| | 投稿者名:レミー タイトル:人のワキガはわかるけれど、自分の臭いはわかりません はじめまして。レミーと申します。
わきがについてですが、私は家族にわきがはいません。耳垢も湿ってないし自分で汗をかいた後に臭いを嗅いでも、臭いません。
しかし、気になってしまって・・・。 緊張すると腋に汗を結構かきます。上着が濡れる程ではありませんが。 後、何度も白いTシャツをきていると腋の下が黄色くなります。 他人のわきがの臭いは非常によく分かります。
それでも自分の臭いはわかりません。これでも自分はわきがなんでしょうか? すみませんがご返答よろしくお願い致します。
| | 投稿者名:五味院長 タイトル:におい識別の仕組み レミーさん。
まず、あなたはわきがのニオイはありませんので安心してください。 自分の臭いが分からないのは、通常言われる「嗅覚の疲労や順応」ではなく、あなたの腋から「ワキガ臭」が出ていないからです。
一方、あなたは人のワキガ臭ははっきりと分かるようですので、今回はあなたがその「ワキガ臭」をどのように嗅いで、他の臭い(例えば普通の汗のニオイ)と識別しているかを説明しましょう。
実はこの「におい識別」の話題は、今が非常にタイムリーなのです。というのも、今年度(2004年度)のノーベル賞の受賞が、医学生理学分野でにおいを識別する仕組みを解明した米国のアクセル・バック両博士に決まったからです。
私はこの一報を聞いたとき、驚きを隠せませんでした。と同時に「嗅覚という分野がやっと認知された」と喜びも隠せませんでした。 なぜなら、嗅覚というのは五感のなかでも最も原始的な感覚であり、今まで生理学の研究者の間でも、聴覚や視覚に比べ軽視されてきたからです。
その一因が、ニオイの曖昧さにあります。色なら黒は黒、白は白で、原色だってあります。音ならドはドで、ミはミで、絶対音階だってあります。 ところが、ニオイの場合、どこからどこまでがaというニオイで、どこまでがbというニオイなのかその境界さえもはっきりしません。人によってはaというニオイをbと感じることもあり、実際aというニオイの濃度が薄すまってくるとbというニオイに感じることだってあるのです。
しかも、音なら切ればゼロになり、色なら消せば真っ白です。ところが、ニオイの場合、一つのニオイの実験をして次の実験をしようとしても、そのニオイが「消えない」のです。自然にニオイが消えてくるまで待っていては日が暮れてしまいます。これではよほど暇の研究者でなければ、「におい」を研究テーマにしようとは思わないでしょう。
医学の分野でも同じです。例えば糖尿病の治療なら、150あった血糖値が100になったら「正常値」になったとだれでも判断できるでしょう。 ところが、ワキガ臭の場合、いくら治療者が「治りました」と言ったとしても、当の患者さんが「まだ臭う」と主張するなら「治癒」とは言えないのです。
私が「試験切開」という医学的検査法を導入するまで、臭いの医療も「曖昧な世界」だったのです。 これでは優秀なドクターが「におい医療」に関心を向けなかったのも当然です。
でも、これからは変ります。 今回のノーベル賞は、日陰の存在だった「におい生理学」の分野が脚光をあび、「におい医療」の分野も市民権を得るきっかけとなることでしょう。
話を「においの識別」に戻しましょう。
今あなたは、ワキガのニオイを嗅ぎました。 10万種にものぼる「におい分子」の中から、あなたの脳はどのようにそのニオイを「ワキガ臭」と判断しているのでしょうか?
