のことをいいます。
「仕事中や会議中に急にお腹が痛くなる」「通勤・通学の電車の中で腹部に不快感を感じて途中下車をしてしまう」「便秘や下痢などの便通異常が慢性化している」などといった症状がある場合、過敏性腸症候群である可能性があります。過敏性腸症候群は、日本人では多くみられる病気で、約30%の方が過敏性腸症候群の症状を持っているともいわれています。過敏性腸症候群は、症状から大きく分けて3つのパターンに分類できます。
過敏性腸症候群の症状の方と特徴
| 型 | 特徴 |
|---|---|
| 下痢型 |
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| 便秘型 |
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| 下痢・便秘交代型 |
|
過敏性腸症候群の原因としては、不規則な生活、精神的な緊張や不安、ストレスなどがあります。なかでも、ストレスは過敏性腸症候群の最大の原因とされています。過敏性腸症候群の疑いがある時は、まず医師の診察を受けてください。
原因②「暴飲暴食」による下痢
「暴飲暴食」によっても下痢は引き起こされます。
少量のアルコールは腸の働きを活発にしますが、大量の飲酒は、水分のとり過ぎを招いたり、アルコールによって腸粘膜が荒らされたりするため、下痢を引き起こします。水分のとりすぎで下痢をするのは、便の水分が十分に吸収されないまま排出されるためで、大半は飲酒の翌朝に発症します。
食べ過ぎの場合、消化不良物や、そこから発生したガスが腸の粘膜を刺激して、腸が異常収縮するため、下痢が起こります。
原因③「食あたり・食中毒」による下痢
「食あたり・食中毒」を起こしやすいのは、生鮮食品などの加熱していない料理です。食品に含まれた病原菌が消化器官で増殖し、腸を刺激することで下痢が起こります。
原因菌としてもっとも多いのは「腸炎ビブリオ」で、海水に多く存在しています。水温が15℃以上になると増殖するため、大半は夏場の魚介類が原因です。
原因④食品に含まれる「成分」による下痢
果物や豆類に含まれる糖類や、ノンシュガーの食品などで砂糖の代わりに使われている甘味剤などの「成分」の作用で、腸内に水分がたまり、下痢を引き起こすことがあります。
また、乳糖を分解する酵素を持たない「乳糖不耐症」の人は、牛乳を飲むと乳糖が消化されず、乳糖が小腸に蓄積され、下痢を起こします。
辛い食べ物やコーヒー、冷たい物などを飲み食いした場合も、消化管への刺激によって下痢が生じることがあります。
原因⑤「生理」による腹痛をともなう下痢
生理周期のうち、生理前は子宮を収縮させる「プロスタグランディン」の分泌により腸が異常収縮し、腹痛をともなう下痢が起こりやすくなります。
「生理」の時は、心理的にも不安定な状態が続くため、ストレスが原因となることもあります。
原因⑥「冷え」による下痢
「冷え」による下痢は、自律神経の乱れによって起こります。原因は、腸をコントロールする神経がお腹の冷えにより刺激を受けて、腸が異常収縮してしまうためです。腸を通る便の水分が十分に吸収されずに排出されるため、下痢になります。
LIONヘルスケアマイスター
山岸 理恵子
すぐ病院へ行った方がいい「下痢」もある?
「下痢止め薬」はむやみに服用しないこと!
下痢は腸管内の有害な物質を排出するための防御反応でもあるので、下痢止め薬によって下痢を止めることで、かえって症状が悪化することもあります。
また、赤痢やコレラなどの伝染病やO157などの食中毒による下痢、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性疾患による下痢などのように、下痢がひどい場合、ときには「命に関わる病気」が潜んでいる可能性もあります。
ひどい下痢、血便が出る下痢、高熱が出る下痢、海外旅行後の下痢などは、むやみに「下痢止め薬」を服用せずに、すぐに医師の診察を受けるようにしましょう。