抗てんかん薬はてんかんを始め双極性障害や統合失調症など多くの精神疾患に使用されているが、最も注意すべきなのは他の薬剤との「飲み合わせ」である。例えば、抗てんかん薬のフェノバルビタールは抗凝固剤のワーファンリンの代謝酵素の誘導を起こし血中濃度を下げてしまう。そしてこれは一般的にあまり重要視されない作用であるようだが、いくつかの水溶性・脂溶性ビタミンの代謝酵素にも影響し血中濃度を下げる作用も報告されているようである。例えば、(フェニトイン(商品名:アレビアチン)、バルプロエート(商品名:デパケン)、カルバマゼピン(商品名:テグレトール)、フェノバルビタール(商品名:フェノバール)、プリミドン(商品名:プリミドン))を服用している場合は、各種ビタミンが欠乏する可能性があるようだ。

特に葉酸は重要で長期間欠乏状態が続くとホモシステイン代謝阻害によって動脈硬化に寄与する可能性もある。その他にも各種ビタミンは正常な代謝や細胞分化などに関わっているため可能な限り補充しておきたいところではある。しかし、葉酸は用量依存的に抗てんかん薬を阻害するため、高用量では薬剤血中濃度が低下してしまう恐れがある。また、ビタミンDも高用量では血管石灰化、ビタミンEも動脈硬化を引き起こす可能性が高いと考えられているため、摂取量には注意しなくてはならない(アメリカの市販のサプリメントに書かれた推奨摂取量の基準はこれらのような有害事象を引き起こすボーダーラインを超えていることが良くあるため、FDAの公式の推奨摂取量を参照することが重要である)。

以下はこちらの論文の要約である(参照文献も文末に記載)。
(Role of various vitamins in the patients with epilepsy/ Scholar Science Journals)

■チアミン(B1)
重度のチアミン欠乏症は、アルコール性および非アルコール性の両方の患者において発作を引き起こすことがある。これら発作はチアミン補給によって回復することができると考えられている。てんかん患者においても低チアミン状態が見られる症例がある。てんかん患者に対しプラセボ対照試験において、50mgのチアミンを毎日6ヶ月間補充したところ有意な改善が見られた。長期的にフェニトインを服用している患者では、血中チアミンレベルが異常値であり、葉酸濃度が低値であった

■ピリドキシン(B6)
ビタミンB6依存性てんかんでは、通常25-50mg /日の経口ピリドキシンでその後維持することができるが、 小児では200mg /日を要したケースもある。

非ビタミンB6依存性てんかんの小児では、160mg /日のビタミンB6補充により発作の完全または部分的改善が認められ、患者のうちの数名は抗てんかん薬の中止が可能となった
再発性発作を呈した23歳の男性に60mgのピリドキサールホスフェートの静脈内投与を行ったところ、その直後に発作が解消された。またそれに伴い患者の血清ピリドキシン濃度は正常値下限の80%以下まで著しく低下した。
難治性てんかんを罹患するすべての幼児、小児はビタミンB6投与を試してみるべきである。ただ、特定の抗てんかん薬と低ビタミンB6レベルとの強い関連性は、ないという見解とあるという見解がある。特に高用量のビタミンB6は、抗てんかん薬の効果を阻害する可能性がある。

ある研究では、 80-200mg /日のピリドキシンは、てんかん児の血清フェニトインおよびフェノバルビトン値を低下させた。ピリドキシンの500 mg /日以上の長期投与は、成人で神経毒性をもたらした症例が報告されている。またビタミンB6 補充はマグネシウムの要求を増加させる。

■ビオチン(B7)
抗てんかん薬服用に起因した(カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン)ビオチン欠乏症が報告されている。ビオチン欠乏は皮膚炎、疲労感、脱毛、白髪などの原因になりうる。その機序は、ビオチン代謝の促進と腸からのビオチン吸収を阻害することによると考えられている。ビオチンの補給が抗てんかん薬の効果を阻害するという報告は現在はない。ビオチン補充はビオチンの先天性代謝異常を持つ患者において発作頻度を減少させる可能性がある。

■葉酸(B9)
抗てんかん薬(フェニトイン、バルプロエート、カルバマゼピン、フェノバルビタール、プリミドン)は血液中の葉酸濃度を低下させる。葉酸欠乏はホモシステイン濃度を上昇させ動脈硬化や高血圧、心疾患の原因になりうる。その他にもDNA合成に関わり血球合成には必須の物質である。カルバマゼピンを服用している小児患者に対する葉酸補充の無作為化臨床試験では、白血球および多形核細胞数は 葉酸補充を受けた患者で有意に高く、好中球減少症の発生率は約半分に減少した。

