鉄代謝 USMLE対策 (医学生・医師向け)
鉄代謝について(主にUSMLE用まとめ)
- 第一鉄、第二鉄、無機鉄、有機鉄、ヘム鉄、非ヘム鉄などのいろいろな種類・分類がある
- 鉄代謝は、一見、簡単そうで実はわかりにくい!!
- この解説を読んで、図にまとめたくなったら理解できた証拠
鉄
- Fe
- Ferrum
- 電子配置 1s=(2), 2s=(2), 2p=(2,2,2), 3s=(2), 3p=(2,2,2), 4s=(2), 3d=(2,1,1,1,1)
- 有機鉄 organic iron: 有機物(ヘム、またはクエン酸、フマル酸などのカルボン酸)との化合物
- 無機鉄 inorganic iron:水酸化物(-OH)、硫化物(-S)、硫酸塩(-SO4)、塩化物(-Cl)との化合物
ポイント
- ヘム鉄(必ずFe2+イオンの形):Hemeタンパクに結合している有機鉄で、直接、Hemeタンパクの形で吸収される
- 非ヘム鉄(Fe3+またはFe2+の形):化合物としての無機鉄または有機鉄であり、化合物からはずされた後、フリーのFe3+またはフリーのFe2+として吸収される
- 生理的に、成人男性で1日1mg、有経女性で1日2mgの鉄が必要
- ヘム鉄の吸収率は25%、非ヘム鉄の吸収率は5%(約5倍の差がある)
- 鉄の欠乏がある場合、ヘム鉄なら1日10〜20mg(max 40mg)、非ヘム鉄なら1日50〜100mg(max 200mg)の補充を最低2〜4週間おこなう。小児の鉄補充についてはこちら
- 鉄投与開始して3日後に、網状赤血球が増える
- ヘモグロビンは、鉄投与開始後4週間であがってくる
- フェリチンは3か月後にようやく正常化する
- 生理的な鉄の排泄システムというのはない(腸上皮細胞がフェリチン過剰になると剥がれて脱落することによってのみ鉄が排出される)
- 鉄補充中には過剰症(ヘモジデローシス)に注意する
- 補充の期間として、1クール12週間をこえないようにする
- ヘモグロビンが正常でも、フェリチンが低ければ、潜在性の鉄欠乏状態の可能性(詳しくは下記)
- TSAT<20、フェリチン<100 → 鉄欠乏
- TSAT>20、フェリチン>100 → 鉄過剰
- TSAT<20、フェリチン>100 → 鉄利用障害
- TSAT>20、フェリチン<100 → 理想的な鉄利用状態
- 内服用の鉄剤にはFe2+製剤とFe3+製剤がある
- 注射用の鉄剤はFe3+製剤のみ
- ヘム鉄(内服剤)に医薬品はない。すべて、市販のサプリメント
第一鉄
- Ferrous
- 2価の鉄イオン
- Fe2+
- 電子配置 1s=(2), 2s=(2), 2p=(2,2,2), 3s=(2), 3p=(2,2,2), 4s=(0), 3d=(2,1,1,1,1)
- 水溶性
- 酸性でもアルカリ性でもイオン化する
- 生体内では電子を1つ失いやすい(酸化されやすい)
- 化合物(例)
- Ferrous Oxide = FeO = 酸化鉄(II) = 酸化第一鉄
- Fe(OH) 2 = 水酸化鉄 (II) = 水酸化第一鉄
- Ferrous Sulfate(325 mg のFerrous Sulfateのうち、Elemental ironは 65 mg):フェログラデュメット、スローフィー
- Ferrous Citrate = クエン酸鉄(II) = クエン酸第一鉄(→これは有機鉄):フェロミア
第二鉄
- Ferric
- 3価の鉄イオン
- Fe3+
- 電子配置 1s=(2), 2s=(2), 2p=(2,2,2), 3s=(2), 3p=(2,2,2), 4s=(0), 3d=(1,1,1,1,1)
- 水に難溶性
- Fe3+は、酸性でイオン化し、溶解度があがる
- アルカリ性では、水酸化物と重合し、高分子コロイドを形成し沈殿する
- 化合物(例)
- Fe(OH)3 = 水酸化鉄 (III) = 水酸化第二鉄 (→これをショ糖(スクロース)でコロイド化したものがフェジン注射薬)
