こんにちは。現役薬事屋のハクシです。
このブログでは、薬事屋からの観点から、広告にかってにコメントするというお気楽なことをやっています。
「時代に流されない美しさを、あなたに」。いいですね。きれいです。
本商品はメイク落としなのですが、この「流」っていう字が、なんとなくクレンジングのような洗浄剤をイメージさせつつ、「美しさ」という最終ベネフィットに落とし、さらに自立した女性の強さをイメージさせる「時代に流されない」というフレーズと組み合わせている。
薬事屋からみても、このフレーズは何の問題もない。
いいですね。
キレイでいいコピーだと思います。
さて、TVCMを見てみますと、これまた薬事屋にとっても勉強になる内容ですね。
ユニリーバの広告薬事担当者の方はすばらしい。
写真に載せたショットに出てくる「肌ハリ成分配合」「クレンジング成分配合」。
これらは、化粧品等適正広告ガイドラインのF5.5 特定成分の特記に遵守する必要があります。
化粧品では、配合成分を特出しして表示する場合、消費者に誤解を与えないように、配合目的も併記しましょう、というのがガイドラインに書かれているルールです。
この点からもう一度見てみると、明らかに「肌ハリ」「クレンジング」目的のための成分を配合しています、となっていますよね。
さらにその「肌ハリ成分」って何なのかをすぐ下に「セタノール、リノール酸誘導体、乳酸誘導体、アセタミドMEA」と成分名をしっかり表記しています。クレンジング成分もしかり。
ちゃんとガイドラインF5.5を遵守していますね。
商品名は、「ポンズ エイジビューティー クリーム クレンジング」。
薬事屋としてみると、「エイジビューティー」に注意をはらうことになるでしょうか。
しかし、この表現も問題ないですね。
「エイジ」というのは、「年齢」という意味ですね。
「ビューティー」は、「美しさ」。
だから「エイジビューティー」は「年齢美しさ」、つまり年齢に応じた肌の美しさを保つケアをするためのクレンジングクリームですよ、と普通の人はおおよそ解釈するでしょう。
化粧品等適正広告ガイドラインに、E17 「エイジングケア」の表現、というのがありまして、そこに書いてあるのは、「アンチエイジング」等若返りの表現はダメだけど、「年齢に応じた化粧品等の効能効果の範囲内のケアの「エイジングケア」を用いた表現」は認められると記載されています。
「エイジビューティー」はまさにこの意を示す表現でしょう。
薬事屋としては問題なしですね。
さらにもう一つの注意。
ガイドラインに、F7.2 使用前・後の図面、写真等、というものがあります。
これは何かというと、「使用前、使用後の図面、写真等による効能効果又は安全性に関する表現については、…化粧品等の効能効果又は安全性の保証表現となるので行わないこと。」というものです。
ビフォーアフターの明らかな写真や図を広告にのっけることは、効能の保証になっちゃうからやめてよ、ということです。
で、この広告、途中で写真に載せたような、手を下から上ににスーっと移動させると、「もちろんメイクもきちんと落とす」というナレーションとともにメイク前からすっぴんの顔に変わります。
これがF7.2に抵触するかどうかは、きっと広告作成時に薬事担当の方と広告担当の方で議論をたくさんしたでしょうね。
私はF7.2には抵触していない、という立場をとります。
まず、このCMの流れ。
このすっぴんになる前に、ニューヨークのメイクからロンドンのメークに、さらに日本のメークに変わるシーンがあり、その流れですっぴんになる。
CM上の演出として、様々なメークを紹介していて、すっぴんはその「様々なメーク」の一環として「何もメークをしていないメーク」として出しているのですね。
この意味からは、この商品を使った効能効果を示している写真ではなく、CM上の演出と考えられるでしょう。
次に、この日本メークとすっぴんに切り替わるときに、商品が出ていないこと。
明らかにダメな場合は、例えば日本メークをした女性が、この商品を使ってクレンジングしたらこうなります、と言ってしまい、「使用前」として日本メークの女性、「使用後」としてすっぴん女性の写真を載せれば、完全にF7.2に抵触します。アウトです。
しかしながら、このCMでは、そのような表現は一切出てこない。
これでは、日本メークをこの商品を使うとCMに出てくるようなすっぴんになるかどうか、はわかりませんよね。
ただのすっぴん女性の顔を出しただけであり、商品を使った結果としてこうなる、とは見えないです。
先ほど言ったCMの流れから、演出の一部ととらえたほうが自然です。
こういった意味から、F7.2には抵触しないと私は判断します。
さらにWebを見てみると、「ハリのある上向き美肌へ」というコピーがあり、「クリームクレンジングでマッサージをすると、リフトアップ効果が期待できます」と書かれていますね。
ガイドラインには、E6 しわ予防・解消、若返り・老化防止、顔痩せ効果等の表現、というのがあります。
ここには、「化粧品では皮ふ深部(細胞レベル)での生理代謝機能に影響を与えて、加齢による影響を防ぐものではないとされているので、「シワやタルミを解消する」等の表
現はできない。」とあります。当然ですね。化粧品は医薬品ではないので、薬理作用があってはならないのです。なので、あたかもクリームを塗るとタルミが解消する、なんてことを言ったら化粧品ではなくなるのです。
でも、本広告では、「マッサージ」することで、「リフトアップ効果」が「期待」できるのです。
クリームの薬理作用的なものでリフトアップ効果が出るわけではないのです。
リフトアップ効果は、マッサージによるものであり、しかも出ると保証しているわけではなく、期待できるのです。
これは世間一般の認識から言っても妥当だと考えられますね。
薬事屋としてもOKです。
この他、Webには、「No1」の表現、「愛されて170年目」「世界初であろう」など、薬事的にも非常によく考えられた表現がいっぱい並んでいます。薬事というより景品表示法の観点ですが、薬事担当者は景品表示法からくる要求事項も知っている必要がありますからね。
化粧品の広告薬事をやる人には、まるで教科書のように、とてもよくできている広告だとも感じます。
広告薬事担当や、広告作成部の新人研修なんかに、実践例として紹介してもよいかもしれないと思う広告です。
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