〈シミの各種治療法について〉

三省堂「大辞林第二版」でシミ(染み)を調べると、3番目の項目として、
(ア)顔面、特に額・眉・頬などに生じる褐色の色素斑。成年女子に多い。原因は明らかではないが内分泌系の失調と考えられている。肝斑(かんぱん)。
(イ)中年期以後、顔面や手の甲など日光に当たる部分にできる褐色の色素斑。

皮膚の老化が原因と記載されています。すなわち、肝斑を主体にしながらも、後天性(生まれた後、特に加齢とともに)に出てきた皮膚の茶色い斑点(盛り上がりがないもの)全般を指しているようです。これに皮膚科の病名を当てはめていくと、とても沢山の疾患が含まれることになります。

ここでは、皆さんから相談されることが多いいくつかの代表的なシミを取り上げたいと思います。

◆シミの種類と治療法
①老人性色素斑、日光線性花弁状色素斑、雀卵斑(そばかす):レーザー治療が有効
老人性色素斑は顔面や四肢の伸側に見られる比較的境目がはっきりしたシミです。日光光線性色素斑は、肩から背中にかけて大豆大までのコンペイトー様の褐色の色素斑が多発するもので、海水浴などで日焼けしたあとに出来やすいものです。

これらのシミが薄いとレーザーは反応しにくく、炎症後色素沈着の度合いによってはかえって濃くなる場合もありますので、ハイドロキノンやレチノイン酸などの美白剤が適応になります。場合によっては中周波という弱い電気にて表面を軽く乾固・焼灼させる方法も有効です。

そばかすは色白の女性に5~6歳以降に頬を中心に出てくる淡い褐色をした小さな斑点が多発するもので、遺伝傾向があります。同じくレーザーに反応します。紫外線は悪化因子です。

②遅発性太田母斑様色素斑(後天性真皮メラノサイトーシス):Qスイッチレーザー治療が有効
遅発性太田母斑は幼少時から見られる通常の太田母斑(青アザ)とは異なり、左右対称性に両側に生じ、青みが少なく褐~灰褐色の5mm位までの小さい斑の多発で、時に肝斑(シミ)と間違われます。しかし、真皮内にメラノサイトの増殖があるという点では通常の青アザと同じです。青アザと同様にQスイッチレーザー治療が有効です。3カ月以上の間隔をあけて、平均4~5回の治療が必要となります。

③肝斑、炎症後色素沈着(ニキビ痕、アトピー性皮膚炎痕、やけど痕など):レーザー治療は無効
肝斑は主に30歳以降の女性の顔面(こめかみ、頬など)に左右対称性に生じる様々な色調や形、大きさのシミです。ホルモンバランスの乱れが基礎にあり、日光で悪化しますが、経口避妊薬などにても発生することがあります。

炎症後色素沈着は様々な原因にて発生しますが、赤ニキビ、やけどやかぶれの後に茶色く残るシミなどが代表的なものです。いずれもレーザーにて一度は軽い火傷の痕のように色素が脱落してピンク色になりますが、その後に以前よりも濃くなることが知られています。

これらに対してはビタミンC、ハイドロキノン、レチノイン酸などの美白剤の外用やグリコール酸によるケミカルピーリングが中心となります。もちろん日焼け止めをきっちり使用して遮光に心がけることが大切です。

外用剤での治療は最低でも半年~1年という期間を要します。継続することが重要です。アトピー性皮膚炎に伴う色素沈着では、皮膚表面(表皮)でのメラニン色素の増加に加えて、引っかいたりすることによって真皮内へ色素が脱落していますので、症状のコントロールとともに上述の美白治療を行い、消退しない部位に対してはQスイッチレーザー治療を行うことがあります。また、美白剤治療でも刺激が生じやすいため、様子を見ながら徐々に治療を進めて行きます。ビタミンCのイオン導入も刺激が少なくて行いやすい治療といえます。

◆ビタミンC、ハイドロキノン、レチノイン酸、日焼け止め、中周波、レーザーの概説
①ビタミンC:以下治療が刺激症状にて使用できないときや、化粧品として使用していただきます。イオン導入を行うとより効果的です。