- Ferric Oxide = Fe2O3 = 酸化鉄(III) = 酸化第二鉄 = 赤さび
- Ferric Sulfate
- Ferric Citrate= クエン酸鉄(III) = クエン酸第二鉄(→これは有機鉄):リオナ
HemeIron (ヘム鉄)
- 原則として必ずFe2+イオンの形
- Hemeというタンパク質にFe2+イオンが結合し、ヘモグロビンやミオグロビンを形成しているヘム鉄
- Liver, Fish, Meat, Egg yolk, Oystersなどに含まれる鉄
- 動物性の鉄
- 毎日50 mgの摂取で過剰になる
- 赤ワインで吸収が阻害される
- ヘム鉄 Heme ironは、そのままHeme(Fe2+)として腸粘膜(HCP1トランスポーター)より吸収される
- Hemeが腸の上皮細胞に吸収されると、腸上皮細胞内のHeme oxygenaseによって、Hemeの基本構造であるProtoporphirinが分解され、フリーのFe2+イオンが放出される
- 腸上皮細胞の中でフリーとなったFe2+は、Ferroportinを介して血清中に放出される
- フリーのFe2+イオンは、不安定で、電子を失いやすい
- フリーのFe2+イオンが電子を失うとフリーラジカルが発生し、細胞が傷害される(後述)
- 血清中へ放出されたフリーFe2+は、血清セルロプラスミン(Hephaestin)がもつFerroxidase I 活性により安定で不活性なFe3+イオンへと酸化される(この反応ではフリーラジカルが発生しない)
- Fe3+イオンは、血清トランスフェリンと結合して血清鉄(Fe3+)となる
- 腸上皮細胞内に残ったフリーのFe2+は、腸上皮細胞内のセルロプラスミン(Ferroxidase I 活性)により、安定で不活性なFe3+(第二鉄)に酸化され、Fe3+としてフェリチンの殻(アポフェリチン)の中に貯蔵される
- フェリチンの一部は血清中へ分泌され、血清フェリチンとなるが、そのパスウェイは不明
- 血液中のトランスフェリン(血清鉄Fe3+)は、骨髄中の赤芽球にあるトランスフェリン受容体に結合し、エンドサイトーシスによって赤芽球内のエンドソームに取り込まれる
- エンドソーム内のpHがさがると、トランスフェリンとFe3+の結合がはずれ、エンドソーム内にフリーのFe3+が放出される
- エンドソーム内に放出されたFe3+は、NADPHによって還元され、Fe2+となる
- Fe2+はDMT1に結合し、エンドソームから細胞質、ミトコンドリアへ運ばれる
- Fe2+は、ミトコンドリアでヘム前駆体(Protoporphirin IX)に組み込まれ、Heme(Fe2+)となる
- Heme(Fe2+)はそのままだとすぐにHemin(Fe3+)へと酸化されてしまうが、Globinが存在すればGlobinと結合し、Fe2+として安定し、ヘモグロビン(Fe2+)を形成する
- Heme(Fe2+) + Globin → Hemoglobin(Fe2+)
- すなわち、ヘモグロビンの鉄はFe2+である
- フェリチンの鉄はFe3+である
- ヘモグロビンのFe2+は酸素と結合することができる
- ヘモグロビンのFe2+は、酸素と結合しても、Fe3+へと酸化されることはない(Fe2+のまま)
- ヘモグロビンのFe2+と酸素の結合は「可逆的」である
- 何らかの理由でヘモグロビンのFe2+が不可逆的に酸化されてしまうと、 メトヘモグロビン(Fe3+)になる
- メトヘモグロビンFe3+には、もはや酸素結合能はない
- 生体内では、メトヘモグロビンはただちに還元剤(NADH reductase)によって還元され、ヘモグロビンにもどる
- フリーのFe2+は不安定で、非常に酸化されやすい
- 酸素がFe2+から電子を奪うと、Fe2+は酸化されてFe3+になる
- フリーのFe3+イオンは安定しているが、この反応の副産物として、有害なスーパーオキサイドO2-が発生する