ただ、葉酸補充は高濃度ではフェニトイン、フェノバルビタール、カルバマゼピンの分解酵素との親和性を増加し分解を促進するため薬剤の血液濃度を低下させ、発作抑制に干渉する可能性がある平均経口の1mgの葉酸を追加した後の血清フェニトイン濃度は約20%低下し、また経口5mgを追加した後40%低下したという報告がある。しかし抗てんかん薬服用の妊娠中女性に葉酸100-1,000μg/日を補充したところ葉酸欠乏を防止でき、発作制御損なわなかったという報告もある。

■ビタミンD
抗てんかん薬服用者はビタミンD欠乏症になるリスクが高い。くる病、骨軟化症、骨ミネラルの低下などが報告されている。ビタミンDは現在ホルモンとして認識されており、骨代謝だけでなく免疫異常抑制やがん抑制などにも関わる。バルプロエートは、作用機序は不明だが骨ミネラル濃度を減少させる可能性がある。バルプロエートを服薬するてんかん患者は、カルシウムとビタミンDの豊富な食事が推奨される。

1,25-ジヒドロキシビタミンD3の投与はラットにおいて海馬発作の上昇をもたらしていることが観察された。またてんかん発作の頻度は、抗てんかん薬とビタミンDの併用で、プラセボ併用群よりも減少していた。
フェノバルビタール服用患者が正常なカルシウム濃度を維持するのに必要なビタミンD3の量は、約975IU /日であった。フェニトイン、カルバマゼピン、およびフェノバルビトンを服用中の患者は低25-ヒドロキシビタミンDレベルであり、正常な血清25-ヒドロキシビタミンDレベル(15 ng / mL以上)を維持するのにビタミンD3が400-4,000 IU /日必要であった(72%の患者は2400 IU /日以上)。

■ビタミンE
てんかん患者のビタミンE欠乏は、抗てんかん治療に起因しているという報告もあるが、ビタミンE補充によって抗てんかん効果が示されるかどうかは見解が分かれている

血液中のビタミンEレベルは、単剤療法を受けているてんかん小児よりも多剤療法を受けた小児ではより低かった。

ビタミンE治療は、抗てんかん薬の血漿レベルに影響を及ぼさないと考えられる。5人のてんかん患者(小児、成人)に対する無作為二重盲検法で250 IU /日のビタミンEまたは プラセボを3ヶ月間投与したところ、抗てんかん薬の効果は以前と同レベルに維持された。
 
治療抵抗性てんかんのある24人の小児(6-17歳)に対し無作為二重盲検法にて、400IU /日のα-トコフェリルアセテートまたはプラセボを3ヶ月間投与したところ、ビタミンE投与の12人患者のうち10人は発作頻度が60%以上減少した(また10人中6人は90-100%減少を示した)。しかし、プラセボ群の患者においても、60%以上の発作頻度の低下を示した。
抗てんかん薬を投与している重度障害のてんかん患者(4-23歳)においては、100IU /日のα-トコフェリルアセテートを1ヶ月間補給しても、発作頻度に影響はなかった。
未治療のてんかんを有する患者(若年者、成人)への無作為重盲検法で600IU /日 ビタミンEまたはプラセボを3ヶ月間投与したところ、プラセボ期間中の平均発作頻度は25.7%減少した。期間中のビタミンE濃度はベースラインと比較して13.8%増加した。

■ビタミンK
新生児のビタミンK欠乏は、母親の抗てんかん薬による酵素誘発性の機序によって増加する。妊娠時のビタミンK1投与によって、これらの新生児のビタミンK欠乏の頻度を減少させる可能性がある。14人のてんかんを罹患した妊娠中女性に20 mg /日のビタミンK1を分娩の2週間前に投与したところ、新生児に出血症状はなく、プロトロンビン時間はすべて正常であった。

補足:L-カルニチン
ビタミン類ではないが、L-カルニチンはバルプロ酸によって排出されてしまうため、併用投与したほうが良いのかもしれない。医師による処方ではバルプロ酸服用に伴う高アンモニア血症などに出されるが、高アンモニア血症にならなくとも長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に輸送するのに必要であるため、欠乏するとミトコンドリア障害が生じると考えられている)