②ハイドロキノン:チロシナーゼという酵素をブロックして、メラニン色素を作る細胞の中で色素が作られるのを抑えます。また還元作用によって出来てしまっているメラニン色素を薄くする作用もあります。当院では5%の濃度で使用していただいています。

③レチノイン酸:ビタミンA酸(trans-retinoicacid:トレチノイン)。:表皮細胞のターンオーバー(生まれ変わり)を早めて、色素を早く外へ排出することによってシミを薄くします。また、角質層を薄く保つことができるのでニキビ治療にも汎用されますし、バリア層が薄くなるので他の外用剤の成分が角層を通過しやすくなります。そのため、ハイドロキノンと併用するとより効果的です。
時に刺激症状のために使用が制限されることがありますが、使用量や回数を加減することで継続可能です。当院では0.025%から0.2%を用意しています。

④日焼け止め:日常生活においてはSPF20程度のもので結構ですが、シミ治療を行うにあたってはどの治療法を選択するにせよ必須です。

⑤中周波:高周波と低周波の間の周波「中周波」の微弱電流を流して表皮表面を軽く焼くようなものです。レーザーに比べて低侵襲(まわりへのダメージが少ない)で、色素がなくても反応するのが利点ですので、薄いシミが適応となります。

レーザー治療同様、上記美白剤を用いたアフターケアがより効果を確実なものにします。その他、顔面の小さな老人性イボ、首周りの小さなイボや老人性血管腫(首や胸に出来る赤い小さなイボ)の治療には最適です。

⑥レーザー:メラニン色素に特異的に吸収されるレーザー光をあてると、局所で光のエネルギーから熱のエネルギーに変換されるので、周りへの熱影響が少ない「適度なやけど」を起こすことができます。そうして薄いかさぶたを作ってシミを表皮ごと取り除くのです。レーザーといえども「やけど」ですから、大なり小なりの炎症後色素沈着が起きますので、日焼け止めのみならず上記美白剤を使用した積極的なアフターケアが必須です。薄いシミではメラニン色素が少ないので「適度なやけど」を起こせないので有効性が低くなります。

⑦ケミカルピーリング:グリコール酸などの弱い酸を用いて、皮膚表面の角質を整える治療で、ニキビ治療に特に有用です。角質を調整すると、その下の皮膚も整えられることがわかってきています。グリコール酸には強くはないですが、メラニン色素の産生を抑える作用や真皮を厚くする作用がありますので、総合的な美肌(抗光老化)作りに寄与します。
肌のターンオーバーを目安に、10日~2週間の間隔で繰り返してゆきます。施術後も通常通りにお化粧はできます。

Q1.シミ(肝斑)の患者さんにビタミンCとともにトランサミン(※)が処方されますが、どのような効果があるのでしょうか? また、使用できないのはどのような疾患があるときですか?
※トラネキサム酸:抗プラスミン薬で線用系が亢進した際の止血剤ですが、湿疹、蕁麻疹、薬疹、扁桃炎などの際にもよく処方されます。これはプラスミンによるアラキドン酸の遊離やプロスタグランディン産生を抑制するといった抗炎症・抗アレルギー作用を期待したものです。

A2.トラネキサム酸が肝斑に有効であることが報告されたのは1979年のことだそうです。その後、日本においては広く皮膚科医の間では使用されています。本邦では自家製剤のハイドロキノン以外に有効な治療法が長らくなかったことも関係するのかも知れません。

メラニン色素は紫外線や妊娠、あるいは経口避妊薬の服用にて皮膚局所のプラスミン活性が高まって、メラノサイトが刺激を受けることで増加します。そこにトラネキサム酸の抗プラスミン作用でメラノサイトを刺激する因子を抑えることによって、効果を発揮するのではないかと考えられています。内服を開始して1~2カ月で効果が出始めることが多いようですが、内服中止によって再燃してきます。また肝斑は紫外線によって悪化しますので、サンスクリーン剤を適切に使用することも重要です。ハイドロキノンやレチノイン酸の外用を併用することによって効果が高まることが知られています。

これらは大手化粧品会社からも医薬部外品(薬用化粧品)として多く販売されています。高脂血症や心疾患などのために抗凝固療法を行っている方へは使用されません。その他、ビタミンCやビタミンEの内服も有効であることが知られています。