- つまり、フリーのFe2+が酸化されると、その周囲の細胞がフリーラジカル(スーパーオキサイドO2-)によって傷害されてしまう
NonHeme Iron 非ヘム鉄
- Fe3+イオンやFe2+イオンの化合物
- 有機鉄(クエン酸やフマル酸との化合物)や無機鉄(硫酸基、水酸基との化合物)
- Green leafy vegetables, Fruits, Dried beanなどに含まれる
- 植物性の鉄
- 無機鉄(Fe3+またはFe2+)の吸収には、まず酸(胃酸など)によるイオン化が必要である
- 無機鉄中のFe3+またはFe2+は、胃酸により溶解度があがると、フリーのFe3+またはFe2+イオンとして溶け出す
- 制酸剤は、無機鉄からのFe3+またはFe2+の溶け出し(イオン化)を抑制する
- 有機鉄(Fe3+またはFe2+)のイオン化(溶け出し)は、pH(制酸剤)の影響をうけにくい
- 無機鉄、有機鉄から遊離した(イオン化した)Fe3+は、ビタミンCなどの還元剤によりFe2+に還元される
- 十二指腸におくられたフリーのFe2+イオンは、アルカリ性の環境(十二指腸)でも溶存できる(Fe2+イオンは酸性またはアルカリ性で溶解度があがる)
- フリーのFe2+イオンは、胃内に残ると再びFe3+イオンへと酸化され(フェントン反応の一種)活性酸素を産生する。→胃症状(ムカつき、はき気)の原因となる
- フリーのFe2+は、十二指腸へ運ばれると、Ferroxidase II 活性(酵素は同定されていない?)の働きでふたたび酸化されフリーのFe3+となる
- フリーのFe3+は、十二指腸のβ3インテグリンを介して吸収される
- フリーのFe3+は、アルカリ性(十二指腸)では水酸基と結合し、さらに重合して高分子無機鉄塩コロイドをつくり沈殿してしまう
- 十二指腸で吸収されなかったフリーのFe3+は、十二指腸チトクロームbの作用によりフリーのFe2+へ再び還元される
- フリーのFe2+は、アルカリ環境下でも溶存できる
- フリーのFe2+は、十二指腸のDMT1トランスポーターを介して吸収される
- 腸管細胞内に吸収されたフリーのFe3+は、そのまま腸上皮細胞内でフェリチンの殻(アポフェリチン)にとりこまれ、安定不活性なFe3+(第二鉄)として貯蔵される
- フェリチンの一部は、血清中へ分泌され、血清フェリチンとなるが、そのパスウェイは不明
- 腸管から吸収されたフリーのFe3+は、腸上皮細胞内でFerric reductaseによりに還元されてフリーのFe2+となる
- 腸上皮細胞内でフリーとなったフリーのFe2+は、Ferroportinを介して血液中に放出される
- 血清中のフリーFe2+は、Hephaestin(血清セルロプラスミン)が有するFerroxidase I 活性によりFe3+に酸化される(この反応ではフリーラジカルを発生しない)
- Fe3+は、血清中のトランスフェリンと結合し、血清鉄(Fe3+)となる
- 十二指腸のDMT1トランスポーターを介して腸管細胞内に吸収されたフリーのFe2+は、腸上皮細胞内のセルロプラスミン(Ferroxidase I 活性)により、安定不活性なFe3+(第二鉄)に酸化されて、フェリチンの殻(アポフェリチン)の中で貯蔵される
- 酸化されなかったフリーのFe2+は、Ferroportinを通って血清中に放出される
- 血清中に放出されたフリーのFe2+は、すぐにHephaestinの作用でFe3+へ酸化され、血清中のトランスフェリンと結合し血清鉄(Fe3+)となる
- Fe3+はFe2+より安定している
- Fe2+は、電子を失いやすく(酸化されやすく)、より安定した(不活性な)Fe3+になりやすい
- この反応は、細胞障害性があるスーパーオキサイドO2-の産生をともなう
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