ここで、ワキガ臭を、「Aというにおい分子(例えば3メチル2ヘキセノイン酸)3個」、と「Bというにおい分子(例えば酪酸)2個」、と「Cというにおい分子(例えばカプロン酸)1個」、とが一緒になったときのニオイと仮定しましょう。
ある人の腋から発散された(A3個+B2個+C1個)のにおい分子は、空気中を浮遊して、あなたの鼻腔にある鼻粘膜に到達しました。 鼻粘膜には鼻細胞というにおいの分子をキャッチする細胞が無数にあってその先端から嗅繊毛という毛のようなものを出しています。そこには、においの分子がスッポリとはまり込む穴(レセプター)があり、その数なんと1000万個もあるそうです。(数えた人はすごい) におい分子がカギで、レセプターはカギ穴のような感じですね。
3個のAと2個のBと1個Cは、その繊毛にあるレセプターにすっぽりとはまってしまいました。(ただし、AはAの形をした鍵穴に、BならBの形をした鍵穴しかひっつくことはできません。)
と、その瞬間です。 嗅細胞が突然興奮して、電気を発生し、鼻粘膜のすぐ上方にある嗅球という器官に「変なにおい分子がやってきた!これはいったい何だ?」と電気信号を送ります。嗅球では「慌てるな!冷静になれ。まずそれらのにおい分子を整理しよう」と1000種類の糸球体に分類するように指令します。 つまり、3個のA分子からの信号は、A専用の糸球体に、2個のB分子からの信号はB専用の糸球体にそれぞれ分類されます。コンセントにソケットをはめた状態ですね。 レセプターと糸球体は、勝手気ままに飛んで来たあまたのにおい分子の秩序を共同して保っているのでしょう。
なぜこのように分類するのでしょうか?数学の得意なあなたなら計算してください。(私は苦手なのでできません)」 結論を言えば1000通りの「組み合わせ」が可能だからです。1000通りを相乗するなら、ほぼ「無限大」のニオイの種類の識別が可能となり、しかも「画像化」できるからです。
アクセル・バック両博士はこのようなにおい分子をとらえるにおい受容体が約1000種類あり、それぞれ個別の遺伝子からつくられることを突き止めたのです。
でも、この段階では、あなたは(A3個+B2個+C1個)が「ワキガ臭である」とは判断していません。電光掲示板のA部とB部とC部が点灯しただけです。 ここから先にまだ長い道のりがあるのです。
しかし、だいぶ整理されたニオイ情報は、さらに嗅神経の電気情報となって嗅球のさらに上のあたりにある大脳皮質の「嗅覚野」という部分に到達します。
聴覚や視覚などの感覚神経は、通常大脳の中ほどにある視床という場所で「仕分け」をされて大脳に行くのですが、嗅覚は視床を通らずにダイレクトに脳まで行きます。 嗅覚は曖昧なわりには一直線なんですね。 そのかわり、大脳辺縁系という本能行動、情動、記憶の中枢がある場所とはかなり密な連絡をしあってから、嗅覚野に到達するようです。 におい記憶が非常に明確でビビッドで、私達の情動を惹起するのも理解できますね。
大脳の嗅覚野に達した電気情報は、やっと「3A+2B+1C」が過去のニオイ体験から照らし合わせて「ワキガ臭である」と判断し「汗くささとは異なる」と識別するのです。
さらに、現代人の場合には、嗅覚野の「ワキガ臭である」という情報が、さらに大脳の前頭葉にある「連合野」という部分とやり取りをして、他の視覚や聴覚からの情報を組み合わせて、認知したり、人間関係的記憶として保存したりして、認知に基づく行動を指示するのです。
例えば、あなたが、他人のワキガ臭を嗅いで「もしかしたら私もワキガ?」と心配になり、薬局にデドオラント剤を買いに行くのは、前頭連合野という部分が過去にあった辛いニオイ体験などが保存されている神経ニューロンなどと統合しながら判断しいるからです。
ちなみに、直接的なニオイ記憶は、辺縁系にある海馬いう部分で記憶しますが、過去のニオイ体験(人から咳き込まれた等)がトラウマのように記憶されるのはこの連合野のようです。
以上が、あなたが「ワキガ臭」を認識する脳の仕組みです。
今まで、ニオイが体から「発生する仕組み」の説明が中心でしたが、今回はアクセル・バック両博士に敬意を表して、ニオイを「感じる仕組み」の方を説明しました。
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